ドル円見通し 昨年9月の市場介入水準へ徐々に迫る(23/8/10)

ドル円は8月14日午前に145.22円を付けて6月30日高値145.06円を超えて年初来高値を更新、14日夜は米長期債利回りの上昇を見て145.57円へ高値を伸ばした。

ドル円見通し 昨年9月の市場介入水準へ徐々に迫る(23/8/10)

昨年9月の市場介入水準へ徐々に迫る

〇ドル円、8/14午前に年初来高値を更新、指標発表なく手掛かり難の中、夜に145.57へ高値を伸ばす
〇本日夜発表の米7月小売売上高堅調予想により米長期利回り上昇、ドル高継続感が強まる
〇昨年9月介入時の水準に迫り、政府・日銀による市場介入に対し当面は慎重かつ挑発的に高値を試すか
〇一度の市場介入では今回も抑えきれずに150円台を目指して行く可能性も
〇NY連銀調査の期待インフレ率は1年先・3年先共に低下、しばらくは追加利上げ余地が残る
〇GS、FRBは四半期ごとに0.25%利下げを繰り返し、利下げ再開は2024年4-6月期と予想
〇米長期債利回りは先週末から連騰、ダウは続伸
〇145.57超えからは146円試しとし、146円手前は介入警戒感もあり反落注意
〇144.65割れからはいったん下げに入るとみて144円台序盤への下落を想定

【概況】

ドル円は8月14日午前に145.22円を付けて6月30日高値145.06円を超えて年初来高値を更新、直後の反落で144.65円まで下げたところも買い拾われてしっかりし、14日夜は米長期債利回りの上昇を見て145.57円へ高値を伸ばした。
先週は8月10日夜の米7月CPI前年比が市場予想の3.3%を下回る3.2%となったものの6月の3.0%から伸びが再加速したことで一時143.29円まで下げたところを買われて144円台中盤へ上昇し、11日夜の米7月PPIが全体およびコア指数の前月比と前年比が予想を上回る伸びとなったことで12日未明には144.99円へ一段高していた。
8月14日は欧米の主要経済指標発表がなく手掛かり難だったが、8月15日夜発表予定の米7月小売売上高が堅調との事前予想により米長期債利回りが上昇したためにドル高継続感が強まったとして145.50円超えへ高値を伸ばした。

【政府・日銀による市場介入姿勢を挑発する円安】

昨年9月22日に145.89円を付けたところで政府・日銀は円安抑制のために24年ぶりとなる円買い・ドル売り介入を実施した。介入規模は2兆8300億円、介入後にドル円は140.36円へ下落、当日高値からは5円を超える急落だったが、翌日には143円台へ戻し、しばらくもみ合ったものの10月12日に9月22日高値を超えて一段高へ進み、10月21日に151.94円を付けて32年ぶり高値とした。
政府・日銀は10月21日に5兆6202円規模の市場介入を実施、翌営業日の10月24日にも7296億円の市場介入を行った。10月21日高値151.94円から10月24日安値145.50円まで6円を超える下落となり、いったん149.67円まで戻してから再び失速してしばらくは145円台後半での持ち合いとなり、11月10日に米CPIが予想以上に鈍化したことによる「逆CPIショック」で145円を割り込んで今年1月16日安値127.22円までの長期下落へと進んだ。

現状も昨年9月介入時の水準に迫ってきたことにより財務相や財務官等による円安けん制発言も出やすくなり、市場介入を行う場合には事前にレートチェック等を入れて市場に圧力をかけることも予想されるが、肝心なことは9月22日の市場介入ではドル円の上昇トレンドを崩せずに介入による急落がバーゲンハント買いの場となったこと、10月21日の市場介入も結果的にはドル円の上昇を抑えてあとから見れば天井形成となったのだが、介入後の高止まりから円高へと風向きを変えたのは「逆CPIショック」であり、介入だけでは円安そのものを止められないということだろう。
市場もその辺りを意識して当面は慎重かつ挑発的に高値を試し、円安けん制発言等に反応しつつも突っ込んだところは買われて高値切り上げを試して介入の本気度を試して行くのだろうと思われる。
昨年9月と10月の介入額は合計で9兆1880億円となったが、同規模の介入を行うドル資金への余裕があるのかどうか、インフレ抑制のためにドル高を歓迎している米国からの円安けん制も鈍い状況とすれば、一度の市場介入では今回も抑えきれずに150円台を目指して行く可能性もあるのではないかと思われる。

【NY連銀調査の期待インフレ率は低下、GSは来年4-6月期の利下げ予想】

8月14日にニューヨーク連銀が発表した7月消費者調査における1年先期待インフレ率は3.55%となり、6月の3.83%から低下した。4か月連続の低下であり、2021年4月以来の低水準となった。3年先期待インフレ率も2.91%となり6月の2.95%から低下している。
ゴールドマン・サックスは四半期報告書においてFRBによる利下げ再開は2024年4-6月期との予想を示した。同社は四半期ごとに0.25%利下げを繰り返すと予想し、コアPCE(個人消費支出)物価指数の伸び率は今年6月時点の4.1%から2024年4-6月期には2.5%程度まで低下するとした。
これらはドル高に対する若干のブレーキとなったものの、インフレの高止まりによりまだしばらくは追加利上げ余地が残り、米財務省による大量国債発行傾向も踏まえて米長期債利回りの上昇が続くなら全般のドル高基調とともにドル円も上昇を継続しやすいのではないかと思われる。

【米長期債利回りは先週末から連騰、ダウは続伸】

8月14日の米長期債利回りは総じて上昇した。指標の10年債利回りは先週末比0.04%上昇の4.20%となり、一時は4.215%を付けて昨年11月以来の高水準に達した。30年債利回りも先週末比0.03%上昇の4.29%、2年債利回りも先週末比0.07%上昇の4.97%となった。
一方でNYダウは先週末比26.23ドル高と上昇して8月10日からは3連騰となり、ナスダック総合指数も143.48ポイント高となり先週末の前日比93.14ポイント安を解消した。

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

【60分足 一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は8月7日午前安値141.51円を起点とした上昇を継続しているが、8月10日夜の米CPI発表直後の反落時に付けた安値143.29円を起点として新たな上昇期に入っている印象だ。高値形成期は17日午後にかけて想定されるので反落注意期にあるが145円台を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは上昇継続と考え、14日午前安値144.65円割れからはいったん下げに入るとみて17日夜にかけての下落を想定する。

60分足の一目均衡表では遅行スパンの好転と先行スパンを上回る状況が続いているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。遅行スパンが一時的に悪化しても先行スパンを上回るうちはその後に遅行スパンが好転するところから上昇再開とするが、先行スパンへ潜り込むところからはいったん下げに入る可能性ありとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンの下限を試す流れとみる。

60分足の相対力指数は8月11日から14日夜への一段高に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられるので反落注意とし、50ポイント以上での推移中は上昇余地ありとするが、50ポイント割れから続落する場合は30ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月14日午前安値144.65円を下値支持線、8月14日夜高値145.57円を上値抵抗線とする。
(2)145円を上回るか一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、145.57円超えからは146円試しとする。146円手前は介入警戒感もあり反落注意とするが、145円以上での推移なら16日午前も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)144.65円割れからはいったん下げに入るとみて144円台序盤(144.20円から144.00円)への下落を想定する。144.20円以下は買われやすいとみるが、144.65円以下での推移なら16日午前も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

8/15(火)
休場 イタリア、ポーランド、ギリシャ、インド、韓国
10:30 (豪) 豪中銀、金融政策会合議事要旨
10:30 (豪) 4-6月期 賃金指数 前期比 (1-3月 0.8%、予想 0.9%)
11:00 (中) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 3.1%、予想 4.5%)
11:00 (中) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 4.4%、予想 4.4%)
13:30 (日) 6月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 2.0%)
13:30 (日) 6月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -0.4%)
13:30 (日) 6月 設備稼働率 前月比 (5月 -6.3%)
15:00 (英) 6月 失業率・ILO方式 (5月 4.0%、予想 4.0%)
18:00 (独) 8月 ZEW景況感 (7月 -14.7、予想 -14.7)
18:00 (欧) 8月 ZEW景況感 (7月 -12.2)

21:30 (米) 7月 小売売上高 前月比 (6月 0.2%、予想 0.4%)
21:30 (米) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 0.2%、予想 0.4%)
21:30 (米) 8月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (7月 1.1、予想 -1.0)
21:30 (米) 7月 輸入物価指数 前月比 (6月 -0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 輸出物価指数 前月比 (6月 -0.9%、予想 0.2%)
23:00 (米) 8月 NAHB住宅市場指数 (7月 56、予想 56)
23:00 (米) 6月 企業在庫 前月比 (5月 0.2%、予想 0.1%)
24:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演

8/16(水)
休場、インド
11:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 5.50%、予想 5.50%)
15:00 (英) 7月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (6月 0.1%、予想 -0.5%)
15:00 (英) 7月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (6月 7.9%、予想 6.8%)
15:00 (英) 7月 コアCPI 前年同月比 (6月 6.9%、予想 6.8%)
15:00 (英) 7月 RPI(小売物価指数) 前月比 (6月 0.3%、予想 -0.6%)
15:00 (英) 7月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (6月 10.7%、予想 9.0%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP・改定値 前期比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP・改定値 前年同期比 (速報 0.6%、予想 0.6%)
18:00 (欧) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 0.2%、予想 -0.1%)
18:00 (欧) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 -2.2%、予想 -4.2%)

21:30 (米) 7月 住宅着工件数・年率換算 (6月 143.4万件、予想 145.0万件)
21:30 (米) 7月 住宅着工件数 前月比 (6月 -8.0%、予想 1.1%)
21:30 (米) 7月 建設許可件数・年率換算 (6月 144.0万件、予想 147.0万件)
21:30 (米) 7月 建設許可件数 前月比 (6月 -3.7%、予想 2.0%)
22:15 (米) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 -0.5%、予想 0.3%)
22:15 (米) 7月 設備稼働率 (6月 78.9%、予想 79.1%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) FOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨


注:ポイント要約は編集部

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