『ドル円は米金利上昇と株高を材料に約半年ぶり高値圏へ急上昇』
〇今週のドル円、週後半にかけて138.75まで急伸、週末は小幅反落し137円台後半で越週
〇米指標の好調、金融信用不安の後退、債務上限問題の楽観が背景なるも、週末はやや楽観後退
〇ユーロドル、米金利上昇とドル全面高に一時1.0760まで下落、1.08台前半で越週
〇ドル円主要テクニカルポイント上抜け、強い買いシグナルも継続、テクニカルの地合い強い
〇ファンダメンタルズも日米金利差拡大観測、米債務問題進展期待がサポート
〇週末のイエレン財務長官の銀行のさらなる合併示唆発言の影響は一時的か
〇ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):136.00ー140.00、来週の予想レンジ(EURUSD):1.0625−1.0925
今週のレビュー(5/15−5/19)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初135.60で寄り付いた後、(1)前週末金曜日以降のドル買いの流れの継続(米5月ミシガン大消費者信頼感指数の内訳の期待インフレ率が市場予想を上回る結果)や、(2)米5月ニューヨーク連銀製造業景況指数の内訳の仕入価格(結果+34.9、前回+33.0)の前回比上昇、(3)アトランタ連銀ボスティック総裁による「2024年のかなりの期間まで、利下げを見込んでいない」「金利をさらに上昇させる必要性があるかもしれない」とのタカ派的な発言、(4)米4月鉱工業生産(結果+0.5%、予想±0.0%、※前月比)の力強い結果、(5)米5月NAHB住宅市場指数(結果50、予想45)の市場予想を上回る結果、(6)クリーブランド連銀メスター総裁による「労働市場は依然としてかなりタイト」「金利は十分に制限された水準にない」とのタカ派的な発言、
(7)リッチモンド連銀バーキン総裁による「インフレについてはまだ納得が得られない」「必要なら追加利上げの可能性」とのタカ派的な発言、(8)ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁による「経済は容認できないほどの高インフレに直面している」とのタカ派的な発言、(9)マッカーシー米下院議長による「最終的にデフォルトにはならない」「今週中の合意は実行可能」との楽観的な発言(債務上限問題の進展期待)、(10)米4月住宅着工件数(結果140.1万件、予想140.0万件)の市場予想を上回る結果、(11)200日線突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り、(12)米ウエスタン・アライアンス・バンコープの預金量増加発表(3月末から5/12までに20億ドル以上の預金量増加→米地銀を巡る金融システム不安後退)、(13)株式市場の力強い動き(リスク選好の円売り圧力)、(14)米5月フィラデルフィア連銀製造業景況指数(結果▲10.4、予想▲20.0、前月▲31.3)の市場予想を上回る結果、(15)米新規失業保険申請件数(結果24.2万件、予想25.2万件、前週26.4万件)の良好な結果、
(16)ダラス連銀ローガン総裁による「利上げ停止の論拠はまだ見当たらない」とのタカ派的な発言、(17)直近高値突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り、(18)セントルイス連銀ブラード総裁による「インフレに対する保険政策として利上げを続けることを支持」とのタカ派的な発言、(19)米金利上昇に伴うドル買い圧力が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値138.75(昨年11/30以来、約半年ぶり高値圏)まで急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(20)イエレン米財務長官による「さらに合併必要な可能性を銀行幹部らに伝えた」との悲観的な発言(米地銀を巡る金融システム不安再燃)や、(21)パウエルFRB議長による「信用不安を考慮すれば金利を十分に高く上昇する必要性はないかもしれない」とのハト派的な発言、(22)一部メディアによる「米債務上限交渉に障害。共和党の交渉担当者が退席」とのネガティブ報道(米債務上限問題を巡る警戒感の再燃)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間5/20午前1時15分現在)では、137.75前後まで反落する動きとなっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0856で寄り付いた後、(1)欧州株の堅調推移(リスク選好のユーロ買い圧力)や、(2)欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力、(3)米5月ニューヨーク連銀製造業景況指数のネガティブサプライズ(米金利低下→米ドル売り)が支援材料となり、翌5/16にかけて、週間高値1.0905まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(4)独5月ZEW景況感指数(結果▲10.7、予想▲5.3)の市場予想を下回る結果(2022年12月以来の低水準)や、(5)米経済指標(米4月鉱工業生産、5月NAHB住宅市場指数、米4月住宅着工件数、米5月フィラデルフィア連銀製造業景況指数、米新規失業保険申請件数)の力強い結果、(6)欧米金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い(米金利上昇に伴うドル買い圧力と、欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力)、
(7)マッカーシー米下院議長による「最終的にデフォルトにはならない」「今週中の合意は実行可能」との楽観的な発言(米債務上限問題を巡る警戒感の後退→米ドル買い)、(8)デギンドスECB副総裁による「利上げ局面は終わりに近づいている」とのハト派的な発言が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0760(3/27以来、約2ヵ月ぶり安値圏)まで下落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(9)パウエルFRB議長による「信用不安を考慮すれば金利を十分に高く上昇する必要はないかもしれない」とのハト派的な発言や、(10)一部メディアによる「米債務上限交渉に障害。共和党の交渉担当者が退席」とのネガティブ報道(米債務上限問題を巡る警戒感の再燃→米ドル売り)、
(11)ラガルドECB総裁による「政策金利は依然として持続的に高水準である必要がある」とのタカ派的な発言、(12)シュナーベルECB理事による「ECBは金利を十分に景気抑制的な水準にする」「必要である限り金利を引き締めの水準で維持」とのタカ派的な発言が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間5/20午前1時15分現在)では、1.0820前後まで持ち直す動きとなっております。
来週の見通し(5/22−5/26)
ドル円は3/24に記録した安値129.65をボトムに反発に転じると、今週後半にかけて、約半年ぶり高値となる138.76(昨年11/30以来の高値圏)まで急伸しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線、基準線、雲下限、雲上限、21日移動平均線、90日移動平均線、200日移動平均線、3/8高値137.92、5/2高値137.78)を軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる次回FOMCでの追加利上げ観測の高まり(CMEが提供するFedWatchツールによると、次回6/14FOMCでの25bp利上げの織り込み度合は30%前後まで急上昇)や、(2)日銀による金融緩和の長期化観測(植田総裁は5/19に「現在はしっかりと金融緩和を続けていくことが必要」「拙速な政策転換により、2%達成の芽を摘んでしまう場合のコストが極めて大きい」「出口に向けた金融緩和の修正は時間をかけて判断していくことが適当」と慎重な発言)、(3)上記1、2を背景とした日米金利差拡大とそれに伴う円キャリートレード再開期待、(4)米債務上限問題の進展期待(バイデン米大統領とマッカーシー米下院議長は共に楽観的な見方)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。
週末にイエレン米財務長官が「銀行幹部らにさらに合併が必要な可能性を伝えた」と発言したことで、米地銀を巡る金融システム不安が再燃(米地銀株反落→リスク回避の円買い→ドル円反落)しておりますが、これまでの流れと同様、金融システム不安ネタに対する市場の反応は一時的なものに留まると推察されます。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想いたします(次のターゲットは昨年11/21に記録した高値142.27を想定)。尚、来週は米債務上限問題を巡る続報や、米当局者発言(セントルイス連銀ブラード総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁、リッチモンド連銀バーキン総裁、ダラス連銀ローガン総裁)、米経済指標(米5月PMI速報値、米4月新築住宅販売件数、米FOMC議事要旨、米1ー3月期GDP改定値、米4月個人所得・支出、米4月製造業受注、米5月ミシガン大消費者信頼感指数)、本邦経済指標(5月東京都区部CPI)に注目が集まります(特に米債務上限問題に関するヘッドラインは二転三転する可能性があるため要注意)。
来週の予想レンジ(USDJPY):136.00ー140.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は計3度に亘る1.1100トライ(4/14高値1.1077、4/26高値1.1096、5/4高値1.1092)の失敗を経て、今週末にかけて、約2ヵ月ぶり安値1.0760まで急落しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線、基準線、21日移動平均線、90日移動平均線、ボリンジャーミッドバンド、雲上下限)を軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「弱気のバンドウォーク」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を印象付けるチャーチ形状となりつつあります。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる年内利上げ観測の高まりや、(2)ECBによる金融引き締め打ち止め観測の台頭(複数のECB当局者より利上げサイクルが最終局面に入っていることを示唆する発言あり)、(3)上記1、2を背景とした欧米金利差拡大観測、(4)欧州経済の先行き不透明感(今週発表された独5月ZEW景況感指数は2022年12月以来の低水準)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は欧州経済指標(ユーロ圏5月消費者信頼感指数、ユーロ圏5月PMI速報値、ドイツ5月IFO企業景況感)や、欧州当局者発言(デギンドスECB副総裁、レーンECB専務理事、フランス中銀ビルロワドガロー総裁、ドイツ連銀ナーゲル総裁、スペイン中銀デコス総裁)に注目が集まります(特にユーロ圏5月PMI速報値やドイツ5月IFO企業警戒感が市場予想を下回る場合には、ECBによる金融引き締め打ち止め観測→欧州債利回り低下→ユーロ売りの経路でユーロドルにもう一段強い下押し圧力が加わる恐れがあるため要注意)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0625−1.0925
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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