来週の為替相場見通し:『ドル円相場は大幅下落。世界的な金融不安と米FOMCが来週の焦点』(3/18朝)

ドル円は3/8に記録した年初来高値137.90をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、約1ヵ月ぶり安値となる131.74まで急落しました。

来週の為替相場見通し:『ドル円相場は大幅下落。世界的な金融不安と米FOMCが来週の焦点』(3/18朝)

『ドル円相場は大幅下落。世界的な金融不安と米FOMCが来週の焦点』

〇今週のドル円、米銀の相次ぐ破綻に週初132.28まで急落
〇売り一巡後は米CPIコアの予想以上の結果と米長期金利上昇に週央135.13まで反発
〇その後はクレディ・スイスの信用不安等に週末にかけ131円台に急落
〇ドル円、主要テクニカルポイント下抜けテクニカルの地合い悪化
〇ファンダメンタルズも、信用不安拡大への警戒感や、米FRBによる金融引き締め休止観測が重石
〇来週は3/21ー22の米FOMCに注目
〇市場では米銀連鎖破綻の主因がFRBによる急ピッチな利上げとの見方広がり、利上げ停止も
〇週央以降のドル円はダウンサイドリスクに注意が必要
〇来週の予想レンジ(USDJPY):129.50ー134.50、(EURUSD):1.0450−1.0850

今週のレビュー(3/13−3/17)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初134.98で寄り付いた後、(1)米シルバーゲート銀行による3/8付の事業清算発表や、(2)米シリコンバレー銀行による3/10付の経営破綻、(3)米シグネチャーバンクによる3/12付の事業停止発表、(4)上記1、2、3を背景としたシステミックリスク拡大への警戒感(米ファースト・リパブリック・バンクの株価大暴落)、(5)伝統的金融市場のリスク回避ムード、(6)米金利低下に伴うドル売り圧力が重石となり、週明け早々に、一時132.28まで急落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(7)急ピッチな下落に対する自律反発や、(8)円金利低下に伴う円売り圧力(本邦10年債利回りが昨年8月以来の低水準となる0.17%へ急低下)、(9)米2月消費者物価コア指数(結果+0.5%、予想+0.4%、※前月比)の市場予想を上回る結果、(10)米金利上昇に伴うドル買い圧力、(11)黒田総裁による「現在の金融緩和を続ける必要がある」とのハト派発言が支援材料となり、週央にかけて、週間高値135.13まで反発しました。

もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(12)クレディスイスの筆頭株主であるSNB(サウジナショナルバンク)が同社への追加支援の可能性を否定したこと(クレディスイスの信用不安拡大)や、(13)伝統的金融市場のリスクオフ再開、(14)米金利低下に伴うドル売り圧力、(15)米2月生産者物価指数(結果+4.6%、予想+5.4%)および、米2月生産者物価コア指数(結果+4.4%、予想+5.2%)の伸び率鈍化、(16)米2月小売売上高(結果▲0.4%、予想▲0.3%)の市場予想を下回る結果、(17)米3月ニューヨーク連銀製造業景気指数(結果▲24.6、予想▲8.0)の冴えない結果、(18)米3月フィラデルフィア連銀製造業景況指数(結果▲23.2、予想▲15.0)の急低下が重石となり、週後半にかけて、週間安値131.74(2/14以来の安値圏)まで急落しました。週末にかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間3/18午前3時00分時点)では、132.07前後で推移しております。(編集部注:終盤にかけ131.56まで下値拡大、131.85レベルで越週)

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0647で寄り付いた後、週央にかけて、週間高値1.0761まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(1)クレディスイスの筆頭株主であるSNB(サウジナショナルバンク)が同社への追加支援を否定したこと(クレディスイスの信用不安拡大)や、(2)上記1を背景とした欧州株の大幅下落(ドイツDAXは1/10以来の安値圏へと大幅下落)、(3)欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力が重石となり、3/15米国時間にかけて、週間安値1.0516(1/6以来の安値圏)まで急落しました。

もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(4)急ピッチな下落に対する自律反発や、(5)クレディスイスによる「スイス中銀より最大500億スイス・フラン(約7兆1500億円)を借り入れる」との方針発表、(6)上記5を背景とした同行信用不安の一時的な後退、(7)ECB理事会での50bp利上げ断行、(7)米経済指標の冴えない結果、(8)米金利低下に伴うドル売り圧力が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間3/18午前3時00分時点)では、1.0671前後まで持ち直す動きとなっております。

来週の見通し(3/20−3/24)

<ドル円相場>
ドル円は3/8に記録した年初来高値137.90(昨年12/15以来、約3ヵ月ぶり高値圏)をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、約1ヵ月ぶり安値となる131.74まで急落しました。この間、主要テクニカルポイントを軒並み下抜けした他、4時間足などの下位足で強い売りシグナルを示唆する三役逆転が成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を印象付けるチャート形状となりつつあります。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)世界的なシステミックリスク拡大への警戒感(米シルバーゲート銀行→米シリコンバレー銀行→米シグネチャーバンク→クレディスイス危機)や、(2)上記1を背景とした米FRBによる金融引き締め休止観測(一時的にインフレより米景気を重視するのではないかとの思惑)、(3)上記2を背景とした日米金利差縮小観測など、ドル円相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。

こうした中、来週は3/21ー3/22の日程で開催される米FOMCに注目が集まります。1週間前までは米FOMCでの50bp利上げがメインシナリオとなっていましたが、欧米金融機関のシステミックリスク拡大の影響もあって、現在は25bp利上げの織り込み度合が70.1%、据え置きの織り込み度合が29.9%となっています。市場では米地銀の連鎖破綻の主因が米FRBによる急ピッチな利上げ(舵取りの失敗)との見方が広がっているため、当方は来週の米FOMCでの「利上げ見送り(据え置き)」をメインシナリオとして予想しております。また、ドットチャートの金利見通しについても、前回12月と同水準or若干の下方修正を見ていることから、来週のドル円相場は、週央以降のダウンサイドリスクに注意が必要でしょう。尚、来週も今週同様、伝統的金融市場の流動性低下(投資家のリスク許容度が低下)が見込まれるため、株・債券・為替・コモディティ共にボラタイルな相場環境が続きそうです。

来週の予想レンジ(USDJPY):129.50ー134.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/2に記録した約10ヵ月ぶり高値1.1034をトップに反落に転じると、今週半ばにかけて、約2ヵ月ぶり安値となる1.0516(本年1/6以来の安値圏)まで急落しました。週末にかけて持ち直すも戻りは鈍く、現在は1.06台後半での推移が続いております。日足ローソク足が主要テクニカルポイントを下抜けしたことや、21日移動平均線と90日移動平均線のデッドクロスが実現したこと等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます(4時間足ベースでは強い売りシグナルを示唆する三役逆転が点灯済み)。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)世界的なシステミックリスクの拡大懸念(米地銀の連続破綻に続いて、金融大手クレディスイス社の信用不安が浮上→スイス中銀からの最大500億スイス・フラン(約7兆1500億円)の借り入れが発表されるも反応は限定的)や、(2)上記1を背景とした伝統的金融市場のリスク回避ムード(世界的な長期金利低下・株安の流れ)、(3)ECBによるフォワードガイダンス削除(ECBは事前予告通り50bpの利上げを断行するも、声明文の中から次回利上げについてのガイダンス項目を削除→ECBによる金融引き締め休止観測が浮上→欧州債利回りに低下圧力)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。

来週はブラックアウト期間明けの欧州当局者(ラガルドECB総裁、フランス中銀ビルロワドガロー総裁、レーンECB専務理事、フィンランド中銀レーン総裁、ベルギー中銀ウンシュ総裁、パネッタECB専務理事、ドイツ連銀ナーゲル総裁、ギリシャ中銀ストゥルナラス総裁、オーストリア中銀ホルツマン総裁、スペイン中銀デコス総裁など)よりハト派的(慎重)な発言が相次ぐ可能性が高いことから、当方では、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は欧州当局者発言以外に、ドイツ3月ZEW景況感調査や、ユーロ圏3月消費者信頼感指数、ユーロ圏3月製造業PMI速報値、ユーロ圏3月サービス業PMI速報値などに注目が集まりそうです。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0450−1.0850

注:ポイント要約は編集部

『ドル円相場は大幅下落。世界的な金融不安と米FOMCが来週の焦点』

ドル円日足

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