ドル円見通し 米銀破綻報道と米長期債利回りの大幅低下続き、一時132円台へ下落
〇ドル円、13日夜は米長期債利回りの大幅低下と為替市場のドル安により132.27まで一段安
〇米銀連鎖破綻への不安感から金融株が売られ、NYダウは前日比90.50ドル安と5営業日続落
〇株売り債券買いにより米長期債利回り連日の大幅低下、米2年債利回り前日比で0.57%安の歴史的急低下
〇米2月CPIが予想を超える上昇率でも、0.25%利上げに留まるか利上げ見送り現状維持とする可能性も
〇133.61以下で推移中は一段安余地あり、132.27割れからは131円前後への下落を想定
〇133.61超えからは134円前後への上昇を想定。暫くは波乱が続くと注意
【概況】
ドル円は3月10日の米2月雇用統計で就業者数が予想以上に増加したものの予想外に失業率が悪化して平均時給の伸びも予想を下回ったことと米銀の破綻報道によりFRBの大幅利上げの可能性が大きく後退したと受け止められて米長期債利回りが急低下してドル全面安となる中、直前高値136.99円から10日深夜安値134.10円へ3円近い急落となり、134円台後半までやや戻して先週を終えていた。
しかし3月13日朝には先週のシルバーゲート銀(暗号資産関連企業への融資)、シリコンバレー銀(ITベンチャーへの融資等を行う中堅銀行)の破綻に続くNY州の地銀シグネチャー銀の破綻報道が飛び込んだために早朝には133.52円へ一段安、いったん134.99円まで戻したところから失速し、13日夜は米長期債利回りがさらに大幅低下したことと為替市場のドル安により132.27円まで一段安となった。その後に133円台前半へ切り返したが、1月16日安値127.21円から3月8日高値137.91円までの上昇幅10.70円に対して3月13日夜安値時点での下げ幅は5.64円となり、年初からの上昇幅半値強を3日で解消した。
【NYダウは5営業日続落、米金融当局の投資家保護への初動対応でも不安消えず】
3月13日のNYダウは前日比90.50ドル安と下落した。3月7日に574.98ドル安と大幅下落したところから3月10日まで4営業日続落していたが、13日は一時300ドル近い下落や300ドル高近い上昇局面を見せながらも5営業日続落に終わっている。
米銀連鎖破綻への不安感から金融株が売られており、ダウ構成銘柄ではJPモルガンチェースが1.8%安、ゴールドマンサックスが3.7%安、アメックスが4.9%安と下げた。構成銘柄以外ではバンカメが5.8%安、ウェルズファーゴが7.1%安、シティグループが7.5%安、地銀のファーストリパブリックが61.8%安、ウェスタンアライアンスが47.1%安、ニューヨークコミュニティバンコープが13.2%安と破綻連鎖への不安が飛び火して大幅安となった。
バイデン米大統領は3月13日に緊急演説を行い銀行システムの安全性は確保されており預金者を保護するとし、「規制強化を議会や当局に求める」と表明したことで不安も多少は収まっているが、先行き不安の解消には至らない。
FRB(米連邦準備制度理事会)は3月13日に破綻した米中堅銀行シリコンバレーバンク(SVB)問題について監督と規制の在り方を点検すると発表した。3月7日と8日のパウエル米FRB議長の議会証言では銀行資産は危機対応に充分と述べていたばかりであり、当局の規制や指導にも批判が集まりやすいと思われる。
【米2年債利回りは前日比で0.57%安の歴史的急低下】
米銀破綻の連鎖不安からリスク回避的な動きが強まっており、株売り・債券買いにより米長期債利回りは連日の大幅低下が続いている。
長期金利指標の米10年債利回りは前日比0.16%低下の3.54%となった。一時は3.42%まで急低下してから戻しているが、3月9日の0.09%低下、3月10日の0.21%に続く大幅低下で2月の上昇分を解消した。
30年債利回りは0.02%低下の3.69%で落ち着いたが一時は3.53%まで急低下し、3月9日の0.05%低下、10日の0.14%低下から3営業日連続の低下となった。
米銀破綻拡大不安でFRBによる3月21-22日のFOMCでは刺激となる利上げが見送られる可能性もあるとして2年債利回りの低下は強烈で、3月8日に5.08%をつけて2007年以来の高水準に達した急伸に対する反動もあり、3月9日は0.21%低下、10日は0.28%低下となり、13日は0.57%低下の4.02%で2022年10月以来の低水準まで一挙に低下した。
3月14日夜には米2月CPI上昇率の発表があるが、仮に予想を超える上昇率でインフレ継続感が強まったとしても先週までの大幅利上げ予想にはならず、利上げするとしても0.25%利上げにとどまり、市場への刺激を考慮すれば利上げを見送って現状維持とする可能性もあると思われる。
一方で本邦の新発10年債(369回債)利回りは0.095%低下の0.295%と低下しており、0.50%の日銀許容変動幅上限を繰り返し超えていた状況から急激に下振れしており、日銀が許容上限引上げを行った昨年12月20日以来の低水準となった。しかしそれをはるかに超える米長期債利回り低下によりドル円の下げ足も一段と速まった印象だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は3月8日午後高値137.91円を起点とした下落が続いているが、3月10日の日銀金融政策決定会合における現状維持発表から戻した後に急落しているため、15日の日中から17日の日中にかけてはまだ安値試しを続けやすい時間帯と考える。市場全体が大乱調のため、134円を超える場合は3月13日夜安値を目先の底として14日の日中から15日の日中にかけての間への上昇を想定するが、134円以下での推移中は一段安警戒とする。
60分足の一目均衡表では3月9日夕刻に遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したが、その後の大幅続落により両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパン好転からはいったん戻りを試しに入るとみるが、先行スパンに届かないうちはその後に遅行スパンが悪化するところから下げ再開とする。
60分足の相対力指数は3月10日夜に30ポイントを割り込んだ後は40ポイント台前半までの戻りにとどまっているのでまだ一段安余地ありとみるが、50ポイント超えからはいったん戻しに入るとみて60ポイント前後への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月13日夜安値132.27円を下値支持線、14日未明高値133.61円を上値抵抗線とする。
(2)133.61円以下での推移中は一段安余地ありとし、132.27円割れからは131円前後への下落を想定する。131円以下は反騰注意とするが、安値から1円以上を戻せないうちは15日も安値試しが続きやすく、1円を超える一時的反騰でもその後に反騰幅の半値以上を解消する場合は下落継続と考える。
(3)133.61円超えからは134円前後への上昇を想定するが、134円台序盤では戻り売りも出やすいとみてその後に133円を割り込むところからは下げ再開とみる。
暫くは波乱が続くと注意したい。
【当面の主な予定】
3/14(火)
OPEC月報
16:00 (英) 1月 失業率・ILO方式 (12月 3.7%、予想 3.8%)
21:30 (米) 2月 消費者物価指数(CPI) 前月比 (1月 0.5%、予想 0.4%)
21:30 (米) 2月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (1月 6.4%、予想 6.0%)
21:30 (米) 2月 CPIコア指数 前月比 (1月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 2月 CPIコア指数 前年同月比 (1月 5.6%、予想 5.5%)
3/15(水)
06:45 (NZ) 10-12月期 経常収支 (7-9月 -102.05億NZドル、予想 -76.75億NZドル)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨(1月17-18日開催分)
11:00 (中) 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 -1.8%)
11:00 (中) 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 1.3%)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -1.1%、予想 0.4%)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -1.7%、予想 0.3%)
21:30 (米) 3月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (2月 -5.8、予想 -8.0)
21:30 (米) 2月 小売売上高 前月比 (1月 3.0%、予想 -0.3%)
21:30 (米) 2月 小売売上高・除自動車 前月比 (1月 2.3%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 2月 生産者物価指数(PPI) 前月比 (1月 0.7%、予想 0.3%)
21:30 (米) 2月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (1月 6.0%、予想 5.4%)
21:30 (米) 2月 PPIコア指数 前月比 (1月 0.5%、予想 0.4%)
21:30 (米) 2月 PPIコア指数 前年同月比 (1月 5.4%、予想 5.2%)
23:00 (米) 1月 企業在庫 前月比 (12月 0.3%、予想 0.0%)
23:00 (米) 3月 NAHB住宅市場指数 (2月 42、予想 41)
23:30 EIA週間石油在庫統計
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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