ドル円見通し 米雇用統計の就業者大幅増とISM非製造業景況指数改善で3円近い急伸に(週報2月第一週)

ドル円は米雇用統計から急伸し、ISM非製造業景況指数がブースターとなってさらに急伸した。

ドル円見通し 米雇用統計の就業者大幅増とISM非製造業景況指数改善で3円近い急伸に(週報2月第一週)

米雇用統計の就業者大幅増とISM非製造業景況指数改善で3円近い急伸に

〇ドル円、3日夜の米雇用統計、ISM非製造業景況指数の好調に131円台へ続伸
〇(編集部注:更に6日日経朝刊の「日銀総裁を雨宮氏に打診」報道等に6日朝は132円台回復)
〇米雇用統計はNFPが予想の倍以上、平均時給の伸びも高止まり、1月ISM非製造業指数も大幅改善
〇ドル円、ボックス型持ち合い上放れ、下落基調がいったん落ち着いて大きめの修正高局面に入る可能性も
〇131.57超えから132円台前半を目指す上昇へ進む可能性があるとみるが、132円以上は反落注意
〇130円割れからは週末の急騰に対する反動安に入るとみて129円台前半への下落を想定

【概況】

ドル円は2月2日早朝の米FOMCに先駆けたドル安により130円台序盤から129円台序盤へ下落し、FOMC通過後にドル安が加速したことで2月2日午前には128.14円へ下落した。英中銀とECBによる利上げ決定後に当面するドル売り材料イベントを通過したとしてユーロやポンドが急落する中、2日夜にはクロス円の円高と欧米長期債利回り低下を受けて128.07円まで安値を切り下げた。

2月3日の日中はユーロやポンドが続落したものの128円台での持ち合いにとどまっていたが、3日夜の米雇用統計における非農業部門就業者数が予想の倍を超える急増となり、ドル高が勢い付いたために130円到達へ急伸し、さらに1月のISM非製造業景況指数が予想を大幅に上回る改善となったことで131円台到達へ続伸した。
2月3日夜安値128.32円から2月4日未明高値131.21円まで3円近い急伸だったが、短時間での急伸としては1月18日の日銀金融政策現状維持決定直後に直前安値128.38円から1月18日午後高値131.57円まで3円を超える急伸となったところに匹敵する勢いだった。4日早朝も高止まりの様相で週を終えているため、週明けは高値試しで開始しやすいと思われるが、FOMC後のドル安を解消して倍返しのドル高となっているため、やや過剰反応として修正も入りやすいのではないかと注意したい。

【1月米雇用統計、就業者数は予想の倍、平均時給伸び率も高止まり】

2月3日夜に米労働省が発表した1月雇用統計では、失業率が12月の3.5%から3.4%へ低下して市場予想の3.6%への悪化に反する改善となり、1969年5月以来53年8か月振りの低水準となった。非農業部門就業者数は前月比51万70000人増となり、市場予想の18万5000人増を倍以上、上回った。12月分も当初の22.3万人増から26.0万人増へ上方修正され、労働市場の力強さが示された。
インフレ指標となる平均時給伸び率は前月比で0.3%上昇となり、市場予想と一致したが12月の0.4%上昇(当初の0.3%上昇から上方修正)を下回った。前年同月比は4.4%上昇で12月の4.8%上昇(当初の4.6%上昇から上方修正)を下回ったものの市場予想の4.3%を上回った。平均時給はまだ伸びており、前年同月比も高止まりの様相であり、就業者数の急増も踏まえると人手不足による賃金インフレ圧力が継続している印象を示した。

雇用統計後に発表された米サプライ管理協会(ISM)による1月非製造業景況指数は55.2となり、12月の49.2(速報の49.6から下方修正)から大幅に改善して市場予想の50.4も大幅に上回った。内訳では事業活動が前月比6.9ポイント上昇の60.4、新規受注が15.2ポイント上昇の60.4、雇用が0.6ポイント上昇の50.0となった。

2月1日に発表されたISM製造業景況指数は47.4で12月の48.4から低下して市場予想の48.0も下回っていたが、非製造業の大幅改善は雇用統計での就業者数大幅増と共に、米FRBによる利上げ状態の解除時期を先送りするものと市場は受け止め、ドル円は米雇用統計から急伸し、ISM非製造業景況指数がブースターとなってさらに急伸した。

米雇用統計が強い内容だったことを受けてサンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は、「あっと言わせる数字だったがトレンドは驚きではない」とし、「FRBは必要なら想定以上の利上げを行う用意がある」と述べた。2月2日早朝のFOMCでは0.25%利上げへ減速し、インフレの落ち着きと景気減速感を踏まえてパウエルFRB議長はあと2回の利上げを検討するとしたため、市場は早期の利上げ終了と利上げ状態の解除も速まるのではないかと受け止めて米長期債利回り低下・ドル全面安の反応を見せたが、雇用統計とISM非製造業景況指数の発表をきっかけにユーロやポンドはFOMC前の水準を大きく割り込み、ドル円もFOMC前の水準を大きく超えている。

【米10年債利回りは低下一服、ナスダック連騰、米経済指標はまちまち】

2月3日の米長期債利回りは総じて急伸した。指標の10年債利回りは前日比0.13%上昇の3.53%、30年債利回りは0.07%上昇の3.62%、2年債利回りは0.18%上昇の4.29%となり、いずれもFOMC直後の急低下を解消した。

一方でNYダウは127.93ドル安で前日の39.02ドル安から続落、ナスダック総合指数は193.86ポイント安で前日までの3連騰からの反落となった。金融引き締めによる景気減速についてはソフトランディングで落ち着くだろうという見方は健在だが、FRBによる利上げ状態の維持が前倒しされるとの楽観が後退して売られた印象だ。

【1月16日安値割れ回避、昨年10月からの大幅下落落ち着くか】

【1月16日安値割れ回避、昨年10月からの大幅下落落ち着くか】

ドル円は1月18日の日銀金融政策決定会合での現状維持による乱高下で1月18日午後に131.57円へ急伸してから18日夜に127.55円へ急落したが、昨年10月21日高値151.94円以降の最安値である1月16日昼安値127.21円割れを回避し、乱高下が収まった後は130円を中心として高値ラインが切り下がり安値ラインが切り上がるレンジ縮小型の三角持ち合いで推移してきた。
2月2日のFOMCを挟んでの下落により三角持ち合いの下値支持線を割り込んだが、2月2日夜安値128.07円で下げ止まり、2月4日未明には1月18日午後高値131.57円に迫る131.21円まで急伸したため、レンジ縮小型の三角持ち合いからボックス型持ち合いへと様相を変えた。1月16日安値に対して2月2日安値が押し目底となり、1月18日高値を上抜いてさらに高値を伸ばし始めればボックス型持ち合い上放れとなり、昨年10月21日高値からの下落基調がいったん落ち着いて大きめの修正高局面に入る可能性も出てくるところだ。

米FRBの利上げペース減速と利上げ状態維持期間の短縮期待に対して日銀の異次元金融緩和政策が出口へ向かう流れとなったことがこれまでのドル円の下落背景だったが、米FRBの利上げペースは減速したとしても利上げ状態が長引く可能性が浮上したことと、日銀も黒田総裁在任中の追加政策修正はなさそうだとの見方が優勢となってきたことで、ドル円の下落基調にもブレーキがかかった印象だが、既にFRBによる利上げペース水準が見通せる状況にある中で日銀の出口戦略へ向けた流れは変わらないとすれば、ドル円の上昇も限定的なものとなり、昨年10月21日天井からの下落基調の範囲内での中間反騰のレベルで収まるのではないかと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、130.00円を下値支持線、1月18日高値131.57円を上値抵抗線とする。
(2)130円以上での推移中は131.57円超えから132円台前半を目指す上昇へ進む可能性があるとみるが、132円以上は反落注意とする。
(3)130円割れからは週末の急騰に対する反動安に入るとみて129円台前半への下落を想定する。129.50円以上を維持して130円台回復へ切り返す場合は2月2日夜安値を起点とした上昇の継続とするが、129.50円以下での推移が続き始める場合は円高再開とみて128円台へ向かう流れと考える。

【当面の主な予定】

2/6(月)
休場、ニュージーランド、メキシコ、マレーシア
16:00 (独) 12月 製造業新規受注 前月比 (11月 -5.3%、予想 2.0%)
16:00 (独) 12月 製造業新規受注 前年同月比 (11月 -11.0%、予想 -11.6%)
17:40 (英) マン英中銀委員、講演
19:00 (欧) 12月 小売売上高 前月比 (11月 0.8%、予想 -2.5%)
19:00 (欧) 12月 小売売上高 前年同月比 (11月 -2.8%、予想 -2.7%)
20:00 (世) OECD主要国1月景気先行指数
26:00 (英) ピル英中銀理事、講演

2/7(火)
バイデン米大統領、一般教書演説
08:30 (日) 12月 全世帯消費支出 前年同月比 (11月 -1.2%、予想 -0.4%)
08:50 (日) 10-12月為替介入実績
09:30 (豪) 12月 貿易収支 (11月 132.01億豪ドル、予想 122.00億豪ドル)
12:30 (豪) 豪中銀 政策金利 (現行 3.10%、予想 3.35%)
14:00 (日) 12月 景気先行指数CI・速報値 (11月 97.4、予想 97.0)
14:00 (日) 12月 景気一致指数CI・速報値 (11月 99.3、予想 98.9)
16:00 (独) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 0.2%、予想 -0.8%)
16:00 (独) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 -0.4%、予想 -1.7%)
18:00 (英) ラムスデン英中銀副総裁、講演
19:15 (英) ピル英中銀理事、講演
22:30 (米) 12月 貿易収支 (11月 -615億ドル、予想 -685億ドル)
26:00 (米) パウエルFRB議長、ワシントン経済クラブでインタビュー
26:00 (欧) シュナーベルECB理事、講演
27:00 (米) 財務省3年債入札
28:00 (米) バーFRB副議長、講演
29:00 (米) 12月 消費者信用残高 前月比 (11月 279.6億ドル、予想 250.0億ドル)

2/8(水)
08:50 (日) 12月 経常収支・季調前 (11月 1兆8036億円、予想 1060億円)
08:50 (日) 12月 経常収支・季調済 (11月 1兆9185億円、予想 1兆2493億円)
08:50 (日) 12月 貿易収支・国際収支ベース (11月 -1兆5378億円、予想 -1兆1158億円)
14:00 (日) 1月 景気ウオッチャー現状判断 (12月 47.9、予想 48.3)
14:00 (日) 1月 景気ウオッチャー先行判断 (12月 47.0、予想 47.8)
23:20 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、WSJイベント参加
23:30 (米) クックFRB理事、討論会参加
24:00 (米) 12月 卸売売上高 前月比 (11月 -0.6%、予想 -0.2)
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
24:00 (米) バーFRB副議長、ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加
26:30 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省10年債入札
27:45 (米) ウォラーFRB理事、講演

2/9(木)
EU首脳会議特別会合(2/10まで)
08:50 (日) 1月 マネーストックM2 前年同月比 (12月 2.9%)
18:45 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、議会証言
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 18.3万件、予想 19.3万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 165.5万人、予想 165.5万人)
27:00 (米) 財務省30年債入札

2/10(金)
08:50 (日) 1月 国内企業物価指数 前月比 (12月 0.5%、予想 0.4%)
08:50 (日) 1月 国内企業物価指数 前年同月比 (12月 10.2%、予想 9.7%)
09:30 (豪) 豪中銀、四半期金融政策報告
10:30 (中) 1月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (12月 1.8%、予想 2.2%)
10:30 (中) 1月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (12月 -0.7%、予想 -0.5%)
16:00 (英) 10-12月期 GDP・速報値 前期比 (7-9月 -0.3%、予想 0.0%)
16:00 (英) 10-12月期 GDP・速報値 前年同期比 (7-9月 1.9%、予想 0.4%)
16:00 (英) 12月 月次GDP 前月比 (11月 0.1%、予想 -0.3%)
16:00 (英) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 -0.2%、予想 -0.2%)
16:00 (英) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 -5.1%、予想 -5.2%)
16:00 (英) 12月 貿易収支・物品 (11月 -156.23億ポンド、予想 -173.00億ポンド)
16:00 (英) 12月 貿易収支・全体 (11月 -18.02億ポンド、予想 -28.00億ポンド)

23:00 (英) ピル英中銀理事、講演
24:00 (米) 2月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (1月 64.9、予想 65.0)
26:30 (米) FRBウォラー理事、暗号資産関連講演
28:00 (米) 1月 月次財政収支 (12月 -850億ドル)
30:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、暗号資産関連講演


注:ポイント要約は編集部

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