ドル円見通し 130円を挟んだ揉み合いでFOMCへ向かう
〇ドル円は、130円を中心値としたレンジ縮小型の三角持ち合いで推移
〇2月2日未明FOMCをきっかけとして持ち合い放れへ進むと思われる
〇米経済指標は弱め、利上げペース減速感が強まりドル安反応を招く
〇129.70を下値支持線、130.65を上値抵抗線とする
〇130円以上で推移中は上昇余地あり、131.50以上は反落注意とし急伸商状に入ると132円台目指す上昇
〇129円割れへ急落の場合は128円前後が当面の下値目途、1/16安値127.21円割れを目指す下落期入りも
【概況】
ドル円は1月30日の令和臨調による政府・日銀共同声明の見直し提言をきっかけとして30日午後に129.18円へ下げたものの1月26日安値129.01円割れを回避、31日未明には130.59円まで戻したものの27日未明高値130.61円には届かず、31日夜の米経済指標が冴えなかったことによるドル安局面で129.73円まで反落したところを買われて130円台へ戻すなど、130円を中心に129円台序盤から130円台中盤までのレンジで揉み合いとなっている。
1月18日の日銀金融政策決定会合での現状維持をきっかけとした乱高下が落ち着いたが、その後は1月18日の高安レンジ内で日々のレンジを縮小する三角持ち合いの様相で、2月2日未明のFOMCをきっかけとして持ち合い放れへ進むものと思われる。
【米経済指標は弱め、利上げペース減速感が強まる】
1月31日夜の米経済指標は総じて冴えない内容で米FRBの利上げペース減速感を強めてドル安反応を招いた。
米労働省による2022年10〜12月期の雇用コスト指数(ECI)は155.5となり、前期比1.0%上昇で7-9月期の1.2%上昇から減速して市場予想の1.1%を下回った。前年同期比は5.1%上昇で7-9月期の5.0%を上回ったが、賃金・給与の前期比が1.0%上昇で7-9月期の1.3%から減速して前年同期比も5.1%上昇で7-9月期と変わらなかったために賃金インフレ高進への懸念を後退させた。
米連邦住宅金融局(FHFA)による2022年11月の住宅価格指数は前年同月比8.2%上昇2020年7月以来の低水準となり、前月比は0.1%低下した。FRBの利上げに合わせて住宅ローン金利が上昇していることで需要が抑制されている事を反映したと思われる。S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数(主要20都市)も前年同月比6.8%上昇で10月の8.6%上昇から大幅に減速し、前月比は0.8%低下だった。
MNIインディケーターズによる1月のシカゴ購買部景況指数は44.3となり、12月の44.9から低下して市場予想の45.0を下回ったが、5か月連続で50を下回っている。
米コンファレンス・ボードによる1月消費者信頼感指数は107.1となり、12月の109.0から低下して市場予想の109.0を下回った。現況指数は12月の147.4から150.9へ改善したが、期待指数は12月の83.4から77.8へ悪化した。
【FOMCでは0.25%利上げへの減速見通し】
2月2日午前4時に米連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)声明発表とその後にパウエル議長の会見がある。FOMCでは昨年3月に0.25%利上げ、5月に0.50%利上げ、その後の4会合連続で0.75%利上げを決定してきたが、金融引き締めによる景気減速懸念とインフレの落ち着きにより12月の前回会合では0.50%利上げへとペースダウンした。
1月に入ってからの米経済指標は労働需給のひっ迫感が続いているものの景気の減速感が顕著となっており、FRB高官や地区連銀総裁らによる発言も利上げを継続しつつも景気に配慮する姿勢や、ペースダウンしたうえであと数回の利上げにより利上げのピークに達し、年内を利上げ状態の維持とするものが主流となってきており、為替市場は昨年秋からのドル安基調を継続している。しかしインフレ率は鈍化しているものの依然として高水準にあるため、FOMC声明や議長会見においてさほど利上げペースが落ちずに利上げのピーク水準=ターミナルレートが5%を超える可能性が高まるようだとドル高反応を招く可能性もある。
FRBが利上げサイクルの終了期へ向かう一方で日銀は異次元金融緩和からの出口へと向かい始めており、日米金融政策のズレが今後のドル円の方向性を決めてゆくことになるのだろうと思われるが、FOMCを通過してドル全面安となる場合は1月16日安値を割り込んでゆく可能性も高まるのではないかと思われる。
【米10年債利回りは低下、ダウは反発】
1月31日の米長期債利回りは米経済指標が冴えなかったとして総じて低下した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.03%低下の3.51%、30年債利回りは0.02%低下の3.64%、2年債利回りは0.04%低下の4.20%となった。
10年債利回りは1月19日に3.32%をつけて10月21日の4.34%以降の最低としたところから下げ一服でやや戻してきたが、3.60%手前では上値が抑えらえている。2年債利回りも1月19日に4.04%まで低下して11月4日につけたピークの4.88%以降の最低としたところから下げ渋りだが4.27%手前では上値が重くなっている。
一方でNYダウは前日比368.95ドル高と上昇、ナスダック総合指数も190.74ポイント高と上昇した。NYダウは1月20日から1月27日までの6連騰が途切れて1月30日に260.99ドル安と反落したものの反落幅を解消しており、FOMCへ向けては利上げペース減速によるソフトランディング期待でやや楽観的な強気姿勢で推移している。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は1月18日の乱高下が落ち着いた後は戻り高値を徐々に切り下げているが、1月16日の年初来安値以降の安値ラインも切り上がっており、130円を中心値としたレンジ縮小型の三角持ち合いで推移している。FOMC前段階では持ち合いレンジ内で推移しやすいとみるが、129円割れからは持ち合い下放れとして1月16日安値127.21円を目指す下落期入りとし、131円台に乗せて維持する反騰となる場合は持ち合い上放れへ進み、1月18日高値131.57円超えからは132円台回復を目指す上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では130円を中心とした持ち合いのため方向感に欠けるが、先行スパンを上回るうちは遅行スパン好転中の高値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は持ち合い推移のため、50ポイントを挟んで30ポイント台後半から60ポイント台中盤までの範囲で騰落している。55ポイント以上での推移中は上向きとし、65ポイント超えからは上昇が勢い付くとみて70ポイント台中盤への上昇を想定するが、45ポイント以下での推移中は下向きとし、35ポイント割れからは10ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、129.70円を下値支持線、130.65円を上値抵抗線とする。
(2)130円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、130.65円超えからは1月24日深夜高値131.11円、1月18日高値131.57円を順次試す上昇を想定する。131.50円以上は反落注意とするが急伸商状に入る場合は132円台を目指す上昇期と考える。
(3)129.70円割れからは129円台序盤(129.20円から129.00)への下落を想定する。129円台序盤は押し目買いされやすいとみるが、129円割れへ急落する場合は128円前後へ当面の下値目途を引き下げ、先行きは1月16日安値127.21円割れを目指す下落期入りと考える。
【当面の主な予定】
2/1(水)
英中銀金融政策委員会(MPC)初日
10:45 (中) 1月 財新製造業PMI (12月 49.0、予想 49.5)
17:55 (独) 1月 製造業PMI改定値 (速報 47.0、予想 47.0)
18:00 (欧) 1月 製造業PMI改定値 (速報 48.8、予想 48.8)
18:30 (英) 1月 製造業PMI改定値 (速報 46.7、予想 46.7)
19:00 (欧) 1月 消費者物価指数(HICP)・速報値 前年同月比 (12月 9.2%、予想 9.0%)
19:00 (欧) 1月 消費者物価指数(HICP)コア指数・速報値 前年同月比 (12月 5.2%、予想 5.1%)
19:00 (欧) 12月 失業率 (11月 6.5%、予想 6.5%)
22:15 (米) 1月 ADP非農業部門就業者数 前月比 (12月 23.5万人、予想 17.0万人)
23:45 (米) 1月 製造業PMI改定値 (速報 46.8、予想 46.8)
24:00 (米) 1月 ISM製造業景況指数 (12月 48.4、予想 48.0)
24:00 (米) 12月 建設支出 前月比 (11月 0.2%、予想 0.0%)
24:00 (米) 12月 雇用動態調査(JOLT)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC) 政策金利 (現行 4.25-4.50%、予想 4.50-4.75%)
28:30 (米) パウエルFRB議長、記者会見
2/2(木)
06:45 (NZ) 12月 住宅建設許可件数 前月比 (11月 7.0%)
08:50 (日) 1月 マネタリーベース 前年同月比 (12月 -6.1%)
09:30 (豪) 12月 住宅建設許可件数 前月比 (11月 -9.0%、予想 1.0%)
13:00 (日) 東京国際金融機構フォーラム、中曽前日銀副総裁、木原官房副長官、清水日銀理事)
16:00 (独) 12月 貿易収支 (11月 108億ユーロ、予想 80億ユーロ)
21:00 (英) 英中銀(BOE) 政策金利 (現行 3.50%、予想 4.00%)
22:15 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 2.50%、予想 3.00%)
22:30 (米) 10-12月期 非農業部門労働生産性・速報値 前期比 (7-9月 0.8%、予想 2.5%)
22:30 (米) 10-12月期 単位労働コスト・速報値 前期比年率 (7-9月 2.4%、予想 1.5%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 18.6万件、予想 20.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 167.5万人、予想 167.8万人)
22:45 (欧) ラガルドECB総裁、記者会見
24:00 (米) 12月 製造業新規受注 前月比 (11月 -1.8%、予想 2.4%)
27:30 (欧) ラガルドECB総裁、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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