来週の為替相場見通し:『日米金融政策が市場の焦点。来週はドル売りトレンド再開を想定』(1/7朝)

ドル円はショートカバー主導で持ち直し、週末にかけて一時134.76まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『日米金融政策が市場の焦点。来週はドル売りトレンド再開を想定』(1/7朝)

『日米金融政策が市場の焦点。来週はドル売りトレンド再開を想定』

〇今週のドル円、1/3に129.51まで急落、米長期金利低下、日銀政策再修正観測等が背景
〇その後は、FRB高官の相次ぐタカ派発言、米指標の好調等に週末にかけ134.76まで急反発
〇週末は米雇用統計の平均時給の伸び率鈍化で米長期金利低下、ドル円も132円台前半に下落
〇ユーロドル週明け早々に高値1.0708をつけた後は欧州物価指数の鈍化等に1.0484まで急落
〇週末は米雇用統計発表後の米金利低下受け、1.06台前半を回復
〇ドル円、テクニカルの地合い弱く、ファンダメンタルズもドル円下落材料揃う
〇ドル売り・円買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週は1/12発表の米12月消費者物価指数に注目
〇来週の予想レンジ(USDJPY):129.75ー133.75、(EURUSD):1.0500−1.0800

今週のレビュー(1/2−1/6)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初131.13で寄り付いた後、(1)米金利低下に伴うドル売り圧力や、(2)日銀による金融緩和の修正観測(日本経済新聞社が昨年12/31に報じた「日銀が1/17ー1/18の会合で物価見通しを上方修正すると共に政策修正に動く可能性がある」との観測報道)、(3)上記1、2を背景とした日米名目金利差縮小観測(円キャリートレード逆流の思惑→ドル円・クロス円急落)、(4)中国の新型コロナウイルス再拡大懸念(ゼロコロナ政策緩和の影響で年末から年始にかけて中国国内の感染者が急増)、(5)昨年8/2に記録した直近安値130.40の下方ブレイク(ロング勢の大規模ロスカット)が重石となり、翌1/3にかけて、週間安値129.51(昨年6/2以来、約7カ月ぶり安値圏)まで急落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(6)短期間で下落した反動(自律反発→俄かショートのロスカット誘発)や、(7)ミネアポリス連銀カシュカリ総裁による「FRBは目標金利を維持すべきで金利水準は5.4%になることを見込む」とのタカ派的な発言、(8)米11月JOLT雇用動態調査(結果1045.8万件、予想1005.0万件)の市場予想を上回る結果、(9)ロンドンフィキシング(1/4)に絡む需給のドル買い・円売り、(10)FOMC議事要旨での「FRBはインフレリスクを重要なファクターとして認識」「2023年中に政策金利の引き下げが適切となると予想するメンバーは居ない」「FF金利の継続的な引き上げが適切」とのタカ派的な内容、(11)ゴピナートIMFチーフエコノミストによる「米国のインフレはまだ峠を越えていない」とのタカ派的な発言、(12)米12月ADP雇用統計(結果23.5万人、予想14.9万人)の力強い結果、(13)米新規失業保険申請件数(結果20.4万件、予想22.5万件)の良好な結果、

(14)米11月貿易収支(結果▲615億ドル赤字、予想▲630億ドル赤字)の赤字幅縮小、(15)日銀関係者による「日銀はYCCの再修正を急がず、12月の決定の影響と効果の見極める」とのハト派的なヘッドライン、(16)中国当局による「三条紅線(不動産部門の負債比率規制)」の緩和観測(リスクオンの円売り再開)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値134.76まで急伸しました。もっとも、心理的節目135.00をバックに伸び悩むと、(17)米12月雇用統計における平均時給の伸び率鈍化(結果+4.6%、予想+5.0%、前回+4.8%)や、(18)上記17を背景とした米長期金利の急低下(米長期金利急低下→米ドル急落)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間1/7午前3時00分現在)では、132.15前後まで値を崩す動きとなっております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0702で寄り付いた後、早々に週間高値1.0708まで上昇しました。しかし、昨年12/15に記録した直近高値1.0737をバックに伸び悩むと、(1)ドイツ12月HICP(結果9.6%、予想10.3%、前回11.3%)の伸び率鈍化や、(2)フランス12月CPI(結果5.9%、予想6.3%、前回6.2%)の伸び率鈍化、(3)ユーロ圏11月PPI(結果27.1%、予想27.6%、前回30.5%)の伸び率鈍化、(4)ユーロ圏12月HICP(結果9.2%、予想9.5%、前回10.1%)の伸び率鈍化、(5)上記1、2、3、4を背景としたECBによる金融引き締め休止観測、(6)米経済指標の力強い結果(米11月JOLT雇用動態調査、米12月ADP雇用統計、米新規失業保険申請件数、米11月貿易収支など)、

(7)米金利上昇に伴うドル買い圧力が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0484まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(8)米12月雇用統計における平均時給の伸び率鈍化(結果+4.6%、予想+5.0%、前回+4.8%)や、(9)上記8を背景とした米長期金利の急低下(米金融引き締め休止観測再燃→米10年債利回りが3.74%から3.57%へ急低下→米ドル急落)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間1/7午前3時00分現在)では、1.0635前後まで持ち直す動きとなっております。

来週の見通し(1/9−1/13)

<ドル円相場>
ドル円は昨年10/21に記録した約32年ぶり高値151.95をトップに反落に転じると、年明け1/3に約7カ月ぶり安値となる129.51まで急落しましたが、その後はショートカバー主導で持ち直し、週末にかけて一時134.76まで急伸しました。但し、アップサイドより複数のレジスタンスポイントが垂れ下がってくることや、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転が成立していること、心理的節目135.00に到達できない状態のまま週末にかけて急反落に転じていること(上値の重さの再確認)等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます(週央以降のドル円上昇は下落トレンドの過程で見られる一時的なポジション調整と整理。下落トレンドは不変であるため、来週は再びドル売り・円買い圧力が強まる公算大)。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め休止観測(FOMC議事要旨や米当局者発言はタカ派的な結果となりましたが、米債市場の反応は限定的。市場は実質金利上昇に伴う米経済のオーバーキルを予測している為、FRBが5%を超えて利上げを続けることは不可能と判断。週末に発表された米ISM非製造業景況指数の急低下が決定打となる可能性あり。平均時給の伸び率鈍化も手伝って、来週は米金利低下→米ドル売りの流れが一段と強まる公算大)や、(2)日銀による金融緩和の追加修正観測(1/18の会合で物価見通しを上方修正し、黒田総裁最後の場となる3/10会合で追加的な政策修正を実施するとの思惑)、(3)上記1、2を背景とした日米名目金利差縮小とそれに伴う円キャリートレードの解消懸念、(4)原油価格低下に伴う本邦貿易赤字の縮小観測(構造的な円売り減退)など、ドル円相場の下落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル売り・円買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は1/12に発表される米12月消費者物価指数に注目が集まります。市場予想を下回る結果となれば、今週末に発表された平均時給の伸び率鈍化も相俟って、米FRBによる金融引き締め休止観測→米長期金利の更なる低下→米ドル売り→ドル円急落の流れに拍車がかかる恐れがありそうです(来週はアトランタ連銀ボスティック総裁や、パウエルFRB議長、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁、セントルイス連銀ブラード総裁の発言にも注目)。状況次第では、1/3に記録した安値129.51を試すシナリオもあり得ることから、週を通してダウンサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです。

来週の予想レンジ(USDJPY):129.75ー133.75

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は昨年12/15に記録した約半年ぶり高値1.0737をトップに反落に転じると、ユーロ圏におけるインフレピークアウト期待の高まりを背景に、週末にかけて、一時1.0484(約1ヵ月ぶり安値圏)まで急落しました。但し、週末に公表された米雇用統計および米ISM非製造業景況指数発表後に再び持ち直す動きを見せていること(下値の堅さを再確認)や、ダウンサイドに複数のサポートポイントを控えていること、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」や「ダウ理論の上昇トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、下値余地は限定的(短期的にも中長期的にも上昇トレンド継続中)と判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる金融引き締め休止観測(昨年12月以降、米当局者によるタカ派的なコメント=市場のハト派織り込みを牽制する動きが続いていますが、実質金利上昇に伴う米経済のオーバーキルが警戒される中、米当局者は早晩金融引き締めスタンスを軟化させる公算大。事実、週末に発表された米ISM非製造業景況指数は好不況の分岐点50を割り込む冴えない結果。米雇用統計で明らかとなった平均時給の伸び率鈍化も米FRBによる金融引き締め休止の追い風)や、(2)ECBによる利上げスタンスの継続方針(ここ数日発表されたユーロ圏各国のインフレ指標が軒並み鈍化したことで、市場では俄かにECBによる金融引き締め休止観測が広がりましたが、エネルギーや食料品など変動の大きな項目を除いたコアCPIベースでは引き続き過去最高水準に留まっているため、ECBによる金融引き締めスタンスは当面変わらない可能性大)、

(3)上記1、2を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(利上げ最終局面に立っている米国と、利上げスタンスの継続が見込まれる欧州との金融政策格差→欧米名目金利差縮小に着目したユーロ買い・ドル売り圧力)など、ユーロドル相場の続伸を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ買い・ドル売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(今週はユーロ圏のインフレ鈍化がECBによる金融引き締め休止に繋がるとの期待感を通じてユーロ売り圧力が強まりましたが、来週はこうした期待感の剥落と共にユーロドルが再上昇に転じるシナリオを想定。米金利が週末にかけて急低下していることもユーロドルの早期押し上げに寄与する公算大。状況次第では昨年12/15に記録した直近高値1.0737を一気に上抜け、市場参加者に意識されている昨年5/30高値1.0788を試すシナリオも想定)。尚、来週は欧州当局者発言(ユーロ圏のインフレ鈍化に対する欧州当局者の見解)や、欧州経済イベント(ユーロ圏の失業率や鉱工業生産など)、米国経済イベント(米CPIなど)に注目が集まります。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0500−1.0800

注:ポイント要約は編集部

『日米金融政策が市場の焦点。来週はドル売りトレンド再開を想定』

ドル円日足

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