ドル円、流動性欠如でボラタイルな相場展開が継続。中村審議委員の発言に注目
〇ドル円、前日からのドル買いの流れに欧州時間に137.46まで急伸するもその後135.98まで反落
〇米長期金利急低下と、上値の重さを嫌気しての見切り売りが背景
〇売り一巡後は米株急落によるリスク回避のドル買いに137円前後に持ち直す
〇ユーロドル1.05台から反落、ECB関係者のハト派発言、欧州株急落が重石に
〇テクニカル、ファンダメンタルズはドル円下落材料多く、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想
〇日銀関係者の金融緩和修正関連発言要注意、本日の予想レンジ:135.75ー137.75
海外時間のレビュー
6日(火)のドル円相場は「大きな値幅」を伴いつつも方向感を見出しづらい展開。(1)前日海外時間以降のドル買い圧力の継続(良好な米経済指標→米長期金利上昇→米ドル買いの流れ)や、(2)中国のコロナ規制緩和に伴うリスク選好の円売り圧力(アジア株上昇→クロス円上昇→ドル円連れ高)、(3)心理的節目137.00突破に伴う短期筋のロスカットが支援材料となり、欧州時間朝方にかけて、高値137.46まで急伸しました。もっとも、一目均衡表転換線をバックに伸び悩むと、(4)米金利低下に伴うドル売り圧力(米10年債利回りが3.60%から3.54%へ急低下)や、(5)上値の重さを嫌気した短期筋の見切り売り(俄かロングのロスカット)が重石となり、米国時間朝方にかけて、安値135.98まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(6)米主要株価指数の急反落や、(7)それに伴うリスク回避のドル買い圧力が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間12/7午前4時10分現在)では、137.00前後まで持ち直す動きとなっております。
6日(火)のユーロドル相場は上値の重い展開。(1)前日海外時間以降のドル買い圧力の継続や、(2)レーンECB専務理事兼チーフ・エコノミストによる「インフレがピークに近い可能性が高いことを確信している」「インフレ率は来年6ー7%へと低下するだろう」とのハト派的な発言が重石となり、欧州時間朝方にかけて、一時1.0476まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(3)欧州株の堅調推移や、(4)米金利低下に伴うドル売り圧力、(5)ドイツ10月製造業新規受注(結果0.8%、予想0.2%)の市場予想を上回る結果が支援材料となり、米国時間朝方にかけて、高値1.0533まで反発しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(6)欧州株の急反落や、(7)それに伴うリスク回避のドル買い圧力が重石となり、米国時間午後にかけて、安値1.0460まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間12/7午前4時10分現在)では、1.0463前後で推移しております。
本日の見通し
ドル円は12/2に記録した約3ヵ月半ぶり安値133.62(8/16以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、昨日は一時137.46まで急伸しました(その後135.98まで急落するも引けにかけて再び137円台を回復)。目立った米経済指標や米当局者発言が無いにも係わらず、予想以上に「大きな値幅」を伴っているため、流動性低下に伴う悪影響が警戒されます(上昇する際も下落する際も予想以上に値幅が伸びることから、逆張り勢がすぐにロスカットに追い込まれる相場展開)。
但し、日足チャートを確認すると、上方より複数のレジスタンスポイントが垂れ下がってくる他、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転も継続しており、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます(基本的には戻り売り戦略が有効と考えられるが、上述の通り、足元の相場は異常な伸びを伴うことから、戻り売りエントリーを浅めに入ってしまうと一瞬にして持ち値を著しく悪化させてしまう恐れあり)。また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる利上げペースの鈍化観測(市場の焦点は来年2月FOMCが50bpの利上げに据え置かれるのか25bpの利上げに抑制されるのか。CMEが提供するFedWatchツールによると、50bp利上げが52.5%、25bp利上げが36.4%織り込まれている状況)や、(2)日銀による金融緩和の脱却観測(黒田総裁が任期を迎えた後のポスト黒田体制下での金融緩和脱却観測)、(3)上記1、2を背景とした日米金融政策の先行きの方向性の違い、(4)上記3に伴う円キャリートレードの解消リスクなど、ドル円相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。
こうした中、本日は上記2を確認する上で、日本時間14:30から始まる中村豊明日銀審議委員の記者会見に注目が集まります。直近では12/1に田村直樹審議委員が「しかるべきタイミングで、金融政策の枠組みや物価目標のあり方を含めて点検、検証を行うことが適当だ」と発言し、同じ日に野口旭審議委員も「引き続きデータを注視し、物価が想定以上に上振れるなどした場合には、予防的に金融緩和の修正が必要になる可能性がある」と発言。また、昨日は黒田総裁からも「持続的・安定的な物価目標を達成すれば金融緩和の出口を検討する」との発言が見られるなど、日銀メンバーによる金融緩和修正への言及が相次いでいます。この為、これまで金融緩和を粘り強く続ける必要性があるとのスタンスを貫いてきた中村豊明審議委員より緩和修正の可能性を滲ませる発言が出てくれば、日銀による金融緩和脱却観測の高まりを通じて、円キャリートレードの巻き戻しに繋がる恐れがありそうです。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(これまであまり注目されてこなかった日銀メンバーの発言に対する関心度合が市場で着実に高まりつつある状況)。
本日の予想レンジ:135.75ー137.75
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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