『ドル売り・円買い基調の継続を想定。円キャリートレードの逆流に警戒』
〇ドル円、週央にかけて中国コロナ規制緩和期待、FRB関係者のタカ派発言等に139.90まで急伸
〇その後パウエル議長のハト派発言、米インフレ鈍化観測、指標不冴え等に133.65まで急落
〇週末米雇用統計はNFP、平均時給が市場予想上回り、136円近くまで戻し134円台で越週
〇ユーロドル、週央にかけ1.0292まで急落するも週末にかけ1.05台に戻す
〇ドル円、主要サポートポイントを軒並み下抜け、三役逆転も成立、テクニカルの地合い弱い
〇ファンダメンタルズも米利上げペース鈍化を織り込む動きが活発化
〇引き続き、ドル売り・円買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):132.50ー136.50、(EURUSD):1.0350−1.0750
今週のレビュー(11/28−12/2)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初139.35で寄り付いた後、(1)ブラックフライデーの好調な結果や、(2)中国政府による厳格なコロナ規制の緩和期待、(3)上記1、2を背景としたリスク選好ムード(クロス円上昇→ドル円連れ高)、(4)セントルイス連銀ブラード総裁による「市場はFOMCがより積極的になる可能性があることを過小評価」「2024年に入っても利上げを継続する可能性」「予測に基づけば、FF金利誘導目標を少なくとも4.9%まで引き上げる必要性がありそうだ」とのタカ派的な発言、(5)ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁による「中銀はインフレ抑制の為に一段の行動を取る必要がある」「追加利上げは経済のバランス回復に役立つ」とのタカ派的な発言、(6)リッチモンド連銀バーキン総裁による「インフレが高止まりするならばFRBは利上げを続ける必要性がある」とのタカ派的な発言、(7)米7ー9月期実質GDP改定値(結果+2.9%、予想+2.7%、※前期比年率)の市場予想を上回る結果、(8)米長期金利の急上昇(米10年債利回りは3.79%へ急上昇)が支援材料となり、週央にかけて、週間高値139.90まで急伸しました。
しかし、心理的節目140.00をバックに伸び悩むと、(9)パウエルFRB議長による「利上げペースを緩やかにすることは理にかなっており、その時期は早ければ12月FOMCで訪れるかも知れない」「インフレの早期鎮静化のためだけを以って一段の大幅利上げを実施し経済を破綻させることはしない」とのハト派的な発言や、(10)ベージュブックにおける「物価上昇ペースは全体的にみて減速した」との見解発表、(11)上記9、10を背景とした米長期金利の急低下(米10年債利回りは3.79%から3.50%へ急低下)、(12)米11月ADP雇用統計(結果+12.7万人、予想+20.0万人)の冴えない結果、(13)米10月PCEコアデフレータ(結果0.2%。予想0.4%、前回0.5%、※前月比)の伸び率鈍化、(14)米11月ISM製造業景況指数(結果49.0、予想49.7、前回50.2)の市場予想を下回る結果、
(15)ボウマンFRB理事による「利上げペース減速は適切」とのハト派的な発言、(16)ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁による「インフレの歓迎すべき緩和の兆しが見られる」とのハト派的な発言、(17)日銀田村審議委員による「しかるべきタイミングで金融政策の枠組みや物価目標のあり方を含めて点検・検証を行うことが適当だ」とのタカ派的な発言、(18)日銀野口審議委員による「物価が想定以上に上振れるなどした場合には予防的に金融緩和の修正が必要になる可能性がある」とのタカ派的な発言、
(19)上記17、18を背景とした円キャリートレードの逆流懸念が重石となり、週末にかけて、8/16以来、約3カ月半ぶり安値となる133.65まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(20)米11月非農業部門雇用者数(結果26.3万人、予想20.2万人)の市場予想を上回る結果や、(21)米11月平均時給(結果5.1%、予想4.7%、※前年比)の伸び率昂進、(22)上記20、21を背景としたショートカバー誘発が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間12/3午前3時00分現在)では、134.60前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0368で寄り付いた後、(1)セントルイス連銀ブラード総裁によるタカ派的な発言や、(2)ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁によるタカ派的な発言、(3)リッチモンド連銀バーキン総裁によるタカ派的な発言、(4)米7ー9月期実質GDP改定値の市場予想を上回る結果、(5)米長期金利の急上昇、(6)ドイツ11月消費者物価指数(結果▲0.5%、予想▲0.2%、※前月比)の市場予想を下回る結果、(7)ユーロ圏11月消費者物価指数(結果▲0.1%、予想+0.1%、※前月比)の市場予想を下回る結果、(8)月末ロンドンフィキシングに絡むドル買い圧力が重石となり、週央にかけて、週間安値1.0292まで急落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(9)パウエルFRB議長によるサプライズ的なハト派発言や、(10)上記9を背景とした米長期金利の急低下、(11)米10月PCEコアデフレータの伸び率鈍化、(12)米11月ISM製造業景況指数の冴えない結果、(13)心理的節目1.0500を突破したことに伴う仕掛け的なユーロ買い・ドル売りが支援材料となり、週末にかけて、6/28以来、約5ヵ月ぶり高値となる1.0545まで急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(14)米雇用統計の良好な結果や、(15)それに伴う米ドルのショートカバー(米金利上昇→ドル買い再開)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間12/3午前3時00分現在)では、1.0528前後で推移しております。
来週の見通し(12/5−12/9)
<ドル円相場>
ドル円は10/21に記録した約32年ぶり高値151.95(1990年7月以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週末にかけて、8/16以来、約3ヵ月半ぶり安値となる133.65まで急落しました。この間、ローソク足が主要サポートポイント(一目均衡表転換線や基準線、一目均衡表雲上限や雲下限、21日移動平均線や90日移動平均線、200日移動平均線など)を軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの急速な悪化が確認されます。ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米利上げペースの鈍化観測(パウエルFRB議長によるサプライズ的なハト派発言をきっかけに市場では米利上げペース鈍化を一段と織り込む動きが活発化→米長期金利急低下→対主要通貨でのドル売り加速)や、
(2)日銀による金融緩和の修正観測(日銀政策委員による相次ぐタカ派発言→ポスト黒田体制下での金融緩和脱却の思惑浮上)、(3)上記1、2を背景とした日米名目金利差縮小観測(円キャリートレードの逆流を巡る警戒感)、(4)米議会の「ねじれ化」に伴うドル高政策の修正期待など、ドル円相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル売り・円買いトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。
尚、来週は米国がブラックアウト期間(FRBメンバーが金融政策に関する発言を手控える期間)に突入する他、米経済指標も、米11月ISM非製造業景況指数、米11月生産者物価指数、米12月ミシガン大消費者信頼感指数以外に目立ったイベントが予定されていないため、基本的には思惑主導の上下動(ファクトに基づかない観測報道のみで上下する相場展開)が予測されます。特にブラックアウト期間中のFRB代弁者として有名になりつつあるWSJのニック記者のreportやtweetには警戒が必要でしょう。また、上述の通り、最近は日銀政策委員の発言がマーケットに動意をもたらす傾向にあるため、12/7に予定されている中村日銀審議委員の発言にも念のため注意が必要です。
来週の予想レンジ(USDJPY):132.50ー136.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は9/28に記録した約20年ぶり安値0.9535(2002年6月以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、一時1.0545(6/28以来、約5ヵ月ぶり高値圏)まで急伸しました。この間、ローソク足が主要レジスタンスポイント(一目均衡表転換線や基準線、雲下限や雲上限、21日移動平均線や90日移動平均線、200日移動平均線など)を軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の下落トレンド崩壊」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さが確認されます(市場参加者に意識されていた200日移動平均線を上方ブレイクできたことでユーロドルの中長期上昇トレンド入りへの期待感が高まる展開)。
ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる利上げペース鈍化観測(パウエルFRB議長のハト派サプライズをきかっけに米長期金利が急低下)や、(2)ECBによる積極利上げの継続方針(ラガルドECB総裁は11/28に「インフレがピークに達したと考えるのは時期尚早で不確実性が大きく驚きだ」と発言→市場で燻るユーロ圏のインフレ鈍化期待を牽制)、(3)上記1、2を背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米名目金利差縮小に伴うユーロ買い・ドル売り圧力)など、ユーロドルの続伸を連想させる材料が増えつつあります。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ買い・ドル売りトレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は欧州当局者発言(ラガルドECB総裁、ドイツ連銀ナーゲル総裁、フランス中銀ビルロワドガロー総裁)に加えて、ユーロ圏10月小売売上高や、ユーロ圏第3四半期GDP確報値、ドイツ10月鉱工業生産に注目が集まります。欧州当局者からは今週同様、タカ派的な発言が出てくる可能性が高く、またユーロ圏経済指標も比較的良好な結果が見込まれることから、来週は週を通してユーロドルに上昇圧力が加わりそうです。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0350−1.0750
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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