ドル円見通し 11月15日夜安値を割り込み10月21日以降の安値を更新(22/11/29)

ドル円は11月28日夕刻安値で137.48円へ下落、11月15日の米PPI発表直後の下落時につけた安値137.67円を割り込み10月21日高値151.94円以降の安値を更新した。

ドル円見通し 11月15日夜安値を割り込み10月21日以降の安値を更新(22/11/29)

ドル円見通し 11月15日夜安値を割り込み10月21日以降の安値を更新

○ドル円、11/28夕刻137.48へ下落、11/15安値137.67を割り込み、10/21高値151.94以降の安値を更新
○その後ドル高ぶり返しで11/29早朝139円到達まで戻すも、139円台を維持できずずやや上値の重い展開
○中国の景気後退懸念や先行き不安リスクの高まりと、米FRB高官らのややタカ派的発言等が交錯
○11月FOMC議事録では引き締めに対する見方が分かれる、11/30のパウエル議長講演に注目
〇米10年債利回りは前週比で3週連続低下後、週明けはやや落ち着きが見られる、米株価は下落
○138円台での推移中は、139.00超えから139.50を試す上昇余地ありとする
○138円割れからは11/28夕安値137.48試しとし、底割れからは136円台への下落を想定する

【概況】

ドル円は11月28日夕刻安値で137.48円へ下落、11月15日の米PPI発表直後の下落時につけた安値137.67円を割り込み10月21日高値151.94円以降の安値を更新した。その後はドル高のぶり返しにより29日早朝には139円到達まで戻したが139円台を維持しきれずに29日午前序盤はやや上値の重い展開となっている。

11月28日午後から29日早朝にかけての為替市場は乱調な展開で、中国の感染拡大と工場操業停止や当局のゼロコロナ政策への抗議行動が相次いでいることによる景気後退懸念や先行き不安リスクが高まっている事と、米FRB高官らのややタカ派的な発言等が交錯した。ユーロドルは一時1.0496ドルへ上昇して11月15日高値1.0480ドルを超えて9月28日安値0.9534ドル以降の高値を若干更新してから1.030ドル台序盤へ急落に転じて28日午前安値を割り込んだ。ポンドドルも夜に戻してから1.190ドル台中盤へ一段安、豪ドル米ドルは0.665ドル割れへ続落となり、深夜以降はドル高優勢の展開となった。しかしそれらと比較するとドル円の29日早朝への戻りは鈍く、中国リスクを意識した円への逃避買いが上値を抑えたとの見方もされている。
今週は週末の米雇用統計へ向けた重要指標発表が相次ぐ。11月30日にはパウエル米FRB議長講演、12月1日には米PCEデフレーターの発表もある。年末へ向けた方向感を探りつつ神経質な展開に入ってきている印象だ。

【FRB高官はややタカ派発言】

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は28日の講演で「労働力とサービスへの需要は供給をはるかに上回り広範なインフレを生んでいる」と「インフレ抑制には時間が掛かり、2%の目標の水準まで低下するのは2024年以降になる」として利上げの継続性を強調した。同総裁はインフレ率について2022年末で5.0〜5.5%、2023年は3.0〜3.5%と想定し、2023年にインフレ率が低下してもまだ利下げを判断できる状況には至らないとの見通しを示した。
セントルイス連銀のブラード総裁は28日にインタビューに答えて「高インフレを抑制するために政策金利を少なくとも5.0%を上回る水準に引き上げる必要がある」とし、「最適な政策金利水準を算出するテイラー・ルールに従えば十分に景気抑制的な金利水準は5〜7%」とし、引き締めで積極性を弱めるのではなく、なおも一層積極的であるべき」とした。12月の次回会合における利上げ幅については具体的な言及をせずに「早めの引き上げを支持する、パウエル議長に任せる」とした。

ブレイナードFRB副議長は「これまでの累積的な金融引き締めでディスインフレ期待が高まっている」としたものの「米国と世界の多くの国でインフレは依然として非常に高い」「コロナや戦争があっても中銀はインフレ期待をしっかり目標の水準に固定し続ける責務がある」と述べて引き締め姿勢の継続を強調した。
11月のFOMCでは将来の政策金利のピーク水準が引き上げられることを示唆する一方で景気を意識して12月会合では超ハイペースでの利上げについては減速の検討を行うとの姿勢を示した。11月24日未明に公開された議事録では引き締めの行き過ぎと少なすぎのどちらを意識すべきかとのメンバーの見方が分かれていることも示された。今後の雇用統計やPCEデフレーター及びコアCPI上昇率等を見ながらの判断となると思われるが、11月30日のパウエル米FRB議長講演でヒントが示される可能性もあると注目される。

【米10年債利回りは3週連続低下後はやや低下】

11月28日の米10年債利回りは先週末比0.01%低下の3.68%となった。一時は中国感染拡大と抗議行動の多発等による先行き不透明感でリスク回避的な米国債買いが見られたことで3.62%まで低下して一時的にドル安を助長したが、その後の米FRB高官らのタカ派発言等で切り返している。先週は前週比で0.14%低下となり3週連続の低下で6月から7月末にかけての大幅低下時に匹敵する規模となったが、週明けはやや落ち着きが見られ、29日午前序盤は一時3.70%台をつけている。
30年債利回りは先週末比0.02%低下の3.73%、2年債利回りは0.01%低下の4.45%と小動きだった。

一方でNYダウは先週末比497.57ドル安と下落、4営業日ぶりの反落となり、ナスダック総合指数も176.86ポイント安と下落した。中国の感染拡大の影響を懸念して売り先行となったようだが、特にアップルの中国工場でのiPhone等600万台近くが作れなくなる恐れがあるとの報道もありアップルは2.6%安と下落した。感染拡大の長期化とゼロコロナ政策による経済活動停滞の影響が米国及び世界に波及する懸念が強まっている。
中国の感染問題は米国債への安全資産買いが利回り低下要因となり、株式市場には売り圧力、為替市場ではリスク回避的なドル買いと円買いが交錯する状況を招いている。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は11月15日夜安値137.67円を起点とした戻りが11月22日未明高値142.25円で一巡して下落に転じている。11月24日夜安値138.04円では11月15日安値割れをひとまず回避したものの28日夕刻に137.48円を付けて安値を更新している。その後の戻りも25日夜高値には届かずに戻り高値切り下がり基調の範囲にとどまっているため、現状は11月25日夜高値を起点とした下落期の継続とみて12月1日夜にかけて安値試しを続けやすい時間帯と考える。強気転換は11月25日夜高値139.59円超えからとし、その際は12月2日夜にかけての上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では、11月28日夕刻への一段安から切り返したため、遅行スパンは悪化した状況のままだが好転しやすい位置にある。一方で先行スパンが29日早朝の戻りを抑えている。先行スパンを上抜き返す場合は上昇継続とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンを突破しきれない場合及びわずかに超えても再び転落する場合は下げ再開へ向かうとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は11月24日夜から28日夕への一段安に際しては指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せているものの25日夜高値超えへ進めずにいるので40ポイント割れからは下げ再開とみて20ポイント台を目指す下落を想定する。60ポイント超えへ進む場合は戻り高値をさらに試す流れとみて70ポイント試しとするが、70ポイント手前では戻り売りにつかまりやすいとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、138円を下値支持線、139.00円を上値抵抗線とする。
(2)138円台での推移中は139.00円超えから139.50円を試す上昇余地ありとするが、139.50円手前は戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)138円割れからは下げ再開とみて28日夕安値137.48円試しとし、底割れからは136円台への下落を想定する。

【当面の主な予定】

11/29(火)
17:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
19:00 (欧) 11月 経済信頼感 (10月 92.5、予想 93.0)
19:00 (欧) 11月 消費者信頼感確定値 (速報 -23.9、予想 -23.9)
21:35 (英) マン英中銀委員、講演
22:00 (独) 11月 消費者物価指数(CPI)速報値 前月比 (10月 0.9%、予想 -0.2%)
22:00 (独) 11月 消費者物価指数(CPI)速報値 前年同月比 (10月 10.4%、予想 10.4%)
23:00 (米) 9月 米連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (8月 -0.7%、予想 -1.2%)
23:00 (米) 9月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (8月 13.1%、予想 10.5%)
24:00 (米) 11月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (10月 102.5、予想 100.0)

11/30(水)
06:45 (NZ) 10月 住宅建設許可件数 前月比 (9月 3.8%)
08:50 (日) 10月 鉱工業生産速報値 前月比 (9月 -1.7%、予想 -1.8%)
08:50 (日) 10月 鉱工業生産速報値 前年同月比 (9月 9.6%、予想 5.2%)
09:00 (NZ) 11月 ANZ企業信頼感 (10月 -42.7)
09:30 (豪) 10月 住宅建設許可件数 前月比 (9月 -5.8%、予想 -2.0%)
10:30 (中) 11月 国家統計局製造業PMI (10月 49.2、予想 49.2)
14:00 (日) 10月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (9月 1.0%、予想 -0.7%)
17:30 (英) ピル英中銀理事、講演
17:55 (独) 11月 失業率 (10月 5.5%、予想 5.5%)

19:00 (日) 外国為替平衡操作実施状況(介入実績)
19:00 (欧) 11月 消費者物価指数(HICP)速報値 前年同月比 (10月 10.6%、予想 10.4%)
19:00 (欧) 11月 HICPコア指数速報値 前年同月比 (10月 5.0%、予想 5.0%)
22:15 (米) 11月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (10月 23.9万人、予想 20.0万人)
22:30 (米) 7-9月期 GDP改定値 前期比年率 (速報 2.6%、予想 2.8%)
22:30 (米) 7-9月期 GDP個人消費改定値 前期比年率 (速報 1.4%、予想 1.5%)
22:30 (米) 7-9月期 コアPCE改定値 前期比年率 (速報 4.5%、予想 4.5%)
22:30 (米) 10月 卸売在庫 前月比 (9月 0.8%、予想 0.5%)
22:50 (米) ボウマンFRB理事、講演

23:45 (米) 11月 シカゴ購買部協会景況指数 (10月 45.2、予想 47.0)
24:00 (米) 10月 住宅販売保留指数 前月比 (9月 -10.2%)
24:00 (米) 10月 住宅販売保留指数 前年同月比 (9月 -30.4%)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
26:35 (米) クックFRB理事、講演
27:30 (米) パウエルFRB議長、講演
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)


注:ポイント要約は編集部

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