ドル円見通し 米CPIショックの暴落一服だが、市場心理回復には時間ときっかけ必要か
〇ドル円、米CPIショックの暴落一服で11/14夜140.79まで戻すも、その後140円を割り込む冴えない動き
〇暴落に対する一服感がみられるものの、さらなる一段安への懸念も
〇FRB関係者、ペースを減速させつつ利上げ継続への姿勢示す
〇米10年債利回りは暴落一服で上昇、NYダウ・ナスダックともに3日ぶりの反落
〇139.50以上での推移中は上昇余地ありとし、140.79超えからは141円台前半への上昇を想定する
〇139.00割れからは下げ再開とみて、11/12未明安値138.45試しとする
【概況】
ドル円は11月10日夜の米CPIショックによる暴落が12日未明安値138.45円で一服、14日夜にかけては買い戻し優勢となって140.79円まで戻したが、その後に140円を割り込むなど冴えない動きとなっている。暴落に対する一服感がみられるものの2夜連続での大幅下落直後のため、さらなる一段安への懸念を引きずっている。
11月10日夜の米消費者物価上昇率が市場予想を下回ったことで米FRBの超ハイペースでの利上げが鈍化すると受け止められて、米長期債利回りが急低下して為替市場はドル全面安となったが、11月11日の米国債券市場休場を挟んで取引再開となった14日の米10年債利回りは反発、為替市場では豪ドル米ドルが10日夜以降の高値を更新したもののユーロやポンドは12日未明高値の後は新たな高値更新へ進んでおらずドル全面安に一服感も出ている印象だ。
【FRBはペースを減速させつつ利上げは継続】
米FRBのウォラー理事は13日、「利上げの最終地点はまだずっと遠くである公算が大きい」とし、「次回のFOMCでは利上げの減速を検討する可能性があるものの、インフレとの闘いの軟化と解釈されるべきではない」と述べた。市場はややタカ派的な発言と受け止めて14日の日中における若干のドル高要因となった。
一方でFRBのブレイナード副議長は14日、通信社のインタビューにおいて「利上げペースを緩めることが間もなく適切になる」「これまでの金融引き締めを踏まえて今後は経済指標をみながらペースを調整していく」との姿勢を示した。副議長は金融環境はある程度引き締めが反映されているとし、「利上げを経済指標に基づいたペースとすることが理にかなっている」とした。またドル高が他国経済に打撃をもたらすことが米経済に波及する影響も見守っているとした。ただ、「利上げについてはさらにすべきことがある」とし、「我々はインフレを目標の2%とすることに極めて重点的に取り組んでいる」として利上げの継続姿勢を示した。
11月10日の米CPIショックは市場予想を下回る伸び率だったことでドル全面安を招いたが、米FRBのみならず主要国も利上げペースを鈍化させつつ利上げは継続してゆくことと、日銀は少なくとも黒田総裁の在任中はマイナス金利等の金融緩和政策を維持することを踏まえれば、先週末に暴落したドル円がさらに暴落商状を続ける程の情勢変化ではないという見方もできると思われる。しかし、相場は先読みで大上昇してきた後だけに、相当程度のドル買い材料を消化してきた状況で過剰な上昇分を吐き出す急落調整となったのであり、まだ落ち着くべきところを手探りしているレベルとすれば調整的な下落(ドル安円高)を継続する可能性も大いに残るところと思われる。
【米長期債利回りは上昇、ダウは小反落】
11月14日の米10年債利回りは前日比0.04%上昇の3.86%となった。米CPI発表からの急落で11月10日は前日比0.28%低下となり、1日の低下幅としては2009年3月以来最大となったが、14日の祝日休場明けは暴落一服となった。
30年債利回りは前日比0.01%低下の4.04%となり、11月10日の0.22%低下からの続落となった。年限が長いために利上げペースが鈍化してもまだ利上げのピークは先にあるとして下げ止まれていない印象だ。
2年債利回りは前日比0.05%上昇の4.39%となった。11月10日は前日比0.25%低下の4.34%で一時は4.29%まで低下して1日の低下幅としては2008年9月以来最大規模であり、休場明けの14日は急落一服ではあるものの切り返しの規模は小さかった印象だ。
11月14日のNYダウは前日比211.16ドル安と3日ぶりの反落となった。米CPI発表からの大上昇で10日は前日比1201.43ドルの大幅上昇で11日も32.49ドル高と小幅ながら続伸したが、CPIショックによる急伸がやや落ち着いた。ナスダック総合指数は前日比127.11ポイント安で10日の760.97ポイント高から11日の209.18ポイント高への連騰が一服した。
今晩はNY連銀景況指数や米10月PPIの発表もある。中国の感染拡大が収まらないことでの景気減速への懸念も上値を抑えた印象だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は11月10日夜からの暴落一服で11月12日未明安値138.45円を目先の底として戻りを試しているところと思われる。高値形成期は14日夜から17日早朝にかけての間と想定されるのでまだ上昇余地ありとみるが、139円割れからは下げ再開を警戒し、12日未明安値138.45円割れからは新たな下落期入りとみて週末にかけての下落を想定する。
60分足の一目均衡表では、11月10日夜からの暴落一服で戻したために遅行スパンが好転したが、先行スパンの下限近辺で上値が抑えられている。遅行スパン好転中は戻りを試す流れとし、勢い付く場合は先行スパン上限に迫る可能性もあるとみるが、遅行スパンが悪化するところからは下げ再開と一段安を警戒して安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は11月10日夜から12日未明への一段安に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せてから60ポイント到達まで戻した。暴落的な下げ一服により50ポイントを割り込んでも回復するうちは70ポイントに迫る上昇余地ありとするが、40ポイント割れからは下げ再開とみて20ポイント台前半への低下へ向かうとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、139.00円を下値支持線、11月14日夜高値140.79円を上値抵抗線とする。
(2)139.50円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、140.79円超えからは141円台前半への上昇を想定する。141.50円以上は反落警戒としてその後に140円を割り込むところから下げ再開とするが、140円台を維持しての推移なら16日も高値試しを続けやすいとみる。
(3)139.00円割れからは下げ再開とみて11月12日未明安値138.45円試しとし、底割れからは137円前後、次いで136円前後を試す下落期入りと考える。
【当面の主な予定】
11/15(火)
G20首脳会議(バリ島、16日まで)、トランプ前大統領の重大発表
11:00 (中) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 2.5%、予想 0.7%)
11:00 (中) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 6.3%、予想 5.2%)
12:00 (日) 黒田日銀総裁、講演
13:30 (日) 9月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 -1.6%)
13:30 (日) 9月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 9.8%)
13:30 (日) 9月 設備稼働率 前月比 (8月 1.2%)
16:00 (英) 9月 失業率・ILO方式 (8月 3.5%、予想 3.5%)
19:00 (独) 11月 ZEW景況感 (10月 -59.2、予想 -51.0)
19:00 (欧) 11月 ZEW景況感 (10月 -59.7)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.2%、予想 0.2%)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 2.1%、予想 2.1%)
19:00 (欧) 9月 貿易収支・季調済 (8月 -473億ユーロ、予想 -450億ユーロ)
19:00 (欧) 9月 貿易収支・季調前 (8月 -509億ユーロ)
22:30 (米) 11月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (10月 -9.1、予想 -5.8)
22:30 (米) 10月 生産者物価指数(PPI) 前月比 (9月 0.4%、予想 0.5%)
22:30 (米) 10月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (9月 8.5%、予想 8.4%)
22:30 (米) 10月 PPIコア指数 前月比 (9月 0.3%、予想 0.4%)
22:30 (米) 10月 PPIコア指数 前年同月比 (9月 7.2%、予想 7.2%)
23:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
23:00 (米) クックFRB理事、講演
24:00 (米) バーFRB副議長(銀行監督担当)、上院銀行委員会証言
26:30 (欧) エルデルソンECB理事、講演
11/16(水)
08:50 (日) 9月 機械受注 前年同月比 (8月 9.7%、予想 7.5%)
09:30 (豪) 7-9月期 賃金指数 前期比 (4-6月 0.7%、予想 0.9%)
13:30 (日) 9月 第三次産業活動指数 前月比 (8月 0.7%、予想 0.6%)
16:00 (英) 10月 消費者物価指数(CPI) 前月比 (9月 0.5%、予想 1.7%)
16:00 (英) 10月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (9月 10.1%、予想 10.7%)
16:00 (英) 10月 CPIコア指数 前年同月比 (9月 6.5%、予想 6.4%)
22:30 (米) 10月 小売売上高 前月比 (9月 0.0%、予想 1.0%)
22:30 (米) 10月 小売売上高・除自動車 前月比 (9月 0.1%、予想 0.5%)
22:30 (米) 10月 輸入物価指数 前月比 (9月 -1.2%、予想 -0.5%)
22:30 (米) 10月 輸出物価指数 前月比 (9月 -0.8%、予想 -0.2%)
23:15 (米) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 0.4%、予想 0.2%)
23:15 (米) 10月 設備稼働率 (9月 80.3%、予想 80.4%)
23:15 (英) ベイリー英中銀総裁、議会証言
23:50 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
24:00 (米) 11月 NAHB住宅市場指数 (10月 38、予想 36)
24:00 (米) 9月 企業在庫 前月比 (8月 0.8%、予想 0.5%)
24:00 (欧) ラガルドECB総裁、パネッタECB理事、講演
24:00 (米) バーFRB副議長、下院委員会証言
27:00 (米) 財務省20年債入札
28:35 (米) ウォラーFRB理事、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.12.14
来週の為替相場見通し:『ドル円は153円台半ばへ急伸。来週は日米金融政策イベントに注目』(12/14朝)
ドル円は12/3に記録した約2カ月ぶり安値148.64(10/11以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、一時153.69(11/26以来の高値圏)まで急伸しました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.12.13
東京市場のドルは一時153円台まで上昇、12月利上げ見送りムードがやや強まる(24/12/13)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、12月の全国企業短期経済観測調査(短観)の結果後、12月利上げ見送りムードがやや強まり、153円台まで上昇した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.12.13
ドル円 ドル続伸期待するも、上値は重く上げ渋りか(12/13夕)
東京市場はドルが底堅く推移。しかし上値は重く、153円台にしっかり乗せることは出来ていない。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2022.11.15
ドル円、ウォラー理事のタカ派発言を材料に急伸するも上値余地は限定的か(11/15朝)
ドル円は週明けオセアニア時間に約2ヵ月半ぶり安値138.48まで下げ幅を広げるも、米国勢参入後に高値140.79まで急伸しました
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。