『ドル円は約32年ぶり高値圏から急落するも下値余地は限定的か』
〇今週のドル円、金曜米国時間にかけて週間高値151.95へと急伸後、146.23まで急落
〇WSJ、12月FOMCでの利上げペース鈍化議論の公算と一部メンバーの利上げ減速希望を報じる
〇サンフランシスコ連銀デイリー総裁は利上げペースを落とす時期が近づいている可能性を指摘
〇上記二つで米長期金利上昇が緩んだところに、政府・日銀の覆面介入が加わったものか
〇ドル円は147円台半ばで越週
〇ユーロドル、週初英減税案撤回等に0.9873まで上昇後、一旦下げに転じるも0.9865レベルで越週
〇ドル円、テクニカルの地合い強く、ここからの下落余地は限定的か
〇ファンダメンタルズも日米金融政策の違い、本邦貿易赤字拡大からの構造的円売り等は不変
〇売り一巡後のドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):145.50ー149.50、(EURUSD):0.9600−1.0000
今週のレビュー(10/17−10/22)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初148.45で寄り付いた後、@政府・日銀による度重なる円安牽制や実弾介入を経ても尚「円売り地合い」が止まらないことに対する失望感や、A黒田日銀総裁による衆院予算委員会での「金融緩和を継続することが適切」とのハト派的な発言、B本邦個人投資家によるキャリートレードの活発化(外国為替証拠金取引におけるドル円売買額が9月に単月ベースで史上最多となる1000兆円を突破)、C本邦輸入企業による実需のドル買い、D米経済指標の良好な結果(米9月鉱工業生産、米9月設備稼働率、米9月建設許可件数、米新規失業保険申請件数、米9月中古住宅販売件数など)、E米当局者によるタカ派的な発言(ミネアポリス連銀カシュカリ総裁による「基調インフレがピークアウトしたとの確証を得られるまで利上げを一時停止する用意はない」との発言や、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁による「年末までに金利は4%を大きく上回る」との発言、クックFRB理事による「インフレは依然として容認できないほど高い」との発言など)、
F上記Eを背景とした米長期金利の急上昇(米10年債利回りは2007年以来となる4.33%へ急上昇)、G心理的節目150.00突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売りが支援材料となり、週末にかけて、週間高値151.95(1990年7月以来、約32年ぶり高値圏)へと急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、H米ウォールストリート・ジャーナル紙のニック記者(Fedウォッチャー)による「次回11月FOMCで75bpの利上げを決定し、その次の12月FOMCで50bpに利上げペースを鈍化させるか否かの議論を行う公算が大きい」「一部のFRBメンバは過度な景気悪化を警戒し利上げペースの減速や来年早々の利上げ停止を求めている」とのハト派的な発言や、
Iサンフランシスコ連銀デイリー総裁による「利上げペースを落とす時期が近づいている可能性がある」とのハト派的な発言、J上記HIを背景とした米長期金利の急低下(米10年債利回りは4.33%から4.20%へ急低下)、K政府・日銀による覆面介入実施の思惑が重石となり、週末海外時間には、週間安値146.23まで急落する場面も見られました。引けにかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間10/22午前5時00分現在)では、147.50前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初0.9726で寄り付いた後、@英国財政を巡る懸念の後退(クワーテング前財務相の後任として起用されたハント新財務相が「9/23に発表されたほぼすべての税制措置を撤回する」と発言→英財政懸念後退)や、A英フィナンシャル・タイムズ紙による「イングランド銀行は量的引き締めの開始時期を再延期する」とのポジティブ報道、B上記@Aを背景とした英ポンドの急上昇(英ポンド上昇→ユーロ連れ高)、C欧米株の堅調推移(リスクオンのドル売り圧力)、D米金利低下に伴うドル売り圧力が支援材料となり、翌10/18にかけて、週間高値0.9873まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、E英中銀が上記Aの報道を否定したこと(英ポンド下落→ユーロ連れ安)や、Fロシア・ウクライナを巡る地政学的リスク、
G欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中でのECBによる大幅利上げ観測)、H米FRBによるタカ派傾斜観測、I上記Hを背景とした米長期金利の急上昇(米10年債利回りが4.33%まで急上昇→欧米名目金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い)が重石となり、週末にかけて、週間安値0.9705まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、J米ウォールストリート・ジャーナル紙のニック記者によるハト派的な発言や、Kサンフランシスコ連銀デイリー総裁によるハト派的な発言、L上記JKを背景とした米長期金利の急低下(11月FOMCでの75bp利上げ確率は不変ながら、12月FOMCでの75bp利上げ確率が75%程度から45%程度へ急低下→米10年債利回りも4.33%から4.20%へ急低下→ドル売り再開)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間10/22午前5時00分現在)では、0.9865前後まで持ち直す動きとなっております。
来週の見通し(10/24−10/28)
<ドル円相場>
ドル円は9/22に記録した直近安値140.35をボトムに反発に転じると、週末にかけて、1990年7月以来、約32年3ヵ月ぶり高値となる151.95まで急伸しましたが、週末海外時間には一転して146.23まで急落する荒々しい値動きとなりました。但し、急落しても尚、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」が成立しているため、テクニカル的に見て、ここからの更なる下落は容易では無い(下値余地は限定的)と判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによるタカ派傾斜観測(次回11月FOMCでの75bp利上げを94.5%織り込むと共に、12月FOMCでの75bp利上げも45.4%程度織り込む動き→米10年債利回りは約14年ぶり高水準を記録)や、
A日銀による金融緩和の継続方針(黒田日銀総裁は先週の国際金融協会年次会合や、今週の衆院予算委員会で金融緩和の継続方針を再度強調)、B上記@Aを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に着目したキャリートレードの活発化。日米10年債利回りスプレッドは400bp超の水準まで急拡大)、C本邦貿易赤字拡大に伴う構造的な円売り圧力、D米政府・米当局によるドル高容認スタンス(バイデン米大統領による「ドル高を懸念していない。米国経済は力強い」と発言→国際協調介入の可能性が消失→単独介入のみでドル円上昇を食い止めることは難しいとの見方)、E本邦輸入企業による実需のドル買いなど、ドル高・円安トレンドの継続を連想させる材料が揃っています。
米ウォールストリート・ジャーナル紙のニック記者によるハト派的な発言や、タカ派と目されていたサンフランシスコ連銀デイリー総裁によるサプライズ的なハト派発言、政府・日銀による覆面介入実施の思惑を背景に、ドル円は151.95から146.23へと急落しましたが、一巡後は上記テクニカル要因・ファンダメンタルズ要因に沿った動きに戻ると見られ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします(円買い為替介入でドル円相場が押し下げられる局面は絶好の買い場になると判断。来週はブラックアウト期間突入で米当局者発言が予定されていないため、米ドル主導の下落も想定しづらく、結果としてドル円は自律反発に向かうと整理)。
尚、来週は日銀金融政策決定会合が予定されているものの、前回会合時に黒田総裁が「2・3年は変更が無い」と発言しているため、今回も金融政策の現状維持が決定されると考えられます(フォワードガイダンス修正などのサプライズは無いと予想)。それ以外には、米10月カンファレンスボード消費者信頼感指数や、米9月新築住宅販売件数、米第3四半期GDP速報値、米9月耐久財受注、米10月ミシガン大消費者信頼感指数などに注目が集まりそうです。米長期金利や政府・日銀による介入警戒感に振らされながらも、じりじりと値を戻すシナリオを想定いたします。
来週の予想レンジ(USDJPY):145.50ー149.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は上下しつつも方向感に欠ける値動きが続いております(0.97−0.99レンジの継続)。主要テクニカルポイント(一目均衡表基準線や転換線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線)もローソク足近辺に密集するなど、ロング・ショート共にポジションを傾けづらい状況が確認されます。但し、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」や「弱気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の下落トレンド」は点灯しているため、テクニカル的に見て、リスクは依然ダウンサイドと判断できます。
ファンダメンタルズ的に見ても、@欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中でのECBによる積極利上げは欧州経済にとっての強い逆風)や、Aロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念、B英国を巡る政局不透明感(トラス英首相の辞任に伴う政局不透明感)、C米FRBによるタカ派傾斜観測(欧米名目金利差拡大に伴う構造的なユーロ売り・ドル買い圧力)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。こうした中、来週はECB理事会に注目が集まります。
当方は75bpの利上げ実施に加えて、12月FOMCでの継続利上げ(50bp−75bp)が示唆されると予測していますが、年明け以降のQT(量的引き締め)開始を見越して来年以降の利上げペース鈍化を滲ませるのではないかと見ているため、ECB理事会後のユーロ下落を予想しています。また、上記以外にもユーロ圏10月PMIや、ドイツ10月IFO景況感指数の下振れリスクが警戒されているため、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(週末にかけて俄かに広がった米FRBによる利上げペース鈍化期待は長続きせず、すぐにドル高基調に戻るシナリオを想定)。
来週の予想レンジ(EURUSD):0.9600−1.0000
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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