ドル円見通し 145円到達では介入警戒感に抑えられ、夜は米長期債利回り大幅低下でドル安円高に(22/10/4)

ドル安感が強まったためにドル円は深夜安値で144.14円まで反落した。

ドル円見通し 145円到達では介入警戒感に抑えられ、夜は米長期債利回り大幅低下でドル安円高に(22/10/4)

145円到達では介入警戒感に抑えられ、夜は米長期債利回り大幅低下でドル安円高に

〇ドル円、10/3午後145.30近辺に上昇、いったん145円を割り込むも夜に145.20をつける
〇その後米長期債利回り低下とドル安感の強まりから深夜144.14まで反落、10/4早朝144.79へ切り返す
〇市場心理としては、9/22高値145.89に迫るところで第二弾実弾介入があるのかを試す状況に入った印象
〇9月米製造業景況指数は低下、利上げペース鈍化への期待からNYダウ急伸、米長期金利大幅低下
〇145円以下での推移中はまだ一段安余地ありとし、144.14割れからは143円台中盤への下落を想定する
〇145円超えから上向きとし、145.20や145.30試し、さらに切り上がるなら145.89試しへ向かうとみる

【概況】

ドル円は9月26日に144円台へ乗せてからは145円に届かずに144円割れを買われて144円台中心の持ち合いでの推移が続いてきた。9月26日午前へ暴落的な下げに見舞われてきたポンドドルが反騰に転じ、28日以降はユーロ等も戻してドル高が緩んだことと145円近辺での市場介入警戒感からドル円の上値は抑えられつつも米国の大幅利上げ継続姿勢と日銀のマイナス金利維持によるスタンスの差を意識して高止まりが続いていた。

10月3日午後には145.30円近辺に上昇、いったん145円を割り込んだところから3日夜には145.20円をつけたが、鈴木財務相による円安けん制発言や、ISM製造業景況指数が予想以上に悪化したことによる米長期債利回り低下及び英国がポンド暴落のきっかけとなった大規模減税政策の撤回を発表したことからポンドが一段高、ユーロは高止まりだったものの豪ドルの反騰などでドル安感が強まったためにドル円は深夜安値で144.14円まで反落した。144円台序盤は押し目買いされて戻し、4日早朝には144.79円へ切り返していたが、北朝鮮が日本列島上空を超える中距離弾道ミサイルを発射したとの報道によるリスク回避感で上値が抑えられて144.40円台へ失速気味の動きとなっている。

【介入警戒感とドル全面高の一服感、145円台を覗きつつもまだ慎重な動き】

ドル円が145円台をつけたことに対して鈴木財務相は「必要に応じて断固たる措置をとる考えに変更はない」と改めて円安をけん制したが、具体的なレートチェックや実弾介入は見られなかったようだ。
政府日銀は9月22日夕刻に2兆8千億円規模で24年ぶりとなる円買い介入を実施したためにドル円は直前高値145.89円から22日夜安値140.34円まで5.55円の円高ドル安となる急落に見舞われたが、数時間の急落後は日米金融政策姿勢の差を反映した円安基調は継続するとみての買い戻しが優勢となり、介入による下落幅に対して8割を戻してきた。

市場介入に先立って9月14日に144.95円をつけたところで日銀が複数行に介入を示唆するようなレートチェックを行ったことで介入後のリバウンドでは144.95円手前に抵抗感があったのだが、10月3日の午後と夜に145円台をつけたところでは口先介入のトーンは上がらず、市場自身が介入警戒感と全般ドル安を意識していったん仕切り直しで下げたという印象だ。
しかし、再び145円をつけたところでの実弾介入は見られなかったため、市場心理としては9月22日高値に迫るところで第二弾の実弾介入があるのかどうかを挑発的に試す状況に入ってきた印象がある。1998年の円買い介入時は4月9日と10日、6月17日の三回の介入が実施されている。

【NYダウが急反騰、米長期金利は大幅低下】

米サプライ管理協会(ISM)が発表した9月米製造業景況指数は50.9となり8月の52.8から低下して市場予想の52.2を下回った。パンデミック発生ショック直後の2020年5月以来の低水準となったため、景気後退を意識して米FRBの超大幅利上げペースが鈍化するのではないかとの期待感から米長期債利回りが低下、NYダウが急伸、為替市場はドル安が進行した。
NYダウは前日比765.38ドル高と急伸した。8月16日高値からの下落基調が続いて9月20日から27日まで6営業日続落し、29日から30日にかけても2日間で千ドル近い続落となり年初の史上最高値以降の安値を更新したが、英政府がポンド暴落のきっかけとなった大規模減税政策を撤回したこと、米長期債利回り低下を好感して買い戻しが入った印象だ。ナスダック総合指数も239.82ポイント高と反騰し、9月30日への下落で6月16日につけた昨年11月の史上最高値以降の安値に迫っていたものの安値更新をひとまず回避した。

一方で米長期債利回りは利上げペースが鈍化するのではないかとの見方から総じて大幅低下した。指標の米10年債利回りは先週末比0.19%低下の3.64%、30年債利回りは0.11%低下の3.68%、2年債利回りは0.17%低下の4.12%となった。10年債利回りが4%到達まで上昇したことにより米FRBのタカ派姿勢を反映した大上昇にも一服感が出ている印象だ。

米経済指標が弱い数字を続けて今週末の米雇用統計でも鈍化がみられる場合には米FOMCによる利上げペースも年末から来年序盤にかけて鈍化するのではないかとの見方が背景だが、「FRBのインフレ率目標は2%であり、実質金利がマイナス状態にある現状ではインフレを抑えきれず、実質金利がプラス圏に入って引き締め感が強まらない限り目標を達成できないとすれば、よほど顕著にインフレ指標が大幅低下しないことには「景気よりも物価抑制が最重要課題」としてきたバイデン政権及びFRBとしては利上げペースを簡単には緩めないのではないかと思われる。

米ニューヨーク連邦準備銀行のウィリアムズ総裁は10月3日に「広範囲のインフレを抑制するには時間がかかる」「インフレはあまりに高すぎ、高インフレは経済がその潜在力のすべてを発揮する能力を損なう」と述べてインフレ抑制への強固な姿勢を改めて示している。また「金融引き締めによる経済活動の減速で今年の実質GDP成長率はほぼ横ばい、2023年は緩やかな成長に留まる」とし、「物価上昇率は来年に3%程度まで下がるものの政策目標の2%に近づくには数年かかる」と述べている。
10月3日はポンドが一段高、ユーロが高止まりだが、9月後半からのドル安も長続きせずにドル高がぶり返す印象が強まり始めれば、ドル円としては目先はやや調整的な下げが入ったとしても下げたところを買い拾われ、上昇局面では市場介入の強固さを試しつつ9月22日高値超えを目指しても不思議ないと思われる。

【サイクル分析・60分足一目均衡表】

【サイクル分析・60分足一目均衡表】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、9月22日暴落からのリバウンド一巡により9月28日未明高値でサイクルトップを付けて下落したが、9月29日未明の144円割れで直近のサイクルボトムをつけて戻しているところとし、9月30日午前時点では10月1日未明から5日未明にかけての間への上昇を想定していたが、10月3日夜に145.20円までジリ高となってから144円台序盤へ反落したため、3日夜高値で直近のサイクルトップを付けて弱気サイクル入りしていると思われる。ボトム形成期は3日深夜から6日未明にかけての間と想定されるのですでに反騰注意期にあるため、145.20円を超えないうちは143円台への下落余地ありとし、145.20円超えからは新たな強気サイクル入りとして6日夜から10日夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では144円台中心での持ち合い推移のために方向感に欠ける。先行スパンから転落しているところでは遅行スパン悪化中の安値試し優先とするが、145円を再び超えるところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は9月30日夕と10月3日夜の下落時には0ポイントを割り込んだところで買われている。50ポイント台を回復できないうちは一段安余地ありとし、40ポイント割れを早々に切り返せない場合は30ポイント割れを試す可能性があると見るが、50ポイント超えからは上昇再開の可能性を優勢して60ポイント台を目指す流れを予想する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、10月3日深夜安値144.14円を下値支持線、10月3日夜高値145.20円上値抵抗線とする。
(2)145円以下での推移中はまだ一段安余地ありとし、144.14円割れからは143円台中盤(143.70円から143.30円)への下落を想定する。143.50円以下は反騰注意とするが、ドル全面安が続く場合は143円台序盤へ向かう可能性もあると注意する。
(3)145円超えからは上向きとし、145.20円近辺や145.30円試しを想定、さらに切り上がる場合は9月22日高値145.89円試しへ向かうとみる。22日高値に届くかどうかは介入状況次第であり、口先介入だけでは抑えきれない可能性もあるものの、実弾介入の第二弾がある場合は高値から2円超規模の反落も発生しかねないと注意する。

【当面の主な予定】

10/4(火)
休場、中国、香港
12:30 (豪) 豪中銀(RBA) 政策金利 (現行 2.35%、予想 2.85%)
18:00 (欧) 8月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (7月 4.0%、予想 5.0%)
18:00 (欧) 8月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (7月 37.9%、予想 43.2%)
22:00 (米) ローガン・ダラス連銀総裁裁、アトランタ連銀主催イベント挨拶
22:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、同連銀主催イベント開会・閉会挨拶
23:00 (米) 8月 製造業新規受注 前月比 (7月 -1.0%、予想 0.0%)
23:00 (米) 8月 雇用動態調査・JOLT
24:45 (米) ジェファーソンFRB理事、講演
26:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演

10/5(水)
休場、中国、インド
OPECプラス閣僚級会合
10:00 (NZ) ニュージーランド中銀(RBNZ) 政策金利 (現行 3.00%、予想 3.50%)
15:00 (独) 8月 貿易収支 (7月 54億ユーロ)
16:55 (独) 9月 サービス業PMI改定値 (速報 45.4、予想 45.4)
17:00 (欧) 9月 サービス業PMI改定値 (速報 48.9、予想 48.9)
17:30 (英) 9月 サービス業PMI改定値 (速報 49.2、予想 49.2)
21:15 (米) 9月 ADP非農業部門就業者数 前月比 (8月 13.2万人、予想 20.0万人)
21:30 (米) 8月 貿易収支 (7月 -707億ドル、予想 -679億ドル)
22:45 (米) 9月 サービス業PMI改定値 (8月 49.2、予想 49.2)
23:00 (米) 9月 ISMサービス業景況指数 (8月 56.9、予想 56.0)
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
29:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁裁、講演


注:ポイント要約は編集部

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