ドル円見通し 9月14日のレートチェック時水準手前へ切り返す
〇ドル円、市場介入に対する売り一巡後買い戻し優勢、9/26に144円台へ乗せ、9/27未明144.78まで上昇
〇現状はレートチェック水準を再び接近、市場は介入第二弾があるかどうか試しているところか
〇9/22の市場介入は3兆円規模、単日としては過去最大規模だったとの見方が有力
〇米長期金利の上昇基調継続、9/26はFRB高官によるタカ派発言相次ぐ、NYダウは5日続落
〇144円以上での推移中は一段高余地ありとし、144.78超えからは145円突破を試すとみる
〇143.50割れからはいったん下げに入るとみて、142円台後半への下落を想定する
【概況】
ドル円は9月22日夕刻に政府・日銀が市場介入としては11年ぶり、円安阻止の円買い介入としては24年ぶりの市場介入を実施したことで22日夕刻高値145.89円から22日夜安値140.34円まで5.55円の下げ幅となる暴落的な下落に見舞われたが、突然の市場介入に対するサプライズ的な売りが一巡した後は買い戻し優勢となり、23日夜には143円台へ戻し、26日は144円台へ乗せて27日未明には144.78円まで高値を切り上げた。この間の戻り幅は4.44円となり介入暴落幅に対して丁度8割を戻した。
9月22日に日銀が市場介入する前段階として9月14日には複数行へのレートチェックが入ったとの報道で直前高値144.95円から14日夜安値142.54円へ2円を超える急落となり、22日にレートチェック時の高値を超えて145円台へ乗せたことで介入実施となった。この流れを踏まえれば現状はレートチェック水準を再び試しているところであり、レートチェックないしは介入第二弾が実施されるのかどうかを試しているところと思われる。
【9月22日の市場介入は3兆円規模】
9月22日の市場介入規模については凡そ3兆円を上回る規模とされ、1998年4月10日に介入した時の2兆6201億円を超えて単日としては過去最大規模だったとの見方が有力となっている。介入時の決済は2営業日後となる9月27日には判明する模様だ。
1998年の市場介入では4月9日に1957億円、4月10日に2兆6201億円を使い、直前の高値であった4月3日高値135.42円から4月10日安値127.35円まで8.07円の急落が発生したが1か月後の5月10日には4月3日高値を更新されている。6月17日に三弾目として2312億円が使われたところでは、直前の6月16日高値146.75円から6月19日安値133.60円まで13.15円の急落が発生したものの早々に切り返しに入り8月11日に147.63円の天井を付けている。
三度目の介入では高値更新が小幅だったものの、145円に対する高値警戒感が強まったことで下落基調に転じて1999年1月には108.17円まで大幅下落している。
ファンダメンタルズは円安ドル高有利の状況で変わらないため、今回も二度目、三度目の介入があるのかどうか市場は試してゆくことになるのだろう。
黒田日銀総裁は9月26日の会見で今回の介入については「財務相の判断によるもの」「過度な変動に対する必要な対応で適切」、「これまでの急速かつ、一方的な動きは我が国経済にとってマイナス、望ましくない」と述べた。また金融緩和政策を維持する一方で市場介入を行うことについては「何ら矛盾はない」、「為替介入と金融政策は目的も効果も違うがそれが組み合わされてより適切な状況が実現される」と正当性を主張し、総裁任期満了となる来年4月まで「当然、金融緩和は続くとみている」と述べた。
【米長期金利の上昇続く、NYダウは5日続落】
米長期債利回りの上昇基調は継続している。指標の10年債利回りは先週末比0.25%上昇の3.93%で2010年4月以来の高水準となった。30年債利回りも同0.14%上昇の3.75%、2年債利回りは同0.14%上昇の4.35%となり15年ぶり高値更新を続けている。
米FOMCが年末及び来年の政策金利想定水準を上方修正したことにより、今後のインフレ指標次第ではさらに利上げ想定水準を上方修正する可能性もあると市場は見ているようだ。
9月26日にはFRB高官によるタカ派発言も相次いだ。アトランタ連銀のボスティック総裁は市場の乱高下に対しても「より重要なのはインフレを制御する必要があるということ」、「インフレが制御されるまで市場ではあらゆる方向で変動が多くなる」と金融市場全般の動揺もあり得ることとしたが「インフレは高すぎる」「やるべきことはまだある」とタカ派姿勢を強調した。
クリーブランド連銀のメスター総裁は「政策金利の一段の引き上げが必要」「インフレがピークに達したと判断するには数か月にわたってインフレ率が前月比で低下することを確認する必要がある」とした。
主要国の金融引き締めが一層強化される流れの中、NYダウは前日比329.60ドル安と下落、9月20日からは5営業日続落だが、9月13日に前日比1276.37ドル安の今年最大の下落から続落基調で推移し、年初来の最安値を更新している。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、9月22日夕高値を前回のサイクルトップ、22日夜安値を同サイクルボトムとして強気サイクル入りしてきた。高値形成期は27日夕から29日夕にかけての間と想定されるがレートチェックや介入等への警戒感も高まる状況のため144円割れを弱気転換注意とし143.50円割れからは弱気サイクル入りの可能性を優先して27日夜から29日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では9月22日夜安値からの反騰継続で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、高値更新が続かないと遅行スパンは悪化しやすいと注意し、遅行スパン悪化からは安値試し優先とする。また先行スパンからの転落を回避して遅行スパンが再び好転する場合は上昇再開とするが、先行スパンから転落する場合は下げ足が早まると警戒する。
60分足の相対力指数は9月26日の日中から27日未明への高値切り上げに際して指数のピークが切り下がり弱気逆行の気配となっているので、50ポイント以上での推移中はまだ一段高余地ありとするものの50ポイント割れから続落に入る場合は戻り一巡による下落期とみて30ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、144.00円を下値支持線、9月27日未明高値144.78円を上値抵抗線とする。
(2)144円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは一段高余地ありとし、144.78円超えからは145円突破を試し、145円乗せからは145円台中盤(145.30円から145.70円)を目指すとみる。
(3)143.50円割れからはいったん下げに入るとみて142円台後半への下落を想定する。142.70円以下は反騰注意とするが、143.50円を割り込んでの推移なら28日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
9/27(火)
19:15 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演
20:00 (英) ピル英中銀チーフエコノミスト、講演
20:30 (米) パウエルFRB議長、デジタル通貨関連討論会
21:30 (米) 8月 耐久財受注 前月比 (7月 0.0%、予想 -0.4%)
21:30 (米) 8月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (7月 0.3%、予想 0.2%)
22:00 (米) 7月 米連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (6月 0.1%、予想 0.0%)
22:00 (米) 7月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (6月 18.7%、予想 17.0%)
22:15 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
22:55 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
23:00 (米) 9月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (8月 103.2、予想 104.5)
23:00 (米) 9月 リッチモンド連銀製造業指数 (8月 -8、予想 -10)
23:00 (米) 8月 新築住宅販売件数・年率換算 (7月 51.1万件、予想 50.0万件)
23:00 (米) 8月 新築住宅販売件数 前月比 (7月 -12.6%、予想 -2.2%)
26:00 (米) 財務省5年債入札
9/28(水)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨(7/20-21開催分)
09:35 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、オンライン質疑応答
10:30 (豪) 8月 小売売上高 前月比 (7月 1.3%、予想 0.5%)
14:00 (日) 7月 景気先行指数CI改定値 (速報 99.6)
15:00 (独) 10月 GFK消費者信頼感 (9月 -36.5、予想 -39.0)
16:15 (欧) ラガルドECB総裁、講演
17:15 (英) カンリフ英中銀副総裁、講演
21:30 (米) 8月 卸売在庫 前月比 (7月 0.6%、予想 0.5%)
21:35 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、質疑応答
23:00 (米) 8月 住宅販売保留指数 前月比 (7月 -1.0%)
23:00 (米) 8月 住宅販売保留指数 前年同月比 (7月 -22.5%)
23:10 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、イベント開会挨拶
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
26:00 (米) 7年債、変動利付2年債入札
27:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、質疑応答
27:00 (英) ディングラ英中銀委員、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2022.09.27
ドル円、144円台後半へ急伸。但し、介入警戒感が燻る中、続伸余地は限定的か(9/27朝)
週明け26日(月)のドル円相場は堅調な値動き。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。