『米金利急騰に伴うドル高圧力vs本邦通貨当局の円買い為替介入』
〇今週のドル円、9/22に98年8月以来の145.90まで急伸
〇FOMCの0.75%利上げ実施とドットチャート上方修正による来年の利下げ期待消失、
〇日銀金融政策決定後の日銀黒田総裁のハト派的な発言等に仕掛け的な動きが反応
〇その後政府・日銀によるサプライズ的円買い為替介入で140.35まで急落、143.30前後で越週
〇ユーロドル、週末にかけ一時0.9668まで急落
〇ロシアの部分動員開始による地政学リスク再燃、ユーロ圏消費者信頼感の悪化等が背景
〇ドル円大荒れの一週間だがテクニカルの地合い崩れておらず、ファンダメンタルズもドル円上昇示唆
〇一方、まさかの円買い為替介入実施でドル円相場がすぐに145円台に持ち直すことも想定しづらい
〇中長期的なドル円上昇シナリオを想定しつつも、短期的なドル円下落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):140.50ー144.50、(EURUSD):0.9450−0.9850
今週のレビュー(9/19−9/23)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初142.96で寄り付いた後、@本邦8月消費者物価指数(結果+3.0%、予想+2.8%、前回+2.6%)の伸び率上昇や、A本邦8月消費者物価コア指数(結果+2.8%、予想+2.7%、前回+2.4%)の伸び率上昇、B上記@Aを背景とした実質金利の更なる低下、C米8月住宅着工件数(結果157.5万件、予想145.5万件、前回140.4万件)の市場予想を上回る結果、D対ユーロでのドル買い圧力(ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスク再燃→ユーロ売り)、E米FOMCの3会合連続となる75bpの大幅連続利上げ決定、Fドットチャートの大幅上方修正(2022年末の中央値を前回の3.4%から4.4%へ上方修正。2023年末の中央値も前回の3.8%から4.6%へ上方修正→次回11月FOMCでの75bp利上げと12月FOMCでの50bp利上げを織り込むと共に来年の利下げ期待が完全消失)、
G上記Fを背景とした米長期金利の急上昇とそれに伴うドル全面高、H日銀金融政策決定会合での金融緩和政策の現状維持決定、I黒田日銀総裁による「必要であれば躊躇なく追加的な緩和措置を講じる」「当面は金利を引き上げない」とのハト派的な発言、J日米金融政策格差を背景としたドル買い・円売り(日米名目金利差拡大)、K心理的節目145.00突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売りが支援材料となり、9/22日本時間16:30過ぎに、1998年8月以来、約24年1ヵ月ぶり高値となる145.90まで急伸しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、L日本政府・日銀によるサプライズ的な円買い為替介入や、M本邦通貨当局者からの相次ぐ円安牽制発言(鈴木財務相や神田財務官による「引き続き過度な変動に対しては必要な対応をとる」との追加介入を示唆する発言)、Nドル円ロングの大規模ロスカットが重石となり、同日海外時間(9/22日本時間21:45過ぎ)に、週間安値140.35まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、週末にかけて持ち直し、本稿執筆時点(日本時間9/24午前4時30分現在)では、143.30前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0030で寄り付いた後、@レーンECB専務理事兼主任エコノミストによる「ECBは来年も利上げを継続する可能性がある」とのタカ派的な発言や、Aドイツ連銀ナーゲル総裁による「インフレを抑制するためにECBは利上げを続ける」とのタカ派的な発言、B上記@Aを背景としたECBによる金利先高観、C米金利低下に伴うドル売り圧力が支援材料となり、翌9/20にかけて、週間高値1.0051まで上昇しました。
しかし、一目均衡表転換線および基準線に続伸を阻まれると、D対スウェーデンクローナでのユーロ売り圧力(スウェーデン中銀のリクスバンクが市場予想の75bp利上げを上回る100bpのサプライズ利上げを決定→EURSEK急落→ユーロドル連れ安)や、Eプーチン露大統領による「部分動員開始」発言(ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスク再燃→市場心理悪化→ユーロ下落)、F米FOMCのタカ派的な結果(3会合連続となる75bp利上げに加えてドットチャートで2022年末および2023年末の中央値が大幅上方修正)、
Gユーロ圏9月消費者信頼感指数(結果▲28.8、予想▲25.8、前回▲25.0)の冴えない結果(過去最低を記録)や、H米金利上昇に伴うドル買い圧力(米10年債利回りは2010年4月以来の高水準となる3.80%へ急上昇→米ドル指数が2002年5月以来、約20年4ヵ月ぶり高水準へ急上昇)が重石となり、週末にかけて、週間安値0.9668(2002年9月以来、約20年ぶり安値圏)まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間9/24午前4時30分現在)では、0.9685前後で推移しております。
来週の見通し(9/26−9/30)
<ドル円相場>
ドル円(USDJPY)は145.90から僅か1時間弱で140.35まで暴落する大荒れの1週間となりました。但し、ダウンサイドに複数のサポートポイントを控えていること(週後半の暴落局面においても心理的節目140.00や一目均衡表基準線がサポートとして確り機能)や、日足・週足・月足の全てで強い買いシグナル(一目均衡表三役好転や強気のパーフェクトオーダー、ダウ理論の上昇トレンド)が継続点灯していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは崩れていないと判断できます(円買い介入で急落するも中長期上昇トレンドは継続中)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによるタカ派傾斜観測(今週発表された米FOMCで75bpの大幅利上げが決定された他、ドットチャートも市場予想を上回る極めてタカ派的な結果→次回11月FOMCでの75bp利上げや12月FOMCでの50bp利上げを織り込むと共に、来年後半以降の利下げ期待を一蹴)や、A日銀による金融緩和の継続方針(日銀金融政策決定会合で金融緩和の継続が発表された他、黒田総裁も「必要であれば躊躇なく追加的な緩和措置を講じる」「当面は金利を引き上げない」とハト派的な発言)、B上記@Aを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り。米10年債利回りが3.80%まで急上昇する一方、日本の10年債利回りは0.25%付近で低位安定)、C日本とその他先進国との金融政策格差(今週は米国に加えて、英国、スイス、ノルウェー、インドネシア、フィリピン、台湾、香港が利上げを実施。また、スイス中銀のマイナス金利脱却が実現したことで日本が世界で唯一のマイナス金利導入国へ)、
D米政府・米当局によるドル高容認スタンス(米国はインフレ抑制に繋がるドル高を強力に支持する構え)、E本邦貿易赤字拡大に伴う構造的な円売り圧力(先週発表された米8月貿易収支は過去最大の赤字額を記録)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。
このように、テクニカル面、ファンダメンタルズ面共に「ドル買い・円売り」を連想させるドル円相場ではあるものの、日本政府・日銀がまさかの円買い為替介入(単独介入)に踏み切った以上、すぐにドル円相場が元の位置(145円台)に持ち直すことも想定しづらく(介入警戒感が燻るため投資家は上値を追いづらい)、当方では中長期的なドル円上昇シナリオを想定しつつも、短期的なドル円下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は米経済指標(米8月耐久財受注、米9月CB消費者信頼感指数、米8月新築住宅販売件数、米第2四半期GDP、米8月PCEデフレータ)や、米当局者発言(ボストン連銀コリンズ総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁、シカゴ連銀エバンス総裁、サンフランシスコ連銀デイリー総裁、クリーブランド連銀メスター総裁)など重要イベントが目白押しとなりますが、ドル円に関しては、本邦通貨当局の一挙手一投足(円安牽制発言やレートチェック、実弾介入や介入に関するフェイクニュースなど)に揺さぶられる神経質な1週間となりそうです。
来週の予想レンジ(USDJPY):140.50ー144.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル(EURUSD)は、9/7に記録した直近安値0.9863を下方ブレイクすると、週末にかけて、2002年9月以来、約20年ぶり安値となる0.9668まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線といった主要サポートポイントを軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転や弱気のパーフェクトオーダー、弱気のバンドウォーク、ダウ理論の下落トレンドの全てが成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは極めて弱いと判断できます。これまではオプション絡みのマグネット効果でパリティ(1.0000)を挟んでの上下動が続いていましたが、今週はパリティを明確に下放れする動きとなっており、来週以降もう一段下げ足を速める展開が警戒されます。
ファンダメンタルズ的に見ても、@欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中でのECBによる金融引き締め強化は欧州経済への逆風を通じて欧州株下落・ユーロ下落に繋がる悪循環)や、Aロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの再燃(プーチン大統領による予備役など国民を部分的に動員する大統領令署名を受けてウクライナ情勢が再び悪化→エネルギー危機再開への警戒感などからユーロが対主要通貨で下落)、B欧米名目金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い圧力(ECB以上に米FOMCがタカ派的なスタンスを示唆)、C米政府・米当局によるドル高容認スタンス、Dイタリアを巡る政局不透明感(9/25にイタリア総選挙が予定)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ安・ドル高トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週はドイツ9月IFO景況感指数や、ドイツ9月消費者物価指数、ユーロ圏9月消費者物価指数に加えて、欧州当局者発言(ラガルドECB総裁、リトアニア中銀シムカス総裁、ポルトガル中銀センテノ総裁、フランス中銀ビルロワドガロー総裁、オランダ中銀クノット総裁、エルダーソンECB専務理事、フィンランド中銀レーン総裁、デギンドスECB副総裁、ラトビア中銀カザークス総裁、エストニア中銀ミュラー総裁、レーンECB専務理事など)に注目が集まります。特に週明け早々に発表されるドイツ9月IFO景況感指数が市場予想を下回る場合には、欧州経済を巡る悲観的な見方を通じて、ユーロドルに強い下押し圧力が加わる恐れがあるため、来週も週を通してユーロドルの下落リスクに警戒が必要でしょう(目先は2002年9月17日に記録した安値0.9603を試すシナリオを想定)。
来週の予想レンジ(EURUSD):0.9450−0.9850
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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