ドル円見通し 132円台到達で20円ぶり円安水準、円安容認の限界を試す動き続く(22/6/7)

7日未明には132円台に到達、7日午前序盤には132.30円台へ高値を伸ばしている。

ドル円見通し 132円台到達で20円ぶり円安水準、円安容認の限界を試す動き続く(22/6/7)

ドル円見通し 132円台到達で20円ぶり円安水準、円安容認の限界を試す動き続く

〇ドル円、6/6昼過ぎ130.41まで下落するも、6/7未明132円台到達、6/7午前序盤に132.30台へ上昇
〇日銀総裁発言から円安再開へ向かい始め、米長期債利回りの上昇基調継続によりドル高感が強まる
〇黒田日銀総裁、6/6の講演で金融引き締めへの転換を否定する発言
〇米10年債利回りは3.04%へ大幅上昇、米連銀が年後半も大幅利上げペースで進む見方が浮上
〇日銀総裁が円安の容認水準を示さないことから、円安容認限界を試すような動きに傾斜か
〇131.50以上での推移中は、133円を目指すとみる
〇131.50割れからは、131円前後試しとその後の反騰注意とみる

【概況】

ドル円は先週末の6月3日深夜に130.98円をつけて131円にあと一歩と迫ったところから小調整となり6日昼過ぎには130.41円まで軟化していたが、日銀黒田総裁による「金融引き締めを行う状況に全くない」との発言から円安再開へ向かい始め、夜に入ると米長期債利回りが先週末からの上昇基調を継続したことでドルストレートでのドル高感が強まり、日米金利差を意識して7日未明には132円台に到達、7日午前序盤には132.30円台へ高値を伸ばしている。

【黒田日銀総裁、金融引き締めへの転換を全否定】

日銀の黒田総裁は6日の講演において、「日本経済は資源価格上昇による下押し圧力を受けており金融引き締めを行う状況にはまったくない」と述べた。為替動向については「急激な変動ではなく安定的な円安方向であれば経済全体としてはプラスに作用する可能性が高い」「円安の恩恵により収益が改善した企業が設備投資をしたり賃金を引き上げたりすることで前向きな循環が強まる」と述べた。
総裁は物価上昇に関して「企業の価格設定スタンスが引き上げへ積極化している中で家計の値上げ許容度も高まっている」、「持続的な物価上昇の実現を目指す観点からは重要な変化」、「目標とする2%の物価上昇の安定的な実現に向けて賃金と物価が相乗的に上昇していく好循環をつくり出す必要がある」などと述べた。

日銀は4月28日の前回金融政策決定会合でマイナス金利と量的緩和の維持を決定し、さらに毎営業日における指値オペによる長期金利上昇抑制を強く打ち出したため、ドル円は同日高値で131.24円へ上昇、いったん材料消化で下げてから5月9日には米長期債利回り上昇を背景に131.34円へ上昇した。二度目の131円台到達でダブルトップ型形成となり高値警戒感も出たことと、米長期債利回りが大上昇一巡で低下に転じたことで5月24日夜安値126.35円まで4.99円の下落となったが、米長期債利回りが再び上昇し始め、日銀が金融緩和政策を全く変える気がないことからドル円は騰勢を回復している。

【米10年債利回り大幅上昇】

6月6日の米10年債利回りは前日比0.10%高の3.04%へと上昇した。5月9日に3.20%をつけて2018年10月の3.26%以来の水準に達したところで上昇一服となり5月26日には2.70%まで低下していたが、先週から上昇再開に入り3%台を回復してきた。2年債利回りも前日比0.07%高の2.73%へ上昇しており、5月11日に付けた2.86%まではまだ距離があるものの日足の終値ベースでは5月2日の2.73%と並びパンデミック発生以降の最高値となっている。
米連銀は3月に0.25%の利上げをし、5月には通常ペースの倍となる0.50%の利上げを決定して6月と7月にも0.50%ずつの利上げを行う方針を示した。その後についてはいったん様子見に入るのではないかとの見方も出始めたことで5月9日から調整的な低下へ進んでいたのだが、先週からは年後半への利上げも大幅利上げペースで進む可能性もあるとの見方が浮上している。

日銀がマイナス金利の維持と指値オペによる長期債利回り上昇抑制を主方針としている以上、日米金利差は一時的な調整で縮小する局面を入れつつも拡大基調で推移し、円安を助長する状況が続くと思われる。また景気回復力が鈍く賃金上昇と消費拡大が弱い状況では円安による一部輸出企業へのプラス効果、通貨インフレによる株価の名目的な押し上げには効果があり、金融緩和から中立化へ動くこともままならない印象だ。
米財務省は6月7日に3年債440億ドル、8日に10年債330億ドル、8日に30年債190億ドルの合計960億ドルの国債入札を予定している。
NYダウは前日比16.08ドル高と小幅高、ナスダック総合指数は48.64ポイント高だった。

【2021年1月底から三段目の上昇期】

現在のドル円上昇は2021年1月6日安値102.57円を起点としている。2021年3月31日高値110.96円への上昇を一段目とすれば、今年5月9日高値131.34円までの上昇が長い二段目であり、5月24日までの短期的な急落でこの間の最大の下げ幅となったところを新たな起点として三段目の上昇に入ったと思われる。
5月24日への下げ幅の倍返しは136.33円、過去のチャートにおける目安となる高値は2002年1月31日天井の135.15円、その上は1998年8月11日天井の147.69円にある。

黒田総裁が円安の容認水準を示さず、現状の円安について肯定的とも受け止められる発言を繰り返していることで市場としては新たな黒田ラインが存在するのかどうかを含めて円安容認限界を試してゆくような円売り攻勢に傾斜していると思われる。130円到達時点でさほどのけん制が無かったことを踏まえれば、135円到達でもけん制への焦りがみられないとなれば140円台を目指す声も強まるのではないかと思われる。また投資家にとっては円安による名目的押し上げによる株高期待と為替市場におけるドル買い円売りないしはクロス円全般での買い増しへと積極的になりやすい市場心理といえるだろう。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、5月24日夜安値の後を127円を挟んだ持ち合いとして5月30日夜から持ち合い上放れに入ったため、持ち合いの終点となる5月27日夜安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとして5月31日午前から6月2日午前にかけての間への上昇を想定していたが、6月2日午前高値から2日夜安値へいったん反落したために6月3日午前時点では6月2日午前高値を直近のサイクルトップとし、高値更新からは新たな強気サイクル入りとして7日午前から9日午前にかけての間への上昇を想定するとした。
6月3日夜に一段高へ入りその後も続伸しているため、現状は6月2日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクルの上昇期と思われる。弱気転換には直前高値から1円を超える規模の反落が必要と思われ、そのような急落が入らないうちは7日の日中から9日午前にかけての間へ高値試しを続けやすいとみる。

60分足の一目均衡表では6月3日夜への上昇で遅行スパンが好転、先行スパンを上抜いた状況も継続しているため、遅行スパン好転中は高値試し優先とし、遅行スパンが一時的に悪化しても先行スパンを上回る状況が続くうちはその後に遅行スパンが好転し直すところから上昇再開とみる。5月末からの上昇基調が崩れるには先行スパンから転落する必要があると思われる。

60分足の相対力指数は6月2日深夜、3日深夜、6日深夜の高値形成時に80ポイントを繰り返しつけているが、50ポイント前後へ突っ込んだところから反騰しているので、50ポイント割れからさらに続落するような下落が発生しないうちは多少の突っ込みも買い拾われやすい状況と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、131.50円を下値支持線、133円を上値抵抗線とする。
(2)131.50円以上での推移中は133円を目指すとみる。133円到達では売られやすいとみるが、高値から0.50円を超える規模の反落水準は押し目買いされやすいとみる。勢い付く場合は133円台中盤(133.30円から133.70円)へ上値目途を引き上げる。
(3)131.50円割れからは131円前後試しとその後の反騰注意とみる。

【当面の主な予定】

6/7(火)
世界銀行、世界経済見通し
13:30 (豪) 豪中銀、政策金利 (現行 0.35%、予想 0.75%)
14:00 (日) 4月 景気先行指数CI速報値 (3月 100.8、予想 102.5)
14:00 (日) 4月 景気一致指数CI速報値 (3月 97.5、予想 97.4)
15:00 (独) 4月 製造業新規受注 前月比 (3月 -4.7%、予想 0.3%)
15:00 (独) 4月 製造業新規受注 前年同月比 (3月 -3.1%、予想 -4.1%)
17:30 (英) 5月 サービス業PMI改定値 (4月 51.8、予想 51.8)
21:30 (米) 4月 貿易収支 (3月 -1098億ドル、予想 -890億ドル)
26:00 (米) 財務省3年債入札
28:00 (米) 4月 消費者信用残高 前月比 (3月 524.4億ドル、予想 350.0億ドル)

6/8(水)
OECD経済見通し、OECD閣僚理事会(6/10まで)
ロシア外相、トルコ訪問
08:50 (日) 1-3月期 GDP改定値 前期比 (10-12月 -0.2%、予想 -0.3%)
08:50 (日) 1-3月期 GDP改定値 年率換算 (10-12月 -1.0%、 予想 -1.1%)
08:50 (日) 4月 経常収支・季調前 (3月 2兆5493億円、予想 5132億円)
08:50 (日) 4月 経常収支・季調済 (3月 1兆5559億円、予想 3938億円)
08:50 (日) 4月 貿易収支・国際収支ベース (3月 -1661億円、予想 -7350億円)

14:00 (日) 5月 景気ウオッチャー現状判断DI (4月 50.4、予想 52.5)
14:00 (日) 5月 景気ウオッチャー先行判断DI (4月 50.3、予想 51.8)
15:00 (独) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 -3.9%、予想 1.2%)
15:00 (独) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 -3.5%、予想 -2.4%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP確定値 前期比 (改定値 0.3%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP確定値 前年同期比 (改定値 5.1%、予想 5.1%)
23:00 (米) 4月 卸売売上高 前月比 (3月 1.7%)
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省10年債入札



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