20年ぶりのドル高値、政治イベントなど注意
〇先週のドル円、2002年5月以来126円台示現、130円方向へドル高進行か
〇21日に対面式日米財務相会談開催との報道あり、為替相場議論される可能性も
〇今週はフィラデルフィア連銀製造業景気指数、G20財務相・中銀総裁会議など予定
〇今週のドル/円予想レンジは125.20-127.70、先週高値126.68が最初の抵抗
〇ドル安・円高方向は125円レベルの攻防に注目、割り込んでも124.76レベルは底堅い
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場は、ドルが一段高。2002年5月以来となる126円台を示現し、週末NYもそのままドル高値圏で引けている。
前週末は、ロシアが短距離弾道ミサイルを使用し「東部クラマトルスクの駅を攻撃した」と報じられ思惑を呼ぶ。一方、実施されたフランス大統領選は、現職のマクロン氏と極右政党・国民連合のルペン氏が決選投票に進出することが確実になったと伝えられていた。
そうした状況下、ドル/円は124.10円前後で寄り付いたのち、わずかに小緩む局面も見られたが124円レベルで下値は堅い。同レベルを週間安値にドルはおおむね右肩上がりの展開をたどると、年初来高値の125.10円を突破。さらに、黒田日銀総裁から発せられた「現在の強力な金融緩和を粘り強く続ける」とのコメントをきっかけに上値を伸ばし週末にかけて126円台乗せ、そして週間高値の126.68円を示現している。結果、週末NYは126.35-40円というドル高値圏をキープし、越週している。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「ロシア情勢」と「円安けん制発言と米金融政策」について。
前者は、以前からの継続案件としてロシアの「戦争犯罪」疑惑が取り沙汰されるなか、前記した「東部クラマトルスクの駅を攻撃」や「ウクライナ南東部のマリウポリで、何らかの有毒物質を使用」といったようなウクライナ市民を標的とした新たな虐殺疑惑が多数観測され、欧米諸国を中心とした対露制裁強化へと繋がっていた。ただ、ロシアはプーチン大統領が「ブチャの残虐行為はフェイクニュース」と述べ戦争犯罪疑惑を完全否定。さらに、「ウクライナとの交渉は行き詰まっている」などと、先行き不透明を示唆する発言も観測されている。なお、別途ロイターが「国営鉄道会社のロシア鉄道が利払いできず初のデフォルト認定された」と報じ、物議を醸していたようだ。
対して後者は、ドル/円相場が週間を通しおおむね「黒田ライン」と呼ばれる125円を超えるレベルで推移したこともあり、本邦要人からの「円安けん制発言」が相次ぐ。自民党の茂木幹事長や鈴木財務相、岸田首相などが連日のように「為替の安定は重要、急速な変動は好ましくない」といったコメントを発していた。ただ効果は限定的で、とくに週末にかけてはほとんど円高方向へと振れる局面は観測されていない。一方、そうしたなか共同通信は「日米、21日に対面式の財務相会談開催へ」と報じ、さらに為替相場が議論される可能性もあると指摘。きっかけとして、円安の流れに変化が生じるのか注目だ。
<< 今週の見通し >>
先週のドル/円相場は、上方向の抵抗を次々の上抜け。年初来高値125.10円に続き、2015年6月につけた125.86円も超えると、ついには20年ぶりとなる126円台を示現している。テクニカルには、ここからしばらく目立ったポイントはなく、すでに軽い青天井状態だ。週内にもすぐに到達する、といったことはないだろうが、それでも130円方向に向けてなかなかの速足でドル高が進行しても不思議はない。
「日米の金利差」に加え、「日本の貿易収支悪化」が主要なドル高・円安要因で、市場における円売り安心感は根強いものがある。前述したように、「黒田ライン」を上回ったレベルで推移していることもあり、今週も日本の政府要人などからかなり執拗な円安けん制コメントが出てくることが予想されるものの、果たして効果は如何に。ただ、唯一気になるのは先週末15日の日経新聞朝刊が「円は130円まで下落余地」と報じるなど、マーケットがいよいよ総強気ムードを醸し始めていることだ。「もうはまだなり、まだはもうなり」という相場格言を、いまこそ頭にとどめておきたい。
テクニカルに見た場合、ドル/円はドル高の動きが再燃しており、今週も基本的なリスクはドル高方向にバイアスが掛かりそう。そんなドルの上値メドは先週高値126.68円を超えると、前述したようにコレといったものはない。しかし、先週の週足4本値を参考にピポットで一応のメドを算出すると、「S1」が127.35-40円、そして「S2」は128.35-40円レベルだった。
材料的に見た場合、中長期的には、停滞する経済対応で人民銀が先週末4ヵ月ぶりに預金準備率を引き下げた「中国情勢」、米ジョンズ・ホプキンス大学の推計で、これまでの世界の総感染者が5億人を超えたとされるなか、いまだ感染が止まらない「新型コロナ・オミクロン株蔓延問題」、「エネルギー・穀物相場への懸念」などに注目。
そうしたなか今週は、4月のフィラデルフィア連銀製造業景気指数をはじめとする米経済指標が発表されるほか、引き続き重要な米企業決算発表も相次ぐ。また、ロシアが参加する方針を示し、紛糾しているG20財務相・中銀総裁会議、そして21日に開催されるとも伝えられている「対面式の日米財務相会談」など政治的な注目イベントも少なくない。
そんな今週のドル/円予想レンジは、125.20-127.70円。ドル高・円安については先週高値126.68円が最初の抵抗で、抜ければ127円台乗せ。前記したピポットの「S1」を目指す展開も。
対するドル安・円高方向は、先週13日以降一度も割り込めていない125円レベルの攻防にまずは注目。割り込んでも、12日安値124.76円レベルでは底堅そうなイメージだ。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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