ドル円見通し 黒田総裁発言を消化、米長期債利回り一段高で123円台中盤へ上昇
〇ドル円、米長期債利回り上昇で4/5夜123円台回復、調整安一巡で上昇再開か
〇黒田総裁、急激な円安に警戒感示すが金融緩和強調、円安継続感強める
〇米連銀高官タカ派発言相次ぐ、5月FOMCでの大幅利上げ、資産圧縮開始に積極的
〇米長期債利回り総じて上昇、2年債と10年債の逆イールド解消
〇123.30以上での推移中は上向きとし、124円超えからは124.30から124.70を目指すとみる
〇123円割れからは4/5午前安値122.36試しへ向かうとみる
【概況】
ドル円は4月5日夜に123円台を回復、6日早朝には123.68円をつけて3月31日安値121.26円以降の高値を更新している。4月5日午前には日銀黒田総裁が衆院財務金融委員会で「今回の円安は急すぎる」と発言したことをきっかけに円安けん制と受け止められて122.36円へ小反落したものの、円安のメリットや金融緩和を継続する姿勢を改めて強調したために発言後の売り一巡で買い戻しに入り、5日夜には米連銀高官による5月FOMCでの0.50%利上げや量的金融引き締め開始を支持するタカ派発言が相次いだことで米長期債利回りが一段と上昇したことに押し上げられて123円台を回復、6日早朝へと続伸した。
【日銀黒田総裁、急激な円安に警戒感見せるも金融緩和継続を強調】
日銀の黒田総裁は5日の衆院財務金融委員会で「通貨及び金融の調節に関する報告書(=半期報告)」を説明したが、その際に3月28日に125円台へ到達した円安について「今回の変動はやや急だ」として警戒感を示唆したものの、「円安が進行すると一段と輸入物価を押し上げるものの輸出企業の収益を押し上げるメリットもあり全体としてプラスに作用するという基本的な認識に変わりはない」と述べた。また「残念ながら(インフレ率の)2%目標に達しておらず必要な緩和を通じて達成に努める」「今、金融引き締めをすれば大きなマイナスの影響が出る」として在任中の金融緩和継続姿勢を強調した。また長期金利上昇抑制のYCC(イールドカーブコントロール)についても「急激な金利上昇には指値オペを使って0.25%の範囲内で推移させる」と述べた。
市場はいったん円安けん制に関する発言に反応したが、金融緩和継続姿勢の再確認として円安継続感を強めた印象だ。
【米連銀高官のタカ派発言相次ぐ】
米連銀のブレイナード理事は4月5日の講演で「早ければ5月のFOMCで総資産の圧縮を開始する」とし、前回の資産圧縮時(2017年から2019年)と比較して「著しく大きな削減枠を設け、短期間、大幅に速いペースで進める」と述べた。また「インフレがあまりに高過ぎ、上振れリスクもある」と述べて5月FOMCでの大幅利上げ姿勢も示した。
サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は「原油高騰で米経済が若干減速するものの大きく鈍化はしない」「1970年代の石油ショック時とは異なり米国はエネルギーの純輸出国だ」として景気後退への懸念は小さいとして「早ければ5月のFOMCで総資産の圧縮を開始する」と述べた。
カンザスシティー連銀のジョージ総裁も「5月のFOMCで0.5%の大幅利上げに踏み切る可能性については一つの選択肢」と述べ、「利上げとあわせてどのように総資産を縮小するかを検討することに焦点を置く」と述べた。
3月21日にパウエル米連銀議長がインフレ進行について「驚いている」と述べて0.50%の利上げを含む利上げペースの加速姿勢を強調したところから主要な地区連銀総裁らの発言は、0.50%の利上げを複数回含めてFOMC会合毎に利上げしてゆく姿勢が強まっている。また資産圧縮も5月FOMCから始まりそうな勢いだ。
【米2年債と10年債の逆イールド解消、揃って一段高】
米連銀高官らの利上げペース加速姿勢を受けて米長期債利回りは総じて上昇した。指標の10年債利回りは前日比0.15%上昇して2.55%、高値で2.56%を付けて3月28日の2.55%を超えて2019年5月以来の水準に達した。30年債利回りは0.12%上昇の2.58%、2年債利回りは0.10%上昇の2.52%となった。
2年債利回りは4月1日と4日に10年債利回りを超える逆イールドとなったが、この日は10年債利回りの急伸により逆イールドを解消した。
4月5日のNYダウは前日比280.70ドル安と下落、ナスダック総合指数も同328.38ポイント安と下落した。米連銀による利上げペース加速への警戒感、上海のロックダウン長期化への懸念、ロシア制裁拡大によるインフレ進行への懸念などが上値を抑えたようだ。
米商務省が発表した2月の貿易統計では、モノとサービスを合わせた貿易赤字が前月比0.1%減の892億ドルとなり過去最大となった1月に次いで高水準となった。輸入は1.3%増、輸出は1.8%増と堅調だった。
米サプライ管理協会(ISM)による3月の非製造業景況指数は58.3となり市場予想の58.4を若干下回ったが前月からは1.8ポイントの上昇だった。
【3月28日からの下げ幅に対する半値戻しをクリア】
米長期債利回りが一段高に入ったことでドル円も3月28日の125円到達からの調整安を一巡させて上昇再開に入ってきた印象だ。既に3月31日深夜への下げ幅の半値戻し123.18円を超えて3分の2戻しの123.82円に迫ってきている。
日銀が急激な円安への警戒感を示しつつもYCCを含めて金融緩和を継続すると強調したことは、125円をかつての黒田ラインとした円安容認の限界としない可能性も見え隠れするところであり、市場としては再び125円台に到達した段階での黒田総裁ら日銀高官の発言に注目しつつ、現状における円安容認水準を試してゆくことになるのではないかと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては3月28日高値125.10円をサイクルトップとした下落が3月31日深夜安値までで一巡となり強気サイクル入りしたが、4月1日夜高値から横ばい推移に入り5日午前に小反落したところから一段高となったため、4月5日午前安値を直近のサイクルボトムとして新たな強気サイクル入りしたと思われる。高値形成期は4月1日夜高値を基準として6日夜から8日深夜にかけての間と想定し、弱気転換は4月5日午前安値割れからとする。
60分足の一目均衡表では4月5日夜の一段高で遅行スパンが好転、5日午前には先行スパンへ一時潜り込んだもののその後の一段高で上抜き返しているため遅行スパン好転中の高値試し優先とする。遅行スパンが悪化するところからはいったん下げに入るとみて安値試し優先とするが、先行スパンからの転落を回避するうちはその後に遅行スパンが好転するところからは上昇再開に入るのではないかと考える。
60分足の相対力指数は4月5日午前の下落時に40ポイント台へ低下したがその後の反騰で70ポイント台を回復しているため、60ポイント以上での推移中は上向きとして80ポイント超えを目指すとみる。60ポイントを割り込んでもその後に70ポイントを超えるところからは上昇再開とし、弱気転換は50ポイント割れからとする。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、123.00円を下値支持線、124.00円を上値抵抗線とする。
(2)123.30円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上向きとし、124円超えからは124円台中盤(124.30円から124.70円)を目指すとみる。124.60円以上は反落注意とするが、123.30円以上での推移なら7日の日中も高値試しを継続しやすいとみる。
(3)123円割れからは4月5日午前安値122.36円試しへ向かうとみるが、122.50円以下は反発注意とし、その後に123円台を回復するところからは上昇再開とみる。
【当面の主な予定】
4/6(水)
休場、タイ
NATO外相会議(4/7まで)
10:45 (中) 3月 財新サービス業PMI (2月 50.2、予想 49.7)
15:00 (独) 2月 製造業新規受注 前月比 (1月 1.8%、予想 -0.2%)
15:00 (独) 2月 製造業新規受注 前年同月比 (1月 7.3%、予想 5.4%)
18:00 (欧) 2月 生産者物価指数 前月比 (1月 5.2%、予想 1.3%)
18:00 (欧) 2月 生産者物価指数 前年同月比 (1月 30.6%、予想 31.5%)
19:45 (欧) レーンECB理事、講演
22:30 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
4/7(木)
10:30 (豪) 2月 貿易収支 (1月 128.91億豪ドル、予想 117.00億豪ドル)
14:30 (日) 野口日銀審議委員、会見
14:00 (日) 2月 景気先行指数CI速報値 (1月 102.5、予想 100.8)
14:00 (日) 2月 景気一致指数CI速報値 (1月 95.6、予想 95.5)
15:00 (独) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 2.7%、予想 0.3%)
15:00 (独) 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 1.8%、予想 3.7%)
18:00 (欧) 2月 小売売上高 前月比 (1月 0.2%、予想 0.6%)
18:00 (欧) 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 7.8%、予想 4.9%)
20:30 (欧) 欧州中銀理事会議事要旨
21:15 (英) ピル英中銀理事、講演
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.2万件、予想 20.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 130.7万人、予想 130.1万人)
22:00 () ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
27:00 (米) エバンズ・シカゴ連銀総裁とボスティック・アトランタ連銀総裁、イベント参加
28:00 (米) 2月 消費者信用残高 前月比 (1月 68.4億ドル、予想 170.0億ドル)
29:05 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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