ドル円 止められない円安へまっしぐら(週報3月第4週)

先々週は117円台半ばから119円台半ばへ、先週は119円台前半から122円台前半へと既にこの2週間で5円近い円安進行です。

ドル円 止められない円安へまっしぐら(週報3月第4週)

ドル円 止められない円安へまっしぐら

〇ドル円、24日122.41レベルまで円安進行、輸入物価上昇で本質的な円売りに
〇日銀円安容認発言繰り返す、残るターゲットは2015年高値125.67レベル
〇今週は日銀短観、米国3月雇用統計、同ISM製造業景況指数など注目
〇調整か一段の円安か、期末期初の動きに注意
〇今週は121.80レベルをサポートに123.80レベルをレジスタンスとする

今週の週間見通し

先々週は117円台半ばから119円台半ばへ、先週は119円台前半から122円台前半へと既にこの2週間で5円近い円安進行です。3月初めの安値圏は114円台半ばであったことを考えると約8円の円安で、近年では2020年3月のコロナショック、2016年11月のトランプラリーなど、ある程度大きなイベントを背景にしたレベルの値幅です。

今回はロシアによるウクライナ侵攻(地政学リスクでユーロドルが売られドル買い)、米国が利上げサイクルに入ったこと(日米金利差拡大によるドル買い)と、材料はあるもののここまで一本調子で円安が進む材料かとなるとそうでも無いように思えます。それ以上にエネルギーを筆頭に物の価格が大幅に上昇している中での円安による輸入物価上昇が日本を弱くするという本質的な円売りになってきていることには警戒すべきです。

相変わらず円安容認発言を繰り返す黒田日銀総裁のように、日本の産業構造が変化している中で円安を容認することはデメリットの方が大きいように思うのですが、そのような発言が海外の投機筋による円売りも誘発しています。金曜には通貨当局トップである財務相が為替の急速な変動は望ましくないといった発言をし、少なくとも財務省筋からは繰り返し為替市場を注視するとしていますが、具体的な水準は示さないと現時点ではそこまで円安警戒感を持っているとも思えず、引き続き円安への安心感が強いと言わざるを得ません。

今週は期末であり積極的な取引は手控えられる時期ではありますが、実需の動きがどちらに出てくるかで調整が入るのか、一段の円安となるのかが決まりそうです。期初の金曜に日銀短観や米国雇用統計など重要な指標がありますので、総じて期末期初の動きに注意といったところです。

テクニカルには日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

既にターゲットとなる水準は全て上抜けてきたため、残るは2015年高値となる125.67レベル(赤の水平線)のみです。現在の水準から3円の距離もありませんし最近の動きを考えると一週間でトライしても不思議ではありません。当局が積極的に阻止しても簡単には止まらないのが弱い通貨の宿命ですから、今の円安は新たに何かが出て来なければ比較的短期に125円台を見る可能性は十分にあると言えるでしょう。

また1月安値を起点とした上昇N波動では261.8%エクスパンションの121.90(ピンクのターゲット)が目安ではあったのですが、既に大きく上抜けてきていることを考えると逆に121円台後半がサポートとなりやすいと言えます。今週は121.80レベルをサポートに123.80レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

3月28日(月)
**:** 欧州市場夏時間移行
19:00 フィンランド中銀総裁講演
20:00 英中銀総裁講演 ☆
21:30 米国2月卸売在庫

3月29日(火)
08:30 本邦2月失業率・有効求人倍率
08:50 日銀会合主な意見公表 ☆
09:30 豪州2月小売売上高
15:00 ドイツ4月GFK消費者信頼感 ☆
15:45 フランス3月消費者信頼感
22:00 米国1月住宅価格、ケースシラー住宅価格
23:45 (フィラデルフィア連銀総裁講演)

3月30日(水)
06:45 NZ2月住宅建設許可
09:00 NZ3月企業信頼感
10:30 (アトランタ連銀総裁講演)
17:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
18:00 ユーロ圏3月消費者信頼感
21:00 ドイツ3月CPI速報値 ☆
21:15 米国3月ADP全国雇用者数 ☆
21:30 米国10〜12月期GDP確報値 ☆
21:30 米国新規失業保険申請件数
22:15 (リッチモンド連銀総裁講演)
23:30 週間原油在庫統計

3月31日(木)
09:30 豪州2月住宅建設許可
10:30 中国3月製造業PMI ☆
15:00 ドイツ2月小売売上高
15:00 英国10〜12月期GDP改定値 ☆
15:00 英国3月住宅価格
15:45 フランス3月CPI速報値 ☆、2月PPI
16:00 トルコ2月貿易収支
16:55 ドイツ3月失業率
17:00 レーンECB理事講演 ☆
18:00 ユーロ圏2月失業率
20:30 米国3月チャレンジャー人員削減数
21:00 南ア2月貿易収支
21:30 米国2月個人所得・消費支出 ☆
21:30 米国新規失業保険申請件数
22:00 NY連銀総裁講演
22:45 米国3月シカゴ購買部協会景況指数
**:** OPECプラス閣僚級 ☆

4月1日(金)
08:50 日銀短観 ☆
10:45 中国3月MarkIt製造業PMI ☆
16:00 トルコ3月製造業PMI
16:50 フランス3月製造業PMI
16:55 ドイツ3月製造業PMI
17:00 ユーロ圏3月製造業PMI
17:30 英国3月製造業PMI
18:00 ユーロ圏3月CPI速報値 ☆
21:30 米国3月雇用統計 ☆
22:45 米国3月製造業PMI
23:00 米国3月ISM製造業景況指数 ☆
23:00 米国2月建設支出

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

3月21日(月)
ドル円は東京市場が休場となったこともあってNY前場までは119.20レベル前後の狭い値幅での取引が続きました。パウエルFRB議長が今後のFOMCにおいて積極的な利上げが適切であればそのようにすると発言したことから米金利が上昇、ドル円も119.50レベルまで上昇し、高値圏での引けとなりました。

3月22日(火)
円全面安の一日となりました。前日のパウエルFRB議長のタカ派発言による日米金利差拡大加速思惑を材料に早朝から120円台の大台乗せ。さらに黒田日銀総裁が先週の日銀会合に続いて予算委員会でも円安容認を繰り返したことから円売り一色となり欧州市場で121円台乗せと大台3つを見ることとなりました。その後は調整も見られ120円台後半でもみあいのまま引けました。

3月23日(水)
ドル円は前日の円安の流れを受けて早朝には121.41レベルの高値をつけました。しかし、121円台半ばではようやくドル売りオーダーも見え始めたところで米金利が低下し始める動きとともに利食いの円買いが続くこととなりました。NY朝方には120.59レベルの安値をつけましたが、NY市場では改めて円売りの動きが強まり121円台前半へと戻して引けました。

3月24日(木)
円が終日続落しNY市場では122.41レベルまで円安が進行し、そのまま円安地合いのままで引けました。弱い通貨では通貨安が続きやすく、多くの市場参加者が2015年の125.86レベルまでの円安を想定し始めました。

3月25日(金)
東京市場のドル円は早朝には122.43レベルと前日高値をわずかに更新したものの、前場の実需のドル売りに加え、財務相が為替の急速な変動は望ましくないとの発言もあって急速に円買い戻しが進み昼過ぎには121.18レベルの安値をつけました。黒田日銀総裁の委員会発言は相変わらず円安容認となりましたがこちらは反応薄。東京後場以降はユーロドルの下げとともにドル円の買い戻しが入ったこと、NY市場では米金利上昇が目立ったこともあり122円台前半に戻しての週末クローズとなりました。

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