来週の為替相場見通し:『市場の関心はロシア・ウクライナ情勢から日米金融政策格差へシフト』(3/26朝)

今週のドル円相場(USDJPY)は、週初119.17で寄り付いた後、早々に週間安値119.07まで下落しました。

来週の為替相場見通し:『市場の関心はロシア・ウクライナ情勢から日米金融政策格差へシフト』(3/26朝)

『市場の関心はロシア・ウクライナ情勢から日米金融政策格差へシフト』

〇ドル円、週明け119.07まで下落後にパウエル議長のタカ派発言等に急伸、週末は122.10レベルで推移
〇パウエル議長は必要に応じ0.5%の利上げ可能性を示唆、米長期金利急上昇
〇金利上昇にもかかわらず株価が堅調推移したこと、日銀関係者の円安容認発言もサポート
〇ユーロドル、1.1000を挟んで上下、方向感に欠ける動き
〇ドル円今週一時6年3ヵ月ぶり高値となる122.42まで急伸、主要テクニカルポイント上抜け地合い強い
〇ファンダメンタルズも地政学リスク、資源高騰とインフレ懸念、FRBのタカ派傾斜等ドル買い要因多い
〇来週はドル円のアップサイドリスクに注意を要する1週間
〇来週の予想レンジ(USDJPY):120.50ー124.00、(EURUSD):1.0800−1.1150

今週のレビュー(3/21−3/25)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初119.17で寄り付いた後、早々に週間安値119.07まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念(有事のドル買い)や、AパウエルFRB議長によるタカ派的な発言(同氏は3/21に「1回の会合もしくは複数の会合で政策金利を25bp以上引き上げる可能性あり」「必要に応じて50bpの利上げを実施する用意がある」「5月までにバランスシート縮小に着手する可能性がある」と発言)、B上記Aを背景とした米長期金利の急上昇(米10年債利回りは2019年5月7日以来、約2年10ヶ月ぶり高水準となる2.49%へ急上昇。米投資銀行大手ゴールドマン・サックス社は「米FRBが5月と6月のFOMCで50bpの利上げに踏み切る」との見解を発表)、

C原油価格上昇に伴う本邦貿易赤字の拡大懸念、D心理的節目120.00・121.00・122.00突破に伴うショート勢の大規模ロスカット(含む仕掛け的なドル買い・円売り)、E株式市場の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)、F本邦当局者による円安容認発言(片岡審議委員は「円安の影響、全体的な効果はプラス」「円安のデメリットは非常に小さい」と発言)、G米新規失業保険申請件数の良好な結果(1969年9月以来、約52年半ぶり低水準)が支援材料となり、週後半にかけて、2015年12月18日以来、約6年3ヵ月ぶり高値となる122.42まで急伸しました。引けにかけて反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間3/26午前4時45分現在)では122.10前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1059で寄り付いた後、早々に週間高値1.1070まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念(エネルギー価格反発→欧州経済のスタグフレーション懸念)や、A米当局者によるタカ派的な発言(パウエルFRB議長のタカ派発言→米長期金利上昇→米ドル高)が重石となり、翌3/22にかけて、週間安値1.0960まで下落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、B株式市場の持ち直し(リスク選好ムード)や、C対円でのユーロ買い圧力(ユーロ円上昇→ユーロドル連れ高)、Dユーロ圏3月PMI速報値の良好な結果、EエルダーソンECB専務理事による「ECBは年内に利上げを実施する可能性がある」とのタカ派的な発言が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間3/26午前4時45分現在)では、1.0990前後まで持ち直す動きとなっております。尚、週末に発表されたドイツ3月IFO景況感指数(結果90.8、予想94.2、前回98.5)は市場予想を大幅に下回る冴えない結果となりました。

来週の見通し(3/28−4/1)

<ドル円相場>
ドル円は1/24に記録した年初来安値113.47をボトムに反発に転じると、今週後半にかけて、約6年3ヵ月ぶり高値となる122.42まで急伸しました。この間、主要テクニカルポイントを軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「強気のバンドウォーク」「ダウ理論の上昇トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます(日足のみならず、週足・月足でも買いシグナルが点灯中)。ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念(有事のドル買い)や、Aエネルギー価格高騰に伴う世界的なインフレ懸念(原油価格や天然ガスなどエネルギー価格の高止まり→日本を除く主要国で金融引き締め観測→円独歩安)、B米FRBによるタカ派傾斜観測(パウエルFRB議長をはじめ全ての米当局者からタカ派的な発言が相次ぐ結果)、C日銀による金融緩和の長期化観測(黒田総裁や片岡審議委員など本邦当局者は「金融緩和の長期化」および「円安容認姿勢」を強調)、

D上記BCを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大→ドル買い・円売り)、E本邦貿易赤字拡大に伴う円売り圧力、F輸入企業による実需のドル買い圧力など、更なるドル高・円安を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想いたします。尚、市場の関心は、ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクから、米金融政策の先行きに移りつつあるため、来週は米2月PCEデフレータや米3月雇用統計、米当局者発言に注目が集まりそうです。PCEデフレータや米雇用統計が力強い結果を示す場合や、米当局者よりタカ派的な発言が見られる場合などには、米金利急上昇→米ドル高の経路で、ドル円にはもう一段強い上昇圧力が加わる恐れがあるため、来週も今週同様、ドル円のアップサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです(日本政府・本邦当局者による円安牽制発言に留意しつつも、ドル高・円安トレンドの継続を想定)。

来週の予想レンジ(USDJPY):120.50ー124.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は新規材料に乏しい中、方向感を見出しづらい時間帯が続いております(心理的節目1.1000を挟んで方向感に欠ける展開)。但し、上方に複数のレジスタンスポイントを控えている点、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転」「弱気のパーフェクトオーダー」が成立している点などを踏まえると、テクニカル的に見て、上値余地は乏しいと判断できます。ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念や、A上記@を背景とした欧州経済の先行き不透明感(ドイツZEW研究所は先週、近い将来のスタグフレーションの発生を予想)、B米FRBによるタカ派傾斜観測(米長期金利上昇→米ドル高)、

C上記ABを背景とした欧米金融政策の方向性の違いなど、ユーロドルのダウンサイドリスクを連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、足元のユーロドル相場が方向感を見出せない理由として、ECB当局者がスタグフレーション懸念を警戒して金融引き締めを遅らせるスタンスに傾くのか、或いはインフレ抑制を重視して年内金融引き締めに向けて突き進むのかが読めないことが挙げられます。この為、来週はドイツやユーロ圏の3月消費者物価指数に加えて、シュナーベルECB専務理事、オランダ中銀クノット総裁講演などのECB当局者発言に注目が集まりそうです。状況次第では、欧米金融政策の方向性の違いに着目したユーロ売り・ドル買いが再開する恐れもあるため、リスクは引き続きダウンサイドと判断できます。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0800−1.1150

注:ポイント要約は編集部

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