ドル円見通し 115円試しからの切り返し続くが116円に届かず(22/2/16)

近日中の軍事衝突は回避されると市場は受け止めてリスク回避感を後退させ、ユーロやポンド等が買われてドルストレートでドル安、クロス円全般が上昇し円安反応となった。

ドル円見通し 115円試しからの切り返し続くが116円に届かず(22/2/16)

ドル円見通し 115円試しからの切り返し続くが116円に届かず

〇ドル円、深夜高値115.87、116円台回復には至らず
〇リスク回避感の後退、米長期債利回り上昇継続で円安反応
〇緊張緩和にはまだ時期尚早か、軍事行為や制裁による金融市場混乱リスク続く
〇米PPI予想大幅超え、米連銀利上げ予想強まる
〇115.50以上での推移中は上向きとし、115.87超えからは116円台序盤を目指すとみる
〇115.24割れからは114円台中盤を目指す下落を想定する

【概況】

ドル円は先週末の2月12日早朝に115.00円、週明けの14日夜にも114.99円を付けて115円を試したが、115円割れからの続落を回避して切り返したために両安値をダブルボトムとした反発基調にある。
2月15日は早朝高値115.74円から午後安値115.24円へジリ安の推移となっていたところ、17時過ぎにウクライナ国境周辺に展開していたロシア軍の一部が演習を終了したとして帰還を始めたとの報道をきっかけに近日中の軍事衝突は回避されると市場は受け止めてリスク回避感を後退させ、ダウ先物が反騰、欧州株が上昇、為替市場ではユーロやポンド等が買われてドルストレートでドル安、クロス円全般が上昇して円安反応となった。
22時半の米生産者物価が予想を上回る結果となったことで米長期債利回りが14日からの上昇を継続、独ロ首脳会談でウクライナ情勢解決に向けた協議の継続姿勢が示されたことで深夜高値115.87円まで戻り高値を切り上げた。しかし、ウクライナ情勢も緊張感を継続させる報道もあり116円台を回復してゆく勢いには欠けて16日早朝へ向けてややジリ安の推移となった。

【ウクライナ情勢に一服感あるも緊張は継続】

2月15日夕刻、ウクライナ国境近辺で大規模な軍事演習を行っていたロシアの南西部部隊の一部が軍事演習終了として撤退を開始したと報じられた。欧米側は具体的な撤退を確認していないが緊張を緩和させる動きとして歓迎されている。一方で、ウクライナの北にあるベラルーシにはロシア軍の活動が活発化しているとの報道があり、ロシア系の傭兵部隊がすでにウクライナのドンパス地方へ入っていること、ウクライナ国防省等へロシアからとみられるサイバー攻撃が行われたとの報道もあり、緊張緩和というにはまだ時期尚早の印象だ。
独ロ首脳会談ではプーチン大統領による欧米側との協議継続姿勢が示されたが、ウクライナ侵攻等が発生した場合の欧米による強烈な制裁発動の可能性も示唆されている。

2014年2月のロシアによるクリミア半島占領とその後に続くドネツク州とルガンスク州における親ロ派武装勢力による独立宣言等へと発展していった時にも、ロシア軍の国境集結と一時的な撤収が繰り返された経緯もある。
2月15日にロシア下院はドネツクとルガンスクの独立承認を大統領に求める決議を採択した。2014年9月に欧州安全保障協力機構とウクライナ、ロシアの間で締結されたミンスク合意によりクリミア紛争は停戦に入り、ドネツクとルガンスクの自治権が認められたものの、ウクライナからの独立は国際的には承認されていない。仮にロシアが両州の独立を承認すれば両州からの要請と称して軍隊派遣に踏み込む可能性もある。またウクライナのゼレンスキー大統領は2月16日にもロシアが侵攻してくる可能性があると警告しており、15日の露軍一部撤退報道に対しても不信感を示すにとどまっている。
今回のウクライナ情勢もまだしばらくは駆け引きも続き、偶発的な軍事衝突や親ロ派武装勢力による軍事行動なども引き続き警戒され、その際に発動されるであろう強烈な対露制裁による金融市場全般の混乱リスクは続いている。

【米生産者物価上昇率の上ブレ、米連銀の利上げを急がせる】

米労働省が2月15日に発表した1月の生産者物価指数(PPI)上昇率は前月比1.0%となり市場予想の0.5%を大幅に上回り12月の0.4%から伸びが加速した。前年同月比は9.7%となり市場予想の9.1%を大幅に超えたが12月の9.8%を若干下回った。
コア指数の上昇率も前月比は0.8%となり市場予想の0.5%及び12月の0.6%を上回り、前年同月比は8.3%となり予想の7.9%を上回ったが12月の8.5%からは若干低下した。
先週発表された1月の消費者物価上昇率が前年同月比で7.5%上昇、コア指数でも6.0%上昇となり予想を上回って12月から伸びが加速したことも踏まえ、米連銀による利上げを急ぐ姿勢、量的金融引き締めの早期開始、年内利上げ回数の引き上げ予想が強まったと思われる。
ただし、市場の反応は鈍かった。同時に発表されたニューヨーク連銀の2月景況指数が3.1となり1月のマイナス0.7から改善したものの市場予想の12.2を大幅に下回ったことも影響したと思われるが、米国だけではなく既に2会合連続で利上げを開始している英中銀など、日銀を除く主要国での引き締め姿勢の強化もあり、徐々に米長期債利回り上昇基調に対する為替市場の反応も鈍くなってきているようだ。

【NYダウは4日ぶり反騰、米長期債利回り上昇基調は継続】

2月15日のNYダウは前日比422.67ドル高と反騰した。2月10日から14日まで3日間の続落で千ドルを超える規模の下落となっていたが、ウクライナ情勢の緊張がやや緩んだことで買い戻された。ナスダック総合指数も348.84ポイント高となり4日ぶりの反騰となった。
米10年債利回りは前日比0.06%上昇の2.05%となった。2月11日に2.06%へ上昇してパンデミック以降の最高値を更新したところからウクライナ情勢緊張による安全資産買いで1.90%までいったん下げていたが、15日は緊張がゆるんで株買い債券売りとなり利回りが上昇、米生産者物価上昇率の上ブレも押し上げ要因となった。2年債利回りは前日比変わらずの1.58%だったが、2月10日に1.64%を付けて昨年来最高値を更新した後も高止まり状態にある。
ドル円としては、ウクライナ情勢の緊張がゆるむことと米連銀による利上げ姿勢の強化及び長期債利回り上昇基調の継続ないし高止まりが上昇要因となるところであり、115円試しからの切り返しで116円台回復へ進みたいところと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、2月12日早朝と2月14日夜の115円試しとなった両安値をダブルボトムとして強気サイクル入りしているが、16日午前も115円台中盤で確りしているのでまだ上昇余地が残る。ただし高値形成期は15日夜から17日深夜にかけての間と想定されるのですでに反落注意期にあるとみて15日午後安値115.24円を割り込む場合は弱気サイクル入りとみて17日夕から21日夜にかけての間へ114円台後半を試す下落を想定する。

60分足の一目均衡表では2月16日午前時点で遅行スパンが好転、先行スパンからも上抜けているので遅行スパン好転中は高値試し継続とみるが、先行スパンから転落する場合は下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は2月12日早朝と14日夜の両安値がほぼフラットだったところを指数のボトムを切り上げる強気逆行を見せてから上昇してきている。15日夜に60ポイントを超えた後はやや下げたが50ポイント台を維持しているのでまだ70ポイント超えを目指す上昇余地ありとみるが、45ポイント割れからは下落に入るとみて30ポイント台前半への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、115.24円を下値支持線、115.87円を上値抵抗線とする。
(2)115.50円以上での推移か一時的に割り込んでも切り返すうちは上向きとし、115.87円超えからは116円台序盤(116.00円から116.25円)を目指すとみる。116円到達ではいったん売られやすいと注意するが、115.50円以上での推移なら16日の日中も高値試しへ進みやすいとみる。
(3)115.50円割れから続落の場合は弱気転換注意とし、115.24円割れからは114円台中盤(114.70円から114.30円)を目指す下落を想定する。114.50円以下は反発注意とするが、115.24円以下での推移なら15日の日中も安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な予定】

2/16(水)
北大西洋条約機構(NATO)国防相会合(2/17まで)
10:30 (中) 1月 消費者物価指数 前年同月比 (12月 1.5%、予想 1.0%)
10:30 (中) 1月 生産者物価指数 前年同月比 (12月 10.3%、予想 9.5%)
13:30 (日) 12月 第三次産業活動指数 前月比 (11月 0.4%、予想 0.3%)
16:00 (英) 1月 消費者物価指数 前月比 (12月 0.5%、予想 -0.2%)
16:00 (英) 1月 消費者物価指数 前年同月比 (12月 5.4%、予想 5.4%)
16:00 (英) 1月 消費者物価コア指数 前年同月比 (12月 4.2%、予想 4.3%)
16:00 (英) 1月 小売物価指数 前月比 (12月 1.1%、予想 -0.4%)
16:00 (英) 1月 小売物価指数 前年同月比 (12月 7.5%、予想 7.5%)
19:00 (欧) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 2.3%、予想 0.3%)
19:00 (欧) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 -1.5%、予想 -0.5%)

22:30 (米) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -1.9%、予想 2.0%)
22:30 (米) 1月 小売売上高・除自動車 前月比 (12月 -2.3%、予想 0.8%)
22:30 (米) 1月 輸入物価指数 前月比 (12月 -0.2%、予想 1.3%)
22:30 (米) 1月 輸出物価指数 前月比 (12月 -1.8%、予想 1.3%)
23:15 (米) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -0.1%、予想 0.4%)
23:15 (米) 1月 設備稼働率 (12月 76.5%、予想 76.8%)
24:00 (米) 12月 企業在庫 前月比 (11月 1.3%、予想 2.1%)
24:00 (米) 2月 NAHB住宅市場指数 (1月 83、予想 83)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省20年債入札
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨

2/17(木)
G20財務相・中央銀行総裁会議(2/18日まで)
08:50 (日) 1月 貿易収支・通関・季調前 (12月 -5824億円、予想 -1兆6139億円)
08:50 (日) 1月 貿易収支・通関・季調済 (12月 -4353億円、予想 -3983億円)
08:50 (日) 12月 機械受注 前月比 (11月 3.4%、予想 -2.0%)
08:50 (日) 12月 機械受注 前年同月比 (11月 11.6%、予想 0.9%)
09:30 (豪) 1月 新規雇用者数 (12月 6.48万人、予想 0.00万人)
09:30 (豪) 1月 失業率 (12月 4.2%、予想 4.2%)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 14.00%、予想 14.0%)

22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.3万件、予想 22.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 162.1万人)
22:30 (米) 1月 住宅着工件数・年率換算 (12月 170.2万件、予想 170.0万件)
22:30 (米) 1月 住宅着工件数 前月比 (12月 1.4%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 1月 建設許可件数・年率換算 (12月 187.3万件、予想 175.0万件)
22:30 (米) 1月 建設許可件数 前月比 (12月 9.1%、予想 -7.2%)
22:30 (米) 2月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (1月 23.2、予想 20.0)
23:00 (欧) レーンECB理事、講演
25:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省インフレ指数連動30年債入札

注:ポイント要約は編集部

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