来週の為替相場見通し:『米金利と米株を睨みながらの神経質な展開が継続か』(12/4朝)

ドル円は11/24に記録した約4年10ヵ月ぶり高値115.53をトップに反落に転じると、今週は一時112.53(10/11以来、約1ヵ月半ぶり安値圏)まで急落しました。

来週の為替相場見通し:『米金利と米株を睨みながらの神経質な展開が継続か』(12/4朝)

『米金利と米株を睨みながらの神経質な展開が継続か』

〇今週のドル円、週初オミクロン株への過度の悲観論後退から113.97まで上昇
〇その後モデルナCEOのオミクロン株へのワクチン効果を疑問視する発言等に112.54まで急落
〇週後半にかけてはパウエル議長の議会証言でのタカ派姿勢に113.61まで上昇
〇週末は米雇用統計でNFPが予想に届かず112円台半ばに下落
〇ユーロドル、週初1.1383まで上昇後、パウエル議長の議会証言で1.1236まで急反落
〇その後は1.13台半ばに戻すも頭重く1.13台前半中心のもみ合いに終始
〇ドル円、テクニカルの地合い悪化するも、下方にも複数のチャートポイントがサポート
〇ファンダメンタルズもドル買い円売り要因残る
〇来週の予想レンジ(USDJPY):111.75ー114.25、(EURUSD):1.1175−1.1425

今週のレビュー(11/29−12/3)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初113.36で寄り付いた後、@新型コロナウイルス変異株を巡る過度な悲観論の後退(バイデン米大統領も「オミクロン株は懸念すべきものだがパニックを起こすべきものではない」と発言)や、A上記@を背景としたリスク選好の円売り圧力、B米金利上昇を背景としたドル高圧力、C米10月住宅販売保留件数(結果7.5%、予想1.0%)の力強い結果が支援材料となり、週明け早々に、週間高値113.97まで上昇しました。しかし、心理的節目114.00をバックに伸び悩むと、D米モデルナ社バンセルCEOによる「新たな変異株「オミクロン」に対するワクチン効果はデルタ株と比べて低下する可能性がある」との発言や、

E米長期金利の再低下(世界的な感染拡大懸念→ワクチン効果に対する不透明感→安全資産の債券買い・金利低下→米ドル安・円高)、F本邦におけるオミクロン株の感染者初確認(11/28にナミビアから成田へ入国)、G上記Fを背景としたリスク回避の円買い圧力(日経平均株価急落→ドル円急落)、H米経済指標の冴えない結果(米11月シカゴ購買部協会景気指数、米11月コンファレンスボード消費者信頼感指数が共に市場予想を下回る結果)が重石となり、翌11/30にかけて、10/11以来、約1ヵ月半ぶり安値となる112.54まで急落しました。

もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、IパウエルFRB議長による「インフレが一過性という文言の使用をやめる適切な時期の可能性がある」「次回FOMCでは量的緩和の縮小ペース加速を巡る討議が行われる公算が大きい」とのタカ派的な発言、J上記Iを背景とした米長期金利の急上昇、K安達日銀審議委員による円安容認発言(このところの為替相場は悪い円安ではなく、日本にプラス効果をもたらしている)、L日経平均株価の底堅い動き(リスク選好の円売り圧力)、M米経済指標の良好な結果(米11月ADP雇用統計、米11月ISM製造業景況指数、米新規失業保険申請件数など)、Nアトランタ連銀ボスティック総裁による「2022年第1四半期末までにテーパリングを終了することが適切となる可能性」とのタカ派的な発言、

Oサンフランシスコ連銀デイリー総裁による「予想よりも早期のテーパリングが必要となる可能性」「利上げについての計画作成が必要となる可能性」とのタカ派的な発言、PクオールズFRB理事による「テーパリングの早期終了を支持する」とのタカ派的な発言が下支えとなり、週後半にかけて一時113.61まで反発する場面も見られました。しかし、Q注目された米11月雇用統計が冴えない結果(非農業部門雇用者数が市場予想を大幅に下回る結果)となると、R米長期金利の急低下を背景にドル売り圧力が活発化し、本稿執筆時点(日本時間12/4午前4時45分現在)では、112.66前後まで反落する動きとなっております。尚、米財務省は為替報告で日本・中国などを引き続き監視対象国に指定しましたが、一部で警戒されていた「為替操作国」の認定はありませんでした。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1309で寄り付いた後、@米金利低下に伴うドル売り圧力や、Aユーロ圏11月消費者物価指数の伸び率加速、B米経済指標の冴えない結果が支援材料となり、翌11/30にかけて、週間高値1.1383(11/16以来、約2週間ぶり高値圏)まで上昇しました。しかし、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線に続伸を阻まれると、CパウエルFRB議長によるタカ派的な発言や、D上記Cを背景とした米長期金利の急上昇、E月末ロンドンフィキシングに絡むドル買いフローが重石となり、同日米国時間午後にかけて週間安値1.1236まで反落しました。

その後も、F新型コロナウイルス・オミクロン株に対する警戒感の高まり(欧州圏で渡航歴のない感染例を複数発見)や、Gドイツにおける新型コロナウイルスの死者数増加(本年2/18以降で最多を記録)、Hユーロ圏11月製造業PMIの冴えない結果(結果58.4、予想58.6)、IECBによるハト派的なスタンス継続の思惑(市場ではオミクロン株の影響でECBがパンデミック緊急購入プログラムを巡る決定を先送りするとの見方が増加)、J欧州経済の先行き不透明感、K米当局者による相次ぐタカ派発言、Lフィンランド中銀レーン総裁による「ユーロ圏のインフレは一過性である」とのハト派発言、Mドイツ国債利回りの低下が重石となり、本稿執筆時点(日本時間12/4午前4時30分現在)では、1.1325前後で推移しております。

来週の見通し(12/6−12/10)

<ドル円相場>
ドル円は11/24に記録した約4年10ヵ月ぶり高値115.53をトップに反落に転じると、今週は一時112.53(10/11以来、約1ヵ月半ぶり安値圏)まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線を下抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転も消失するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を印象付けるチャート形状となりつつあります。但し、下方には市場参加者に注目されている一目均衡表雲下限や、90日移動平均線、200日移動平均線といった複数のサポートポイントが並んでいるため、ここからの更なる下落は容易では無いと判断できます(今週の急落はあくまで急ピッチで上昇したドル高・円安の一時的な巻き戻しと整理→来週は下値余地を探りつつも反発に転じると予想)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策の方向性の違い(今週はパウエルFRB議長をはじめ米当局者によるタカ派的な発言が急増。テーパリングペース加速・利上げ前倒し観測が高まる米国と、金融緩和の長期化が織り込まれる日本との金融政策格差は明白)や、A世界的なインフレ懸念(新興国から米国への資金シフト)、B日銀による円安容認発言(先日の黒田総裁発言同様、今週は安達日銀審議委員からも「このところの為替相場は悪い円安ではなく、日本にプラス効果をもたらしている」とのコメントあり)など、ドル買い・円売りを連想させる材料が複数残っております。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の反発をメインシナリオとして予想いたします。尚、本日よりブラックアウト期間(米当局者による発言が手控えられる期間)に突入することから、来週は米当局者発言が予定されておらず、米経済指標(12/10に予定されている米11月消費者物価指数や、米12月ミシガン大消費者信頼感指数など)や新型コロナウイルス変異株を巡るヘッドラインを睨みながらの神経質な展開が予想されます。米経済指標が市場予想を上回る場合や、新型コロナウイルス変異株を巡る過度な悲観論が後退する場合などには、米金利上昇を通じたドル買いと、リスク回避ムードの後退に伴う円売りが組み合わさることから、来週はドル円相場のアップサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです。

来週の予想レンジ(USDJPY):111.75ー114.25

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は9/3に記録した直近高値1.1910をトップに反落に転じると、先週11/24にかけて、約1年5ヶ月ぶり安値となる1.1185(昨年7/1以来)まで急落しました。今週は自律反発主導で幾分持ち直すも、上値の重い展開には変わりはありませんでした。上方に主要レジスタンスポイントを複数控えている他(戻り売りが出やすい状況)、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転や移動平均線の弱気のパーフェクトオーダーも継続するなど、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます(今週の持ち直しはあくまで下落トレンドの過程で見られる一時的な反発局面と整理→上値余地は限定的→来週は一巡後の反落リスクに要警戒)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@欧米金融政策の方向性の違い(米テーパリングペースの加速が織り込まれる米国と、金融緩和長期化が見込まれる欧州との金融政策格差)や、A欧州圏を巡る新型コロナウイルスの感染再拡大懸念(欧州圏における行動制限強化措置→欧州経済の先行き不透明感)、B北アイルランド議定書を巡る英国・欧州連合間の確執懸念、Cロシア・ウクライナ・ポーランド・ベルラーシを巡る地政学的リスクの継続など、ユーロドル相場の上値を抑制する材料が複数残っております。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は12/7に予定されているドイツ12月ZEW景況感調査以外に目立った欧州経済イベントが予定されていないことから、今週同様、米ドルの動きを睨みながらの神経質な相場展開が見込まれます。欧州圏における新型コロナウイルス感染拡大を背景に、ドイツ12月ZEW景況感調査の更なる落ち込みが警戒される他、次回FOMCに向けて米長期金利の反転上昇も見込まれるため、来週はユーロドル相場のダウンサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.1175−1.1425

『米金利と米株を睨みながらの神経質な展開が継続か』

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

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