ドル円見通し 113円を挟んだ揉み合い、リスク回避と米10年債利回り低下で上値重い(週報12月第1週)

ドル円は12月3日夜に113.61円まで上昇したものの12月1日未明高値113.69円に届かずに失速、4日未明には112.54円まで下落し11月30日深夜安値115.52円に迫った。

ドル円見通し 113円を挟んだ揉み合い、リスク回避と米10年債利回り低下で上値重い(週報12月第1週)

ドル円見通し 113円を挟んだ揉み合い、リスク回避と米10年債利回り低下で上値重い

〇先週のドル円、11/30以降は113円を中心に前後0.50円規模のボックス型持ち合い、その下限を試し越週
〇11月の米雇用統計NFP前月比21万人増予想を大幅に下回るも、失業率は4.2%へと大幅に改善
〇ISM非製造業指数は過去最高値、ドル円の動きは指標反映せず、オミクロン株感染による不安で下落
〇米長期金利は下落、NYダウも11/8の史上最高値から2,559ドル安
〇12/4-5のFOMC、インフレ高進とオミクロン株感染拡大の深刻化両にらみで政策判断難しい
〇オミクロン株43か国に感染拡大、強毒か弱毒かの判断待たれる
〇ドル円、113円台回復の場合は113.50-69を試す、失速の場合113円割れで下放れ試し
〇112.52割れから続落の場合、112.30、112.00、111円台序盤を目指すか
〇114.69超えの急伸の場合反騰入り、114円後半へ向かう流れ

【概況】

ドル円は12月3日夜に113.61円まで上昇したものの12月1日未明高値113.69円に届かずに失速、4日未明には112.54円まで下落し11月30日深夜安値115.52円に迫った。安値更新は回避したものの11月30日以降は113円を中心に前後凡そ0.50円規模のボックス型持ち合いとなっており、その下限を試したところで週を終えている。
12月3日22時半に発表された11月の米雇用統計では非農業部門就業者数が前月比21万人増となり市場予想の55万人増を大幅に下回ったことが失望されたものの、失業率は10月の4.6%から4.2%へと大幅に改善してパンデミック発生以降の最低となった。平均時給の伸び率は前月比で0.3%となり10月と同じで予想の0.4%に届かず、前年同月比も4.8%で前月と変わらず予想の5.0%を下回った。
米サプライ管理協会(ISM)による11月のサービス業景況指数は69.1で前月の66.7から伸びて過去最高を更新、市場予想の65を上回った。過去最高の更新は10月に続いて5回目となった。
ドル円は米雇用統計発表後に113.61円へ上昇、その後は失速となっており、米経済指標の強さによるドル高よりも、オミクロン株感染拡大による先行き不安と米長期債利回り低下で下落した印象だ。

【米10年債利回り低下基調続く】

米10年債利回りは前日比0.10%低下の1.35%まで下げた。11月24日に1.69%を付けて10月21日の1.70%へ迫ったものの越えられずにダブルトップを形成して低下に転じ、12月3日は一時1.33%台を付けて9月23日以来の低水準となった。2年債利回りは前日比0.03%低下の0.59%となったが、一時は0.65%を付けており11月23日の0.68%となる年初来の高値レベルに迫ってから失速した形で高水準を維持している。オミクロン株感染拡大に対するリスク回避で10年債が買われて利回りが低下する一方、米連銀のテーパリング早期終了姿勢と利上げ時期前倒し感により2年債利回りが高止まりとなっている。

NYダウは前日比59.71ドル安と下落した。11月26日にオミクロン株発生報道で前日比905.04ドル安、30日から12月1日にかけては2日間で千ドルを超える下落となり11月8日に付けた史上最高値3万6565.73ドルから12月1日安値まで2559ドル安と大幅下落となり、12月2日は売られ過ぎの反動で617.75ドル高と戻したものの買い戻し一巡で上値が重くなった印象だ。ナスダック総合指数は前日比295.85ポイント安と大幅下落しており、11月22日に付けた史上最高値からの下落基調が続いている。

【12月14-15日に次回FOMC】

オミクロン株の感染拡大により米連銀の金融政策判断も難しくなってきた。11月10日に10月の米消費者物価上昇率が予想を大幅に超えたことでバイデン大統領がインフレ対策を最重要課題と掲げ、11月22日にパウエル米連銀議長の再任が決定されたときに議長はインフレと戦う姿勢を示し、11月30日の上院議会証言では「インフレは一時的」としてきた従来の基本認識を撤回し、テーパリングの早期終了を12月FOMCで協議するとした。
オミクロン株の感染拡大を含めて世界規模で感染再拡大が深刻化し始めているが、一方ではワクチン普及によるウィズ・コロナ政策も継続している。感染再拡大状況やオミクロン株の重症化率等を見極めてゆく必要があり、感染拡大でもインフレが継続するとすればその対策も必要となる。
今のところは米連銀もやや慎重な姿勢を保ちながらもテーパリング早期終了へ向けた動きを進めるのだろうと思われる。12月3日には米セントルイス連銀のブラード総裁も「GDPはパンデミック前の水準を完全に回復し、労働市場がさらに力強さを増す見通しも踏まえればFOMCは金融緩和策を撤回するべきだ」と述べている。

【オミクロン株、世界43か国・地域に波及】

12月5日早朝時点、オミクロン株の感染確認地域は日本を含めて43か国・地域に拡大した。
アジア・オセアニア地域では当初に香港で確認されてから日本、韓国、インド、シンガポール、マレーシア、スリランカ、オーストラリアへ波及。北米は米国、カナダ、中南米ではメキシコ、ブラジル、チリ。欧州ではほぼ全域に拡大しており、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、デンマーク、チェコ、オーストリア、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、スペイン、ポルトガル、スイス、アイルランド、ギリシャ、アイスランド、ルクセンブルク、ルーマニアで確認されている。中東もイスラエル、サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)に広がった。

感染力はデルタ株を超えて深刻であり、今後はデルタ株に置き換わって感染の主流になると予想されている。その上で問題は強毒性か弱毒性かということであり、一部大手金融機関ではオミクロン株が軽症なものにとどまればリセッション入りは回避されるとして今が主要市場での買い場との見方を示しているが、欧州では既に確認報道前からオミクロン株による感染が始まって急増に至った可能性もあるとみられている。渡航規制や経済活動への規制強化が進めば景気後退へのリスクは高まってゆくと懸念される。

【11月26日の日足大陰線から続落しての横ばい持ち合い】

【11月26日の日足大陰線から続落しての横ばい持ち合い】

ドル円は11月26日にオミクロン発生報道から当日高値115.37円から安値113.03円まで2円を超える急落となり日足は大陰線となった。11月30日に112.52円まで下落した後は113円を挟んでの持ち合い推移となっているが、一時的な急落を消化して切り返す流れへ進めずに急落一服で様子見の下げ渋り持ち合いの様相だ。
11月24日高値115.51円からこの間の安値までの下げ幅は2.99円に拡大しており、7月2日から8月4日までの下げ幅2.94円を超え、下落角度としては3月31日高値から4月23日安値まで3.50円の下落幅となった時よりもきつくなっている。

数日間の下落規模・角度としては昨年6月5日の戻り高値から失速し始めた当初に6月12日まで3.29円の下落となりその後も6月23日安値まで一段安して下げ幅が3.78円へ拡大、さらに7月31日安値へと一段安していったところに近い印象もある。
8月4日安値108.71円と9月15日安値109.09円をダブル底として11月24日高値まで上昇しており、9月15日安値からの上昇幅は6.42円だが、その半値押しが112.30円、3分の2押しが111.23円にあるため、11月30日安値を割り込む場合はそれら下値計算値を試す流れへ進みやすくなると思われる。1月6日大底と9月15日安値を結ぶ長期の上昇トレンド支持線は111円台序盤に来ている。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)11月30日深夜安値112.52円からその直後の高値113.69円まで戻した後はこの高安レンジ内での持ち合いであり113円が中心値となっているので、この高安を下値支持線、上値抵抗線とみておく。
(2)112.52円割れ回避かわずかに割り込んでも113円台を回復する内は土俵の徳俵に足が残った状況で持ち合いの継続として113.50円から113.69円を試すとみる。113.69円手前から反落するようだと持ち合い上放れ失敗で次に113円を割り込むところから持ち合い下放れ試しへ向かう流れとみる。

(3)112.52円割れから続落に入れば持ち合い下放れとし、112.30円、112.00円、さらに111円台序盤へ向かうとみる。特に感染拡大への深刻さが増す状況の場合はリスク回避的なクロス円全般の下落を伴って円高が進みやすいと思われる。
(4)113.69円を超える急伸となりその後もさらに高値を伸ばし始める場合は11月24日高値からの下落一巡による反騰入りとして114円台後半へ向かう流れとみるが、そのためには米10年債利回り上昇を伴うドル高感が強まる情勢変化、ないしはオミクロン株への楽観的見通し報道等による市場心理の改善が必要と思われる。(了)<5日13:30執筆>

【当面の主な予定】

12/6(月)
休場、タイ(父の日)
09:30 豪11月求人広告件数
16:00 (独) 10月 製造業新規受注 前月比 (9月 1.3%、予想 -0.3%)
16:00 (独) 10月 製造業新規受注 前年同月比 (9月 9.7%、予想 5.5%)
18:30 (英) 11月 建設業PMI (10月 54.6、予想 54.2)
20:30 (英) ブロードベント英中銀副総裁、講演

12/7(火)
未 定 (中) 11月 貿易収支・米ドル (10月 845.4億ドル、予想 821.3億ドル)
未 定 (中) 11月 貿易収支・人民元 (10月 5459.5億元、予想 5750.0億元)
06:30 (豪) 11月 AiGサービス業景況指数 (10月 47.6)
08:30 (日) 10月 全世帯消費支出 前年同月比 (9月 -1.9%、予想 -0.6%)
09:01 (英) 11月 英小売連合(BRC)小売売上高 前年同月比 (10月 -0.2%)
09:30 (豪) 7-9月期 住宅価格指数 前期比 (4-6月 6.7%、予想 5.0%)
09:30 (豪) 7-9月期 住宅価格指数 前年同期比 (4-6月 16.8%、予想 21.7%)
12:30 (豪) 豪中銀、政策金利 (現行 0.10%、予想 0.10%)
14:00 (日) 10月 景気先行指数CI・速報値 (9月 100.9、予想 102.8)
14:00 (日) 10月 景気一致指数CI・速報値 (9月 88.7、予想 89.9)
16:00 (独) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -1.1%、予想 0.9%)
16:00 (独) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 -1.0%、予想 -2.9%)

19:00 (独) 12月 ZEW景況指数 (11月 31.7、予想 25.0)
19:00 (欧) 12月 ZEW景況指数 (11月 25.9)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP確定値 前期比 (改定値 2.2%、予想 2.2%)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP確定値 前年同期比 (改定値 3.7%、予想 3.7%)
22:30 (米) 10月 貿易収支 (9月 -809億ドル、予想 -670億ドル)
22:30 (米) 7-9月期 非農業部門労働生産性改定値 前期比 (速報 -5.0%、予想 -4.9%)
27:00 (米) 財務省3年債入札
29:00 (米) 10月 消費者信用残高 前月比 (9月 299.1億ドル、予想 255.0億ドル)

12/8(水)
休場 フィリピン(聖母受胎祭)
08:50 (日) 7-9月期 GDP改定値 前期比 (速報 -0.8%、予想 -0.8%)
08:50 (日) 7-9月期 GDP改定値 年率換算 (速報 -3.0%、予想 -3.1%)
08:50 (日) 10月 経常収支・季調前 (9月 1兆337億円、予想 1兆2749億円)
08:50 (日) 10月 経常収支・季調済 (9月 7627億円、予想 9778億円)
08:50 (日) 10月 貿易収支・国際収支ベース (9月 -2299億円、予想 1354億円)
14:00 (日) 11月 景気ウオッチャー現状判断DI (10月 55.5、予想 57.4)
14:00 (日) 11月 景気ウオッチャー先行判断DI (10月 57.5、予想 57.9)
17:15 (欧) ラガルドECB総裁、発言
24:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
24:00 (米) 10月 雇用動態調査(JOLT)
24:30 (米) エネルギー省(EIA)週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省10年債入札
30:30 (伯) ブラジル中銀、政策金利 (現行 7.75%)

12/9(木)
06:45 (NZ) 7-9月期 製造業売上高 前期比 (4-6月 3.9%)
07:00 (豪) ロウ豪中銀総裁、講演
08:50 (日) 10-12月期 大企業全産業業況判断指数・BSI (7-9月 3.3)
08:50 (日) 10-12月期 大企業製造業業況判断指数・BSI (7-9月 7.0)
08:50 (日) 11月 マネーストックM2 前年同月比 (10月 4.2%、予想 4.1%)
09:01 (英) 11月 英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)住宅価格指数 (10月 70、予想 70)
10:30 (中) 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 1.5%、予想 2.5%)
10:30 (中) 11月 生産者物価指数 前年同月比 (10月 13.5%、予想 12.0%)
16:00 (独) 10月 貿易収支 (9月 162億ユーロ、予想 143億ユーロ)
16:00 (独) 10月 経常収支 (9月 196億ユーロ、予想 170億ユーロ)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.2万件、予想 23.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 195.6万人、予想 191.0万人)
24:00 (米) 10月 卸売売上高 前月比 (9月 1.1%)
27:00 (米) 財務省30年債入札

12/10(金)
休場、タイ(憲法記念日)
08:50 (日) 11月 国内企業物価指数 前月比 (10月 1.2%、予想 0.4%)
08:50 (日) 11月 国内企業物価指数 前年同月比 (10月 8.0%、予想 8.5%)
16:00 (独) 11月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 -0.2%、予想 -0.2%)
16:00 (独) 11月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 5.2%、予想 5.2%)
16:00 (英) 10月 月次GDP 前月比 (9月 0.6%、予想 0.4%)
16:00 (英) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -0.4%、予想 0.1%)
16:00 (英) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 2.9%、予想 2.2%)
16:00 (英) 10月 貿易収支・物品 (9月 -147.36億ポンド、予想 -144.00億ポンド)
16:00 (英) 10月 貿易収支・全体 (9月 -27.77億ポンド、予想 -24.00億ポンド)

22:30 (米) 11月 消費者物価指数 前月比 (10月 0.9%、予想 0.7%)
22:30 (米) 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 6.2%、予想 6.8%)
22:30 (米) 11月 消費者物価コア指数 前月比 (10月 0.6%、予想 0.5%)
22:30 (米) 11月 消費者物価コア指数 前年同月比 (10月 4.6%、予想 4.9%)
24:00 (米) 12月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報 (11月 67.4、予想 67.4)
28:00 (米) 11月 月次財政収支 (10月 -1651億ドル)

注:ポイント要約は編集部

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