ドル円見通し 先週末の暴落一服だが半値戻しに届かず(21/11/30)

週をまたいで市場心理もやや落ち着いているものの26日の急落幅に対する半値戻しに届かない範囲にある。

ドル円見通し 先週末の暴落一服だが半値戻しに届かず(21/11/30)

ドル円見通し 先週末の暴落一服だが半値戻しに届かず

〇ドル円、11/29午後112.97へ下落したが買い戻され、深夜113.95まで戻したが114円超えには至らず
〇先週末の暴落から市場心理もやや落ち着いたが、11/26の急落幅に対する半値戻しに届かない範囲
〇安全資産としての債券買いで米長期債利回りは低下、株価は反発
〇オミクロン株の感染広がり、楽観的なシナリオもあるが市場では不安心理優勢の印象
〇世界規模のインフレがこのまま進むのかいったん沈静化するのか、見通しが難しい
〇113.30以上での推移中は上向きとし、114.10超えからは114.50手前を試すとみる
〇113.30割れからは112.97試し、底割れからは112.50前後、先行きで112円割れを目指す流れとみる

【概況】

ドル円はオミクロン株発生と拡散報道により暴落商状に陥り、11月26日早朝高値115.37円から26日深夜安値113.03円へ2.34円の円高ドル安となった。週明けの11月29日は午後安値で112.97円へ下落して26日深夜安値をわずかに割り込んだものの買い戻され、29日深夜には113.95円までいったん戻したが114円超えには至らずにいる。
11月25日早朝高値で115.51円を付けて年初来高値を更新する上昇トレンドで推移していたところからオミクロン株発生報道により一転して急落した状況にあるが、週をまたいで市場心理もやや落ち着いているものの26日の急落幅に対する半値戻しに届かない範囲にある。

【米長期債利回りは低下、ダウとナスダックは戻す】

11月29日の米10年債利回りは前日比0.02%低下の1.50%で終了。11月24日に1.69%へ上昇して10月21日の1.70%へ迫ったものの26日は1.47%まで一時急落、29日の日中は1.56%まで戻したところから失速した。30年債利回りも同0.03%低下の1.86%、2年債利回りも0.02%低下の0.49%と下げており、オミクロン株情勢を踏まえて安全資産としての債券買いで利回り低下、米連銀も引き締めを急がないだろうとの市場の見方を反映している印象だ。
NYダウは11月26日に一時千ドルを超える下落規模となり前日比905.04ドルと大幅下落していたが、29日は暴落一服での買い戻しで236.60ドル高と反発、ナスダックも26日の前日比353.57ドル安に対して291.17ドル高と反発した。悲観と楽観がまだ交錯している状況だ。
11月29日夜に発表された10月の米住宅販売保留指数は前月比7.5%上昇で9月の2.4%低下から回復して市場予想の1.0%上昇を上回った。また前年同月比は4.7%低下で9月の7.3%低下から改善した。

【オミクロン株の脅威続く】

11月30日朝時点で、世界16か国地域でオミクロン株の感染が確認されている。11月11日にボツワナで発生、25日に南アで急増が報告、26日には香港やオーストリア、イスラエルへ伝播、27日にオランダ、カナダ、オーストラリア、ドイツ、イタリア等へ広がっており、欧州では英国、スペイン、デンマーク、チェコ、スエーデンで確認されている。日本への入国者も疑いがもたれている。

まだ情報が少ない中、はっきりしているのはデルタ株よりも感染力が高いことでありWHOが最高警戒レベルに指定したということだが、問題は毒性であり、デルタ株に近いかそれ以上の強毒性があれば世界は再びパンデミック初期のような混乱に陥る可能性がある一方、弱毒性のオミクロン株がデルタ株を駆逐すればパンデミックも収まり、ウイズ・コロナによる景気復興も続くとして金融市場全般が楽観へ走る可能性もある。最悪のシナリオと最も楽観的なシナリオのいずれもあり得るため、市場は11月26日に最悪への反応としてリスク回避全開で動き、週明けはいったん冷静さを取り戻して反発したが、29日夜にかけては日中に戻していたものも再び失速している。不安心理が優勢の印象だ。感染拡大により経済活動規制が強化されれば景気回復の腰折れ、世界規模のサプライチェーン混乱による物資不足も考えられる。

南アフリカの感染対策責任者のカリム博士は11月29日にオミクロン株によって南アの1日の感染者数は1週間で3倍になる恐れがあり、今週末には1日1万人を超えて2〜3週間で医療が逼迫すると警告した。世界保健機関(WHO)は29日に「オミクロン株について、国際的に拡散する公算が大きく、世界規模のリスクは極めて高い」と分析した加盟国宛てに報告した。

【難しい米連銀の金融政策】

米連銀のパウエル議長は11月30日に上院銀行委員会で証言するが、冒頭発言内容を29日に公開した。それによると「サプライチェーンの混乱を背景とするインフレの上振れが来年も十分続くと予想して物価安定目標に傾注する。政策手段を経済下支えとともににインフレ高進を根付かせないために使う」としている。

11月22日にバイデン大統領はパウエル議長の再任を決定したが、11月10日の米10月消費者物価上昇率の上ブレを見て大統領はインフレ対策が最重要課題とし、その意向を踏まえてパウエル議長が再任されている。バイデン政権は11月23日に原油高騰を抑えるために戦略備蓄在庫の放出を決定するとともに日韓英と中印も協調して国家備蓄を放出するとした。23日時点ではその程度の対策では原油高騰を抑えるのは無理としてNY原油は逆に急騰したのだが、26日のオミクロン・ショックによりにNY原油は10%を超える暴落となり、29日にいったん戻したものの再び失速している。オミクロン株情勢を踏まえて世界規模のインフレがこのまま進むのか、原油暴落によりインフレがいったん沈静化するのか見通しも難しくなっている。米FOMCは12月14-15日に開催される。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、11月25日早朝高値を直近のサイクルトップとして急落したが、26日深夜と29日午後の両安値をダブルボトムとして戻している印象だ。このため29日午後安値112.97円を割り込まないうちは30日の日中から12月2日早朝にかけての間への上昇余地ありとみるが、113.30円割れからは下げ再開を警戒して29日午後安値試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして12月2日午後から6日午後にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では11月29日夜への上昇で遅行スパンが好転、先行スパンの下限へ戻している。先行スパンへ潜り込むところからは突破を試し、先行スパン突破からは上昇も勢い付く可能性があるとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。しかし潜り込めない場合及び潜り込んでも突破しきれずに再び転落状況に陥る場合は下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は11月26日夕刻から26日深夜への下落時に指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せてから50ポイント台到達へ戻している。このため40ポイント以上での推移中は上向きとして60ポイント台を試すとみるが、40ポイント割れからは下げ再開を疑い、35ポイント割れからは20ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、113.30円を下値支持線、114.10円を上値抵抗線とする。
(2)113.30円以上での推移中は上向きとし、114.10円超えからは114.50円手前を試すとみる。114.50円手前は戻り売りにつかまりやすいとみるが、113.50円以上での推移なら12月1日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)113.30円割れからは下げ再開を警戒して29日午後安値112.97円試しとし、底割れからは112.50円前後、先行きで112円割れを目指す流れとみる。

【当面の主な予定】

11/30(火)
09:30 (豪) 7-9月期 経常収支 (4-6月 205億豪ドル、予想 278億豪ドル)
09:30 (豪) 10月 住宅建設許可件数 前月比 (9月 -4.3%、予想 -2.0%)
10:00 (中) 11月 国家統計局製造業PMI (10月 49.2、予想 49.6、予想 49.6)
11:00 (豪) デベル豪中銀副総裁、パネル討論会参加
14:00 (日) 10月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (9月 4.3%、予想 5.2%)
17:55 (独) 11月 失業者数 前月比 (10月 -3.90万人、予想 -2.50万人)
17:55 (独) 11月 失業率 (10月 5.4%、予想 5.3%)

19:00 (欧) 11月 消費者物価指数・速報値 (10月 4.1%、予想 4.4%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価コア指数・速報値 (10月 2.0%、予想 2.3%)
22:00 (英) マン英中銀委員、講演
23:00 (米) 9月 米連邦住宅金融局住宅価格指数 前月比 (8月 1.0%、予想 1.2%)
23:00 (米) 9月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (8月 19.7%、予想 19.3%)
23:45 (米) 11月 シカゴ購買部協会景景況指数 (10月 68.4、予想 67.0)
24:00 (米) 11月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (10月 113.8、予想 110.9)
24:00 (米) パウエル米連銀議長とイエレン財務長官、上院銀行委員会で証言
24:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、イベント挨拶
27:00 (米) クラリダ米連銀副議長、メスター・クリーブランド連銀総裁、討論参加

12/1(水)
06:45 (NZ) 10月 住宅建設許可件数 前月比 (9月 -1.9%)
08:50 (日) 7-9月期 ソフトウェア含む全産業設備投資額 前年同期比 (4-6月 5.3%)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP 前期比 (4-6月 0.7%、予想 -2.5%)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP 前年同期比 (4-6月 9.6%、予想 3.0%)
10:45 (中) 11月 財新製造業PMI (10月 50.6、予想 50.5)
16:00 (独) 10月 小売売上高 前月比 (9月 -2.5%、予想 0.9%)
16:00 (独) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 -0.7%、予想 -1.7%)
17:55 (独) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 57.6)
18:00 (欧) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 58.6)
18:30 (英) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 58.2)

22:15 (米) 11月 ADP非農業部門民間就業者 前月比 (10月 57.1万人、予想 52.3万人)
23:00 (英) ベイリー英中銀総裁、講演
23:45 (米) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 59.1)
24:00 (米) 11月 ISM製造業景況指数 (10月 60.8、予想 61.0)
24:00 (米) 10月 建設支出 前月比 (9月 -0.5%、予想 0.5%)
24:00 (米) パウエル米連銀議長とイエレン財務長官、下院金融委員会で証言
24:30 (米) 米エネルギー省週間石油在庫統計
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)



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