ドル円見通し 8月16日以降の持ち合い下限から戻すが中間付近で上げ渋る(週報9月第2週)

ドル円はそろそろ持ち合いから上下いずれへ抜けるのか試す時期に来ていると思われる。

ドル円見通し 8月16日以降の持ち合い下限から戻すが中間付近で上げ渋る(週報9月第2週)

ドル円見通し 8月16日以降の持ち合い下限から戻すが中間付近で上げ渋る

〇ドル円、109.40-110.40レンジでの持ち合いが4週続く、そろそろ上下いずれかを試す時期か
〇9/10発表の米8月PPI、前年同月比は+8.3%、過去最高を二か月連続で更新
〇市場は年内テーパリング開始の可能性を意識、今週の米CPI小売売上高を注視
〇米長期金利上昇でドル高傾向だが、米株5日続落で、ドル円的には円高圧力も
〇110円越えから続伸の場合110.40試し、110.44超えからは110.50-70へ上値切り上げ
〇109.61割れからは109.40試し、割り込むと持ち合い下放れ109.10、108.71を順次試す流れか

【概況】

ドル円は109.40円台までを下値支持帯、110.40円台までを上値抵抗帯とした概ね1円幅で騰落を繰り返す持ち合いでの推移が4週続いている。9月3日の米8月雇用統計通過後にそれまでのドル全面安からドル全面高へと風向きが変わり、9月8日から9日にかけて米長期債利回りが上昇一服で低下する中でユーロ等が下げ渋りポンドが反騰するなどドル高にブレーキがかかったものの、週末の10日夜からユーロや豪ドルが再び下落、反騰していたポンドも失速するなどドル高再開で週を終えている。
ドル円は9月3日夜の109.58円では8月31日夜安値109.57円割れをぎりぎりで回避して反騰入りし、8日午後には110.44円を付けて9月1日夕高値110.41円をわずかに超えたものの失速、10日未明に109.61円まで下げて持ち合いの下限に迫ったところからのドル高再開感で10日夕刻には109.98円まで戻すも110円に届かないままで週を終えた。米長期債利回り反騰がドル高円安要因となったもののクロス円の円高とNYダウの5日続落がリスク回避感を意識させたことでドル円の上昇も勢い付かなかった。

【米連銀のテーパリング年内開始を意識したドル高に株安も懸念レベルに】

9月10日夜に米労働省が発表した8月の米生産者物価上昇率は前月比0.7%で7月の1.0%から伸びが鈍化したものの市場予想の0.6%上昇を上回った。前年同月比は8.3%で7月の7.8%から加速して市場予想の8.2%を上回り過去最高を2か月連続で更新した。エネルギーと食料品を除いたコア指数上昇率は前月比0.6%で7月の1.0%から鈍化したが市場予想の0.5%を上回り、前年同月比は6.7%で7月の6.2%から伸びが加速して市場予想の6.6%を上回り過去最高となった。
9月14日には米8月消費者物価上昇率の発表がある。全体の上昇率は前月比で7月の0.5%から0.4%へ鈍化、前年同月比も7月の5.4%から5.3%へ鈍化、コア指数では前月比が7月の0.3%と変わらず、前年同月比が7月の4.3%から4.2%へ若干鈍化すると予想されている。しかし生産者物価の上昇が高止まりすれば消費者物価も簡単には落ちてこない。そのあたりを米連銀も警戒しており、目標として掲げる2.0%以上を持続的に上回る状態を超えてインフレ懸念を強める状況になっている。

9月10日にクリーブランド連銀のメスター総裁は「年内にテーパリングに着手することを引き続き望んでいる」とし、米連銀による「インフレは一時的」との表現はインフレの要因などを十分に説明できていないとして見直しが必要とした。8月27日のパウエル米連銀議長によるジャクソンホール講演ではテーパリング開始への具体的な判断基準なり時期を明言しなかったものの年内のテーパリング開始は妥当としている。9月3日の米雇用統計での就業者増加数が予想外に低調だったために市場はいったんテーパリング時期が先送りされる可能性があるとみたが、その後の米当局者発言等は9月21-22日の会合での決定は見送られても年内の開始を示す可能性が高く、タカ派系高官は9月会合での決定もあり得る姿勢を示している。FOMCが徐々に迫る中、特に9月14日の消費者物価上昇率、15日の米小売売上高等を見ながら市場もテーパリングを意識してドル高へ進みやすい状況と思われるが、一方でNYダウが続落していることでドル円としての上昇は勢い付かない印象もある。

【米10年債利回り上昇、ダウ5日続落】

9月10日の米10年債利回りは前日比0.05%上昇の1.35%。30年債利回りは同0.04%上昇の1.94%、2年債利回りは横ばいで0.21%で週を終えた。米10年債利回りは9月3日の米雇用統計後に1.26%から上昇に転じて7日に1.38%を付けて8月4日以降の最高水準としたが、8日、9日と株売り債券買いの動きで低下していた。10日は株安が続いたものの生産者物価上昇を反映して上昇しているが、利回りチャートは7月20日と8月4日の1.12%で付けたダブルボトム以降、1.38%前後を抵抗線とした底上げ型の三角持ち合いの様相でありテーパリング開始感が強まれば持ち合い上放れにより上昇が勢い付きやすい姿と思われる。

NYダウは前日比271.66ドル安と5日間の続落となった。8月16日に史上最高値を付けた後のは伸びずにこの1週間の下落により35000ドル台到達での高値警戒感とデルタ株感染拡大による年後半の景気回復の鈍化懸念が重石となっており、下落規模は6月18日への下落時や昨年9月の下落時並みに発展する可能性も懸念される動きだ。
ドル円にとっては米長期債利回りが持ち合い上放れで上昇が勢い付けばドル高円安へ進みやすくなるが株安が深刻化すると円高圧力が勝る展開となりかねないところだ。

【持ち合い放れの時期迫る、当面のポイント】

【持ち合い放れの時期迫る、当面のポイント】

ドル円は8月11日高値110.79円から8月16日安値109.10円まで下げた後は騰落幅凡そ1円規模でのジグザグ推移で持ち合いを形成しているが、持ち合いもすでに1か月を経過しており、そろそろ持ち合いから上下いずれへ抜けるのか試す時期に来ていると思われる。
概ね3か月から4か月周期のサイクルで推移していることを踏まえれば、8月11日高値110.79円超えからは持ち合い上放れとして10月序盤から後半にかけての間への上昇で7月2日高値111.65円を試しに向かう可能性が考えられる。そのためには株安が深刻化せずに米長期債利回りが確り上昇する必要がある。
持ち合い中の安値である8月24日夜安値109.40円を割り込むところからは下放れ開始として8月16日安値109.10円から8月4日安値108.71円を試す流れへ進みやすくなるとみる。8月4日安値割れからは次の底形成期となる11月から12月序盤にかけての間へ下落期が続きやすくなると思われるが、その際は概ね80週前後の中期的な底打ちサイクルにおいて7月2日高値を天井とした下落期に入る可能性も考えられる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)現状は109.40円台から110.40円台までの持ち合い範囲にあり、その中心付近の110.00円を超えてくれば持ち合い上限を試し、超えずに持ち合いの下側半分程度での推移が続き始める場合は持ち合い下放れの準備構成に入ると思われる。
(2)110円超えから続伸に入ればもう一度110.40円台試しとし、9月8日午後高値110.44円を超えれば110.50円台から110.70円前後へ上値目途が切り上がると思われる。110.40円以上は反落注意とするが、110.25円以上での推移が続くうちは高値更新を試す可能性が維持されるとみる。ただし、9月8日高値に届かずに失速する場合は高値を若干切り上げてきた持ち合い中のジグザグ上昇パターンが崩れ始める予兆としてその後の急落に注意する。
(3)9月10日未明安値109.61円割れからは8月24日夜安値109.40円試しとし、109.40円割れからは持ち合い下放れに入るとみて8月16日安値109.10円、8月4日安値108.71円を順次試してゆく流れとみる。

【当面の主な予定】

9/13(月)
08:50 (日) 7-9月期 大企業全産業業況判断指数BSI  (4-6月 -4.7)
08:50 (日) 7-9月期 大企業製造業業況判断指数BSI (4-6月 -1.4)
08:50 (日) 8月 国内企業物価指数 前月比 (7月 1.1%、予想 0.2%)
08:50 (日) 8月 国内企業物価指数 前年同月比 (7月 5.6%、予想 5.6%)
27:00 (米) 8月 月次財政収支 (7月 -3021億ドル、予想 -1730億ドル)

9/14(火)
09:00 (豪) エリス豪中銀総裁補 議会発言
10:30 (豪) 4-6月期 住宅価格指数 前期比 (1-3月 5.4%、予想 6.2%)
10:30 (豪) 4-6月期 住宅価格指数 前年同期比 (1-3月 7.5%、予想 14.0%)
10:30 (豪) 8月 NAB企業景況感指数 (7月 11)
10:30 (豪) 8月 NAB企業信頼感指数 (7月 -8)
11:45 (豪) ロウ豪中銀総裁、講演
13:30 (日) 7月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 -1.5%)
13:30 (日) 7月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 11.6%)
13:30 (日) 7月 設備稼働率 前月比 (6月 6.2%)

15:00 (英) 8月 失業保険申請件数 (7月 -0.78万件)
15:00 (英) 8月 失業率 (7月 5.7%)
15:00 (英) 7月 失業率・ILO方式 (6月 4.7%、予想 4.6%)
21:30 (米) 8月 消費者物価指数 前月比 (7月 0.5%、予想 0.4%)
21:30 (米) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 5.4%、予想 5.3%)
21:30 (米) 8月 消費者物価コア指数 前月比 (7月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 8月 消費者物価コア指数 前年同月比 (7月 4.3%、予想 4.2%)

9/15(水)
07:45 (NZ) 4-6月期 経常収支 (1-3月 -28.95億NZドル、予想 -15.72億NZドル)
08:50 (日) 7月 機械受注 前月比 (6月 -1.5%、予想 3.3%)
08:50 (日) 7月 機械受注 前年同月比 (6月 18.6%、予想 15.7%)
09:30 (豪) 8月 HIA住宅販売 前月比 (7月 -20.5)
09:30 (豪) 9月 ウエストパック消費者信頼感指数 (8月 104.1)
11:00 (中) 8月 小売売上高 前年同月比 (7月 8.5%、予想 7.0%)
11:00 (中) 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 6.4%、予想 5.8%)
13:30 (日) 7月 第三次産業活動指数 前月比 (6月 2.3%、予想 0.4%)
15:00 (英) 8月 消費者物価指数 前月比 (7月 0.0%、予想 0.5%)
15:00 (英) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 2.0%、予想 2.9%)
15:00 (英) 8月 消費者物価コア指数 前年同月比 (7月 1.8%、予想 2.9%)

18:00 (欧) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 -0.3%、予想 0.6%)
18:00 (欧) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 9.7%、予想 6.0%)
21:30 (米) 9月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (8月 18.3、予想 18.0)
21:30 (米) 8月 輸入物価指数 前月比 (7月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 8月 輸出物価指数 前月比 (7月 1.3%、予想 0.4%)
22:15 (米) 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 0.9%、予想 0.5%)
22:15 (米) 8月 設備稼働率 (7月 76.1%、予想 76.4%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
24:00 (欧) レーンECB理事、講演

9/16(木)
休場 メキシコ(独立記念日)
07:45 (NZ) 4-6月期 GDP 前期比 (1-3月 1.6%、予想 1.2%)
07:45 (NZ) 4-6月期 GDP 前年同期比 (1-3月 2.4%、予想 16.1%)
08:50 (日) 8月 貿易収支・通関・季調前 (7月 4410億円、予想 -625億円)
08:50 (日) 8月 貿易収支・通関・季調済 (7月 527億円、予想 2456億円)
10:30 (豪) 8月 新規雇用者数・全体 (7月 0.22万人、予想 -8.00万人)
10:30 (豪) 8月 新規雇用者数・フルタイム (7月 -0.42万人)
10:30 (豪) 8月 新規雇用者数・パートタイム (7月 0.64万人)
10:30 (豪) 8月 失業率 (7月 4.6%、予想 4.9%)
18:00 (欧) 7月 貿易収支・季調済 (6月 124億ユーロ、予想 149億ユーロ)
18:00 (欧) 7月 貿易収支・季調前 (6月 181億ユーロ)

21:30 (米) 8月 小売売上高 前月比 (7月 -1.1%、予想 -0.8%)
21:30 (米) 8月 小売売上高・除自動車 前月比 (7月 -0.4%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 9月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (8月 19.4、予想 19.0)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 31.0万件、予想 32.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 278.3万人)
23:00 (米) 7月 企業在庫 前月比 (6月 0.8%、予想 0.5%)
29:00 (米) 7月 対米証券投資 (6月 315億ドル)
29:00 (米) 7月 対米証券投資・短期債除く (6月 1109億ドル)

9/17(金)
15:00 (英) 8月 小売売上高 前月比 (7月 -2.5%、予想 0.8%)
15:00 (英) 8月 小売売上高 前年同月比 (7月 2.4%、予想 2.7%)
15:00 (英) 8月 小売売上高・除自動車 前月比 (7月 -2.4%、予想 0.8%)
15:00 (英) 8月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (7月 1.8%、予想 2.5%)
17:00 (欧) 7月 経常収支・季調済 (6月 218億ユーロ)
17:00 (欧) 7月 経常収支・季調前 (6月 240億ユーロ)
18:00 (欧) 7月 建設支出 前月比 (6月 -1.7%)
18:00 (欧) 7月 建設支出 前年同月比 (6月 2.8%)
18:00 (欧) 8月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 3.0%、予想 3.0%)
18:00 (欧) 8月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 1.6%、予想 1.6%)
23:00 (米) 9月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (8月 70.3、予想 72.6)

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