ドル円見通し 米雇用統計から変化、ドル全面安からドル高再燃へ
〇ドル円、9/7夜110円を突破、9/8早朝110.31まで続伸、9/1夕高値110.41に迫る
〇ドル全面安の流れから9/3米雇用統計発表直後の一段安を経て、ドル高基調に風向きが変化
〇米長期債利回り上昇、本邦長期債利回りとの格差からドル高円安を助長
〇ドル円、8/16夜安値以降のやや右肩上がりの展開で推移、持ち合い上限110.50前後を試す流れか
〇110円以上での推移中は上向きとし、110.41超えなら110.50から110.65のゾーンを試すとみる
〇110円割れからはいったん反落に入るとみて、109.70台への下落を想定する
【概況】
ドル円は9月7日夜に110円を突破、8日早朝には110.31円まで続伸して9月1日夕高値110.41円に迫っている。為替市場全般は8月19日までドル全面高で推移した後はドル全面安の流れに変化、そして9月3日夜の米雇用統計で非農業部門就業者数が予想を大幅下回ったことで発表直後にユーロやポンド、豪ドル等がこの間の最高値を更新したが、一方では米失業率や平均時給の改善もあり米連銀によるテーパリング開始はずれ込むにしても年末までには着手されるだろうとの冷静な受け止め方となり、当面の高値を出し切ってドル高基調へと風向きが変わった。
9月6日は米国市場が休場だったが、休場明けの7日から取引再開に入った米10年債利回りが上昇、午後の豪中銀金融政策発表をきっかけに豪ドルが急落、ユーロやポンドも崩れてドル全面高の様相となり、ドル円は9月3日夜安値109.58円以降の高値を切り上げてきた。
【米10年債利回り上昇】
9月7日の米10年債利回りは前日比0.04%上昇の1.37%となった。10年債利回りは7月20日に1.12%台へ低下、8月4日に同値を付けてダブル底として上昇したが、8月12日と8月26日に1.37%台後半まで上昇したところで行き詰まり、9月3日の米雇用統計前は低下していた。しかし米雇用統計発表をきっかけに1.26%台から1.33%へ上昇、休場明けの7日も1.38%を付けるところまで上昇して終盤もほぼ高値圏にとどまった。1.38%を超えてさらに続伸に入れば、7月20日を起点とした日足チャートは1.38%を抵抗とした三角持ち合いからの上放れに入り上昇感が一段と強まる可能性がある。2年債利回りも9月2日に0.19%台まで低下していたところから反騰入りしており7日は0.22%台まで続伸している。
今週は米財務省による長期債の大量入札もあるが、米雇用統計を踏まえても、テーパリングはいずれ始まるという認識での債券売り・利回り上昇へ進み始めた印象だ。米長期債利回り上昇と共に独英及び豪等の10年債利回りも上昇しており、利回り格差的な上昇感はユーロやポンド等においてはさほど大きなインパクトではないかもしれないが、やはり米10年債利回り上昇=ドル高という心理が優勢であり、特に長期金利の動きが鈍い本邦長期債利回りとの格差という側面ではドル高円安を助長する。
9月7日のNYダウは長期債利回り上昇への警戒感と連休明けの手仕舞い及びデルタ株感染拡大へのリスク回避感もあって前日比269.09ドル安と下落した。一方では巣篭り需要回復への期待感もあってハイテク中心のナスダック総合指数は前日比10.81ポイント高と上げ幅は小さかったものの取引時間中及び終値ベースでの史上最高値を更新している。ダウも最高値近辺の範囲にあり株高基調はまだ継続してゆきやすいところだが、テーパリングも意識すれば株買い・債券売り・利回り上昇という組み合わせにもなりやすい。
【8月16日夜安値以降のやや右肩上がりの持ち合い上限を試す】
ドル円は8月16日夜に109.10円を付けて7月2日高値111.65円以降の安値を付けたところからは1円弱の騰落幅でジグザグ歩調をたどりながらやや右肩上がりの展開で推移している。8月11日高値110.79円から8月16日安値までの高安レンジ内にとどまっているために持ち合い相場だが、9月3日夜安値は109.58円にとどまって8月31日夜安値109.57円割れを回避して切り返しているため、戻り高値を結ぶやや右肩上がりの上値抵抗線が来る110.50円前後を試してもよい流れと思われる。
しかし、8月11日高値を超えないことには持ち合い止まりとなり、8月16日夜以降の底上げパターンが崩れるところからは持ち合い下放れに入り8月16日夜安値、さらに8月4日安値108.71円等を試す流れへ進みかねないところだ。
首相交代問題もあり本邦株式市場はやや楽観的な動きを見せて日経平均が3万円台を付けるところまで戻したこともドル円の上昇には寄与しており、米長期債利回り上昇が継続的となれば高値試しを続けやすくなる環境だが、それを上回るリスク回避的な動きが強まる場合やドルストレートでのドル全面高がクロス円の下落を招き、クロス円の全面安からの円高感が強まってゆくケースも考えておく必要があると思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、8月16日夜安値以降、8月19日夜、24日夜、31日夜とボトムを付けてきたが、31日夜安値から3日目となる9月3日夜安値で直近のボトムを付けて反騰入りしている。高値形成期は9月1日夕高値を基準として9月6日夕から8日夕にかけての間と想定されるので既に反落警戒期にあり、9月1日夕高値に迫るところないしは高値を更新するところはピークアウトとなりやすいと注意し、110円割れからは弱気サイクル入りとして8日夜から10日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では7日午後からの反騰で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパン悪化からは下落期入りとみて安値試し優先へ切り返す。その際は先行スパンを試す動きに入るのではないかとみる。
60分足の相対力指数は7日夜の上昇で80ポイントまで上昇してかなり買われ過ぎの状態と思われる。70ポイント以上での推移か一時的に割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとみるが、65ポイント割れからは上昇一巡による下落期入りとみて50ポイント前後への低下を伴う下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)110.00円を下値支持線、9月1日夕高値110.41円を上値抵抗線とする。
(2)110円以上での推移中は上向きとし、110.41円超えの場合は110.50円から110.65円にかけてのゾーンを試すとみる。110.50円以上は反落警戒とするが、110.20円以上での推移なら9日の日中にかけても高値試しが続く可能性もあるとみる。
(3)110円割れからはいったん反落に入るとみて109.70円台への下落を想定する。109.70円以下は反発注意とするが、110円を割り込んでの推移なら9日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
9/8(水)
14:00 (日) 8月 景気ウオッチャー現状判断DI (7月 48.4、予想 45.0)
14:00 (日) 8月 景気ウオッチャー先行判断DI (7月 48.4、予想 46.2)
17:10 (豪)デベル豪中銀副総裁、オンライン会議で発言
23:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
23:00 (米) 7月 雇用動態調査(JOLT)
24:00 (英) ベイリー英中銀総裁、発言
26:00 (米) 財務省10年債入札
26:10 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
28:00 (米) 7月 消費者信用残高 前月比 (6月 376.9億ドル、予想 250.0億ドル)
9/9(木)
07:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、同連銀主催のバーチャル会合
07:45 (NZ) 4-6月期 製造業売上高 前期比 (1-3月 2.1%)
08:01 (英) 8月 英RICS住宅価格指数 (7月 79、予想 75)
08:50 (日) 8月 マネーストックM2 前年同月比 (7月 5.2%、予想 4.6%)
10:30 (中) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 1.0%、予想 1.0%)
10:30 (中) 8月 生産者物価指数 前年同月比 (7月 9.0%、予想 9.0%)
15:00 (独) 7月 貿易収支 (6月 163億ユーロ、予想 146億ユーロ)
15:00 (独) 7月 経常収支 (6月 225億ユーロ、予想 180億ユーロ)
20:45 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
21:30 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、定例記者会見
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 34.0万件、予想 34.3万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 274.8万人、予想 274.4万人)
24:00 (米) EIA週間石油在庫統計
24:05 (米) エバンズ・シカゴ連銀総裁、イベント挨拶
24:05 (加) マックレム・カナダ中銀総裁、会見
24:05 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、討論会参加
26:00 (米) ボウマンFRB理事、講演
26:00 (米) 財務省30年債入札
27:00 (米) ニューヨーク連銀総裁、他3連銀総裁、経済における人種差別に関する会議参加
※ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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