ドル円見通し 110円を割り込む、7月2日高値からは2円を超える下落幅に
〇ドル円、7/8深夜安値109.52へ下落、米長期債利回り大幅低下の中で一段安となる
〇米長期債利回り大幅低下、株価下落、感染再拡大の影響が市場心理を冷やしている印象
〇4/23からの上昇基調崩れる、7/2午前高値から7/8深夜安値までの下げ幅が2円を超える
〇現状の52日移動平均を踏みとどまるのか、割り込んで続落に入るのか、要警戒
〇109.52割れからは109円前後試しへ向かうとみる、109円以下は反騰注意とする
〇110.25を超える場合は、110.50前後への反騰継続とみる
【概況】
ドル円は7月8日深夜安値で109.52円へ下落。7月2日午前高値で111.65円を付けて4月23日安値107.46円以降の高値を更新、3月31日高値110.96円を超える一段高となっていたが、その後は米長期債利回りの大幅低下で売られ、8日も米長期債利回りが大幅低下する中で一段安となった。
7月6日夕刻からはドルストレートでのドル高がぶり返していたが、8日夜はユーロドルがECBのインフレ目標の修正を挟んで上昇したものの、豪ドル米ドルやポンドドルなどが続落しており、クロス円全般の大幅下落と共にドルストレートでのドル高感も並走する動きだった。米長期債利回り低下はドル安要因になるものの独英等の主要国長期債利回りも急低下していることでドル売り要因にならず、8日夜は欧米の主要株価指数が大幅下落したことでリスク回避的な手仕舞い売りが優勢となったことで豪ドル米ドル等の下げが目立つ展開だった。
【米長期債利回り大幅低下続く】
7月8日の米10年債利回りは前日比0.02%低下の1.30%となったが、一時は1.25%まで低下した。3月31日に1.77%まで上昇したところからの低下基調の継続であり、年初に1%を超えたところから大上昇した流れを解消するような動きとなっている。米30年債利回りも0.01%低下の1.93%となったが、一時は2月2日以来の低水準となる1.85%台まで低下した。利上げ時期に敏感として6月17日のFOMC後に0.16%から0.28%まで急伸した2年債利回りは前日比0.02%低下の0.20%、一時は0.19%台まで低下した。
一方でNYダウは前日比259.86ドル安と反落、一時は500ドルを超える下落となった。ナスダック総合指数も米長期債利回り低下にもかかわらず前日比105.28ポイント安と下落した。株安債券高で長期債利回りが低下する図式となったが、米国でもデルタ株(インド型)による感染再拡大が広がり始めたこと、欧州でも規制の再強化への動きがみられること、東京の緊急事態宣言と五輪の無観客開催決定等も市場心理を冷やしている印象だ。
リスク回避的な動きのためにドルストレートでは手仕舞い売り優勢で豪ドル米ドルが2月25日高値以降の安値を更新、ポンドドルも失速して7月2日夜安値に迫った。8日夜はユーロドルが上昇したが、ECBが18年ぶりに物価目標を変更したものの従来の2%弱から「中期的に2%」として一時的に2%を超える上ブレを容認するというわずかな修正だったことで逆に買われた印象だが1.180ドル割れに対する突っ込み警戒感からの買い戻しの範囲であり5月25日からの下落基調は継続しやすい状況と思われる。
米労働省が発表した新規失業保険申請は7月3日までの週間で前週比2000件増の37万3000件となり市場予想の35万件を上回り3週ぶりの増加だった。1週遅れの失業保険受給者総数は6月26日までの週間で333万9000人となり前週比14万5000人減少だったが市場予想の333万5000人を上回った。最近の米景況感等の悪化も含め、景気回復基調の一服感を示した印象だった。
【4月23日からの上昇基調崩れる】
ドル円の7月2日午前高値から7月8日深夜安値までの下げ幅は2.13円となり2円を超えた。4月23日安値107.46円以降の上昇期においては、5月3日高値から5月7日安値への下落幅1.37円など、1円強の下落にとどまって高値切り上げ後の安値も底上げをして上昇基調を維持してきた。しかし今回は2円を超える下落幅となり、4月23日安値と5月25日安値を結ぶ上昇トレンドの下値支持線を割り込んでいる。下落規模としては3月31日高値110.96円から4月23日安値107.46円まで3.50円の下げ幅となった時の下落初期段階に近い角度となっている。
現状は52日移動平均まで下げたところだが、ここで踏み止まって110円台後半を回復してくれば押し目形成からの上昇再開というシナリオも描けるものの、52日移動平均を割り込んで続落に入れば4月23日への下落期並みの下げ幅を試すか、あるいは4月23日安値を割り込んでゆく展開となる可能性も警戒すべきかもしれない。週足においては80週前後の底打ちサイクルで推移しており、1月6日底からの上昇も26週を経過したところだが、2014年以降のこのサイクルにおける上昇期は25週から28週で概ね半年で一巡してきた経緯もある。NYダウが反騰して株高継続感を回復すればリスク選好的なドル円の上昇もありと思われるが、株安が続くようだとドル円の下げも厳しくなりかねないところだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、6月30日夜安値を起点とした上昇が7月2日午前高値でピークアウトして下落期に入ったとして安値形成期を7月5日夜から7日夜にかけての間と想定していたが、7日午前安値からいったん戻したために8日朝時点では7日午前安値を直近のサイクルボトムとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとした。8日深夜へ一段安となったため、底割れによる新たな弱気サイクル入りとして12日午前から14日午前にかけての間への下落を想定する。ただし乱調な展開に入って110.30円を超えるような反騰となる場合は直前安値をボトムとした強気サイクル入りの可能性が出てくると注意する。
60分足の一目均衡表では8日夜の一段安で実線と交錯していた遅行スパンが再び悪化した。新たな安値更新を回避して推移すれば遅行スパンは好転しやすくなるが、先行スパンを突破できないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。強気転換は先行スパンを上抜くような反騰発生からとする。
60分足の相対力指数は8日深夜への一段安で20ポイントまで低下した。その後は持ち直しているものの50ポイントに届かずにいるのでまだ一段安余地があるとみる。強気転換には50ポイントを超えてからさらに続伸するような反騰が必要と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月8日深夜安値109.52円を下値支持線、110.25円を上値抵抗線とする。
(2)110.00円から110.25円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。8日深夜安値割れからは109円前後試しへ向かうとみる。109円以下は反騰注意とするが109.75円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)110.25円を超える場合は110.50円前後への反騰継続とみる。110円台を維持して週を超える場合は週明けも続伸とみるが、110円台を維持できずに失速の場合は109.75円割れから下げ再開とみる。
【当面の主な予定】
7/9(金)
G20財務相・中央銀行総裁会議(7/10まで)
10:30 (中) 6月 消費者物価指数 前年同月比 (5月 1.3%、予想 1.3%)
10:30 (中) 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 9.0%、予想 8.8%)
15:00 (英) 5月 月次GDP 前月比 (4月 2.3%、予想 1.5%)
15:00 (英) 5月 鉱工業生産指数 前月比 (4月 -1.3%、予想 1.5%)
15:00 (英) 5月 鉱工業生産指数 前年同月比 (4月 27.5%、予想 21.6%)
15:00 (英) 5月 貿易収支・物品 (4月 -109.58億ポンド、予想 -111.0億ポンド)
15:00 (英) 5月 貿易収支・全体 (4月 -9.35億ポンド、予想 -12.50億ポンド)
19:00 (英) ベイリー英中銀総裁、パネル討論会参加
19:00 (欧) ラガルドECB総裁、パネル討論会参加
23:00 (米) 5月 卸売在庫 前月比 (4月 0.8%、予想 1.1%)
23:00 (米) 5月 卸売売上高 前月比 (4月 0.8%)
※ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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