来週の為替相場見通し:『リスクオフのドル高を想定。米当局者発言に注目』(6/19朝)

ドル円は4/23に記録した安値107.47をボトムに反発に転じると、今週後半にかけて、約2ヵ月半ぶり高値となる110.82まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『リスクオフのドル高を想定。米当局者発言に注目』(6/19朝)

『リスクオフのドル高を想定。米当局者発言に注目』

〇今週のドル円FOMCでのFRBとパウエル議長の予想外のタカ派姿勢に110.82まで急伸
〇その後は株安、商品安懸念からの円買いや米指標不冴え、米長期金利低下に110.20レベルまで下げ越週
〇ユーロドル週初1.2149まで上昇後、独経済見通し下方修正やFOMC後のドル買いに一時1.1848まで急落
〇ドル円テクニカルの地合い強く上昇トレンド形成中
〇ファンダメンタルズも米早期テーパリング観測、米景気回復期待等ドル円上昇材料増える
〇来週は年初来高値試す展開も、ボラティリティの拡大とアップサイドリスクに注意が必要
〇来週の予想レンジ(USDJPY):109.00ー111.50、(EURUSD):1.1700−1.1950

今週のレビュー(6/14−6/18)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初109.64で寄り付いた後、早々に週間安値109.60まで下落しました。しかし、一目均衡表転換線にサポートされると、注目された米FOMCにて、@声明文から「コロナ禍による危機が米国経済の重石になっている」との文言が削除されたこと(景気見通しの上方修正)、Aドットチャートで2022年の利上げ予想者が前回3月時の4名から7名に増加した他、2023年の利上げ予想者も前回の7名から13名に増加したこと、B参加者の過半数が2023年までに計2回(0.25%×2回)の利上げを予想したこと、CパウエルFRB議長が記者会見で「インフレ期待が過度に上昇すれば金融政策を調整する用意がある」「インフレはFRBの予想以上に上昇し続ける可能性がある」と発言したこと(従来までのインフレ高進は一時的との見解を一部緩和)、D上記@からCを背景とした米早期テーパリング観測の再燃(米長期金利上昇→米ドル高の波及経路。米10年債券利回りは1.48%から一時1.58%へ急上昇)が支援材料となり、週後半にかけて、4/1以来、約2ヵ月半ぶり高値となる110.82まで急伸しました。

もっとも、3/31に記録した年初来高値110.97をバックに伸び悩むと、E過剰流動性相場の逆流を意識したリスク回避的な円買い圧力(米早期テーパリング観測再燃→株安・商品安→クロス円下落→ドル円連れ安)や、F米長期金利の急低下(FOMC後の上昇分を一時吐き出す展開)、G米経済指標の冴えない結果(米6月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、米新規失業保険申請件数、米5月景気先行指数が軒並み悪化)が重石となり、結局110.20近辺まで押し下げられての越週となっております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.2110で寄り付いた後、@ユーロ圏4月鉱工業生産の良好な結果や、A対英ポンドでのユーロ買い圧力(英国は新型コロナウイルスに係るロックダウン措置を7/19まで延期)、B米国と欧州連合がボーイングとエアバスの補助金を巡る貿易紛争の解決で合意に達したこと等が支援材料となり、翌6/15にかけて、週間高値1.2149まで上昇しました。しかし、一目均衡表転換線および基準線に続伸を阻まれると、C独IFO経済研究所によるドイツの2021年経済性成長率見通しの下方修正(+3.7%から+3.3%)や、Dタカ派的な米FOMCを受けたドル高圧力(資産現金化需要のドル買い圧力)、

E心理的節目1.2000を割り込んだことに伴うロスカット、FレーンECB専務理事による「9/9のECB理事会までにパンデミック緊急購入プログラムの縮小を議論するための十分な情報を得ることはできないかもしれない」とのハト派的な発言、G上記Fを背景としたECBによる早期テーパリング観測の後退(欧州債利回り低下)が重石となり、週末にかけて、4/6以来、約2ヵ月ぶり安値となる1.1848まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、結局1.1858前後での越週となっております。

来週の見通し(6/21−6/25)

<ドル円相場>
ドル円は4/23に記録した安値107.47をボトムに反発に転じると、今週後半にかけて、約2ヵ月半ぶり高値となる110.82まで急伸しました。この間、一目均衡表基準線や転換線、ボリンジャーミッドバンドを上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転や、強気のパーフェクトオーダーも成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを印象付けるチャート形状となっております(ダウ理論で見ても、上値と下値を同時に切り上げる典型的な上昇トレンド形成中)。

ファンダメンタルズ的に見ても、日米金融政策格差を背景としたドル買い・円売り圧力(※大規模金融緩和からの脱却の糸口が見えない日本と、早期テーパリングや利上げ再開の可能性を滲ませた米国との金融政策格差。市場では8月後半に予定されているジャクソンホールでテーパリングが宣言されるとの期待感が根強い状態)や、過剰流動性相場の逆流リスク(米利上げ観測をトリガーとした株価や商品市況の下落→資産現金化需要のドル買いを引き起こす恐れ。但し、リスク回避局面では、対主要通貨でのドル買いが、クロス円の下落を通じて一時的にドル円を下押す場面もあり要注意)、米経済の回復期待など、ドル円相場の上昇を意識させる材料が増えつつあります。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。来週は米国経済指標(6/22の米5月中古住宅販売件数や、6/23の米5月新築住宅販売件数、6/24の米第1四半期GDP確定値、6/25の米5月PCEデフレータなど)が複数予定されている他、パウエルFRB議長や、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁など、FRB当局者による発言機会(FOMCを経てブラックアウト期間が解けた為)も多く予定されているため、米長期金利や米主要株価指数、商品市況を睨みながらの神経質な展開の継続が予想されます。6/25の米5月PCEデフレータが市場予想を上回る結果となった場合や、米当局者よりタカ派的な発言(FOMCの結果を踏襲する形)が見られる場合などには、米長期金利の上昇を通じて、ドル円相場が年初来高値110.97を試すシナリオも想定される為、来週はボラティリティの拡大とアップサイドリスクに注意が必要でしょう。

来週の予想レンジ(USDJPY):109.00ー111.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は5/25に記録した約4ヵ月半ぶり高値1.2267をトップに反落に転じると、今週末にかけて、4/9以来、約2ヵ月半ぶり安値となる1.1848まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、90日移動平均線や200日移動平均線を下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転やバンドウォークも発生するなど、テクニカル的に見て、地合いの弱さを印象付けるチャート形状となっております(ダウ理論で見ても、5/5安値1.1985を下方ブレイクしたことで、短期上昇トレンドの崩壊が実現。目先は3/31に記録した直近安値1.0703を試すシナリオを想定)。

ファンダメンタルズ的に見ても、欧米金融政策格差(FOMCがタカ派的となった一方、先週のECB理事会はハト派的な内容。ラガルドECB総裁やレーンECB専務理事は「テーパリング議論開始は時期尚早」とのスタンスを変えず)や、北アイルランドを巡る英EU間の衝突リスク、新型コロナウイルスの感染再拡大懸念(英国で拡大中の変異種が欧州大陸に広がる恐れ)など、ユーロドルの下落を意識させる材料が増えつつあります。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。来週は欧州圏の重要経済指標(6/22のユーロ圏6月消費者信頼感指数や、6/23のユーロ圏6月製造業PMI速報値、同サービス業PMI速報値、6/24のドイツ6月IFO景況感指数)が予定されている他、ラガルドECB総裁やデギンドスECB副総裁をはじめ欧州当局者の発言も複数予定されている為、今週同様、ボラティリティの高まり(大きな値幅)が警戒されます。ユーロ圏経済指標が冴えない結果を示す場合や、欧州当局者よりハト派的な発言が見られる場合などには、ECBによる早期テーパリング観測の後退を織り込む形で、ユーロドルが一段と売り込まれる可能性もある為、来週はダウンサイドリスクに特に注意が必要でしょう。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.1700−1.1950

注:ポイント要約は編集部

『リスクオフのドル高を想定。米当局者発言に注目』

ドル円日足

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