ドル円見通し 109.30円台で底固めできるかの攻防
〇昨日のドル円、午前109.31まで値を下げ夜109.70まで戻したが、深夜109.33まで下げる
〇安値更新への余裕が乏しいがひとまず新たな安値更新は回避、安値の落ち着きどころを探っている状況か
〇昨日発表の経済指標は良好な結果、米10年債利回りはやや上昇、株価は小動き
〇今週末の米雇用統計、米長期債利回りの騰落を気にしながらの見極めとなるか
〇109.31以上での推移中は109.70超えから上昇再開に入るとみて、110.19を目指す流れに入るとみる
〇109.31割れからは109円前後試しとみるが、109円前後は反発警戒
【概況】
ドル円は5月19日深夜安値108.56円に対して5月25日夕安値で108.55円まで下げてダブル底を形成、また5月13日高値と5月19日夜高値を結んだ右肩下がりの抵抗線により三角持ち合いを形成し、5月26日夜の上昇でこの抵抗線を突破、5月28日夜には110.19円まで上昇して5月25日夕安値からの上昇幅は1.64円まで伸びた。しかしその後はドル安のぶり返しと110円台到達に対する高値警戒感から下落に転じて5月31日安値で109.34円を付けた。
6月1日は午前安値で109.31円まで若干安値を切り下げ、夜の反発時には109.70円まで戻したものの深夜の反落で109.33円まで下げて安値更新への余裕が乏しくなったが、新たな安値更新はひとまず回避している。
5月31日深夜、6月1日午前と1日深夜の三度、109.30円台を付けたところでは下げ渋っているが、5月25日夕安値から5月28日夜高値までの上昇幅に対する半値押しが109.67円にあるため、現状は半値押しに到達したところで足場を固められるのか、3分の2押しとなる109.09円及び109円台を維持できるかどうかを試すか、さらに5月19日深夜と5月25日夕の108.50円台の安値ラインへの往って来いとなるのか、安値の落ち着きどころを探っているところと言える。6月1日夜反発時の高値109.70円を超えてくれば5月28日夜高値からの調整を消化、上昇再開を試しに入り、5月28日夜高値超えへの挑戦に入ると思われるが、まだ情勢も流動的であり、週末の米雇用統計へ向けて重要指標の発表も相次ぐため、方向性を探る展開が続く。
【米長期債利回りの騰落に引き続き気を揉む】
5月31日は米英市場が祝日だったが、祝日明けの6月1日はISM製造業景況指数やマークイットの製造業PMI確定値等の発表がともに強めの数字となったことで5月28日に反落していた米長期債利回りが上昇、それを見て5月28日から反騰してきたユーロやポンドが1日夜まで上昇基調を引っ張ったところから反落してドル高感がやや強まり、ドル円もいったん戻したが、米連銀高官による量的緩和継続姿勢を強調する発言も相次いだことで上値が抑えられた。
米サプライ管理協会(ISM)が発表した5月製造業景況指数は61.2、4月の60.7から上昇して市場予想の60.9を上回った。IHSマークイットによる5月製造業PMI確報値も62.1となり速報値の61.5から上方修正された。これら強めの経済指標発表が景気回復の過熱感を意識させ、週末に低下して週明けの31日を休場していた米長期債が売られて利回りが上昇した。米10年債利回りは5月26日に1.55%台へ低下していたところから1.62%へ戻したところから28日は1.57%へ下げていたが、1日夜には一時1.63%へ上昇、その後はやや下げて前日比0.03%上昇の1.61%で終了した。この動きを見ながらユーロドル等が反落してドル安一服となり、ドル円も深夜に再び109.30円台を試すこととなった。一方でNYダウは前日比45.86ドル高、ナスダック総合指数は同12.26ポイント安と小動きで、ダウは経済指標を好感し、ナスダックは米長期債利回り上昇を嫌った展開だった。
米経済指標、特に物価上昇率の上ブレ指標については米連銀のテーパリング(量的緩和縮小開始)を意識させるものとして米長期債利回り上昇要因となるが、先週末のPCE物価指数の上昇についてはさほどの反応がなかったのは、米連銀高官が金融緩和継続姿勢を繰り返し強調してきたためであり、この日も休場明けだったことでやや米長期債利回り上昇へ反応しやすい市場心理だったが、上昇は一時的なものにとどまった。
米連銀のブレイナード理事は1日、「経済は改善に向かっている」としつつ「雇用と物価に関する目標には程遠い」として金融緩和策の維持を強調。「平均インフレ率は過去四半世紀で一貫して2%を下回り続けた」として現状を一時的な上ブレ現象として「潜在的なインフレ率へと低下していく」との見方を示した。
クオールズ米連銀副議長も1日、「最近のインフレ指標が大幅な伸びを示していることは一時的」と述べたが、「我々は間違っているかもしれない」とも述べており、インフレ率の上ブレが一時的なものにとどまらずに金融緩和の縮小へ進む必要に迫られる可能性にも言及した。先週公開されたFOMC議事録においてもテーパリングの議論はそろそろ始める必要があるとの認識は示されているため、今週末の米雇用統計等が予想を超える上ブレとなる場合は、米連銀のインフレ進行に対する忍耐強い姿勢にも変化が出てくるかもしれない。為替市場としては引き続き米長期債利回りの騰落を気にしながら、ドル円としては米長期債利回りが上昇気配となればドル高円安へ、景気回復によるリスク選好的な投機通貨買い=ユーロやポンド等の上昇基調が優勢となる際にクロス円全般の上昇を背景にドル円においても上昇できるのか、見極める必要があるところだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、5月28日夜高値でピークを付けて下落期入りしてきたが、6月1日午前安値の後は下げ渋りに入っており、5月25日夕安値からも5日を経過しているので、6月1日安値で目先の底を付けて反騰入りを試すところと思われる。1日夜高値109.70円超えからは反騰入りとして6月2日夜から4日深夜にかけての間への上昇を想定するが、1日午前安値を割り込む場合は底割れによる新たな下落期入りとして4日午前から8日午前にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では31日夜安値からは109.50円を挟んだ揉み合いとなっているため遅行スパンが実線と交錯に入っているが、先行スパンから転落した状況が続いている。先行スパンを上抜き返すところからは上昇期に入るとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンを突破できないうちは一段安余地ありとし、1日午前安値割れからは遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は31日夜から1日深夜にかけての三度の109.30円台の安値形成に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行型となっているので60ポイント超えへ上昇しやすいとみるが、40ポイント割れから続落の場合はもう一段安入りを警戒する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.31円を下値支持線、109.70円を上値抵抗線とする。
(2)109.31円以上での推移中は109.70円超えから上昇再開に入るとみて5月28日夜高値110.19円を目指す流れに入るとみる。28日夜高値を超えるには新たな押し上げ材料が欲しいところだが、109.70円を超えた後も109.50円以上での推移なら3日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)109.31円割れからは109円前後試しとみるが、109円前後は反発警戒とし、その後に109.50円を超えるところからは上昇再開の可能性を優先する。ただし109.31円を割り込んだ水準での推移なら3日も安値試しへ向かう可能性が残るとみる。
【当面の主な予定】
6/2(水)
10:30 (豪) 1-3月期 GDP 前期比 (10-12月 3.1%、予想 1.5%)
10:30 (豪) 1-3月期 GDP 前年同期比 (10-12月 -1.1%、予想 0.6%)
15:00 (独) 4月 小売売上高指数 前月比 (3月 7.7%、予想 -2.0%)
15:00 (独) 4月 小売売上高指数 前年同月比 (3月 11.0%、予想 10.1%)
17:30 (英) 4月 消費者信用残高 (3月 -5億ポンド、予想 5億ポンド)
18:00 (欧) 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 1.1%、予想 0.9%)
18:00 (欧) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 4.3%、予想 7.3%)
25:00 (米) エバンズ・シカゴ連銀総裁、講演
25:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
27:00 (米) ミネアポリス連銀オンラインイベント (ミネアポリス連銀、アトランタ連銀、ダラス連銀各総裁)
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
6/3(木)
07:30 (豪) 5月 AiG建設業PMI (4月 59.1)
08:00 (豪) 5月 マークイット・サービス業PMI改定値 (速報 58.8)
10:30 (豪) 4月 貿易収支 (3月 55.74億豪ドル)
10:30 (豪) 4月 輸入 前月比 (3月 4.0%)
10:30 (豪) 4月 輸出 前月比 (3月 -2.0%)
10:30 (豪) 4月 小売売上高確報 前月比 (速報 1.3%)
10:45 (中) 5月 財新サービス業PMI (4月 56.3)
16:55 (独) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 52.8、予想 52.8)
17:00 (欧) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 55.1、予想 55.1)
17:30 (英) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 61.8)
21:15 (米) 5月 ADP非農業部門就業者数 前月比 (4月 74.2万人、予想 70.0万人)
21:30 (米) 1-3月期 非農業部門労働生産性改定値 前期比 (速報 5.4%、予想 5.5%)
21:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 40.6万件)
21:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 364.2万人)
22:05 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、討論会参加
22:45 (米) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 70.1、予想 70.0
23:00 (米) 5月 ISM非製造業景況指数 (4月 62.7、予想 63.0)
24:00 (米) EIA週間石油在庫統計
25:00 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演
26:50 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
28:05 (米) クォ―ルズFRB副議長、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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