トルコリラ円見通し エルドアン大統領の利下げ言及で急落、対ドルで史上最安値更新(21/6/2)

6月1日のエルドアン大統領発言が市場の不安を増大させたために2月16日以降の安値更新となった。

トルコリラ円見通し エルドアン大統領の利下げ言及で急落、対ドルで史上最安値更新(21/6/2)

トルコリラ円見通し エルドアン大統領の利下げ言及で急落、対ドルで史上最安値更新

〇トルコリラ円、6/2早朝12.44まで急落、史上最安値に迫る、売り一巡後12.70台へ戻したが乱高下
〇エルドアン大統領、国営テレビインタビューで利下げについて言及
〇ドル/トルコリラ、6/2早朝に8.77リラへ暴落、史上最安値を更新
〇6/3発表の5月物価上昇率、6/17のトルコ中銀金融政策決定会合に注目集まる
〇12.60以上での推移中は、12.85から12.90にかけてのゾーンを試す可能性があるとみる
〇12.60割れからは12.44試しとし、安値更新からは12.20前後への下落を想定する

【概況】

トルコリラ円の6月1日は12.91円から12.79円のレンジでややジリ安の推移だったが、6月2日早朝にエルドアン大統領による利下げ言及が報じられたことで12.44円(ベンダーによっては12.46円、さらに12.25円等の安値提示も見られた)へ急落した。報道後の初期的な売り一巡後は買い戻されて12.70円台へ戻したが乱高下となっている。

トルコリラ円の史上最安値は昨年11月6日の12.03円。今年3月20日に解任されたアーバル前総裁が就任して三度の利上げを行って金融引き締め政策をとってきたことで2月16日高値15.26円まで大幅上昇し、いったん反落したところから3月19日には15.13円まで戻していたが、解任騒動と利下げ論者のカブジュオール総裁就任により急落に転じ、3月30日には引き締め派の副総裁1人が解任されたことで13.01円へ大幅続落、先行き不透明感を背景に4月26日には12.67円まで一段安した。4月29日の戻り高値13.38円からは再びジリ安傾向に入り、アーバル総裁時代に「必要に応じて追加利上げの用意がある」との文言が中銀の金融政策声明から削除されたことで徐々に安値を切り下げてきていたが、6月1日のエルドアン大統領発言が市場の不安を増大させたために2月16日以降の安値更新となった。

ドル/トルコリラの6月1日は8.53リラから8.45リラの取引レンジで小動きだったが、2日早朝に8.77リラへ暴落した。5月25日にトルコ中銀の副総裁4人のうちの1人が突然解任されたこと、5月28日に格付け会社によるトルコ格下げ検討報道をきっかけに8.61リラへ下落して昨年11月6日安値8.57リラを割り込んで史上最安値を更新していたが、5月31日の1-3月期トルコGDPが予想よりも良かったことでいったん落ち着きを見せていた。しかしエルドアン大統領による利下げ言及から最安値更新となっている。

【大統領による利下げ圧力強まる中で6月3日の物価上昇率に注目集まる】

トルコのエルドアン大統領は6月1日のトルコの国営テレビTRTハーバーのインタビューで、「利下げが必要であり6月1日に中銀総裁と協議した」と述べた。大統領は「金利を引き下げれば投資の負担が軽減される」「今日、中央銀行の総裁とも話した。確かに金利を下げる必要がある」「そのためには7月、8月に金利が低下し始める必要がある」と述べた。
この発言が報じられてトルコリラは対ドルで史上最安値を更新、トルコリラ円も2月16日以降の安値を更新して昨年11月6日に付けた史上最安値に迫った。

エルドアン大統領は3月20日にアーバル前総裁を解任して後任に高金利政策に批判的な大統領と同様の認識を持つ与党・公正発展党(AKP)の元議員であるカブジュオール氏を任命した。3月30日にはチェティンカヤ副総裁も解任し、5月25日にさらに1人の副総裁を解任、入れ替えた。
アーバル前総裁は在任中に三度の利上げを断行して政策金利の週間レポレートは就任前の10.25%から15.00%。17.0%、さらに19.0%へと引き上げられてきたが、エルドアン大統領は「政策金利とインフレ率の1桁を目指す」という政策姿勢を従来から繰り返しており、利下げがインフレを抑制するという異説を唱えてきた。カブジュオール現総裁も同様の考え方を持つとされる。

6月3日には5月の物価上昇率の発表があり、6月17日には次回のトルコ中銀金融政策決定会合がある。物価上昇率が4月から鈍化すれば、大統領が望む利下げの可能性が浮上してリラ売りがさらに進む可能性があり、物価上昇率がさらに加速するようなら利上げ催促でリラが売られやすくもなる可能性もある。今のところ、5月物価上昇率についての市場予想は4月からはやや伸びが鈍化するのではないかと市場は見ているようだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月28日夜へ一段安したところから31日夕刻へ反騰したために6月1日午前時点では28日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。また高値形成期は6月2日から4日にかけての間と想定したが、エルドアン大統領発言からの暴落発生により相場のリズムも急変している可能性がある。6月2日に底割れしたことにより、現状は5月31日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして6月2日夜から4日深夜にかけての間への下落を想定する。ただし、6月2日朝の急落時安値を直近のサイクルボトムとしてさらに安値更新に入る場合は新たな弱気サイクル入りとするのが妥当かもしれない。12.90円以下での推移中は一段安余地ありとするが、12.90円を超える場合は6月2日朝安値をボトムとした強気サイクル入りも検討される。

60分足の一目均衡表では6月2日早朝への急落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとする。
60分足の相対力指数は6月2日朝の急落で10ポイント台へ低下してから戻しているが、波乱中のために50ポイント以下での推移中はもう一段安余地ありとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月2日朝安値12.44円を下値支持線、12.90円を上値抵抗線とする。
(2)12.60円以上での推移中は12.85円から12.90円にかけてのゾーンを試す可能性があるとみるが、そこは戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)12.60円割れからは12.44円試しとし、安値更新からは12.20円前後への下落を想定する。また12.60円以下での推移なら3日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

6月3日
 16:00 5月 消費者物価上昇率 前月比 (4月 1.68%)
 16:00 5月 消費者物価上昇率 前年比 (4月 17.14%)
 16:00 5月 生産者物価上昇率 前月比 (4月 4.34%)
 16:00 5月 生産者物価上昇率 前年比 (4月 35.17%)
 20:30 週次 外貨準備高(グロス) 5/28時点 (5/21時点 492.0億ドル)
6月10日
 16:00 4月 失業率 (3月 13.1%)


注:ポイント要約は編集部

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