『米インフレ懸念再燃で金融市場は不安定化』
〇今週のドル円前週の米雇用統計の低調の余波で週前半に108.35まで下落
〇その後米CPIの予想外の上昇にテーパリング観測再燃、高値109.79まで上昇し109.40で越週
〇ユーロドル独指標改善等で1.2182まで上昇後、米インフレ懸念による米金利上昇で1.2050まで急落
〇その後は週末の米指標不冴えでドル売り活発化1.2140まで持ち直して越週
〇ドル円テクニカルの地合い強く、目先節目の110.00を目指す展開
〇ファンダメンタルズもテーパリング観測再び強まりドル円上昇材料増える
〇ドル円上昇がメインシナリオ、次回FOMCに向けてのヒントを探る一週間
〇来週の予想レンジ(USDJPY):108.25ー110.75、(EURUSD):1.2000−1.2250
今週のレビュー(5/10−5/14)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初108.67で寄り付いた後、@前週末金曜日に発表された低調な米雇用統計を背景とした米早期テーパリング観測の後退(ドル売り圧力)や、A米期待インフレ率の急上昇(米ドルの予想実質金利低下)、B上記Aを背景とした金融市場の不安定化(日経平均株価が一時▲980円超と今年2番目の下げ幅を記録→リスク回避の円買い圧力)が重石となり、翌5/11にかけて、週間安値108.35まで下落しました。しかし、前週末金曜日に記録した安値108.35と同じ価格で下げ止まると、C米4月消費者物価指数(結果4.2%、予想3.6%、※前年同月比)の予想外の急上昇(2008年9月以来、約12年8ヵ月ぶり高水準)や、D上記Cを背景とした米早期テーパリング観測の再燃(米インフレ懸念台頭→米早期テーパリング観測再燃→米10年債利回り急上昇→世界的なリスクアセット急落→資産現金化需要のドル買い再燃)が支援材料となり、週後半(5/13アジア時間)にかけて、週間高値109.79(4/9以来、約1ヶ月ぶり高値圏)まで上昇しました。週末にかけて小反落するも下値は堅く、結局109.40近辺での越週となっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.2161で寄り付いた後、@シュパーン独保健相による「米ジョンソン・エンド・ジョンソン製の新型コロナワクチンの全成人への接種を認める」との発言や、Aドイツ5月ZEW景況感調査(結果84.4、予想72.0)の力強い結果、Bオランダ中銀クノット総裁による「見通しはかなり明るい」「パンデミック緊急購入プログラム終了後も潤沢な支援を続ける」との発言が支援材料となり、翌5/11にかけて、週間高値1.2182(約2ヵ月半ぶり高値圏)まで上昇しました。しかし、2/26に記録した直近高値1.2185をバックに伸び悩むと、Cドイツの連立与党「キリスト教民主同盟(CDU)」と「キリスト教社会同盟(CSU)」の支持率が過去最低水準に落ち込んだことや、Dユーロ圏3月鉱工業生産(結果10.9%、予想11.6%、※前年同月比)の冴えない結果、E米インフレ懸念台頭を背景とした米早期テーパリング観測の再燃(米長期金利上昇→ドル高)、F上記Eを背景とした資産現金化需要のドル買い圧力(過剰流動性相場逆流リスク)が重石となり、週後半(5/13)にかけて、週間安値1.2050まで急落しました。
もっとも、G週末に発表された米経済指標(米4月小売売上高や米4月ミシガン大消費者信頼感指数)が市場予想を下回ると、対主要通貨でドル売りの流れが活発化し、結局1.2140近辺まで持ち直しての越週となっております。
来週の見通し(5/17−5/21)
<ドル円相場>
ドル円は4/23に記録した安値107.47をボトムに反発に転じると、今週後半(5/13)にかけて、約1ヶ月ぶり高値となる109.79(4/9以来の高値)まで上昇しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドを上抜けした他、3/31高値110.97と5/3高値109.71を結んだレジスタンスの突破にも成功するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを印象付けるチャート形状となりつつあります(目先は心理的節目110.00を突破できるか否かに注目。同水準を上抜けられれば、3/31高値110.97を試すシナリオも想定)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@米インフレ懸念の台頭(今週発表された米4月消費者物価指数、米4月生産者物価指数は共に市場予想を大幅に上回る結果)や、A米早期テーパリング観測を織り込む動き(6月FOMCにおけるドットチャートや、8月ジャクソンホールでテーパリング宣言が行なわれるとの見方が根強い。米長期金利上昇→ドル高の波及経路)、B上記@Aを背景とした金融市場の不安定化(過剰流動性相場の逆流リスク→資産現金化需要のドル買い)など、ドル円相場の上昇を意識させる材料が増えつつあります。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします(リスク回避局面においては、ドル買いと円買いが綱引き状態となりやすいが、目先は日米名目金利差の観点で米ドルに軍配が上がると予想。但し、金融市場の不安定化をトリガーとした資産現金化需要のドル買いは、クロス円の下落に繋がりやすく、一巡後はドル円の上値を重くする要因にもなり得る点に注意が必要)。尚、来週は5/17の米5月ニューヨーク連銀景況感指数や、5/18の米4月住宅着工件数、5/20の米5月フィラデルフィア連銀景況指数、5/21の米4月中古住宅販売件数に注目が集まる他、5/17のクラリダFRB副議長講演、5/19のダラス連銀カプラン総裁講演、セントルイス連銀ブラード総裁討論会、5/20のアトランタ連銀ボスティック総裁講演などの要人発言も複数予定されおり、次回FOMCに向けてのヒント(ドットチャートの中央値の上方修正の有無)を探る上で重要な1週間となりそうです。
来週の予想レンジ(USDJPY):108.25ー110.75
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は3/31に記録した安値1.1703をボトムに反発に転じると、今週前半(5/11)にかけて、約2ヵ月半ぶり高値となる1.2182まで上昇しました。この間、主要チャートポイント(一目均衡表基準線や転換線、200日移動平均線や90日移動平均線など)を軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転も実現するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを印象付けるチャート形状となっております(心理的節目1.2000より上側での値動きを維持)。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、@欧州経済の回復期待(新型コロナウイルスの抑制期待→ロックダウンの解除観測)や、AECBによる早期テーパリング観測といったユーロ買い材料が見られる一方、B米早期テーパリング観測の再燃を背景とした金融市場の不安定化リスク(米長期金利上昇→リスク回避のドル買い→ユーロドル・ユーロ円下落)や、CラガルドECB総裁によるユーロ高牽制姿勢(5/14に発表されたECB理事会議事要旨でも「為替レートのさらなる上昇はインフレ見通しに悪影響を与える可能性がある」との見解示唆)、Dドイツを巡る政局不透明感など、ユーロドルの上昇を抑制する材料も増えつつあります。
以上を踏まえ、当方では、ユーロドル相場が伸び悩む展開を来週のメインシナリオとして予想いたします。(尚、来週は5/21に予定されているユーロ圏5月製造業PMI速報値、同サービス業PMI速報値、同消費者信頼感指数速報値に注目が集まる他、5/18のフランス中銀ビルロワドガロー総裁講演、5/20のレーンECB専務理事講演、ラガルドECB総裁講演などの要人発言にも注目。ややボラティリティが高まる可能性あり)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.2000−1.2250
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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