ドル円見通し 5月7日の急落から戻すも109円台を維持しきれず上値重い(21/5/11)

109.05円まで戻したが、109円台を維持する手掛かりには欠け、米長期債利回りが再び低下すると108.64円まで下落するなどさえない展開だった。

ドル円見通し 5月7日の急落から戻すも109円台を維持しきれず上値重い(21/5/11)

ドル円見通し 5月7日の急落から戻すも109円台を維持しきれず上値重い

〇ドル円、5/10いったん109.05まで上昇するもその後108.64まで下落、さえない展開に
〇NYダウ、取引時間中の史上最高値を更新したが終値は34.94ドル安で6日ぶりの反落、ナスダックも下落
〇米10年債利回りは2日連続の上昇、今後の動向に注目
〇5/10夜にかけてクロス円の高値更新続く、リスク選好感優勢な市場心理を反映
〇108.50以上での推移中は上昇余地あり、109.05超えからは109.20台、109.40台への上昇を想定する
〇108.32割れからは一段安に入るため、108.00、107.75前後への下落を想定する

【概況】

ドル円は5月7日夜の米雇用統計が予想外に不調だったことで米長期債利回りが一時急低下して為替市場全般がドル安へ向かったことで7日夜には108.32円まで急落したが、雇用統計の悪さは米連銀による量的緩和縮小開始を先送りさせるとの楽観的な受け止めに変わったことでNYダウが上昇、米長期債利回りが急低下から再上昇したものの株高を背景としたリスク選好的な投機通貨買い・ドル安の流れは継続したために7日深夜から8日早朝にかけてのドル円は下げ渋り程度の動きにとどまった。
週明けの10日はクロス円全般の上昇=円安が進んだことと米長期債利回りが夕刻にかけて上昇を継続したことでいったん109.05円まで戻したが、109円台を維持する手掛かりには欠け、米長期債利回りが再び低下すると108.64円まで下落するなどさえない展開だった。米長期債利回りは深夜にかけて再び上昇したが、NYダウが史上最高値を更新して開始した後に下落に転じ、為替市場の楽観ムードが後退、クロス円全般が下げて円高気配になったことでドル円の戻りも鈍いままだった。

【米長期債利回りは2日続伸、ダウ6日ぶり反落でリスク選好感やや後退】

5月10日は米国の主要経済指標の発表はなく手掛かり難の状況だったが、NYダウは取引開始早々から前日比300ドルを超える上昇となり、高値で3万5091.56ドルを付けて取引時間中の史上最高値を更新したが、先週後半からの連騰と3万5000ドル到達に対する高値警戒感で利益確定売りが急がれて上げ幅を削り、前日比34.94ドル安とマイナス圏に沈んで6日ぶりの反落となった。ナスダック総合指数も350.38ポイント安と下落した。NYダウは昨年3月のコロナショックからの出直りにより暴落分を解消して史上最高値更新を続けてきたが、途中には小規模中規模の調整安も入れつつ高値を切り上げる展開を続けてきた。現状も目先の高値警戒感を反映しての小反落という印象だが、5月12日の米消費者物価指数の発表も迫り、7日夜の米雇用統計が悪かったことは逆に前向きな反応としたものの、株高と物価上昇が続けばやはり米連銀のテーパリング=量的緩和縮小開始への警戒感の出やすくなるところだ。

米10年債利回りは前日比0.02%上昇の1.60%で終了したが、7日の米雇用統計発表直後の1.46%台へ急低下したところからほぼ往って来いまで戻して7日の前日比はプラスだったため10日へ2日連続の上昇となっている。急低下で安値を出し切って戻しに入っている印象もあるが、まだ3月30日のピークだった1.77%と比較すれば低水準にとどまった状況であるものの、長期的に見れば昨年8月以降の上昇の中では依然として高水準であり、判断の分かれるところだ。今週は5月11日に3年債の580億ドル、12日には10年債の410億ドル、13日には30年債の270億ドルの入札予定もあり、12日の米消費者物価上昇率発表も含めて米長期債利回りが底打ち反騰姿勢を鮮明にするのか、3月30日のピークから下がった状況にとどまるか、あるいは一段と低下するのか、為替市場としても目が離せないところだ。

【クロス円の高値更新続く】

5月10日夜にかけてはクロス円全般の上昇が目立った。ポンド円が4月6日高値を超えて昨年3月来最高値を更新、豪ドル円、NYドル円、ユーロ円、南アランド円等も同様に昨年来の最高値を更新した。11日未明にかけてはいずれも反落したものの、昨年3月のコロナショックから出直り、ショック安を解消して高値を更新し続ける展開はNYダウを先導役とした金融市場全般のリスク選好感優勢な市場心理を反映している。

ドルストレートでも2月後半ないしは3月後半からの調整安から脱却しつつある動きがみられる。ユーロドルは5月7日の上昇で4月29日高値を超えて3月31日底以降の高値を更新して二段上げ型に発展してきた。1月6日高値1.2348ドルにはまだ距離があるものの出直りに入った印象を強めている。ポンド/ドルも2月24日高値へ迫るところまで上昇、豪ドル米ドルも4月1日安値を折り返しの起点として徐々に2月25日高値へ迫っている。ユーロや豪ドル、ポンドの上昇によるドル安感の強まりは、ドル円にとってはプレッシャーとなる。ユーロドルが二段目の上昇に入ったこととの逆相関で見れば、ドル円も3月31日高値からの下落を続けて4月23日安値を割り込み二段下げに向かう可能性も考えられるところだ。ドル円が4月23日安値割れを回避して浮上してゆくにはドルストレートでのドル安よりもクロス円全般での円安が勝る展開が必要であり、株高継続によるリスク選好感でユーロ等が上昇する一方で米長期債利回りがジリ高となってドル円を日米金利差で押し上げるような組み合わせが必要かもしれない。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月3日深夜安値から4日目となる5月7日夜の急落時安値で直近のサイクルボトムを付けて戻している。10日夜の反落でも底割れには至らずに確りしているのでまだ上昇余地があると見るが、10日夕刻の109円到達後に反落しているように上値も重いため、7日夜安値割れからの一段安も警戒されるところだ。このため、7日夜安値割れ回避のうちは11日の日中から13日夜にかけての間への上昇余地ありとするが、7日夜安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして12日夜から14日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では5月7日夜に急落した後は7日夜の高安レンジ内にとどまっての推移のため、遅行スパンは実線と交錯、先行スパンも薄く横這いの推移となっているので方向感に欠ける。10日夕高値を超える場合は両スパン揃っての好転が顕著となるので遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、両スパン揃って悪化する場合は下向きとして安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は5月7日夜の急落時に30ポイントを割り込んだがその後は50ポイント前後へ持ち直している。方向感に欠けるが、60ポイントを超えてくれば上昇再開感が出てくるが、40ポイントを割り込むと下げ再開感が強まると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月7日夜安値108.32円を下値支持線、10日夕高値109.05円を上値抵抗線とする。
(2)108.50円以上での推移か一時的に割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとし、10日夕高値超えからは109.20円台、次いで109.40円台への上昇を想定する。109.50円手前は反落警戒とみるが109円台を維持しての推移が続き始める場合は12日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)7日夜安値108.32円割れからは一段安に入るため108.00円、次いで107.75円前後への下落を想定する。107.75円以下は反騰注意とするが、7日夜安値を割り込んだ後も108.50円以下での推移が続くなら12日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

5/11(火)
10:30 (中) 4月 消費者物価指数 前年同月比 (3月 0.4%、予想 1.0%)
10:30 (中) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 4.4%、予想 6.5%)
15:00 (独) 4月 卸売物価指数(WPI) 前月比 (3月 1.7%)
18:00 (独) 5月 ZEW景況感 (4月 70.7、予想 72.0)
18:00 (欧) 5月 ZEW景況感 (4月 66.3)
23:30 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、討論会参加
23:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
25:00 (米) ブレイナード米FRB理事、イベント質疑応答
26:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演
26:00 (米) 財務省3年債入札

5/12(水)
10:30 (豪) 3月 住宅建築許可件数確報 前月比 (速報 17.4%) 
14:00 (日) 3月 景気先行指数CI速報値 (2月 98.7、予想 102.9)
14:00 (日) 3月 景気一致指数CI速報値 (2月 89.9、予想 92.9)

15:00 (英) 3月 月次GDP 前月比 (2月 0.4%、予想 1.5%)
15:00 (英) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (10-12月 1.3%、予想 -1.6%)
15:00 (英) 1-3月期 GDP速報値 前年同期比 (10-12月 -7.3%、予想 -6.1%)
15:00 (英) 3月 鉱工業生産指数 前月比 (2月 1.0%、予想 1.0%)
15:00 (英) 3月 鉱工業生産指数 前年同月比 (2月 -3.5%、予想 2.9%)
15:00 (英) 3月 製造業生産指数 前月比 (2月 1.3%、予想 1.0%)
15:00 (英) 3月 貿易収支・商品 (2月 -164.42億ポンド、予想 -143.00億ポンド)
15:00 (英) 3月 貿易収支・全体 (2月 -71.23億ポンド、予想 -48.66億ポンド)
15:00 (独) 4月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.7%、予想 0.7%)
15:00 (独) 4月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 2.0%、予想 2.0%)

18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 -1.0%、予想 0.8%)
18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 -1.6%、予想 11.8%)
18:00 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演
21:30 (米) 4月 消費者物価指数 前月比 (3月 0.6%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 消費者物価指数 前年同月比 (3月 2.6%、予想 3.6%)
21:30 (米) 4月 消費者物価コア指数 前月比 (3月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 消費者物価コア指数 前年同月比 (3月 1.6%、予想 2.3%)
22:00 (米) クラリダFRB副議長、講演
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省10年債入札
27:00 (米) 4月 月次財政収支 (3月 -6596億ドル)



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