ドル円見通し 米長期債利回り上昇とドル高基調継続、ドル円は109円に迫る(21/3/9)

ドル円は3月8日深夜に108.94円まで上昇して年初来の高値を更新した。

ドル円見通し 米長期債利回り上昇とドル高基調継続、ドル円は109円に迫る(21/3/9)

ドル円見通し 米長期債利回り上昇とドル高基調継続、ドル円は109円に迫る

〇ドル円、3/8深夜108.94まで上昇、年初来高値を更新
〇為替市場では総じてドル高基調続く
〇NYダウ、追加経済対策が米上院で可決されたことを背景に上昇
〇米長期債利回りは上昇基調を継続、これを受けナスダックは下落
〇主要中銀の金融政策姿勢を見定めつつ、ドル高継続しやすい環境か
〇108.60以上での推移中は上昇余地ありとし、109円乗せからは109.30から109.70を目指すとみる
〇108.30割れからはいったん調整安に入るとみて、107円台後半への下落を想定する。

【概況】

ドル円は3月8日深夜に108.94円まで上昇して年初来の高値を更新した。1月6日安値102.57円からの上昇幅は6.37円に拡大して昨年3月24日の戻り天井以降では6月5日への3.86円の上昇幅を大きく超えているが、3月24日から1月6日までの下げ幅9.14円に対する半値戻し107.14円、3分の2戻し108.66円をクリアしている。日足チャート上の上値抵抗線となりうる高値は6月5日の109.84円、その上は3月24日高値111.71円及びコロナショック第一波による暴落前の2月20日高値112.21円まで切り上がる可能性も出てきた印象だ。
日足は2月23日から3月1日へ5連騰、3月3日から8日へ4連騰だが、前日からの高値更新は2月24日から9日間連続となっており、高値更新続きが新たな買いを呼び込む展開となっている。

【米長期債利回り上昇と全般ドル高基調続く】

3月8日は主要な欧米経済指標の発表はなかったが、先週末にバイデン政権の1.9兆ドル規模の追加経済対策が米上院で可決、この後に下院で再審議の上で大統領署名により成立することとなったため、経済対策早期実施への期待と最近の感染拡大ペースの大幅鈍化による経済活動復調への期待感からNYダウは3万2148.04ドルまで取引時間中の史上最高値を更新した。終盤やや失速したために前日比306.14ドル高に終わって終値ベースでの最高値更新には至らなかったが、イエレン米財務長官がテレビインタビューで「追加経済対策が実現した場合はうまく行けば来年にコロナ危機前の完全雇用状態に戻ると予想している」と述べたことや、米疾病対策センター(CDC)が「新型コロナワクチンを接種した人同士ではマスクなしで小規模会合が可能になる」との見解を示したことなどが強気材料となった。

一方で低金利を追い風として大上昇してきたナスダック総合指数にとっては最近の米長期債利回りが一段と上昇している状況が逆風となっており8日は前日比310.99ポイント安(2.4%安)と下落した。3月5日の安値を割り込んでいないものの終値ベースでは2月16日高値以降の安値更新となっている。
NYダウの上昇と今週の大量国債入札を意識して米長期債利回りは上昇基調を継続している。10年債利回りは先週末に1.62%を付けて2月25日に急騰した時の1.61%を超え、8日は新たな水準更新とならなかったが終盤ベースでは週末の1.57%から1.59%へ上昇した。30年債利回りも前日比0.02%上昇の2.32%となった。
為替市場ではユーロドルが1.1843ドルまで下落して1月6日以降の安値を更新、ポンド/ドルは3月5日夜安値以降は新たな安値更新を回避しているものの1.390ドル台序盤で下げ渋り程度の持ち合いにとどまっている。豪ドル米ドルも3月5日夜安値割れへの余裕が乏しく、南アランドやメキシコペソ、トルコリラなどが対ドルで安値を更新するなど、総じてドル高基調が続いている。

【主要中銀の金融政策姿勢を見定めつつドル高継続を試す時期】

ECBが3月11日に定例理事会、米FOMCは3月16-17日、英中銀の金融政策決定会合は3月17-18日、日銀は3月18-19日に金融政策決定会合を開く。
米長期債利回り上昇を米連銀が容認する姿勢を示していることが長期債利回りのさらなる上昇をけしかけている印象もあるところだ。3月5日未明の講演でパウエル米連銀議長は長期債利回り抑制姿勢を示さず、他の地区連銀総裁や理事などの発言も景気回復への期待を反映したもので米連銀の金融政策の妥当性を示すものという見方が多い。

米連銀は昨年末にかけてもYCC(イールドカーブコントロール)については消極姿勢を示しており、当面はインフレ率目標の2%を超えても実質ゼロ金利と量的緩和を継続する姿勢だ。インフレ率と同調した長期債利回りの上昇という範囲なら問題ないということだろうが、逆に言えば米10年債利回りが2%超えを目指す流れも容認されている印象となる。次回のFOMCにおいてオペレーション・ツイスト=短期債売り・長期債買いによる長期債利回り上昇抑制についての議長の言及がどうなるのかも注目される。
一方でECBや英中銀、豪中銀などは長期債利回り抑制への姿勢を示している。まずは3月11日のECB理事会でこの問題に対する言及内容がどうなるのか注目されるところだが、当面は米連銀の長期債利回り上昇容認姿勢と他中銀による長期債利回り上昇抑制姿勢の差からドル高は継続しやすく、特にドル円においては日銀の長期債利回り誘導水準の現状維持姿勢から利回り格差拡大でのドル高円安を助長しやすい環境と思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2月23日午前安値を起点とした強気サイクルの連続としてきたが、3月5日朝へ一段高して2月26日高値からも5日目に入ったために3月5日午前時点では3月3日朝安値を起点とした強気サイクル入りとして高値形成期を5日夜から9日夜にかけての間へ延長した。 8日深夜へ一段高となりその後も高値圏を維持しているが、3月5日夜高値から5日深夜へ小反落した後にレンジ縮小型の三角持ち合いを形成してから一段高しているため、3月8日午後の三角持ち合い終点を起点として新たな上昇期に入っていると考える。新たな高値形成期は10日夜から12日深夜にかけての間とし、弱気転換は8日午後安値108.30円割れからとする。

60分足の一目均衡表では2月24日夜から先行スパンを上抜いた状況を維持している。3月3日深夜の一段高で遅行スパンが再び好転したところからは両スパン揃っての好転を維持しているので、遅行スパンの好転中は高値試し優先とする。26本基準線を割り込む場合は弱気転換注意とするが、26本基準線を上回るか一時的に割り込んでも回復する内は高値更新を続けやすいとみる。弱気転換は遅行スパン悪化からとし、その際は先行スパンの下限を試す下落を想定する。

60分足の相対力指数は5日から8日への相場の一段高に際して指数のピークが切り下がっているので弱気逆行を形成する可能性があるが、8日午後に60ポイントを割り込んだところから一段高へ切り返しているので、60ポイント台を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちはまだ上昇余地ありとし、80ポイント台後半を再び目指す可能性があるとみる。弱気転換は50ポイントを割り込むところからとする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、108.30円を下値支持線、109.50円を上値抵抗線とする。
(2)108.60円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、109円乗せからは109円台中盤(109.30円から109.70円)を目指すとみる。109.50円前後は反落注意とするが、108.75円以上での推移なら10日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)108.30円割れからはいったん調整安に入るとみて107円台後半への下落を想定する。107.70円以下は反騰注意とみるが、108.30円を割り込だ水準での推移なら10日も安値試しへ向かいやしいとみる。

【当面の主な予定】

3/9(火)
09:30 (豪) 2月 NAB企業景況感指数 (1月 7)
09:30 (豪) 2月 NAB企業信頼感指数 (1月 10)
16:00 (独) 1月 貿易収支 (12月 148億ユーロ、予想 145億ユーロ)
16:00 (独) 1月 経常収支 (12月 282億ユーロ、予想 218億ユーロ)
18:30 (南) 10-12月期 GDP 前期比年率 (7-9月 66.1%、予想 5.6%)
18:30 (南) 10-12月期 GDP 前年同期比 (7-9月 -6.0%、予想 -4.5%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP確定値 前期比 (改定値 -0.6%、予想 -0.6%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP確定値 前年同期比 (改定値 -5.0%、予想 -5.0%)
27:00 (米) 米財務省3年債入札

3/10(水)
07:00 (豪) ロウ豪中銀総裁、講演
08:30 (豪) 3月 ウエストパック消費者信頼感指数 (2月 109.1)
10:30 (中) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 -0.3%、予想 -0.3%)
10:30 (中) 2月 生産者物価指数 前年同月比 (1月 0.3%、予想 1.4%)
22:30 (米) 2月 消費者物価指数 前月比 (1月 0.3%、予想 0.4%)
22:30 (米) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 1.4%、予想 1.7%)
22:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前月比 (1月 0.0%、予想 0.2%)
22:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前年同月比 (1月 1.4%、予想 1.4%)
24:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
27:00 (米) 米財務省10年債入札
28:00 (米) 2月 月次財政収支 (1月 -1628億ドル)


注:ポイント要約は編集部

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