ドル円見通し 年初からの上昇幅は6円を超え、昨年3月24日以降の下落幅に3分の2を戻す(週報3月第2週)

ドル円は3月5日夜に108.63円まで年初来の高値を更新した。

ドル円見通し 年初からの上昇幅は6円を超え、昨年3月24日以降の下落幅に3分の2を戻す(週報3月第2週)

ドル円見通し 年初からの上昇幅は6円を超え、昨年3月24日以降の下落幅に3分の2を戻す

〇ドル円週末に108.63まで上昇し年初来高値更新、昨年3月の戻り高値からの下落の2/3戻しほぼ達成
〇背景は米長期金利の上昇加速、債券利回り上昇によるドル高の構図どこまで続くかが当面のテーマ
〇米雇用統計NFP37.9万人のサプライズだったが市場の反応薄い
〇FRB関係者からの米長期金利上昇容認ととれる発言多い、一方他中銀は上昇抑制的スタンス
〇108円割れから続落に入る場合107.50から107.00にかけての下落目指す
〇108.63を超えて続伸の場合109円到達からは110円、112.21等目指す展開に

【概況】

ドル円は3月5日夜に108.63円まで年初来の高値を更新した。1月6日安値102.57円からの上昇幅は6.06円に拡大、昨年3月24日の戻り天井以降では6月5日への3.86円の上昇幅を大きく超えて最大となっている。3月24日から1月6日までの下げ幅9.14円に対する半値戻し107.14円を超えて3分の2戻し108.66円にほぼ到達する水準となった。

年初からのドル円の上昇は米長期債利回り上昇によるものだ。米長期債利回りの上昇そのものは昨年8月から始まっていたが、年末までは為替市場全般はそれよりも株高への同調によるリスク選好感と金融緩和による金余り=投機資金の為替市場への流入によるユーロやポンド、豪ドルや新興国通貨の上昇を優先してきた。しかし米長期債利回り水準が無視できないところまで上昇したことで円とユーロは年初から下落に転じた。ポンドや豪ドル、新興国通貨は2月後半まで強気を引きずってきたが米10年債利回りが2月25日に1.60%超えまで一段と上昇したことでそれも限界となり一斉に崩れ始めた。ユーロドルの下落も昨年3月以降では最大となり1月6日からの下落規模は昨年9月1日から11月4日への下落規模を超えている。こうした米長期債利回り上昇=ドル高がどこまで継続するのかということが為替市場にとっては当面のテーマだ。

【米雇用統計 サプライズ的改善も市場の反応は薄い】

3月5日夜に発表された米雇用統計はサプライズだったが市場の反応は意外と限定的だった。
米労働省が発表した2月の雇用統計において、非農業部門就業者数は前月比37万9000人増で市場予想の18万2000人増の倍以上となった。1月も当初の4万9000人増から16万6000人増へ大幅上方修正された。失業率は6.2%で市場予想及び1月の6.3%から低下した。12月までの感染再拡大による影響から持ち直し、感染増加ペースが鈍化して経済対策も効果を上げはじめたためと思われる。ただし失業者は415万人で失業率もコロナ危機前の3.5%からは大きくかけ離れている。
米雇用統計発表直後、ユーロ等が下落してドル高、米国株価指数先物も下落したが、長続きせず早々に発表前水準を回復した。ユーロやポンド、豪ドルなどは下げ渋りからやや戻し気味となったが当面の売り材料消化で反騰入りするという勢いには欠けたたまま週を終えた。

NYダウは前日比572.16ドル高と反騰したが、直前2日分の下げ幅を解消した程度であり、ナスダック総合指数は196.68ポイント高だったが直前の3日間で800ポイント以上の大幅下落だったために戻りは小さい印象だった。米10年債利回りは一時1.61%へ上昇して2月25日と同水準となったが、終盤やや落ち着いて1.57%で終了した。米雇用統計の大幅改善=米国景気回復の先行性=米国株高ドル高・債券安で長期債利回り上昇というところが基本の反応になっているのだが、株高によるリスク回避感の後退分でユーロ等が下げ渋りつつも、やはり米長期債利回り上昇基調の継続感が最大のプレッシャーとしてユーロ等の株高追従による上昇を抑止したというところだろうか。

【米連銀は長期債利回り上昇を容認の姿勢】

パウエル米連銀議長は3月5日未明の討論会発言で最近の長期金利急上昇に関しては「市場の無秩序な動き」として若干の懸念を表明したが「インフレ率上昇は一時的」「雇用と物価目標へあまり前進していない」「現行の金融政策は適切」とした。
3月5日にはミネアポリス地区連銀カシュカリ総裁が「実質金利が上昇すれば対応する必要もあるが現在はそうしたことにはなっていない」と述べ、セントルイス地区連銀のブラード総裁も「米10年債利回りはパンデミックが始まる6か月前の水準に戻っているに過ぎずまだかなりの低水準」「ツイストオペ等で国債利回りの上昇を抑制する必要はなく、現時点でこれ以上ハト派的になる必要もない」と述べた。米連銀は市場が警戒するほどに現在の長期債利回り上昇を気にしていない。その姿勢はより長期債利回り上昇を続けやすくし、ドル高要因になってゆきやすい。

米連銀以外は米長期債利回り上昇を気にしている。連動して欧州、豪、日等の長期債利回りも上昇圧力を受けるからだ。ECBのラガルド総裁は3月1日に「ECBは尚早な借り入れコストの上昇を防止する」と述べ、デギンドス副総裁は3月2日に「債券利回りの望ましくない上昇に対応する柔軟性をECBは有している」「必要に応じてパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の範囲も含めてプログラムの再調整に柔軟に対応する」と述べている。ECBは3月11日に定例理事会がある。

日銀の黒田東彦総裁も3月5日に、イールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)でゼロ%程度に誘導する長期金利については「変動幅を拡大する必要があるとは考えていない」としてゼロ%近辺への抑制方針の継続姿勢を示した。日銀は3月18-19日に金融政策決定会合で金融政策の点検結果を公表する予定。
豪中銀は通常の倍の規模での3年債買い入れを行うなど米長期債利回り上昇と連動した豪長期債利回り上昇の抑制に動いた。
英中銀のハスケル委員は3月5日、「景気回復への下向きリスクに強く対抗すべきで必要に応じて追加刺激策を準備しておくべき」だと述べた。英中銀はマイナス金利導入の導入を急いではいないがその準備を国内金融機関に指示している。英中銀の金融政策決定会合は3月17-18日。

【2016年末以降の下降チャンネル上限へ向かう流れと当面のポイント】

【2016年末以降の下降チャンネル上限へ向かう流れと当面のポイント】

ドル円の1月6日からの上昇がここまで拡大してきた直接の要因は米長期債利回り上昇だが、相場自身としては凡そ80週前後の周期による底打ちサイクルで安値を出し切ったことで自律的な反騰の位相に入ってきているためといえる。円高ドル安材料の消化、中勢レベルの売り一巡による買い戻しの流れが根拠付けられて勢いついた状況といえる。
概ね80週前後の周期による底打ちは、2016年6月24日底、2018年3月26日底、2019年8月26日底であり、今回の上昇もそれらと同様の反騰規模へ発展する可能性があると思われる。
また2016年12月天井以降は、2018年10月4日天井と2020年2月20日天井を結ぶ上値抵抗線と、2018年3月26日底と2020年3月9日底を結ぶ下値支持線がほぼ平行となる長期間の下降チャンネルを形成しており、この抵抗線は現在110円前後に来ているので、当面は多少の調整安を消化しながらも110円を目指し、さらに勢いつく場合は昨年2月20日天井112.21円を目指す可能性もあるところと思われる。

(1)2月23日安値104.91円から3月5日まで上昇はほぼ一本調子であり、このまま加速する可能性もあるが、2月17日から2月23日にかけて1.30円幅の調整を入れたように、数日で直近の高値から1.30円、1.50円前後規模の下げが入っても不思議ないと思われる。このため108円割れから続落に入る場合は107.50円から107.00円にかけての間への下落を想定するが、107円台前半は押し目買いされやすい水準とみる。
(2)3月5日高値108.63円を超えて続伸の場合、109円到達からは前述のような規模での調整安が入りやすいとみて、その場合は108.00円から107.50円にかけてのゾーンで押し目形成となるのではないかと考える。(了)<7日10:10執筆>

【当面の主な予定】

3/8(月)
08:50 (日) 1月 経常収支・季調前 (12月 1兆1656億円、予想 1兆2534億円)
08:50 (日) 1月 経常収支・季調済 (12月 2兆2784億円、予想 2兆2072億円)
08:50 (日) 1月 貿易収支・国際収支ベース (12月 9651億円、予想 -393億円)
14:00 (日) 1月 景気先行指数(CI)速報値 (12月 95.3、予想 96.8)
14:00 (日) 1月 景気一致指数(CI)速報値 (12月 88.3、予想 91.6)
15:00 (日) 雨宮日銀副総裁、講演
15:00 (日) 2月 景気ウオッチャー現状判断DI (1月 31.2、予想 34.0)
15:00 (日) 2月 景気ウオッチャー先行判断DI (1月 39.9、予想 41.0)
16:00 (独) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 0.0%、予想 -0.3%)
16:00 (独) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -1.0%、予想 -3.7%)
19:00 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演
24:00 (米) 1月 卸売在庫 前月比 (12月 0.3%、予想 1.3%)
24:00 (米) 1月 卸売売上高 前月比 (12月 1.2%)

3/9(火)
06:45 (NZ) 10-12月期 製造業売上高 前期比 (7-9月 10.0%)
08:30 (日) 1月 全世帯消費支出 前年同月比 (12月 -0.6%、予想 -2.1%)
08:50 (日) 10-12月期 GDP改定値 前期比 (速報 3.0%、予想 3.0%)
08:50 (日) 10-12月期 GDP改定値 年率換算 (速報 12.7%、予想 12.6%)
08:50 (日) 2月 マネーストックM2 前年同月比 (1月 9.4%、予想 9.5%)
09:00 (NZ) 3月 NBNZ企業信頼感 (2月 11.8)
09:01 (英) 2月 英小売連合(BRC)小売売上高 前年同月比 (1月 7.1%)
09:30 (豪) 2月 NAB企業景況感指数 (1月 7)
09:30 (豪) 2月 NAB企業信頼感指数 (1月 10)

16:00 (独) 1月 貿易収支 (12月 148億ユーロ、予想 145億ユーロ)
16:00 (独) 1月 経常収支 (12月 282億ユーロ、予想 218億ユーロ)
18:30 (南) 10-12月期 GDP 前期比年率 (7-9月 66.1%、予想 5.6%)
18:30 (南) 10-12月期 GDP 前年同期比 (7-9月 -6.0%、予想 -4.5%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP確定値 前期比 (改定値 -0.6%、予想 -0.6%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP確定値 前年同期比 (改定値 -5.0%、予想 -5.0%)
27:00 (米) 米財務省3年債入札

3/10(水)
07:00 (豪) ロウ豪中銀総裁、講演
08:30 (豪) 3月 ウエストパック消費者信頼感指数 (2月 109.1)
10:30 (中) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 -0.3%、予想 -0.3%)
10:30 (中) 2月 生産者物価指数 前年同月比 (1月 0.3%、予想 1.4%)
22:30 (米) 2月 消費者物価指数 前月比 (1月 0.3%、予想 0.4%)
22:30 (米) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 1.4%、予想 1.7%)
22:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前月比 (1月 0.0%、予想 0.2%)
22:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前年同月比 (1月 1.4%、予想 1.4%)
24:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
27:00 (米) 米財務省10年債入札
28:00 (米) 2月 月次財政収支 (1月 -1628億ドル)

3/11(木)
08:05 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、討論会参加
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前月比 (1月 0.4%、予想 0.5%)
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前年同月比 (1月 -1.6%、予想 -0.7%)
09:01 (英) 2月 英RICS住宅価格指数 (1月 50)
21:45 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
22:30 (欧) ラガルドECB総裁、定例記者会見
22:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 74.5万件、予想 72.5万件)
22:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 「前週 429.5万人、予想 419.1万人)

3/12(金)
08:50 (日) 1-3月期 大企業・全産業業況判断指数 (10-12月 11.6)
08:50 (日) 1-3月期 大企業・製造業業況判断指数 (10-12月 21.6)
16:00 (英) 1月 月次GDP 前月比 (12月 1.2%、予想 -4.9%)
16:00 (英) 1月 鉱工業生産指数 前月比 (12月 0.2%、予想 -0.6%)
16:00 (英) 1月 鉱工業生産指数 前年同月比 (12月 -3.3%、予想 -4.0%)
16:00 (英) 1月 製造業生産指数 前月比 (12月 0.3%、予想 -0.8%)
16:00 (英) 1月 貿易収支・物品 (12月 -143.15億ポンド、予想 -125.01億ポンド)
16:00 (英) 1月 貿易収支・全体 (12月 -62.02億ポンド、予想 -45.63億ポンド)
16:00 (独) 2月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.7%、予想 0.7%)
16:00 (独) 2月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.3%、予想 1.3%)

19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -1.6%、予想 0.3%)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -0.8%、予想 -2.1%)
22:30 (米) 2月 生産者物価指数 前月比 (1月 1.3%、予想 0.4%)
22:30 (米) 2月 生産者物価指数 前年同月比 (1月 1.7%、予想 2.7%)
22:30 (米) 2月 生産者物価コア指数 前月比 (1月 1.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 2月 生産者物価コア指数 前年同月比 (1月 2.0%、予想 2.6%)
24:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者信頼感指数 速報値 (2月 76.8、予想 78.0)

注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る