ドル円見通し 3日連続陽線で戻すが直前の3日連続陰線解消に至らず
〇ドル円2/10-12にかけ105円近くまで切り返すも2/9の下落解消できず
〇米長期金利上昇によるドル買い圧力と米株上昇によるリスク選好のドル売り、ドル売りが勝る状況
〇105円以下での推移が続く場合104円、103円台後半を試す動き
〇105.25から続伸の場合2/5高値105.76試しへ向かう
【概況】
ドル円は1月28日への上昇で1月11日高値104.39円を超えて1月6日安値102.57円を起点とした上昇が二段目に入り2月5日には105.76円まで高値を切り上げてきた。ドル円の1月11日にかけての上昇は米10年債利回りが1月4日の0.90%から1月12日の1.19%へ急上昇したことを反映し、二段目の上昇も米10年債利回りが1月28日の0.99%から2月8日に1.20%へ再び急上昇したところを反映した動きだった。米10年債利回りは2月10日に1.12%までいったん低下したためにドル円も下げ渋りからやや持ち直しに入り、2月12日には米10年債利回りが1.21%台まで上昇して2月8日の高値水準を超えたことでドル円も続伸して3日連続陽線での上昇となった。2月10日から2月12日まで、ドル円は3日連続の陽線による上昇ではあるが、この3日間の上昇では2月5日から9日までの3日連続陰線における2月9日の陰線1本分を解消できない程度にとどまっている。
【米長期債利回り上昇によるドル高圧力と、株高によるリスク選好のドル安圧力】
為替市場にとっては米長期債利回り動向は極めて重要だ。対米長期金利差の拡大縮小によりドルの強弱も大きく左右される。しかし為替市場におけるドルの強弱を決めるのは米長期債利回りだけではない。
昨年8月以降、米長期債利回りは上昇基調を継続してきたが、その間もユーロやポンド、豪ドル及び新興国通貨は上昇基調で推移し、ドル円は下落してきた。コロナショック対策による大規模な財政出動が米国債大量発行となり米国長期債需給を弛めることで米長期債利回りは上昇する。その一方で政策金利の実質ゼロ金利状態と債券購入による大規模な量的緩和政策が長期化する中で株式市場は金余りを起こして投機マネーが株買い、投機通貨買いへと向かい、NYダウが史上最高値を更新する過程でユーロ等は今年の年明けまで昨年3月以降の最高値を更新し続けてきた。もちろん、米長期債利回りの急上昇によりこうした投機通貨買いにはブレーキがかかるが、中長期的な上昇トレンドが継続していればそうしたブレーキは押し目形成にとどまって一段高を招く。
ユーロドルは1月6日高値の後は新たな高値更新へ進めずにいるが2月4日から持ち直しの気配であり、ポンド/ドルは2月10日に昨年3月来高値を更新、豪ドル米ドルも1月6日から2月2日まで下げたところから切り返して高値更新を伺うところに来ている。
ドル円としては、このような株高と同調したリスク選好的なドル安の流れを意識しつつ、米長期債利回り上昇によるドル買い圧力もかかるという両睨みの状況にある。どちらを優先して動くのか決めあぐねている状況とも思われるが、そこはチャートで判断してゆくしかない。
【米連銀によるストレステストの最悪シナリオも念頭に】
米連銀(FRB)は2月12日に2021年に実施する大手銀行に対するストレステスト(健全性審査)のシナリオを公表した。シナリオでは景気悪化が1−3月期に始まり、さらに景気が深刻に悪化した場合に株価は7−9月期に55%下落し、失業率は1月の6.3%から悪化に入り2022年7−9月期にピークで10.75%に悪化するという想定。また株安債券高により米長期金利は0.25%に低下し、実質GDPは2020年10-12月期から2022年7-9月期まで4%減となる想定とした。あくまでも最悪の事態を想定したものであり、現実にそこまで情勢が悪化する確率が高いというわけではないが、可能性があることとしてのストレステストであり、米国における感染拡大が新たな波となりこれまでのピークを超えるような状況に陥る場合、変異種が相次ぐことでワクチン効果が限られて経済活動が再び極端な委縮となる可能性はないとは言えない。為替市場を見てゆく上でもこうした最悪のシナリオの現実化への可能性については念頭に入れておくべきことだろう。
【1月6日からの三段上げへ進めるか、2月5日からの二段下げへ向かうか】
ドル円は1月6日安値102.57円から1月21日安値103.31円、2月10日安値104.40円と底上げしてきた。2月5日高値を超えれば底上げ基調を維持して三段目の上昇に入るため、2月10日安値までの下げ幅(-1.36円)の倍返しで107.12円を目指す可能性も出てくると思う。
逆に2月10日安値を割り込む場合、2月5日高値を起点とした下落が二段目に入り、1月6日からの戻り一巡による下落再開感も強まり、104円を割り込んでくると103円台前半、さらに1月6日安値102.57円を目指す下落期入りという印象も強まると思われる。
2月15日は米国市場休場で手掛かりにかけるが、休場明けの2月16日からの展開で2月5日高値へ迫るか、2月10日安値を割り込むのかにより、明暗も分かれてゆくのではないかと思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、2月10日安値104.40円を下値支持線、105.25円を上値抵抗線とする。
(2)105円以下での推移が続く場合は下向きとし、2月10日安値を割り込む場合は2月5日高値を起点とした下落期の継続として104円前後試し、さらに103円台後半へ向かう流れとみる。この場合は2月15日夜から2月17日にかけての間は安値試しへ向かいやすい時間帯とみる。
(3)105.25円超えから続伸の場合、2月5日夜高値105.76円試しへ向かうとみる。2月5日高値を上抜けないかわずかに上抜いてもその後の105.25円を割り込んで続落の入る場合はダブルトップ形成からの下落期入りを疑うが、高値更新からさらに伸びるなら106円台を目指し、先行きで107円に挑戦する目も出てくると考える。(了)<14日17:30執筆>
【当面の主な予定】
2/15(月)
休場。中国(旧正月)、香港(旧正月)、カナダ(家族の日)、米国(ワシントン生誕日)
08:50 (日) 10-12月期 GDP速報値 前期比 (7-9月 5.3%、予想 2.4%)
08:50 (日) 10-12月期 GDP速報値 年率換算 (7−9月 22.9%、予想 10.1%)
13:30 (日) 12月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -1.6%)
13:30 (日) 12月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -3.2%)
13:30 (日) 12月 設備稼働率 前月比 (11月 -2.9%)
19:00 (欧) 12月 鉱工業生産 前月比 (11月 2.5%、予想 -0.6%)
19:00 (欧) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 -0.6%、予想 -0.1%)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調済 (11月 251億ユーロ、予想 250億ユーロ)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調前 (11月 258億ユーロ)
2/16(火)
休場、中国(旧正月)、ブラジル(カーニバル)
09:30 (豪) 豪準備銀行(RBA、豪中銀)、金融政策会合議事要旨公表
13:30 (日) 12月 第三次産業活動指数 前月比 (11月 -0.7%、予想 -0.6%)
19:00 (独) 2月 ZEW景況指数 (1月 61.8、予想 59.5)
19:00 (欧) 2月 ZEW景況指数 (1月 58.3)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP改定値 前期比 (速報 -0.7%、予想 -0.7%)
19:00 (欧) 10-12月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 -5.1%、予想 -5.1%)
20:00 (米) デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、イベント参加
22:30 (米) 2月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (1月 3.5、予想 6.3)
2/17(水)
休場、中国(旧正月)
08:30 豪1月ウエストパック景気先行指数
08:50 (日) 12月 機械受注 前月比 (11月 1.5%、予想 -6.1%)
08:50 (日) 12月 機械受注 前年同月比 (11月 -11.3%、予想 -3.0%)
08:50 (日) 1月 通関貿易統計・季調前 (12月 7510億円、予想 -6500億円)
08:50 (日) 1月 通関貿易統計・季調済 (12月 4771億円、予想 4778億円)
10:00 (豪) ケント豪中銀総裁補、セミナー参加
16:00 (英) 1月 消費者物価指数 前月比 (12月 0.3%、予想 -0.4%)
16:00 (英) 1月 消費者物価指数 前年同月比 (12月 0.6%、予想 0.5%)
16:00 (英) 1月 消費者物価コア指数 前年同月比 (12月 1.4%、予想 1.3%)
19:00 (欧) 12月 建設支出 前月比 (11月 1.4%)
19:00 (欧) 12月 建設支出 前年同月比 (11月 -1.3%)
22:30 (米) 1月 生産者物価指数 前月比 (12月 0.3%、予想 0.4%)
22:30 (米) 1月 生産者物価指数 前年同月比 (12月 0.8%、予想 0.9%)
22:30 (米) 1月 生産者物価コア指数 前月比 (12月 0.1%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 生産者物価コア指数 前年同月比 (12月 1.2%、予想 1.1%)
22:30 (米) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -0.7%、予想 0.9%)
22:30 (米) 1月 小売売上高・除自動車 前月比 (12月 -1.4%、予想 0.9%)
23:15 (米) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 1.6%、予想 0.4%)
23:15 (米) 1月 設備稼働率 (12月 74.5%、予想 74.9%)
23:15 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、パネルディスカッション参加
24:00 (米) 12月 企業在庫 前月比 (11月 0.5%、予想 0.5%)
24:00 (米) 2月 NAHB住宅市場指数 (1月 83、予想 83)
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
2/18(木)
08:05 カプラン・ダラス連銀総裁、国内外の経済問題に関する討論会に参加
09:30 (豪) 1月 新規雇用者数 (12月 5.00万人、予想 3.00万人)
09:30 (豪) 1月 失業率 (12月 6.6%、予想 6.5%)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 17.00%、予想 17.00%)
22:00 (米) ブレイナードFRB理事、講演
22:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 79.3万件、予想 76.5万件)
22:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 454.5万人)
22:30 (米) 1月 住宅着工件数 前月比 (12月 166.9万件、予想 165.8万件)
22:30 (米) 1月 住宅着工件数・年率換算件数 (12月 5.8%、予想 -0.7%)
22:30 (米) 1月 建設許可件数 前月比 (12月 170.9万件、予想 167.0万件)
22:30 (米) 1月 建設許可件数・年率換算件数 (12月 4.5%、予想 -2.0%)
22:30 (米) 1月 輸入物価指数 前月比 (12月 0.9%、予想 1.0%)
22:30 (米) 1月 輸出物価指数 前月比 (12月 1.1%、予想 0.9%)
22:30 (米) 2月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (1月 26.5、予想 20.0)
24:00 (欧) 2月 消費者信頼感速報値 (1月 -15.5、予想 -15.0)
2/19(金)
06:45 (NZ) 10-12月期 生産者物価指数 前期比 (7−9月 -0.3%)
08:30 (日) 1月 全国消費者物価指数 前年同月比 (12月 -1.2%、予想 -0.7%)
08:30 (日) 1月 全国消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (12月 -1.0%、予想 -0.7%)
08:30 (日) 1月 全国消費者物価指数・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (12月 -0.4%、予想 0.0%)
09:01 (英) 2月 GFK消費者信頼感 (1月 -28、予想 -26)
09:30 (豪) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -4.2%、予想 2.0%)
16:00 (独) 1月 生産者物価指数 前月比 (12月 0.8%、予想 0.9%)
16:00 (英) 1月 小売売上高・除自動車 前月比 (12月 0.4%、予想 -2.1%)
16:00 (英) 1月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (12月 6.4%、予想 2.7%)
16:00 (英) 1月 小売売上高 前月比 (12月 0.3%、予想 -2.5%)
16:00 (英) 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 2.9%、予想 -0.5%)
17:30 (独) 2月 製造業PMI速報値 (1月 57.1、予想 56.5)
17:30 (独) 2月 サービス業PMI速報値 (1月 46.7、予想 46.5)
18:00 (欧) 12月 経常収支・季調済 (11月 246億ユーロ)
18:00 (欧) 12月 経常収支・季調前 (11月 268億ユーロ)
18:00 (欧) 2月 製造業PMI速報値 (1月 54.8、予想 54.3)
18:00 (欧) 2月 サービス業PMI速報値 (1月 45.4、予想 45.7)
18:30 (英) 2月 製造業PMI速報値 (1月 54.1、予想 53.1)
18:30 (英) 2月 サービス業PMI速報値 (1月 39.5、予想 42.0)
23:45 (米) 2月 製造業PMI速報値 (1月 59.2、予想 58.5)
23:45 (米) 2月 サービス業PMI速報値 (1月 58.3、予想 57.9)
24:00 (米) 1月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (12月 676万件、予想 663万件)
24:00 (米) 1月 中古住宅販売件数 前月比 (12月 0.7%、予想 -2.0%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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