【今回のポイント】
〇 政策金利は0.25ポイント引き上げて過去最高の4.5%
〇 ラガルドECB総裁は「 経済は今後数カ月間、引き続き低迷する可能性が高い」と発言
〇 為替市場は利上げサイクル終了と高金利に伴う欧州経済失速を懸念しユーロ売りで反応
〇 2020年5月から続くユーロ高・円安のトレンドが転換する可能性も
【ECB理事会の結果】
欧州中央銀行(ECB)理事会では、主要政策金利を0.25ポイント引き上げ4.50%とした。利上げは10会合連続となったが、利上げ打ち止めの可能性を示唆した。
声明では、「現在の評価を踏まえて、主要政策金利はインフレ率の適時目標回帰に多大な寄与をするとみられる水準に到達し、十分長い期間維持されたと理事会は考える」
注目のECB理事会後のラガルド総裁の記者会見で重要な内容を整理すると下記の通りとなる。
〇金利に関して
「十分に制約的な」水準と期間の両方の要素が重要だ。焦点がおそらく期間にややシフトすることは明らかだが、今がピークに達していると言うことはできない。 「必要な限り」というのは実際には特定できず、多大な寄与も特定することはできない。なぜなら、データに対して毎回評価を行わなければならないからだ。
一部のECB理事は、より確かな多くの知見が得られるまで、利上げを一時停止し、将来の決断を保留することを望んでいた。 また、あと1回の利上げを望むECB理事も何人かいたのは事実だ。ただ、過半数のECB理事による賛成によって今回の決定に至った。
〇欧州経済成長に関して
欧州は明らかに緩やかな低成長の時期にいる。 現在は困難な時期にあり、ECBが予想していた回復は2024年に後ずれする。また、経済成長に対するリスクは下向きに傾いている。金融政策の影響が予想以上に強まったり、中国経済の一段の減速などで世界経済が弱体化したりすれば、成長は鈍化する可能性がある。 一方、好調な労働市場、実質所得の増加、不確実性の後退によって、人々や企業の信頼感が高まることで消費が拡大すれば、成長は予想を上回る可能性がある。
インフレの上振れリスクには、エネルギー価格と食料品のコストに対する新たな上昇圧力の可能性や悪天候が含まれる。広範な気候危機の進行により食料品価格が予想以上に上昇する可能性がある。一方、インフレ率は低下し続けているが、依然として高過ぎる状態が長期間続くと予想される。そして、賃金上昇はインフレ、特に一般的に労働集約性が高いサービス部門の賃金インフレに深刻な影響を与えているため、ECBはこれを非常に慎重に見ている。こうした状況を考慮し、欧州の経済は、今後数カ月間、引き続き低迷する可能性が高い。
【市場の反応】
9月上旬から11日ぐらいまでは「今回のECB理事会では利上げ見送り」がコンセンサスだったものの、エネルギー価格の高騰に対するインフレ警戒感が急速に強まったことから、ECB理事会直前には、「0.25%の利上げ実施」がコンセンサスとなっていた。
8月下旬から9月上旬の要人発言を確認すると、ホルツマン・オーストリア中銀総裁が8月31日に「金利はまだピーク水準に達していない」「あと1、2回の利上げ公算も」、クノット・オランダ中銀総裁が9月6日に「市場は9月利上げ確率を過小評価している可能性がある」と、今回の会合で利上げ実施の可能性を言及していたECB関係者は少ない。それだけ、9月に入ってのエネルギー価格の高騰が大きなインパクトを与えたのだろう。
一方、為替市場では、コンセンサスが急激に変化したにも関わらず、ユーロは主要通貨に対してさほど買われておらず、14日の東京時間では、対円で158円台前半と8月30日の年初来高値159円80銭を2円ほど下回っていた。発表直後、市場はユーロ売りで反応。日付が変わった15日1時頃には156円64銭まで下落し、その後は157円台でもみ合っている(東京時間9月18日12時時点)。
ユーロ売りの背景は、ラガルドECB総裁が「一部メンバーが金利据え置きを支持した」「欧州経済の低迷が今後数か月感続く可能性がある」と発言したことなどが影響したと考える。「利上げサイクルの終了」と「ユーロ域内経済の成長見通しに対する懸念」が強く市場で意識された結果、ユーロ高のトレンド転換の可能性が急浮上したと推測する。
【今後、ユーロはどう動く?】
ラガルドECB総裁の発言にもある通り、エネルギー価格の高騰を起因とした高いインフレ継続が欧州経済の大きな足かせとなるのだろう。これまでのような「金利引き上げ通貨を買う」という単純なロジックで、為替市場を見てはいけない状況にきているようだ。今週開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)も、このロジックを意識しなくては、為替全般の動向を見誤ると考える。
前述の通り、高いインフレ継続に伴う金利先高感だけをウォッチして、為替動向を見極める状況では無くなっている。今後は、「ユーロ域内経済の成長見通し」を可能な限り回避するために、過去最高水準の政策金利を引き下げるタイミングがポイントとなろう。
そのほか、政府・日銀による為替介入警戒が徐々に強まっているほか、エネルギー価格の動向にも注視しなくてはならない。つまり、考慮しなくてはならない要因が増加していることから、これまで続いたユーロ高・円安のトレンドが転換する可能性があろう。
政府・日銀による為替介入の実施には、まだ為替介入直前のオペレーションである「レートチェック」が実施されていないことから、介入実施はもう少し先とみるが、エネルギー価格の上昇が与えるインフレ懸念は待ったなしの状態だ。昨年はウクライナとロシアの戦争の影響で10月頃に原油価格は高値を付けたが、冬に差し掛かるタイミングで思惑買いが原油市場に入る余地はある。
こうした背景を考慮して、2020年5月の114円43銭を起点としたユーロ高・円安のトレンドは近々でピークを迎えると考える。経済指標や要人発言を材料視して、ユーロが160円台に乗せる場面はあると考えるが、瞬間的な動きに留まると想定。トレンドが転換する要因のほうが多いと考え、160円到達後は、ユーロ売り・円買いのポジション構築を頭に入れておきたい。
【2023年スケジュール】
※米国は現地時間なので、金利発表及び記者会見は日本時間で翌日未明
日銀金融政策決定会合(日銀会合)
9月21日(木)ー22日(金)・・・現状の金融緩和方針を維持する見込み
10月30日(月)ー31日(火)・・・?
12月18日(月)ー19日(火)・・・?
米連邦公開市場委員会(FOMC)
9月19日(火)ー 20日(水)・・・利上げ見送り、年内後1回0.25ポイント引き上げか
10月31日(火)ー11月1日(水)・・・?
12月12日(火)ー 13日(水)・・・?
欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
9月14日(木)・・・0.25%引き上げで政策金利は4.5%、市場はユーロ売りで反応
10月26日(木)・・・?
12月14日(木)・・・?
オーダー/ポジション状況
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