2018年の豪ドル対米ドルの見通し

2018年は米豪の金融政策格差(豪ドル金利据え置き、米ドル利上げ見通し)で、年前半はどうしても豪ドルの先安観が強くなっていますが、

2018年の豪ドル対米ドルの見通し

2018年の豪ドル対米ドルの見通し(1豪ドル=0.8015米ドル、1月19日13時現在)

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「FX羅針盤」の1月の年間相場予想、第三弾は日頃オセアニアの経済指標と投機筋のポジションを読み解きテクニカルに結びつける分析をしていただいているワカバヤシFXの橋本さんのオーストラリアドル年間見通しです。得意のファンダメンタルズとテクニカル双方からのアプローチで、今年の方向性を占います。
ちなみに昨年の年間相場予想での橋本さんのA$、N$予想レンジは、結果かなり正確にその後の展開を言い当てた形となりました。(編集部)
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(1) ファンダメンタルズ分析

@	米・豪のGDP

@ 米・豪のGDP

図@は米豪のGDP比較ですが、両国共四半期毎の前年比ベースにしています(注:米国は毎四半期発表時の前四半期年率とは数値違いますので御注意願います)。
米国は2016年2Qを底にして回復基調になっています。FRBが緩和縮小し、将来のインフレ醸成を阻止する意味で、これまでの利上げ実施は肯けるGDPとなっています。一方で、2017年の豪州は横這いから若干上昇傾向を始めた形ですが、2016年までの豪州>米国は、ほぼ肩を並べる成長率になっています。図Aの四半期ベースの移動平均見るとほぼ同じ伸び率まで米国が追い付いています。

豪州中銀発表のGDP予想

豪州中銀発表のGDP予想

表@は豪州中銀発表のGDP予想です。表?Aは2016年11月時点、表?Bは2017年11月時点で、2017年予想は平均で3%成長(赤○印:レンジ2.5〜3.5%)を予想していましたが、実質2.25%に留まりました。しかしながら、2018年の成長見込みは一昨年(平均3%予想)と昨年(3%予想)とで変わらない状況になっています。従いまして、図@の豪州GDP(青ライン)は右肩上がりになることを中銀は予想しています。また2019年は平均で3.25%のGDP成長予想になっています。

(1)	ファンダメンタルズ分析

さて、図でB−1(上図)は2016年10月時点、B−2(下図)は2017年10月時点のIMF予想になっています。

(1) 一昨年の2017年見通し(上段)と、ほぼその結果に近い(2017年のGDPはまだ未確定)下段を比べると、NZと日本が見通しより上回り、米国がほぼ見通し並み、豪州が下回っています。更に2018年見通しを2年分で比較すると米国のみが下方に修正されていることが解ります。これは2016年時点と比較して米国に下振れ要因がでてきたことになります。

(1)	ファンダメンタルズ分析 2枚目の画像

(2) 一方B−2で、2018年予想は2017年実績と比較して、豪・米がGDP拡大、NZ・日が縮小予想になっています。

2018年が(1)になりますと、米の利上げは予想よりは減る可能性高まります。少なくとも米国は利上げ予想回数は現在の3回のままか、それ以下になることが見込まれます。
(2)ですと、フローだけを見ているので、利上げ回数は3回以上の可能性が高まります。勿論、経済は生き物ですので、年内途中で予想自体が変わることは十分あり得ますが、IMFの見立てが現れるのか、景気拡大を持続させるのか注目されます。

A	米・豪政策金利推移

A 米・豪政策金利推移

図Cを見ると、豪州は昨年一貫して金利据え置き(1.5%)、一方の米国は3回の利上げを実施して1.375%(FFレート誘導目標1.25〜1.50%)となり、ほぼ両国の金利差はなくなりました。
現状見ると、豪州中銀は依然として利上げの選択肢は少なく、できる限り低金利状態を引っ張っていく姿勢でいます。FRBは今年3回の利上げ予定ですから金利差は0.75%程度、米国>豪州になります。米国の利上げはある程度織り込んではいるものの、実際の金利差拡大は米ドル選好となります。多くのエコノミストは年後半から豪州中銀は利上げに舵をきると予想していますが、GDPが中銀見立て通りに3%を越えてくるとその可能性が高まり、利上げ予想が市場に出た時点から豪ドル買いに繋がりそうです。

(1)	ファンダメンタルズ分析 3枚目の画像

また図D見ると既にCPI>政策金利になっているので、CPIがこのままの推移で行けば、今後は金利据え置き見通しが徐々に減ってくると思われます。

(1)	ファンダメンタルズ分析 4枚目の画像

また図Eは豪州中銀のインフレ見通しです。中央の黒い線が中間値ですが、2018年末には2%にかなり近付く予想をしています。尚、70%の確率(紺)では1.3%〜2.8%(2019年)レンジを予想しています。

以上からみると、IMF予想では、米・豪の成長率格差は2017年にほぼ肩を並べるまで縮小しましたが、2018年には徐々に豪州経済が米国経済より拡大する予想になっています。かりに拡大しなくても成長格差逆転の可能性は薄いと思われます。その中で、米国は3回の利上げを実施する予定になっていますので、このままでは株価が割高となり、その状況下で引き締めていくわけですから、先行き懸念が生じる可能性があります。従い、米国は利上げ回数の減少が起こり得る要素を残しています。
2018年初はまだ米国経済拡大とそれに付随する利上げ思惑で、米ドル選好、豪州ドルには下値圧力がかかると思われますが、時間経過と共に、経済格差が広がり始めると市場の目は豪ドルに向かうと思われます。

(2) テクニカル分析

@	豪ドル/米ドル月足チャート(2018年1月16日終値現在)

@ 豪ドル/米ドル月足チャート(2018年1月16日終値現在)

上図は月足チャートで、豪州ドル/米ドルは、現在大きなレンジとして0.70米ドル(ラインAとB)〜0.9230米ドル(ラインD:以下米ドルを略)の3角保合いの中にいます。6年続いた豪ドル安トレンドから2017年にラインEを上抜いたことで豪ドルは中立となり、2017年中はラインF(0.8160〜80)に止められて、豪ドル高からの調整に入り、ラインCのサポートから再度立ち上がっている状況です。
ラインCは現在0.7510付近にいますので、当面はアセンディングトライアングル(ラインFとラインC)の0.75〜0.82レンジで揉み合いながら収斂している状況です。もしラインFを越える様だと0.85にも抵抗線ありますが、方向性としてはラインDの0.92になります。
逆にラインCを割ると、2001年底値と2008年底値からのラインAとBのサポート0.6990〜0.70付近までの下押しになります。万一、ラインAとBを下抜いた場合には、新たな豪ドル安に入る可能性高く、ラインBの起点0.60付近までの豪ドル安リスクを抱えることになります。

A	週足チャート(2018年1月16日終値現在)

A 週足チャート(2018年1月16日終値現在)

週足でもう少し近場を見ますと、ラインC,E,Fはほとんど月足レベルと同じですので、月足と同じナンバーを振りました。ラインGはラインCと平行の豪ドル高トレンド上限です。ラインHは更に一段高値を起点にラインCと平行に作りました。現在のラインCは0.7540付近、ラインGは0.8290、ラインHは0.8550にいます。
月足ベースではアセンディングトライアングル内にいますが、週足をみると豪ドル高トレンドの0.7540〜0.8290レンジ内で右肩上がりになっています。2018年は最初に月足のラインFのポイント0.8160〜80の抵抗線をテストし、越えた場合に豪ドル高トレンドラインの上値を試す流れになります。もしラインFとGを越えていけば、ラインHの0.7540〜0.8550レンジに移行します。

逆に上昇トレンドラインを下に切れば(ラインC割れ)、月足ベースのラインAとBの0.70がポイントになりますが、週足ではパラレルフォーメーションの開始起点まで下がる可能性が出てくるので、2016年のトレンド起点の0.6830まで下落することになります。この場合には月足のラインAとBを下回ることになります。月中にヒゲだけ下抜けて、月末にはAとBの上にいることもありえますので、月末ベースで0.6990以下で終わったことを確認してから、一段の豪ドル安トライへの対応をした方が良さそうです。
尚、ラインCとラインGのトレンドラインは2018年末には0.7850〜0.86レンジ付近まで上昇します。

B	週足チャート移動平均線(2018年1月16日終値現在)

B 週足チャート移動平均線(2018年1月16日終値現在)

上図は週足に38週線(フィボナッチ指数の38)を加えたものです。移動平均線が上向きで、かつラインより上でスポットが推移しています。現在の38週線は0.78付近で推移しており、ここを下回り、移動平均線が下向きになれば豪ドル安になりますが、それまでこのラインがサポートレベルになります。

C	 月足チャート移動平均線(2018年1月16日終値現在)

C  月足チャート移動平均線(2018年1月16日終値現在)

因みに、月足の38ヶ月線みると、このラインが相場の分岐点になっていることが解ります。現在は0.75割れに90ヶ月線があり、豪ドル高トレンドをサポートしている形になっています。従いまして、0.75は色々な意味で豪ドルの強いサポートとして有効になっています。

以上より、昨年同様に長期では豪ドルが中立(3角保合い内)ながら、中期では豪ドル高トレンドになっているので、2018年は前年同様に豪ドルの押し目買いになり、上値ポイントで手仕舞いする形になります。
買いの最初の見極めポイントは0.77〜0.78で、これを下回った場合には0.75が次のポイントになります。上値はラインF(0.8160〜80)、ラインG(0,8290)、ラインH(0.8550)の順にあります。尚、ラインGとラインHは右肩上がりですので、( )内の数値は現在の抵抗線レベルになっていますので御注意願います。
尚、全ては2016年底値である0.68〜0.69割れが起きると、中長期のトレンドが豪ドル安に転換します。

2018年見通し

2018年は米豪の金融政策格差(豪ドル金利据え置き、米ドル利上げ見通し)で、年前半はどうしても豪ドルの先安観が強くなっていますが、先行きのファンダメンタルズをみれば豪州経済>米国経済ですので、どこかのタイミングで豪州金利上げの予想がでてきます。
テクニカル的に下押しした場合の0.75〜0.78ゾーンは豪ドルの買い場探し、上値は0.82〜0.85ゾーンでのポジションの手仕舞いゾーンを模索する形になりそうです。
2018年のレンジとして0.7450〜0.8500米ドルを予想します。
(以上)

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