「オクトーバー・サプライズ」
28日まではクリントンの圧倒的優位が伝えられていた
米国大統領選レポート第5回目となりますが、投票日まで残すところ1週間ほどとなりました。今回はオクトーバー・サプライズについて触れておきます。
前回のレポート以降、10月19日に第3回TV討論会が行われましたが、クリントン候補の優位に変化は見られず、順当に投票日を迎えればクリントン候補が勝利し、初の女性大統領誕生という流れとなっていました。前回紹介したリアルポリティクスのデータでも、28日時点でクリントン氏47.1%、トランプ氏42.5%とクリントン氏が4.6ポイントのリードから変化はありません。
また、選挙人の獲得予想は過半数270に対してクリントン氏が既に252人を固めていて、前回紹介した接戦12州(選挙人157人)の内いくつかの州を取れば当選確実な状況となっていて、ここでもトランプ氏の126人に対して、ちょうどダブルスコアとも言える大差をつけていたのです。
FBI操作再開報道でクリントン氏わずかにリード失う
ところが金曜のNY後場に、FBIがクリントン氏の新たなメール問題に関して再調査するとのヘッドラインが入ってきました。今回のメールは7月までのメールでも、ウィキリークスに出てきたメールとも異なり、クリントン氏側近の別居中の夫の捜査中に出てきたものとのこと。内容についてはわからないものの、いったん7月に訴追には相当しないと終結したことがここにきて蒸し返されてきたことで、米国民の投票行動にも影響が出て来る可能性が出てきました。
トランプ氏はここぞとばかりに責め立てていますが、クリントン氏は当然のことながら7月の訴追に相当しないとされた判断には影響が無いものと主張しています。この金曜のニュース以降に行われた世論調査があります。まずリアルポリティクスが30日にデータの更新を行いましたが、それによるとクリントン氏47.6%(+0.5%)、トランプ氏43.3%(+0.8%)、クリントン氏のリード4.3ポイントとわずかではあるものの、28日時点からリードを失っています。
クリントン氏の優勢に変化なし?
個別の世論調査の中には、トランプ氏がリードしているというロサンゼルス・タイムズによる調査もありましたが、同紙の調査はこれまでもトランプ氏をリードとしてきたこともありますので、リアルポリティクスの調査結果の若干リードは縮まったものの、クリントン氏の優勢には変化は無いというのが現在のコンセンサスであると考えてよいでしょう。
しかし、一点気になることがあるとすれば、米国大統領選といわゆるオクトーバー・サプライズです。オクトーバー・サプライズとはウィキペディアの定義を引用すると「アメリカ合衆国大統領選挙が実施される年において、本選挙投票の1ヶ月前の10月に選挙戦に大きな影響を与えるサプライズ(出来事)のこと」とされ、前回2012年の選挙では、投票1週間前のハリケーンに対するオバマ大統領の対応に評価が高まり、再選を確実なものにしたと言われています。
リスクオフの警戒感を強める程度か
ただ、他の事例と比べても今回の新たなメール問題再調査は、そこまでのサプライズとも思えず、せいぜい金融市場にリスクオフの警戒感を強める程度ではないかという印象です。今後投票日までに、リード差を逆転されるほどのものが出て来るとも思えませんが、思わぬニュースが出てきたことで、主要国(日本1日、米国2日、英国3日)の金融政策決定会合、米国雇用統計、そして来週8日の大統領選と各金融市場は神経質な対応を迫られることとなってきたようです。
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