トルコリラ円見通し 11月19日のトルコ中銀会合迫り上昇一服
〇トルコリラ円、11/13夜13.82まで上昇したが、11/16夕刻高値も13.72にとどまりやや上値が重い
〇対ドル、11/16午後7.59リラまで上昇、その後やや上げ渋り7.70リラを挟んだ動き
〇対ドル・対円でのリラ高ひとまず一服、11/19の中銀利上げを見定める展開か
〇11/19トルコ中銀金融政策決定会合、大胆な利上げでリラ防衛姿勢を示せるのか懐疑的な見方も
〇キプロス島関連等トルコを巡る地政学的リスク、再び焦点化される可能性
〇13.65以下での推移中は下向きとみて、13.30割れから続落の場合は13.00まで下値目途引き下げる
〇13.65超えからは11/13夜高値13.82試し、高値更新からは14円を目指す上昇を想定
【概況】
トルコリラ円は11月13日夜高値で13.82円まで上昇、11月6日夜安値11.99円からの上昇幅は1.83円高。上昇率は15%を超えたが、その後は新たな高値更新へ進めず13.50円を挟んだ揉み合いで、16日夕刻の戻り高値も13.72円にとどまってやや高値切り下がりで上値が重くなってきている。
11月7日にトルコ中銀総裁が突然更迭され、8日にはエルドアン大統領の娘婿である財務相が辞意表明して混乱とさらなるリラ安懸念が強まったが、11月9日の市場はトルコの金融経済政策の転換期待でリラ高となり、一段安を見込んでいた売り方が狼狽的な買い戻しを余技なくされる中で新規買いも加わって買いの連鎖反応となり10日には13円台を回復、12日未明には13.50円台を回復、さらに13日夜高値13.82円まで高値切り上げが続いてきた。
しかし、11月19日のトルコ中銀金融政策決定会合も迫る中、高値警戒感も沸いて利食い優先の流れで上値が重くなってきている。
【中銀は利上げできるのか】
エルドアン大統領は景気回復とインフレの抑制及び経常収支改善を掲げているが、11月7日の中銀総裁更迭が9月の中銀による利上げを批判したものである可能性もあり、2019年7月に前々総裁を利下げへの消極姿勢で更迭したことも踏まえれば、果たして大胆な利上げへ踏み込んでリラ防衛姿勢を示せるのかどうか懐疑的な見方もある。
市場の事前予想では当初は現行の10.25%から12%程度への利上げ予想となっていたが、先週からは15%への利上げ予想へとハードルが上がっている。利上げ見送りやアリバイ的な利上げ幅に留まる場合は市場の失望売りでリラ安再燃となる可能性もあるところだ。
対ドルでのトルコリラは11月16日午後に7.59リラまで上昇、11月6日の史上最安値8.57リラ以降の高値を更新したがその後はやや上げ渋りで7.70リラを挟んだ動きとなっている。対ドル及び対円でのリラ高もひとまず一服で、次は11月19日の中銀の利上げを見定めるところからとなるのではなかろうか。
【地政学的リスクもまた湧いてくる】
ナゴルノ紛争もロシア仲介による停戦合意に至り、実質的にはアルメニアの敗北でひとまず落ち着いた。ギリシャとの東地中海におけるトルコのガス田探査強行による両国の対立もエーゲ海の大地震後はやや落ち着きを見せていた。
しかし、15日にはエルドアン大統領がトルコ軍が駐留している北キプロスを訪問し、キプロス島の2国分断の継続が望ましいとの姿勢を強調し、EU側が即座に批判するという事態も発生している。
キプロス島は、南側3分の1をキプロスが支配し、EUに加盟している。北の3分の1をトルコのみが承認してトルコ軍が駐留する北キプロス・トルコ共和国に分断されている。エルドアン大統領は北の独立37周年式典で同島を訪問したのだが、EUのボレル外相は「EUからのメッセージはとても明白だ。キプロス問題の包括的解決には国連安保理の決議関連に基づくほかない」と声明を発表してトルコを非難した。
米国でも在任期間があとわずかになる中でトランプ現政権による中東政策での動きも見られ、ポンペオ米国務長官はナゴルノカラバフ紛争におけるトルコのアゼルバイジャン支援や、リビアへの介入、東地中海でのトルコ軍の動きに言及して「トルコの最近の行動は非常に攻撃的だとの認識でマクロン仏大統領と一致している」と述べてトルコをけん制した。やや落ち着いていたトルコを巡る地政学的リスクも再び焦点化される可能性があると留意しておきたい。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月6日夜安値をサイクルボトムとして急騰に入ってきたが、10日早朝高値でいったんサイクルトップを付け、10日夕刻安値を押し目底として新たな強気サイクルに入ったため、13日時点では13日早朝から17日朝にかけての間への上昇余地ありとした。13日夜高値からは新たな高値更新へ進めずに推移しているため、13日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。安値形成期は16日午後から18日夕刻にかけての間と想定されるので既に反騰注意期にあるが、高値更新へ進めないうちは一段安警戒とし、13日夜高値超えからは新たな上昇期に入ったとみて18日夕から20日夜にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では遅行スパンの好転と先行スパンを突破した状況が続いてきたが、13日夜高値以降の上げ渋りにより遅行スパンは悪化に入り、先行スパンからも転落し始めている。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とみる。強気転換は13日夜高値超えからとみる。
60分足の相対力指数は10日早朝高値から11日深夜、さらに13日夜への一段高に対して指数のピークは徐々に切り下がる弱気逆行が続いたが、50ポイントを割り込んできているので65ポイント超えへ反騰できないうちは一段安余地ありとして30ポイント前後への下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、13.30円を下値支持線、13日夜高値13.82円を上値抵抗線とする。
(2)13.65円以下での推移中は下向きとみる。13.30円前後は押し目買いも入りやすいとみるが、13.30円割れから続落の場合は13.00円まで下値目途を引き下げる。また13.50円以下での推移が続く場合は18日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)13.65円超えからは上昇再開の可能性ありとみて13日夜高値試しとし、高値更新からは14円を目指す上昇を想定する。13.90円以上は反落注意とするが、13.65円以上での推移なら18日も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
11月19日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 10.25%、予想 15.0%)
20:30 週次外貨準備高 11/13時点
11月20日
16:00 11月消費者信頼感 (10月 81.9)
11月23日
17:00 10月観光客数 前年比 (9月 -59.4%)
11月24日
16:00 11月製造業景況感 (10月 108.1)
注:ポイント要約は編集部
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