トルコリラ円見通し ナゴルノ紛争によるリラ売り一服、中銀の追加利上げ観測で買い戻しの動き(20/10/20)

トルコリラ円の史上最安値更新が続いてきたが、10月15日夜安値で13.21円まで最安値を更新した後は持ち直しの動きに入っている。

トルコリラ円見通し ナゴルノ紛争によるリラ売り一服、中銀の追加利上げ観測で買い戻しの動き(20/10/20)

ナゴルノ紛争によるリラ売り一服、中銀の追加利上げ観測で買い戻しの動き

〇トルコリラ円、10/15夜の最安値更新以降、持ち直しの動きに入る
〇対ドルも10/14夕刻の最安値更新以降持ち直し、ドル安リラ高の流れとなる
〇10/22開催予定のトルコ中銀の金融政策決定会合、前回に続き連続利上げの見方強まる
〇東地中海問題は深刻化が懸念、ナゴルノ紛争は二度にわたる停戦合意があり様子見に入る
〇新型コロナ、トルコでも感染拡大第二波か、観光収入の回復の遅れを懸念
〇13.30以上での推移中は上昇余地ありとして13.45前後への上昇を想定、13.45以上は反落注意
〇13.30割れの場合は13.25前後への下落を想定するが、13.25前後は押し目買いされやすいとみる

【概況】

トルコリラ円の史上最安値更新が続いてきたが、10月15日夜安値で13.21円まで最安値を更新した後は持ち直しの動きに入っている。10月22日にトルコ中銀の金融政策決定会合があるが、前回の9月会合で4会合ぶりに利上げに踏み切り、現状維持と想定していた市場にとっては強気サプライズとなったが、今回の会合についても先週時点までは現状維持との見方が濃厚だったものの、週明け時点では現行の10.25%から12%へ連続して利上げするのではないかとの見方が強まってきている。

トルコリラ安の背景は外貨準備高不足、コロナ不況による経常収支悪化、消費者物価上昇率が政策金利を上回る実質マイナス金利状態の長期化、東地中海ガス田問題やロシア製ミサイルシステム導入に対する国際的批判や制裁の可能性、ナゴルノ・カラバフ紛争への介在等での地政学的リスクの増大などだ。このうち東地中海問題は拗れる可能性があるものの、ナゴルノ紛争については二度にわたる停戦合意もあって様子見に入りつつあり、当面する最大の問題がトルコ中銀による追加利上げで実質マイナス金利状態から抜け出せるかどうかというところに来ている印象だ。このため、先安感を優先して売り込んできた弱気筋が買い戻しの動きに入り始めているようだ。
対ドルでのトルコリラも10月14日夕刻に7.954リラの最安値を付けた後は16日夜に7.953リラまで再び下げたものの最安値更新を回避し、その後は持ち直しの動きで7.86リラ台までドル安リラ高の流れとなり落ち着いてきている。

【東地中海問題、さらに拗れるか】

東地中海のキプロス島北部にある北キプロス・トルコ共和国(トルコのみ承認)では18日の大統領選で南側のキプロス共和国(ギリシャ系、国際的に承認されている)との再統合に否定的なエルシン・タタル首相が現職で統合積極派とされるムスタファ・アクンジュ氏を破って当選した。トルコのエルドアン大統領とタタル氏は良好な関係にあり、統合派が破れたことで現状のキプロス南北対立の継続と悪化、ギリシャとの対立関係の深刻化への影響が懸念される。
EUは10月15-16日の首脳会議後の声明で、トルコの東地中海ガス田探査問題に対して「新たな一方的で挑発的な行動は遺憾だ」と非難し、EUは12月の首脳会議でこの問題を再び協議するとして制裁をちらつかせて牽制している。

【ナゴルノ・カラバフ紛争】

アルメニアのアルメン・サルキシャン大統領は自身の公式サイトで「ブリュッセルの全員(EU)にトルコに圧力をかけるよう呼び掛ける。トルコの行為はNATOの評判と基本的構想に損害をもたらす」とする大統領声明を掲載した。
9月27日に始まった紛争はまだ続いている。アゼルバイジャンとアルメニアは10日にロシアの仲介によりいったん停戦合意したが、即日から戦闘を再開してきた。10月17日に再びロシアの仲介により18日午前0時(日本時間同5時)から「人道的停戦」で合意したと発表したが、その後も戦闘が続いているようだ。
相場の材料としてはひとまず織り込んだ状況で、停戦破りがあるものの停戦の動きを見定めたいとし、さらにトルコの介在が鮮明化して国際的な孤立へ進まない限りは状況を見守るというスタンスになってきたのではないかと思われる。

【トルコも感染拡大の第二波か】

10月19日のトルコの感染者累計は前日から2026人増の34万9519人となった。死者は75人増で9371人に達した。感染増加数は5月6日の2253人増以来であり、6月2日に786人増まで急減して以降は漸増傾向にあったが、2000人を超えてきたことで感染拡大の第二波へ入り始めた印象だ。また死者の数も5月2日の78人に次ぐ水準であり、第一波時に匹敵する水準となり始めている。世界の感染者は4千万人を超えた。欧州の第二波においてもフランスやドイツなどは過去最大の増加数に達するなど、医療崩壊的な状況にはまだ陥っていないようだがかなり深刻な状況となり、経済活動や移動が再び規制され始めていることはトルコにとっても観光収入の回復の遅れへつながり影響が大きいと懸念される。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月9日深夜高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとして13日夜から15日深夜にかけての間への下落を想定してきたが、15日夜安値からの反発が続いているので現状は15日夜安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りしていると思われる。高値形成期は22日のトルコ中銀政策金利発表を前後するところまでとみるが、13.30円以上での推移中は高値試しへ進みやすく、13.30円割れから続落に入る場合は下げ再開が疑われるところと考える。

60分足の一目均衡表では15日夜安値からの上昇が続いたことで遅行スパンは好転し、先行スパンも上抜いてきた。このため先行スパンからの転落回避中は遅行スパン好転中の高値試し優先とし、両スパンそろって悪化するところからは下げ再開と考える。

60分足の相対力指数は50ポイント台でしっかりして上昇基調にある。当面は50ポイントを下値支持線として上昇余地ありとし、50ポイント割れからは下げ再開を疑う。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、13.30円を下値支持線、13.45円を上値抵抗線とする。
(2)13.30円以上での推移中は上昇余地ありとして13.45円前後への上昇を想定する。13.45円以上は反落注意とするが、13.30円以上での推移なら21日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)13.30円割れの場合は13.25円前後への下落を想定するが、中銀金融政策発表も控えているので13.25円前後は押し目買いされやすいところとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

10月22日
 16:00 10月消費者信頼感指数 (9月 82.0、予想 79.0)
 20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 10.25%、予想 12.0%)
 20:30 週次外貨準備高 (10月9日時点 411.2億ドル)
10月26日
 16:00 10月景況感 (9月 105.3)


注:ポイント要約は編集部

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