対ドルと対ユーロでトルコリラは最安値更新、円高も重なって14円台序盤へ続落
〇トルコリラ円14円台前半、トルコリラは対ドル、対ユーロで最安値を更新
〇欧米勢のリラ売り、トルコ国内外貨シフトの動きが要因か
〇トルコ中銀、金融政策決定会合を控え事実上の金融引き締め策を導入 エルドアン大統領主導か
〇14.35以下で推移中は一段安余地あり、14.10以下は反騰注意、14.07を割り込む場合14円割れか
〇14.40超えからは14.45円前後への上昇を想定、14.45以上は反落注意
【概況】
トルコリラ円は8月12日午後高値14.79円からのジリ安が続いてきたが、8月18日夕刻には14.23円まで安値を切り下げ、19日早朝には14.21円まで続落した。19日午前も安値圏にあり、安値更新への余裕が乏しくなっている。
トルコリラ円の下落はドル円における円高ドル安の進行と、対ユーロ及び対ドルでのトルコリラの史上最安値更新が背景だが、18日夜にはドル円が105円台序盤へ続落し、対ドルでのトルコリラも18日に7.40リラへ下落して史上最安値を更新、対ユーロでも8.82リラまで最安値を更新している。トルコの外貨準備高不足、通貨防衛力が低下する中で欧米勢のリラ売り、さらにトルコ国内でも自己防衛的にリラから外貨へシフトする動きが加速していることがトルコリラ安を加速させている。
【トルコ中銀、流動性供給を半減】
トルコ中銀は8月18日、20日に予定されている金融政策決定会合を控えて事実上の金融引き締め策を導入した。トルコ中銀は18日に翌日物金利による銀行への流動性供給額の上限を8月19日から半分に削減すると発表した。また翌日物貸出金利から後期流動性窓口制度による資金供給に切り替える。トルコ中銀の翌日物貸出金利は現在9.75%だが、後期流動性窓口金利は政策金利の1週間物レポレート8.25%に3%を上乗せした11.25%となっている。
トルコ中銀は8月17日に100億リラを供給したが、金利は単純平均で11.25%だった。銀行の資金調達金利は7月16日時点では7.34%だったが大幅に上昇してきている。
このトルコ中銀による金融引き締め策発表からトルコリラは対ドルで7.40リラまで下落して史上最安値を更新した。
8月20日にはトルコ中銀の金融政策決定会合があるが、政策金利を据え置いて他の代替的な引き締め政策を強化するのではないかと予想されているようだ。
トルコのエルドアン大統領は8月18日に史上最安値を更新したことを受けて同国の最高経済当局者会議を召集しているが、その会合により8月18日のトルコ中銀による流動性供給半減策等も決まったのではないかと思われる。この会合には大統領他、ベラトアルバイラック財務相、フアットオクタイ副大統領、トルコ中銀、国営銀行、銀行監視機関などが参加している。
【対ユーロでの下落続く】
対ドルでのトルコリラは8月17日に7.4014リラまで史上最安値を更新していたが、18日は7.4017リラまでわずかに最安値を更新した後はトルコ中銀の引き締め政策発表から下げ一服となった。18日深夜には7.33リラまで一時戻したが取引終了時は7.37リラへ再び下落、その後は横ばいで模様眺めとなっている・
対ユーロでのトルコリラは8月17日に8.79リラまで最安値を更新、18日も8.82リラへ安値を更新したが、その後も最安値圏を維持しており、終値ベースでは8月12日から5日連続の下落となっている。対ドルよりも対ユーロでの下落規制は難しく、7月もユーロ高リラ安がドル高リラ安に先行して走っている。
当面は8月20日のトルコ中銀金融政策発表内容を見定めてリラ安一服となるのか却ってリラ安進行が加速するのかを判断してゆくところと思われる。
【ドル円の下落圧力】
仮に対ドル及び対ユーロでのトルコリラ安が一服しても、ドル円の下落が続けばトルコリラ円も続落せざるを得なくなる。
ドル円は先週の米長期国債大量入札を意識した米長期債利回り上昇とドル高により8月13日高値107.05円まで上昇していたが、大量入札週を通過したことで週明けからは米長期債利回りが低下に転じてドル安がぶり返しており、ドル円の日足は3日連続の陰線となり、7月31日からの上昇幅の半値以上を削る下落となっている。3日連続の陰線=三羽烏による下落開始は2月20日天井からの下落開始時や、4月6日の戻り高値からの下落再開時、6月5日の戻り天井からの下落開始時、7月後半の急落時にも見られるため、今回も戻り一巡から円高ドル安基調へ転換し始めた印象が強まっている。ドル円が105円を割り込んでさらに続落するようだと、トルコリラ円もつれて下落しやすいところと注意し、対ドル等でのトルコリラ急落発生の場合は下げもかなり厳しくなる可能性があるところと注意される。
【60分足の一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月12日夕高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとして13日朝から17日朝にかけての間への下落を想定してきたが、大きく反騰しきれずに8月18日早朝へ一段安したために18日午前時点では8月15日早朝安値を直近のサイクルボトムとし、底割れにより新たな弱気サイクル入りしているとした。またボトム形成期は20日早朝から24日朝にかけての間とし、強気転換は17日昼高値14.45円超えからとした。
8月19日朝へ続落しているため、引き続きボトム形成中とし、強気転換は14.40円超えからとする。
60分足の一目均衡表では8月12日夕高値からの下落で遅行スパンが悪化し、14日朝には先行スパンから転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いている。このため遅行スパン悪化中は一段安余地ありとする。遅行スパン好転からはいったん戻しに入るとみて高値試し優先とするが、その際は先行スパンが抵抗帯となりやすいとみて、再び遅行スパンが悪化するところからは下げ再開、一段安へ向かいやすくなるとみる。
60分足の相対力指数は8月18日に20ポイント台序盤へ下落し、その後に相場が安値を更新しているものの指数のボトムは切り上がって強気逆行の気配となっているが、強気転換には50ポイントを超える必要があり、超えないうちは30ポイント割れから一段安へ進みやすいとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す
(1)当初、14.20円を下値支持線、14.35円を上値抵抗線とする。
(2)14.35円以下での推移中は一段安余地ありとし、14.20円割れからは8月10日朝安値14.07円試しへ向かうとみる。14.10円以下は反騰注意とするが、14.30円以下での推移が続くうちは20日午前も安値試しへ向かいやすいとみる。また8月10日安値を割り込む場合は14円割れを目指すとみる。
(3)14.35円超えから強気転換注意とし、14.40円超えからはいったん戻しに入るとみて14.45円前後への上昇を想定する。14.45円以上は反落注意とするが、14.40円以上での推移なら20日午前も戻り高値を試す可能性があるとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
8月20日
16:00 7月自動車生産 前年比 (6月 -5.4%、予想 2.0%)
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 8.25%)
20:30 週次、外貨準備高 (前週 465.9億ドル)
8月21日
16:00 8月消費者信頼感 (7月 60.9、予想 58.0)
17:00 7月観光客数 前年比 (6月 -96.0%、予想 78.0%)
8月24日
17:00 7月観光客数 前年比 (6月 -96.0%、予想 -68.0%)
8月25日
16:00 8月製造業景況感 (7月 100.7)
16:00 8月設備稼働率 (7月 70.7%)
8月27日
20:00 トルコ中銀金融政策会合議事要旨公開
20:30 週次外貨準備 8月21日時点
8月28日
16:00 8月経済信頼感指数 (7月 82.2)
8月31日
16:00 4−6月GDP 前年比 (1−3月 4.5%、予想 -8.9%)
16:00 4−6月GDP 前期比 (1−3月 0.6%、予想 -5.2%)
16:00 7月貿易収支 (6月 -28.5億ドル)
注:ポイント要約は編集部
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18日朝の取引再開時には14.25円までさらに安値を切り下げて8月10日朝安値14.07円に迫っている。
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