【概況】
トルコリラ円は2月26日未明安値で17.83円まで下落して1月6日にイラン情勢緊迫でつけた安値17.94円を割り込み、2月21日から28日まで6日間連続の日足陰線となり、週明けの3月2日朝には17.08円まで続落したが、その後は中国株やダウ先物の反騰により金融市場全般が持ち直しに入ったために3月2日夕刻に17.49円まで反発、3月3日深夜には17.81円まで高値を伸ばしてきた。しかし、3日深夜から反落となり4日朝には17.50円を割り込んできている。
3月3日夜にG7財務相・中銀総裁の緊急電話会合が開催され、米連銀が異例の緊急利下げを行ったが、その内容にかえって市場は失望してNYダウは大幅下落、リスク回避感が再燃してドル円は107円を割り込み、ドル高リラ安が一服していたドル/トルコリラでも深夜からドル高リラ安がぶり返してきている。
シリア情勢は戦闘が拡大しており、アサド政権軍とトルコ軍による全面戦争突入前夜の緊張感が高まっているものの、エルドアン大統領は3月5日にアサド政権の後ろ盾であるロシアのプーチン大統領とモスクワで会談する予定であり、停戦の可能性もまだ残っているところだ。
【米連銀緊急利下げ後に株安、リラ安も再燃】
米連銀(FRB)は3月3日夜の臨時FOMCで政策金利を0.5%引き下げて年1.00〜1.25%とした。定例以外での利下げはリーマンショック時以来となる。これに先立ってG7は緊急電話協議を行って「あらゆる適切な政策手段を用いる」方針を示したが具体策に欠け、米連銀の利下げ幅も市場を強気にサプライズさせる程の踏み込みではなかったために市場はかえって失望的な反応となった。
3月3日のNYダウは前日比785.91ドル安と下落して終了した。2月27日に前日比1190.95ドル安となり1日の下げ幅としては過去最大の下げとなるなど連日の大幅下落となっていたが、3月2日は暴落に対する反動とG7等の対策期待で前日比1293.96ドル高の上昇となり1日の上げ幅としては過去最大となって持ち直していた。3月4日も続伸していたのだが、深夜からは反落に転じて一時は900ドル以上の下げ幅となった。
イスタンブール100株価指数も2月27日に前日比4.13%安、28日に4.01%安と暴落的な下落に見舞われていたが、3月2日は1.24%高、3日もダウ先物の上昇を見て3.63%高と反騰していた。しかし3日深夜からのNYダウ反落により3月4日は下落再開へ進みやすくなっている印象だ。
ドル/トルコリラはリスク回避感が強まる中で2月24日から2月28日へ5連騰のドル高リラ安となっていたが、3月2日に6.2615リラまで高値を伸ばした後はダウ反騰によるリスク回避感のゆるみでドル安リラ高となり、2日は前日比1.10%安、3日も1.00%安とドル安リラ高となっていた。しかし3月3日深夜からはドル高リラ安がぶり返しており、6.0317リラの安値から6.12リラ前後へ戻している。
【世界的な金融緩和拡大でトルコ中銀も利下げを継続しやすくなったか】
3月19日にトルコ中銀の金融政策決定会合がある。トルコ中銀はエルドアン大統領による「インフレと政策金利を一桁にする」姿勢を背景に2月会合まで6会合連続の利下げを実施し、現在は1週間物レポレートが10.75%まで低下してきた。3月19日の会合でも0.50%の引き下げで10.25%となるのではないかと予想されているが、世界的な利下げの連鎖となればより大胆な利下げに踏み切る可能性も考えられる。
3月3日に発表されたトルコの2月消費者物価は年率で12.37%となり1月の12.15%から上昇、生産者物価も9.26%となり1月の8.84%から上昇している。物価上昇率を踏まえれば現状の政策金利はすでに実質ゼロ金利ないしはマイナス金利状態にあるため、本来なら過剰な利下げとしてリラ売り圧力が強まることも警戒される水準だが、世界的な利下げ基調によりトルコ中銀の利下げに対する反応度も鈍くなるのではないかと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2月24日夜安値を割り込んで底割れによる弱気サイクル入りとなってきたが、3月2日朝安値からの反発が続いたために3月3日午前時点では3月2日朝安値を直近のサイクルボトムとしてリバウンドに入っているとした。3月3日深夜へ戻り高値を切り上げてきたが、深夜からは反落しているので既にサイクルトップを付けた可能性がある。3月3日夕刻安値17.31円を割り込むところからは弱気サイクル入りとして3月5日朝から9日朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では、3日深夜への上昇で先行スパンを突破したがその後は反落している。3日夕安値を割り込むところからは遅行スパンの悪化と先行スパンからの転落が揃うため下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は3月3日深夜高値形成時に70ポイントに到達したがその後は反落している。45ポイント割れからは下げ再開と来て20ポイント台への低下を伴う下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月3日夕安値17.31円を下値支持線、3月3日深夜高値17.81円を上値抵抗線とみておく。
(2)17.81円を超えないうちは下落再開に入っている可能性を警戒し、17.31円割れからは下げ再開とみて3月2日安値17.08円試しを想定する。17.08円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、底割れからは16.75円、16.50円へ段階的に下値目途が切り下がってゆくと考える。
(3)3月3日深夜高値を上抜く場合は18円手前試しとその後の反落警戒とし、17.60円割れからは下げ再開とみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
3月10日
16:00 12月失業率 (11月 13.3%)
3月11日
16:00 1月経常収支 (12月 -28億ドル)
3月13日
16:00 1月鉱工業生産 (12月 8.6%)
16:00 1月小売売上高 前月比 (12月 1.1%)
16:00 1月小売売上高 前年比 (12月 11.0%)
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