【概況】
トルコリラ円は10月末以降、高値で19円台を維持できず、18.80円前後が支持線となる持ち合いを1か月続けてきた。その間の最高値が10月31日未明の19.08円であり、12月2日午後高値で同値まで迫ったものの高値更新に失敗し、持ち合い中の最安値である11月15日未明安値18.77円を12月7日未明への下落で割り込んで持ち合い下放れに入り、12月10日夜には18.64円まで安値を切り下げた。
12月12日夜に米中通商協議が第1段階合意に達したとの報道からドル円が急伸した流れと同調してトルコリラ円も12月13日夜高値18.95円まで反騰したため、持ち合い下放れにいったんストップがかかって元の持ち合いレンジ内に回帰したのだが、13日夜からの下落により12月10日安値に迫り、12月17日夜にはドル/トルコリラでのドル高リラ安進行により12月10日安値を割り込んで12月18日早朝には18.56円まで一段安となった。
12月18日未明への一段安により、10月末からの持ち合い下放れの大きな動きは継続であり、12月13日夜の戻り高値からの下落で二段目の下落期に入った印象が強まった。
【ドル高リラ安進行】
ドル円は米中第1段階合意により12月13日夜高値109.70円へ上昇後、合意内容が期待程ではなかったとして13日深夜に109.20円までいったん反落したものの、その後は持ち直している。しかしその間、ドル/トルコリラではドル高リラ安が続行している。
ドル/トルコリラは12月13日から3連騰となり、16日には5.58625リラをつけて11月21日以降の高値を更新していたが、17日は5.8899リラまで続伸した。終値ベースでは12月13日から0.29%高、0.72%高、17日が0.62%高となっている。
ドル高リラ安の背景は、第一にトルコの利下げ継続感と米連銀の利下げ打ち止めの長期化との対比であり、第二に米国とトルコの外交的対立への懸念拡大と思われる。
ドル指数で見れば11月29日からのドル指数下落が続いて12月12日には10月21日安値を割り込んで一段安しており、その後は下げ渋っているものの10月1日高値からの二段下げ基調が継続している。また他の新興国通貨でもブラジルレアルも史上最安値から戻し、電力不足長期化が懸念されている南アランドもしっかりしており、トルコリラ安が目立った状況にあるということはトルコリラ独自要因によるリラ安と言えるだろう。
10月23日にトルコが米国提案のシリア領域での停戦に合意し、11月13日にはワシントンで両国首脳会談が行われた。懸案事項は先送りされたものの、トルコによるロシア製ミサイル調達や米国による対トルコ制裁問題等はいったん落ち着いていた。しかし、米上院が12月12日に米下院で10月に可決済のオスマン帝国によるアルメニア人殺害事件を「ジェノサイド=民族大量虐殺」認定する決議案を可決したことに対してエルドアン大統領が12月15日に米国への対抗措置をちらつかせたことで両国関係の悪化も再び懸念されつつある。エルドアン大統領は「必要とあれば(米国の核弾頭が配備されているトルコ南部)インジルリク空軍基地を閉鎖する可能性がある」「必要ならギョルジュク海軍基地も閉鎖できる」とテレビで述べている。
トルコ中銀は12月12日に政策金利である週間レポレートを14%から12%へと引き下げたが、これは7月26日に24%から19.75%へ引き下げてから4会合連続での利下げとなった。エルドアン大統領はインフレも政策金利も一桁にすると公言しているため、トルコ経済が悪化しない限りは次の会合でも連続利下げが行われる可能性がある。こうしたトルコの利下げ継続姿勢と対照的に米連銀は2020年にかけても現行水準での据え置き姿勢を示しているため、トルコの利下げインパクトがより目立つ状況にあると言える。
地政学的な緊張感がまだ意識され始めていることとトルコ中銀の連続利下げ姿勢が10月後半からの持ち合い下放れの背景となり、12月13日へいったん戻したものの一段安となって持ち合い下放れの流れ継続となっている状況にあるわけだ。またテクニカル的には概ね4か月周期の高値・安値形成サイクルにおける下落期入りとなるため、下げがさらに加速しやすい状況にあると注意すべきだと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円60分足
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月10日夕安値と12日朝安値をダブル底いとして強気サイクル入りしていたが、13日夜高値で直近のサイクルトップをつけて弱気サイクル入りした。今回のボトム形成期は前回ダブルボトムの12月12日朝安値を基準とすれば17日朝から19日朝にかけての間と想定されるので、既にボトムをつけての反発注意期にあるが、12月14日未明安値ないしは16日深夜安値を直近のサイクルボトムとして既に連続的な弱気サイクル入りとなっている可能性もある。このため18.70ドル以下での推移中はまだ一段安へ進みやすいとみて、強気転換は18.70円超えからとする。
60分足の一目均衡表では12月16日の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したが、その後も両スパン悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、遅行スパン好転からはいったん強気サイクル入りの可能性ありとして先行スパン帯を試す上昇を想定する。
690分足の相対力指数は12月16日から18日未明への一段安では指数のボトムが切り下がっているためまだ強気逆行が見られないので、50ポイント台を回復する反騰が見られない内は一段安警戒とする。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月18日早朝安値18.56円を下値支持線、18.65円を上値抵抗線とする。
(2)18.65円以下での推移中は一段安警戒とし、安値更新からは18.40円台への下落を想定する。18.45円以下は反発注意だが、18.65円以下での推移なら19日も安値を試しやすいとみる。
(3)18.65円超えからは強気転換注意とし、18.70円超えからは強気サイクル入りとみて18.75円前後への上昇を想定する。18.72円以上は反落注意とするが、18.70円を超えた後も18.65円以上での推移なら19日も戻り高値を試す余地ありとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
12月20日
16:00 12月消費者信頼感指数 (11月 59.9)
19:30 11月自動車生産 前年比 (10月 0.7%)
23:30 トルコ中央政府債務残 (10月 126.1億トルコリラ)
12月26日
16:00 12月景況感 (11月 102.00)
16:00 12月設備稼働率 (11月 77.2%)
12月30日
16:00 12月経済信頼感 (11月 91.3)
12月31日
16:00 11月貿易収支(10月 -18.1億ドル)
【最近の米国・トルコ・シリア情勢】
10月14日 米国がトルコに経済制裁発動
10月23日 トルコが米国提案の恒久的停戦を受け入れ、米国のトルコ制裁解除
10月27日 トランプ大統領、IS指導者バグダディ氏殺害を報告。
10月29日 米下院によるトルコ制裁決議可決
11月01日 トルコとロシア、シリア北東部の合同巡回開始
11月11日 トルコ政府、IS戦闘員の本国送還を開始
11月13日 トランプ米大統領とエルドアン大統領がワシントンで首脳会談
11月23日 トルコ国防相、米国がF35売らないなら別の道を選択
11月23日 第14回シリア保証国会議を12月10-11日に開催
11月25日 トルコがロシア製S400ミサイルシステムの試験開始
11月26日 シリア北部ラスアルアイン付近で自動車爆弾による大規模テロ事件発生
12月03日 NATO首脳会議、英独仏とトルコの首脳会談
米トランプ大統領、トルコのロシア製ミサイル調達への制裁検討中と発言
12月04日 米トランプ大統領とエルドアン大統領会談、特に動き無し
12月11日 米上院外交委員会がトルコへの制裁法案を可決
12月12日 米上院本会議で、オスマン帝国によるアルメニア人の殺害事件を「ジェノサイド認定」
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