預金準備率引き下げと政情不安の高まりがトルコリラの重石に。約2ヶ月ぶり安値圏へ
今週のレビュー(8/19−8/23)
今週のトルコリラ(対円相場)は、週初19.087円で寄り付いた後、早々に高値となる19.154円まで上昇しました。しかし、ボリンジャー・ミッドバンドや、一目均衡表基準線、同転換線に続伸を阻まれると、@トルコ中銀による預金準備率の引き下げや、Aクルド系民族への圧力強化を背景とした政情不安(トルコ内務省は8/19、トルコ東部3都市のクルド系市長の職務を一時停止)、B米中貿易摩擦の再燃を通じたリスク回避ムードの高まりが重石となり、週末にかけて、6/20以来、約2ヶ月ぶり安値となる18.242円まで急落しました。引けにかけて小反発するも上値は重く、18.295円近辺での越週となっております。
来週の見通し(8/26−8/30)
トルコリラ・円相場は、今週の急落を受けて、5/7に付けた17.539円をボトムに始まった中期上昇トレンドの終焉が明らかとなりました(ダウ理論)。スワップ金利を目的に7月後半以降、トルコリラ・円は異常な底堅さを見せていただけに、売り遅れた投資家による「ロスカット」が下げ足を速めた一因になっていると考えられます。トレンドの方向性を示唆するボリンジャー・ミッドバンドを8営業日連続で下回っている他、直近では強い売りシグナルを表す一目均衡表・三役逆転も出現しました。テクニカル的に見て、「中立→下落」へのトレンド転換が意識されます。
ファンダメンルズ的に見ても、@ロシア製ミサイルS400を巡る対米及びNATO同盟国との関係悪化懸念や、A外貨準備急減を背景としたリラ安防衛能力への不信感、Bトルコ経済を巡る先行き不透明感の高まり、Cエルドアン大統領による中銀への介入懸念(※)、Dトルコ中銀による大幅利下げ観測(次回政策決定会合は9/12)、Eキプロスを巡るEUとの関係悪化懸念、Fエルドアン大統領の求心力低下、Gクルド系民族を巡る政情不安など、不安材料は山積みです。
※エルドアン大統領は、7/6に利下げ要求に応じなかったチェティンカヤ・トルコ中銀総裁(当時)を解任した他、8/8には、チーフエコノミストのカラ氏をはじめ、調査・金融政策部門の責任者など10名以上を解任しました。エルドアン大統領による圧力が強まる中で、トルコ中銀の独立性を巡る懸念が再燃しつつあります。
以上の通り、トルコリラ・円相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも「下落リスク」が警戒されます。米中貿易摩擦の激化を背景に、「リスク回避ムードの高まり→新興国ショック→高金利通貨ロングのアンワインド」の流れが再開するシナリオも警戒されます。8/26のトルコ・8月設備稼働率や、8/29のトルコ・7月貿易収支、米中貿易摩擦を巡るヘッドライン、市場のリスクセンチメントの変化を注視しつつも、来週はトルコリラ・円相場の続落をメインシナリオとして予想いたします。(来週の予想レンジ TRYJPY 17.90ー18.70)
トルコリラ円日足
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