【概況】
2月2日の米雇用統計が良好だったことで米連銀の3月利上げがほぼ確実となったことに加え、先行きの利上げペースが加速するのではないかとの不安からNYダウが急落、世界連鎖株安が発生したためにドル円はリスク回避的に売られて2日深夜高値110.48円から6日安値108.45円まで下落した。
その後は世界連鎖株安が一服したために7日午前には109.70円へ戻し、8日午後にも109.78円まで戻り高値をやや切り上げたが、8日夜にNYダウが1000ドルを超える急落となって株安不安が再燃したために急落、108.58円まで下げた。
【世界連鎖株安、再燃、当局発言もかえって不安を助長】
NYダウは8日、前日比1032.89ドル安と急落した。2月2日に665.75ドル安、さらに週明け5日に1175.21ドル安と歴史的な下げで大幅下落したが、6日は567.02ドル高と上昇、当日安値からは1000ドルを超える反発となり、株安不安はいったんストップした。しかし7日は19.42ドル安と続伸できず、8日は安値で23849.23ドルまで下げて6日安値23778.74ドル割れへ余裕がなくなった。独DAXも330.14ポイント安の反落で年初来安値を更新、欧州株も全面安となった。
日経平均も2月2日に211.58円安、5日に592.45円安、6日に1071.84円安と暴落し、7日に35.13円高、8日は245.49円高と戻したが、7日と8日は6日の暴落レンジ内に止まり、22000円台を回復できずに下げ渋りに止まっているが、米国株安からさらに一段安へ進みかねない状況になってきている。
株暴落のきっかけは欧米長期金利上昇と先行きさらに上昇しかねないことへの懸念だった。
米10年債利回りは年末から上昇基調だったが、1月半ばまではまだ株式市場等にとっての危険水準という意識は薄かった。しかし4年ぶり高水準となる2.8%台後半まで上昇したことで危機感が一挙に爆発した。株安により米10年債利回りもいったん低下したが、株反発により再び上昇、さらにこの日は米連銀当局者らの発言が株安不安をさほど意識していない印象を市場に与えたため、戻しに入りかけていた米国株を再び失速させてしまった。
雇用統計も非農業部門就業者数が20万人増となり、市場予想の18万人を超えたとはいえ、さほど驚く数字ではない。今年3回の利上げとその最初が3月となるであろうことは市場も織り込み済だったはず。年末には大規模企業減税も決まり、今年はさらに10年総額1.5兆ドルの大規模インフラ投資計画も始まるため、バブル的な株高はさらに続く可能性も十分にあった。しかし、丸1年以上の棒上げにより、大概の強気材料を先取りしてきたことで異常な水準に高騰してしまったため、実は相当な高所恐怖症状態にあり、ちょっとしたきっかけでバブルが破裂するような状況にあったのだろう。その破裂のきっかけを雇用統計と米長期金利上昇が与えた。
株暴落で不安に陥った金融市場を落ち着かせるような動き、発言も期待されるところ、8日の米連銀当局者発言は市場の期待にそぐわないものとなった。
米フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は「3月の利上げに対してはオープン」と発言。株安警戒姿勢を示さなかった。
米ダラス地区連銀のカプラン総裁は「金融緩和を引き続き緩やかに解除していく可能性が高く、2018年には3回利上げを実施する可能性がある」との従来姿勢を維持した。
ニューヨーク連銀のダドリー総裁はブルームバーグTVのインタビューで「金融市場は世界景気の加速に対して調整を迫られている。各国中央銀行が金融引き締めに着手し始めたからだ」「下落が現在の水準で止まれば、経済見通しにほとんど影響しない」と述べた。「一段と下落して混乱が長期化すれば、家計消費や企業の設備投資に悪影響を及ぼし、経済見通しも変わってくる」とも述べたが、「税制改革成立により経済の力強さに確信を持っており、今年3回の利上げ見通しはなお合理的」と述べた。
株安不安に対して平静さを保つのは良いが、必要に応じて利上げの先送り等も検討するような柔軟姿勢を示してくれなかったことを市場は失望した。
欧州中央銀行(ECB)のプラート専務理事も今月の株暴落に対して「金融部門の安定にマイナスの影響が及ばない限り容認できる」と発言したため、ECBの緩和縮小、先行き利上げ姿勢の継続感が強まった。
英中銀は政策金利及び資産買い入れ規模を現状維持としたが、カーニー総裁が会見で「金融政策を従来予想よりやや早期に、やや大きく引き締める必要がある」と述べたため、5月の利上げ可能性が高まった。これを受けて英ポンドはいったん急騰したが、株安不安から急騰を一時的なものとして反落している。
【日経平均の下落は2015年8月暴落に近い?】
日経平均の急落レベルは、2015年6月天井直後の8月のダブルトップ形成から急落した時に近い印象がある。この時は2013年6月底から2年間の大上昇後に崩れ、暴落第1週に週足は1083.62円安、第2週も一時1000円を超える続落、第3週も1344.16円安となり、8月高値からは8週の大幅下落で5000円以上を下げた。今回も2016年2月と6月のダブル底から上昇してきたが、2016年2月底からは2年の上昇であり、アベノミクス云々での上昇というよりも欧米株高に連鎖した他力本願的な上昇でバブル化してきていたため、米国株安が発生すれば自力では支えきれないぜい弱さの中にあるので、今後が心配だ。
【60分足 一目均衡表分析】
1月25日108.49円、26日108.28円、30日108.41円、6日108.45円と、108.40-50円割れを回避して反発を繰り返してきた。ここが重要な支持帯を形成しているが、8日深夜からの下落によりこの支持帯で止まれるかどうか、試しにかかってゆきそうだ。
戻り高値は1月8日、1月23日、2月2日と切り下がり、2月8日の戻りも2日深夜高値に届かずに切り下げた。このため、2月2日以降は108.50円前後をフラットな支持線、抵抗線切り下がりに三角持合い型を形成しているので、6日安値割れの場合は三角持合い下放れ、さらに1月26日安値割れからは108円台前半の支持帯からの転落として一段安へ進みやすい状況となってきた印象だ。
60分足の一目均衡表では8日の上昇時には先行スパンを上抜き、遅行スパンも好転したが、深夜の急落により先行スパンから転落、遅行スパンも悪化した。このため、遅行スパン悪化中は安値試しとし、遅行スパン好転の場合も先行スパンが戻り抵抗帯として機能することが考えられる。
60分足の相対力指数は30ポイント台まで低下した。まだ弱気逆行や30ポイント割れからのV字反発等の気配が見られないため、50ポイント台回復へ進めないうちは20ポイント台前半まで突っ込む可能性ありとみる。
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月30日安値から5日目となる6日午後安値でボトムを付けて戻したが、2日深夜高値から4日目となる8日午後高値でサイクルトップを付けて下落期に入った印象だ。次の安値形成期を9日午後から13日の日中にかけての間と想定すると、9日午後、さらに10日未明、週明け朝にかけては一段安しやすい状況にあると思われる。強気回復には8日午後高値を上抜き返す反騰が必要と思われる。
以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1)109円を抵抗とし、上抜けないうちは6日安値108.45円割れから27日安値108.28円試しとし、さらに割り込む場合は9月8日安値107.32円試しへ向かうとみる。
(2)109円前後への反発は戻り売りにつかまりやすいとみるが、109円台回復、維持の場合は109.50円手前への上昇とその後の反落警戒とみる。
(3)108円割れから戻しても108.50円以下に止まる場合は週明けの一段安警戒とみる。
当面はリスク回避的な円高、クロス円の手仕舞いによる円買い戻し優勢とし、金融市場が楽観心理を回復するまでは、多少の株価指数反発では戻りも限定的なものに止まり、一段安懸念が継続しやすい環境と思われる。(了)<9:25執筆>
【当面の主な予定】
2/9(金)
平昌五輪開会式、日韓首脳会談
10:30 (中) 1月 消費者物価指数 前年比 (12月 1.8%、予想 1.5%)
10:30 (中) 1月 生産者物価指数 前年比 (12月 4.9%、予想 4.2%)
11:00 (米) ジョージ米カンザスシティ連銀総裁、講演
18:30 (英) 12月 貿易収支 (11月 -122.31億ポンド、-115.00憶ポンド)
オーダー/ポジション状況
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