NZ中銀のビジネスサイクル分析
(出所:NZ中銀、2017年3月29日Business cycle reviewにて公表分を一部抜粋)
NZ中銀の金融政策推移についての検証を記した文書です。ご参考まで。
(一部要旨を抜粋)
2008年リーマンショック以降のNZ経済の成長度合いを5段階に分けて分析
@ 2008年〜2009年:世界的資本市場危機
A 2009年央〜2010年:ショックからの回復期
B 2010年央〜2012年末:国内経済の減速と世界経済の不確実性
C 2013年初〜2014年央:商品市場ブームと建設の上振れ期
D 2014年央〜今日:継続的な低インフレ期
D に関してだけ概略しますと、
まずこの期間で最初の兆候は供給過剰による原油安。まだその時点で、国内の原油需要はその役割を果たしていた。資本市場のボラティリティは2014年末頃から上昇を始めた。これは中国の先行き経済動向から世界的な先行き不確実性が生じたもの。
この結果NZの貿易相手国の成長が下方修正を繰り返し、世界的な政策金利の低下が始まった。
NZドルの貿易加重平均レートが2015年以降から下がっては行ったが、NZの輸出価格の大幅な下落が続き、正常な相場よりはかなり高い水準にNZドルが置かれたままだった。
NZドルは2016年初から再び上昇を開始した。この期間のNZ金融政策も緩和基調だったが、世界的な金融緩和でNZドルは高いままに据え置かれた。予想外のNZドル高で貿易インフレはマイナスを続け、このマイナスの貿易インフレが世界インフレを更に弱めた。NZにとって輸入材やサービス価格が下落した。
2014年央以降は非貿易財のインフレも弱まり、国内物価の低下に繋がり、歴史的な低水準で物価が安定してしまった。
移民流入により、予想を上回る労働力供給が置き、潜在成長を越える成長貢献したが、逆に賃金低下に現れた。インフレ含めた純需要は当初の予想よりは下がった。これに2014年以降の世界経済の価格下落が相まった形となった。更に2015年以降の原油価格下落が一層のインフレ低下を招いた。
中銀は当初、家計の可処分所得上昇により消費拡大が起こり、インフレ圧力になると予想していた。結果2014年初に政策金利を1%も上げてしまった。しかしながら、中銀は世界経済の低下、それによる国内経済への波及から利下げを開始した。インフレ圧力見通しも2015年通して弱まると見ていた。確かに世界経済の低下や国内の稼働率は下がっていったが、一方で2014年の終わりにはオークランド中心に住宅価格の上昇が起きた。これによる住宅建設も増加した。
特に投資家による住宅需要が拡大し、ローン貸出に占める投資家の借入割合は増加した。しかしながら、居住用の住宅需要は予想したほどは大きくならなかった。正常な経済成長の中で、ローン破たん割合も低い水準で推移した。投資家向けローンの破たん割合は大きくなった。ローン貸出の厳格化でこの上昇率は低下し、平均水準以下になった。(下図参照)
地域ごとの住宅価格インフレ:青はオークランド、赤はカンタベリー、黒はその他地域
住宅価格の沈静化によって、中銀は利下げを実施してきた。そして昨年11月にキャッシュレートが1.75%の水準まで下がった。
但し、その他のNZ地域の住宅価格が2015年12月頃の5%から2016年6月には13%へと上昇している。ここで貸出制限の強化で2016年末には下がってきている。但し、需給の不均衡があり、緩やかに推移していくか不透明である。
以上の結果、CPI(消費者物価)は2016年12月期には1.3%となり、中銀目標値内には入ってきた。この上昇は想定の範囲内である。現状の金融政策は平均的なGDP成長を維持するために、まだ緩和基調を継続している。インフレは目標値中間に向けて上昇していくと予想している。(以上)
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2024.11.22
ドル円154円台前半、本邦CPI高止まり等で一時154円割れ (11/22午前)
22日午前の東京市場でドル円は「往って来い」。
-
オーストラリアドル(AUD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
豪ドルWeekly 100円を挟んだもみ合い、CPIで早期の利下げ観測が強まる可能性も(24/11/22)
今週の豪ドルは、豪準備銀行(RBA)が公表した理事会要旨でタカ派姿勢が確認されたものの、買いは続かず、100円水準を挟んだ小動きの相場展開が続いた。
-
ユーロ(EUR)の記事
Edited by:川合 美智子
2024.11.22
ユーロ円 下値リスクが点灯中。162円台を回復出来ずに越週した場合は一段の下落へ(24/11/22)
ユーロ/円は163円台前半から161円台後半まで断続的に売られ、結局安値圏で引けています。
-
ニュージーランドドル(NZD)の記事
Edited by:川合 美智子
2017.03.30
NZ弱気の流れは変わらず(2017年3月第五週)
トランプ大統領の経済政策に対する先行き不透明感からリスク回避的な流れが継続しており、NZ円相場は上値を切り下げる流れに変化が認められませんが、
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。