植田総裁のハト派発言で1月利上げ観測も後退、年末年始に160円台も
【今回のポイント】
〇 金融政策の現状維持を決定
〇 植田総裁は記者会見でハト派発言
〇 ドル独歩高もあり円安加速
【日銀会合の結果】
今回、日銀金融政策決定会合(日銀会合)の内容が公表されたのは11時52分頃。政策金利は、市場想定通り「金融政策の現状維持」。同時に発表された金融緩和策のレビューに関しては、「導入当初に想定していたほどの効果は発揮しなかった」としつつ、「全体としてみれば、プラスの影響があった」と総括した。
15時30分から16時30分の約1時間開催された植田和男日銀総裁の記者会見でのコメントは下記の通りである。
「政策は特定のデータを待たなければいけないことはない」
「1月会合までに、支店長会議などである程度の情報を参考にする」
「総合判断にならざるを得ない」
「米次期政権の政策について、世界経済・わが国経済に与える影響をよく見てゆかなければならない」
「利上げタイミング、データを丹念に点検して判断」
「各種指標は概ね見通しに沿って推移」
「賃金と物価の好循環の確認、もう少し情報が必要」
「春闘について、大きな姿わかるのは3月か4月」
「次回1月展望リポートでワンノッチ確度上がるのか、現時点では何とも言えない」
「追加利上げの判断には、もうワンノッチ欲しい」
「「時間的余裕」特定のリスクに紐づけて使うことはやめたい」
「基調的な物価、期待インフレ率の動きがゆっくりしているときは、いろいろな見極めができる」
「次回会合までどこまでわかるか、予想しがたい」
【市場の反応】
日銀会合の結果は、市場予想通りの利上げ見送りとなった。12月上旬までは「利上げ実施」機運が高まっていたが、10日頃から「五分五分」といったムードに変わり、日銀会合直前には「利上げ見送り」が市場コンセンサスとなっていたことで、発表後の市場の反応は限定的だった。大きく動いたのは、15時30分からの植田日銀総裁による記者会見だった。
「追加利上げの判断には、もうワンノッチ欲しい」「春闘について、大きな姿わかるのは3月か4月」の発言を受けて、1月利上げ観測も後退。為替市場では、円が主要通貨に対して売り優勢となり、ドルは11月15日の156円76銭を上回り157円台に突入し、円安ドル高が加速する展開となった。
【今後、円はどう動く?】
植田日銀総裁が「ハト派」に傾いた一方、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は「タカ派」に傾いたことで、日米金利差は拡大したままが意識されて円安ドル高に動きやすくなっている。20日、加藤財務大臣や三村財務官が口先介入を行ったが、「断固たる」といった強い口調ではなかったことで円安ドル高の流れは続く可能性はある。
ドルインデックスが2022年11月以来の水準まで上昇するなどドル独歩高となっていることから、新興国に流れていた資金がドルに還流する可能性もあろう。年末年始の東京市場は休場が多い。政府関係者による口先介入の危険性が低下し、参加者が少なく値が飛びやすい年末年始にドル・円が再び160円台に乗せるといったシナリオもありそうだ。
【2023年以降の日銀会合終了時間一覧】
以下は、2023年以降の日銀会合の終了時間一覧である。なお、速報が市場に伝わるのは、終了してから7分ほど経過してからだ。
【2023年】
1月18日(水)・・・11時33分終了、前回会合の方針を維持
3月10日(金)・・・11時23分終了、最後の黒田日銀総裁の日銀会合、前回会合の方針を維持
4月28日(金)・・・12時53分終了、最初の植田日銀総裁の日銀会合、前回会合の方針を維持、金融緩和策のレビューを多角的に実施することを決定
6月16日(金)・・・11時40分終了、前回会合の方針を維持
7月28日(金)・・・12時21分終了、長短金利操作の修正を決定(長期金利の上限を1.0%まで引き上げ)
9月22日(金)・・・11時45分終了、前回会合の方針を維持
10月31日(火)・・・12時20分終了、長短金利操作の修正を決定(長期金利の上限1.0%をメドに変更)
12月19日(火)・・・11時42分終了、前回会合の方針を維持
【2024年】
1月23日(火)・・・12時02分終了、前回会合の方針を維持
3月19日(火)・・・12時28分終了、マイナス金利の解除、YCC終了、ETF等の買い入れ終了
4月26日(金)・・・12時15分終了、現状の金融政策を維持、展望レポート見通し引き上げ
6月14日(金)・・・12時16分終了、国債買入額を引き下げる方針決定、詳細は7月に公表
7月31日(水)・・・12時49分終了、国債買入額の減額と利上げ実施を発表
9月20日(金)・・・11時45分終了、前回会合の方針を維持
10月31日(木)・・・11時41分終了、前回会合の方針を維持
12月19日(木)・・・11時45分終了、前回会合の方針を維持、金融緩和策のレビューも発表
【2024年スケジュール】
※米国は現地時間なので、金利発表及び記者会見は日本時間で翌日未明
日銀金融政策決定会合(日銀会合)
1月22日−23日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持
3月18日−19日・・・マイナス金利の解除、YCC終了、ETF等の買い入れ終了
4月25日−26日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持、展望レポート見通し引き上げ、記者会見後は円全面安に
6月13日−14日・・・国債買入額を引き下げる方針を決定、詳細は7月に公表
7月30日−31日(経済・物価情勢の展望)・・・国債買入額の減額と利上げ実施を発表、植田総裁のタカ派姿勢で円全面高に
9月19日−20日・・・現状の金融政策を維持、植田総裁の利上げ慎重姿勢で円安推移
10月30日−31日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持、植田総裁はややタカ派な発言
12月18日−19日・・・現状の金融政策を維持、植田総裁はハト派な発言
米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日−31日・・・4会合連続で金利据え置き
3月19日−20日・・・5会合連続で金利据え置き、パウエルFRB議長は、年内利下げの可能性を再表明
4月30日−5月1日・・・6会合連続で金利据え置き、パウエルFRB議長はややハト派な発言
6月11日−12日・・・7会合連続で金利据え置き、24年利下げ回数は3回から1回に修正
7月30日−31日・・・8会合連続で金利据え置き、9月利下げ実施を示唆
9月17日−18日・・・4年半ぶりの利下げを実施、パウエルFRB議長は利下げを急がない姿勢強調
11月 6日− 7日・・・0.25%の利下げを実施、12月も0.25%利下げ実施を示唆
12月17日−18日・・・0.25%利下げを実施か、25年の利下げ見通しは4回から2回に修正
欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
1月25日・・・現状の金融政策を維持、利下げの議論は時期尚早
3月 7日・・・現状の金融政策を維持、6月利下げ開始を示唆する発言
4月11日・・・現状の金融政策を維持、大きなサプライズが無い限り6月利下げ開始か
6月 6日・・・政策金利を0.25%引き下げ、追加利下げは明言せず
7月18日・・・金利据え置きを発表、利下げ実施は「データ次第」
9月12日・・・政策金利を0.25%引き下げ、今後の利下げスケジュールは「データ次第」
10月17日・・・政策金利0.25%引き下げ、今後の利下げスケジュールは「データ次第」
12月12日・・・政策金利0.25%引き下げ、文言変更で一段の利下げを示唆
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