ECB理事会(12/12開催)のポイント: 想定通り0.25%利下げ実施、フランスとドイツの見通しに注目(24/12/9)

ECBは今年6月、9月、10月に次ぐ利下げを実施する予定だ。

ECB理事会(12/12開催)のポイント: 想定通り0.25%利下げ実施、フランスとドイツの見通しに注目(24/12/9)

想定通り0.25%利下げ実施、フランスとドイツの見通しに注目

【今回のポイント】

〇 政策金利は0.25%引き下げて3.15%に
〇 今後の利下げ見通しは「データ次第」として明言せず
〇 フランス、ドイツの政治・経済見通しに注目

【市場コンセンサスは何?】

12月12日に欧州中央銀行(ECB)理事会が開催される。市場コンセンサスは下記の2点と考える。

・政策金利は0.25%引き下げて3.15%に
・今後の利下げ見通しは「データ次第」とし今後の利下げスケジュールは明言せず

【前回会合の議事要旨】

「最近のデータがより持続的な弱さを示し、ディスインフレの進行加速を裏付けるものであれば、現時点の利下げはマクロ経済状況の変化に即した政策調整として正当化される」
「この議論はまた、現時点で利下げをしてそれが時期尚早だったことが判明するリスクよりも、利下げを先延ばしして対応が遅れるリスクの方が高いことを意味する」
「数人のメンバーは当初、より多くの情報を集め、インフレの中期的見通しに関する包括的な評価が得られる12月まで待つことが望ましいとの見解を示した」
「これらのメンバーもいま利下げを行いリスクを予防的に管理する必要性を認識しており、そのため利下げ提案を支持する用意があると表明した」
「特定の金利軌道への事前のコミットメントはあってはならない。必要に応じて対応できるように、今後について完全な選択性が必要であることがあらためて指摘された」
「景気抑制の度合いをどの程度のスピードで減らすべきかは、入手するデータ次第であると強調された。入手データは引き続き、反応関数の確立された3つの要素すべてに対して評価されるべきだ」

「金利が中立的な領域に近づくほど、金融政策自体がディスインフレのペースを鈍化させる要因にならないよう、より慎重になる必要があると主張された」
「インフレが速やかに2%という中期的な目標に収束するだろうという確信が強まっている」
「ディスインフレ傾向はより強く、しっかりしたものとなり、勢いを増している」
「サービス価格のインフレにも改善の萌芽が見られ、サービス価格および域内インフレが今後1年に大幅に低下する兆候も見られる」
「一部の国では企業が人員削減に乗り出しており、転換点に達するのではないかという懸念が示された」

【何がサプライズになる?】

ECBは今年6月、9月、10月に次ぐ利下げを実施する予定だ。一部では0.50%の大幅利下げの話も出ているようだが、市場コンセンサスは0.25%の利下げと見られている。ECB理事会後のラガルド総裁の記者会見でも、今後の利下げに関するスケジュール等はこれまで通りの「データ次第」というこれまで通りの回答に留まるだろう。今回も前回同様、サプライズに欠ける理事会となり、為替市場に与えるインパクトは限定的と考える。

一方、前回の議事要旨にある「一部の国のリストラ」は、ドイツのボッシュやフォルクスワーゲンを指していると推測されることで、雇用情勢に対する見方はECBでも議論の対象となろう。首相がわずか2カ月半で辞任したフランスの政治リスク同様、ドイツ経済は今回のECBでの大きなテーマになると考える。

【では、ユーロはどう動く?】

今回のECB理事会は、利下げや今後の見通しに関してはノーサプライズを想定することで、為替市場への影響は限定的となるだろう。ただ、上述した通り、大国フランスとドイツに対するECB内での見方は注目されよう。

フランスの議会下院で内閣不信任決議案が可決されたことを受けて、少数与党を率いていたバルニエ首相は5日、マクロン大統領に辞表を提出し、内閣は総辞職した。マクロン大統領は国民に向けて演説し、近く後任の首相を選ぶとした上で、大統領としての任期を全うする考えを強調した。欧州債券市場では、仏国債への債務不安が強まっている。FTSE指数によると、仏国債の価格は2024年1−11月に0.7%高と、欧州主要国で上昇率が最も低い。財政再建に向けた支出削減が困難との見方が続いており、仏10年債と欧州の基準となる独10年債の利回り差は11月27日、ギリシャ国債を上回った。

一方、欧州の基準債券を発行している独は政治情勢、経済情勢ともに厳しい。ショルツ政権は中道左派のドイツ社会民主党(SPD)と環境政党「緑の党」、FDPの3党で連立を組んできたが、FDPが政権の枠組みから離脱したことから、SPDと緑の党の議席数は独連邦議会で過半に届かない少数与党に転落。25年2月には総選挙が実施される見通しだ。

そして、経済面では、2025年のGDP成長率は前年比0.1%に留まるとの見通しを明らかにした。4−6月期GDPは前期比0.3%減、7−9月期GDPは同0.2%増とリセッション(2期連続のマイナス成長に伴う景気後退)入りはかろうじて回避されているが、10−12月期GDPは厳しい見通しとなりそうだ。今年のGDP成長率の見通しについては、前年比0.2%縮小するとみており、ユーロ圏の同0.8%拡大予想を大きく下回った。

ユーロが対円、対ドルで下落傾向にある背景として、フランス、ドイツの問題が重くのしかかっている。ECBが両国の政治・経済見通しに対して、楽観視しているのか、警戒しているのかが非常に注目されよう。

【最近のECB関係者の発言は?】

ここ2週間以内でECB関係者の発言を拾った。

12月5日、カザークス・ラトビア中銀総裁
「来週の会合も含めて利下げは継続していくべき」

12月5日、ナーゲル独連銀総裁
「今のところ来週の利下げに異議はないが、会合まで判断を留保」
「利下げは段階的で慎重なアプローチを支持」

12月5日、マクルーフ・アイルランド中銀総裁
「0.50%利下げの必要性について、慎重に進めることを好む」
「最近のデータは慎重さと用心深さが必要であるという見方を強めた」

12月4日、ラガルドECB総裁
「金利は依然として景気抑制的な水準」
「利下げを続けるが、ペースについて言及しない」

12月4日、ラガルドECB総裁
「第4四半期にインフレが一時的に進む見込み」
「将来的にはユーロ圏の経済回復が勢いを増す見込み」
「短期的には成長が弱まるだろう」
「特定の金利経路にコミットしない」
「インフレは来年中に目標に低下すると予想」
「中期的な見通しは下振れリスクが支配的」

12月4日、ブイチッチ・クロアチア中銀総裁
「会合ごとにアプローチすることが依然として適切」
「不確実性の中で金利変更は少しずつ行う方がよい」

12月4日、レーン・フィンランド中銀総裁
「ECBの金融緩和は今後数カ月続くと予想」
「12月利下げの根拠はさらに増えるだろう」

12月4日、ホルツマン・オーストリア中銀総裁
「12月に適度な利下げの可能性がある」

12月3日、カザークス・ラトビア中銀総裁
「ECBの緩和ペースや幅はデータによって決定される」
「依然として段階的なアプローチが適切」

12月3日、チポローネECB専務理事
「米関税は、欧州の成長とインフレを低下させる可能性」
「米国の関税は経済を弱体化させ、消費縮小につながり、価格への圧力が弱まる」
「米市場から締め出された中国製品は、欧州にて割引価格で販売されることになる」

12月2日、カザークス・ラトビア中銀総裁
「ECBが12月会合で大幅利下げを議論する可能性は高いが、不確実性も高い」
「インフレ問題は近く終わると見込む」
「個人的には利下げの継続が必要」

12月2日、ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁
「12月に再び利下げがありそうだ」

12月2日、レーンECB専務理事兼チーフ・エコノミスト
「インフレ率はECBの目標である2%に近づいたが『まだ少し距離がある』」
「データへの依存度は低下するが、新たな課題は『会合ごとに』発生するリスクを評価すること」

11月28日、ビルロワドガロー仏中銀総裁
「12月利下げの規模にはオープンな姿勢を維持すべき」
「利下げの可能性についていかなる会合も排除すべきではない」
「12月に利下げする理由は十分にある」
「中立水準を下回る金利を排除することはない」
「ECBには制限的な政策を撤廃する大きな余地がある」

【2024年スケジュール】

※米国は現地時間を記載しているので、金利発表及び記者会見は日本時間翌日未明

日銀金融政策決定会合(日銀会合)
1月22日−23日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持
3月18日−19日・・・マイナス金利の解除、YCC終了、ETF等の買い入れ終了
4月25日−26日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持、展望レポート見通し引き上げ、記者会見後は円全面安に
6月13日−14日・・・国債買入額を引き下げる方針を決定、詳細は7月に公表
7月30日−31日(経済・物価情勢の展望)・・・国債買入額の減額と利上げ実施を発表、植田総裁のタカ派姿勢で円全面高に
9月19日−20日・・・現状の金融政策を維持、植田総裁の利上げ慎重姿勢で円安推移
10月30日−31日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持、植田総裁はややタカ派な発言
12月18日−19日

米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日−31日・・・4会合連続で金利据え置き
3月19日−20日・・・5会合連続で金利据え置き、パウエルFRB議長は、年内利下げの可能性を再表明
4月30日−5月1日・・・6会合連続で金利据え置き、パウエルFRB議長はややハト派な発言
6月11日−12日・・・7会合連続で金利据え置き、24年利下げ回数は3回から1回に修正
7月30日−31日・・・8会合連続で金利据え置き、9月利下げ実施を示唆
9月17日−18日・・・4年半ぶりの利下げを実施、パウエルFRB議長は利下げを急がない姿勢強調
11月 6日− 7日・・・0.25%の利下げを実施、12月も0.25%利下げ実施を示唆
12月17日−18日

欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
1月25日・・・現状の金融政策を維持、利下げの議論は時期尚早
3月 7日・・・現状の金融政策を維持、6月利下げ開始を示唆する発言
4月11日・・・現状の金融政策を維持、大きなサプライズが無い限り6月利下げ開始か
6月 6日・・・政策金利を0.25%引き下げ、追加利下げは明言せず
7月18日・・・金利据え置きを発表、利下げ実施は「データ次第」
9月12日・・・政策金利を0.25%引き下げ、今後の利下げスケジュールは「データ次第」
10月17日・・・政策金利0.25%引き下げ、今後の利下げスケジュールは「データ次第」
12月12日・・・政策金利0.25%引き下げ、今後の利下げスケジュールは「データ次第」

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