政治空白の長期化懸念強まる、ランド売り継続か
【先週の南アフリカ・ランド】
先週のランドは、総選挙後の政治への不透明感や南アフリカ経済指標の悪化などを受けて売り優勢の展開となった。
2日、独立選挙委員会(IEC)は、5月29日に実施された第7回総選挙の結果を発表した。現与党のアフリカ民族会議(ANC)は得票率40.18%(前回は57.50%)。事前の世論調査の通り、ANCは1994年の民主化以降初めて過半数割れとなった。
最大野党の民族同盟(DA)は得票率21.80%(前回は20.77%)。3番目に新党の民族の槍(M.K.)が14.59%(今回が初)、4番目に経済的解放の闘士(EFF)が9.52%(前回は10.80%)となった。M.K.は、前大統領のジェイコブ・ズマ氏の立候補が取り消されたにもかかわらず、事前の世論調査通りの躍進を遂げ、野党第2位に。ANCは、3日に全国作業委員会、4日に全国執行委員会を開いたと伝わっているが、まだ今後の方針は正式に伝わっていない。
こうした政治の混乱に、第1四半期実質GDPが前年比0.5%増と市場予想(同0.8%増)と前回(同1.4%増)をともに下回るなど、弱い経済指標も加わったことから、ランドは売り優勢の地合いとなり、一時8.1841円と4月26日以来の水準まで下落した。
ランド・円(東京時間:6月3日―6月7日)
※Investing.comの日足を参照
始値:8.3610円
高値:8.4481円
安値:8.1841円
終値:8.3018円
【先週と今週の重要指標】
※時間は東京時間
6月4日
18時30分、第1四半期実質GDP(前年比)、前回:1.4%、市場予想:0.8%、結果:0.5%
6月5日
17時00分、第2四半期BER企業信頼感指数、前回:30、結果:35
6月6日
18時00分、第1四半期経常収支、前回:−1630億ランド、結果:−850億ランド
6月11日
20時00分、4月製造業生産高(前月比)、前回:−2.2%
※予定は変更することがございます。
【今週の見通し】
今週のランドは、引き続き政治空白期間の長期化が懸念されて、ランド売り圧力が強まる展開となりそうだ。
東京時間9日19時時点で、ANCから今後の方針等に関する情報は伝わっていないことから、政治空白期間の長期化懸念が高まっている。南アフリカから資金を引き上げる欧米投資家が今後増える可能性もあり、ランド売りが強まる可能性はある。今後、ANCがとる方向は大きく下記の4つが考えられるが、いずれもランド軟調が懸念されるところだ。
@ANCが、白人を主な支持基盤とする「DA」と連立を組む
→支持基盤の違いからANC、DA双方の支持者、議員が納得しない可能性あり、ランドやや売り
A ANCが、ズマ前大統領が率いる「M.K.」と連立を組む
→ポピュリズム政党との連立で反欧米色が強まる可能性あり、ランドに強い売り
B ANCが左派政党の「EFF」と連立を組む
→ポピュリズム政党との連立で反欧米色が強まる可能性あり、ランドに強い売り
CANCが連立を組めずに政治空白が発生する
→欧米投資家の離反を招き、ランド売り圧力MAX
テクニカルでは、日足の一目均衡表の雲上限を下放れた後、値を戻したが、50日移動平均線に頭を抑えられた。政治の混乱がランド買いを手控えさせることから、50日移動平均線や雲上限が今後、上値抵抗線として意識される可能性もあろう。一気に100日移動平均線が位置する8.10円水準まで下げる展開も視野に入る。
短期的なテクニカルでは、ランド売り、という局面に入ったと考える。今週は重要な経済指標の発表が予定されていないことで、ANCの方針発表に関心は向かおう。発表が長引けば長引くほどランド売りの圧力は強まるだろう。
南アフリカランド円日足
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