3月13日夜安値を割り込む、信用不安でクロス円は全面安
〇米銀破綻の欧州への飛び火懸念によりユーロやポンドが急落、ドルストレートではドル高に
〇一方、リスク回避の円買いによりクロス円は全面安でドル円も円高が勝って急落商状に
〇15日夜に132.21の安値をつけ16日未明に133.77まで戻すも午前序盤は再び133円を割り込む
〇クレディ・スイスの経営不振報道による信用不安再燃で米長期債利回りは総じて急低下
〇16日高値133.77以下での推移中は一段安警戒、132.21割れからは131、130円を試す下落を想定
〇波乱の続きやすい状況とみて、強気転換は15日夕高値135.09超えからとする
【概況】
ドル円は3月15日夕刻に135.09円を付けて3月13日夜安値132.27円以降の戻り高値を更新していたが、クレディ・スイス株暴落をきっかけとしたリスク回避と信用不安により欧米長期債利回りが急低下し、米銀破綻の欧州への飛び火懸念によりユーロやポンドが急落してドルストレートではドル高となる一方、リスク回避の円買いによりクロス円は全面安でドル円も円高が勝って急落商状に見舞われた。
3月15日夜に132.21円の安値を付けて3月13日夜安値をわずかに割り込んだ後は金融市場全般の急落が落ち着いたことで16日未明には133.77円まで戻したが、16日午前序盤は再び133円を割り込んでおり、リスク回避型の円高継続感が強まっている。
【CS株暴落、ECBとFRBは利上げ見送りの可能性も】
スイス金融大手クレディ・スイス株は3月15日に一時30%暴落し、信用不安を示す同社CDS(クレジットデフォルトスワップ)は過去最高値を更新した。
先週の米シルバーゲート銀(仮想通貨関連企業への融資)、米シリコンバレー銀(ITベンチャーへの融資等を行う中堅銀行)の破綻に続くNY州の米地銀シグネチャー銀の破綻報道が飛び込んだことで破綻の飛び火を懸念した株売り・債券買いにより欧米長期債利回りは3月13日にかけて急落していたが、3月14日は状況一服でやや落ち着いていた。しかしクレディ・スイスの経営破綻懸念が発生したことにより破綻の飛び火と連鎖への不安が再燃している。
米銀破綻報道以前の段階では欧州中銀(ECB)は3月16日の理事会で0.50%利上げが予想され、3月21-22日の米FRBによるFOMC会合では0.25%利上げ(一時高まっていた0.50%利上げの可能性は後退)が予想されていたが、一連の米銀破綻とクレディ・スイス株暴落及び欧米株安と長期債利回りの急低下等により、ECBとFRBはともに利上げを見送るのではないかとの見方が強まりつつある。
ECBにとっては既定路線通りに0.50%利上げを行えば金融市場の不安を助長することにもなりかねず、金融市場は問題ないとして0.25%利上げとすれば市場も落ち着く可能性もあるが、利上げそのものを見送れば事態は一層深刻な状況と市場は受け止めるかもしれない。FRBにおいてもインフレ抑制を最重要課題としつつも金融危機のトリガーは引きたくないところであり難しい判断を迫られる。
スイス中銀とスイス金融規制当局(FINMA)はクレディ・スイスに対して「必要があれば流動性を供給する」として支援姿勢を示し、「同社は自己資本と流動性に関する厳しい要件を満たしている」として安心を促したが、同社は昨年から経営状況が悪化しており、2022年12月決算は純損失が72億9300万スイスフラン(約1兆円)と2期連続赤字を計上しているため、金融市場全般の萎縮が進み取り付け騒ぎが発生すると持ち堪えられない可能性もある。
FRBは米中堅銀行を対象にストレステスト(健全性審査)の実施拡大を協議しているという。不安心理を解消できるかどうか、ECBとFRBはともに市場に問われることになる。
【3月15日の米経済指標は総じて軟調】
3月15日に発表された米経済指標は総じて弱い内容だった。
2月の米PPI(生産者物価指数)の上昇率は前月比マイナス0.1%となり1月の0.3%(速報の0.7%から大幅な下方修正)及び市場予想の0.3%を下回り、前年同月比は4.6%で1月の5.7%(速報の6.0%から下方修正)及び市場予想の5.4%を下回った。エネルギーと食品を除くコア指数の上昇率も前月比で0.0%となり1月の0.1%及び市場予想の0.4%を下回り、前年同月比は4.4%で1月の5.0%(速報の5.4%から大幅下方修正)及び市場予想の5.2%を下回った。FRBに対する大幅利上げを催促せず利上げペース減速の維持を示唆する内容だった。
3月のNY連銀製造業景況指数はマイナス24.6となり2月のマイナス5.8から大幅に悪化して市場予想のマイナス8.0も下回った。また2月の米小売売上高は前月比0.4%減となり1月の3.2%増(速報の3.0%から上方修正)から悪化して市場予想の0.3%減も下回った。いずれもFRBによる大幅利上げを催促しない内容といえる。
ドル円は夕刻からクレディ・スイス問題で急落していたが、21時半の米経済指標を見た後も続落し、132円割れ回避でその後に落ち着く展開だった。
【米長期債利回り大幅低下 波乱続く】
クレディ・スイスの経営不振報道による信用不安の再燃で前日に反騰していた米長期債利回りは総じて急低下した。
長期金利指標の10年債利回りの終盤は3.46%で前日比0.24%低下となった。前日は0.16%上昇でそれまでの3営業日大幅低下が一服していたが再び崩れ始めた印象だ。
30年債利回りの終盤は3.65%で前日比0.16%低下で前日の0.12%上昇を解消した。
利上げに敏感な2年債利回りの終盤は3.89%で前日比0.37%低下したが、一時は3.72%を付けて昨年9月以来の低水準まで下げている。2年債利回りは3月8日に5.08%を付けて2007年以降の最高値としたところから3月9日に0.21%低下、10日に0.28%低下、13日には0.57%低下し、14日は0.24%上昇と大幅低下が一服していたが、再び急低下に陥っている。
一方でNYダウは前日比280.83ドル安と下落したが、一時は700ドル安を超える大幅下落だったところからは持ち直して下げ幅を大きく削り、ナスダック総合指数は5.90ポイント高とプラス圏まで持ち直した。スイス中銀による救済姿勢等を見て序盤のパニック売りが落ち着いたためだが、金融機関の経営不安問題は投資家によるリスク回避と撤退売りにより連鎖反応を引き起こしやすいため、新たな金融機関での経営不安問題が報じられるようだと負のスパイラルで株売り債券買いを一段と勢い付かせる可能性がある。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は3月8日午後高値137.91円を起点とした下落が3月13日夜安値132.27円で目先の底を付けて反騰入りしていたため、15日午前時点では15日の日中から16日にかけて135円台への上昇余地ありとしたが、133.70円割れからは下げ再開を疑い、133.30円を割り込むところからは下落期入りとしていた。
3月15日夜の急落により、3月15日夕高値を起点として下落期に入ったと思われる。安値形成期は16日夜から20日夜にかけての間と想定する。ただし132円割れを回避して踏みとどまる場合は13日夜と15日夜の両安値をダブル底として反騰入りする可能性もあるので134円超えからは15日夕高値試しとし、高値を更新する場合は20日夕から22日夕にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では3月15日夕からの急落により遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。13日夜からいったん戻したために遅行スパンは好転しやすい位置にあるが、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とし、先行スパンを上抜くところからは反騰入りとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は3月15日夜に30ポイントを割り込んでから戻したものの50ポイントに届かずにいるのでまだ一段安余地ありとし、下げ足が速まる場合は10ポイント台への低下を想定する。強気転換は50ポイント超えからとするが、60ポイント台では戻り売りも出やすいとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、132.21円を下値支持線、16日未明高値133.77円を上値抵抗線とする。
(2)133.77円以下での推移中は一段安警戒とし、132.21円割れからは131円、130円を順次試してゆく下落を想定する。133円以下での推移が続くか、直前安値から1.50円を超える反騰が見られないうちは一時的に戻しても戻り売りにつかまりやすいとみて17日への下落を想定する。
(3)133.77円超えからは134円台序盤試しとするが134円前後では戻り売りも出やすいとみる。波乱の続きやすい状況とみて、強気転換は15日夕高値135.09円超えからとする。
【当面の主な予定】
3/16(木)
13:30 (日) 1月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -4.6%)
13:30 (日) 1月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -2.3%)
13:30 (日) 1月 設備稼働率 前月比 (12月 -1.1%)
21:30 (米) 2月 輸入物価指数 前月比 (1月 -0.2%、予想 -0.2%)
21:30 (米) 2月 輸出物価指数 前月比 (1月 0.8%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 2月 住宅着工件数・年率換算 (1月 130.9万件、予想 131.0万件)
21:30 (米) 2月 住宅着工件数 前月比 (1月 -4.5%、予想 0.1%)
21:30 (米) 2月 建設許可件数・年率換算 (1月 133.9万件、予想 134.5万件)
21:30 (米) 2月 建設許可件数 前月比 (1月 0.1%、予想 0.5%)
21:30 (米) 3月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (2月 -24.3、予想 -15.8)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.1万件、予想 20.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 171.8万人、予想 171.5万人)
22:15 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 3.00%、予想 3.50%)
22:45 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、記者会見
3/17(金)
OECD経済見通し
13:30 (日) 1月 第三次産業活動指数 前月比 (12月 -0.4%、予想 0.5%)
19:00 (欧) 2月 消費者物価指数(HICP)・改定値 前年同月比 (速報 8.5%、予想 8.5%)
19:00 (欧) 2月 HICPコア指数・改定値 前年同月比 (速報 5.6%、予想 5.6%)
22:15 (米) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 0.0%、予想 0.4%)
22:15 (米) 2月 設備稼働率 (1月 78.3%、予想 78.5%)
23:00 (米) 2月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (1月 -0.3%、予想 -0.2%)
23:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (2月 67.0、予想 67.0)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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